「自分を売り込む」というよりは「知ってもらう」【後編】走るジーンズショップ「デニムマン」インタビュー

ニューアキンド

前回の「「何を買うか」より「誰から買うか」【前編】走るジーンズショップ「デニムマン」インタビュー 」に引き続き、「お客様との繋がり」についてデニムマンこと新倉 健一郎氏にお話しいただだきました。

 

地域に根差して、商売をする

 
―今は神奈川の湘南エリアを主な活動範囲にされてますが、今後範囲を拡大させるという考えはあるのでしょうか。
 
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新倉氏:この業態自体がそもそも大量のお客さんにアプローチしなくても良いという部分があって、それよりは地元に根差してちゃんとアフターケアできる距離で密にやった方がいいと思っています。
なので今のところは拡大とかは考えていないです。
 
―やはり密にお客さんとやり取りしていたほうが、顧客満足度も高いですよね。
 

新倉氏:そうですね。今のところの手応えではそう感じています。「めちゃくちゃ楽しかった!」って言ってくれる方もいました。
あるお宅にうかがった時は、ご夫婦と十代後半の息子さんが二人いらして、「こっちが似合うんじゃないか」「いやこっちの方がいい」ってすごい楽しそうで(笑)
大きくなってから家族で服を買いに行くって、なかなかないじゃないですか?あーこういう利点もあるのかー、と気付かされました。
お茶を飲みながらお話をして、で、試着してもらう。こういった体験は、他のお店ではなかなか味わえないと思います。

 
―お客さんは何をきっかけにデニムマンを知るんでしょうか?
 

新倉氏:やっぱり今はSNSとかのつながりが多いですね。
ただSNSは、アカウントを持っている人たちの中での繋がりしかないので、その外にいる人たちにどうやって認知してもらうか、というのが今後の課題です。ネットの外の人に知ってもらうにはどうすればいいかを、今一生懸命考えています。
そういう点で言うと、この前平塚のSunSunマルシェ小田原の軽トラ市なんかのイベントはではお客さんと直接お話しできて、すごい貴重でした。

 

まずは「自分を知ってもらう」

 
―デニムマンを運営していて、苦労された点は何でしょうか。
 
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新倉氏:苦労されたっていうか今も苦労している点なんですが、一人一人個別の営業をする業態だと、呼んでいただく方にとってもハードルが高い点ですね。つまり「わざわざ自分の所まで来てもらうのは悪い」だったり「呼んだけど買わなかったらどうしよう」っていう日本人特有の「遠慮」っていうハードルですね。そのハードルを越えてもらうのにどうしたらいいか、悩んでいます。
僕としては気軽に呼んでいただければ、行けるエリアなら行くし、ゆっくりお話もしたいんですけど、こういったハードルは前述のリアルイベントとかでお話ししたりして、地道にクリアしていくしかない。そこのマッチングが難しいですね。

 
―確かに会ったこともない人を呼ぶのって、少しハードルがありますね。
 
新倉氏:そうですよね。僕の場合はこのハードルを越える為に、まず何から始めたかっていうと、「自分を知ってもらう」っていう事だったんですね。お客さんとの信頼関係を作っていく。
 
というのもこの商売を思いついた時は、こういう業態では女性のお客さんは来ないだろう、という考えがあって。
だって見ず知らずの人の車に乗って着替え(試着)するっていうのはありえないでしょ。そんな・・・危険な(笑) だから最初レディースは扱おうと思ってなかったんです。
そういう理由でメンズだけやろうとしてたら、知り合いの女性や親戚からレディースも扱ってほしいって言われて。
随分悩んだんですが、突き詰めると要は自分を知ってもらっているかどうか、お客さんから自分が信頼されているかどうかっていうのが大事な訳なんですね。女性のお客さんでも、信頼してもらえれば売ることが出来る。じゃあまず自分を知ってもらわなくちゃ、と。
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あとはどうやって自分を知ってもらうか、なんですがこれはブログを書いたり、Facebookを公開したり、直接会って話したり、色々やっています。直接お話をするのが一番確実ですね。
だから商売になる、ならないは別にして、今では色んな会合や集まりに行ってます。昔はこういう事はしなかったんだけど。
「自分を売り込む」というよりは「知ってもらう」。デニムマンもその後に知ってもらえればそれでいいかなと思ってます。まず知ってもらうのは「自分」なんですね。
自分から動いて、どんどん「新倉 健一郎」という人間を知ってもらう。そうしないと、この仕事は成立しないです。
 

「売り手」「買い手」の壁を越える

 
―人とのコミュニケーションを取るノウハウはアパレル時代に培ったものかと思います。でも個人的にアパレルのお店って、店員に話しかけられるのが怖いんですが。
 
新倉氏:そこなんですよね。今日それもお話したかったんです。
なぜアパレルの接客が嫌われるか。
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―新倉さん的にはなぜなんでしょうか?
 
新倉氏:店員にマニュアルの接客しか教えてないからだと思います。お客さんとちゃんとしたお話が出来ない。
「いらっしゃいませ」って普段のコミュニケーションで使う言葉ではないですよね。挨拶する時は「こんにちは」とかでしょ。だから本当はお客さんに「こんにちは」って言える関係が作れるといいんですけど、いらっしゃいませっていう時点でもう売り手買い手で壁が出来ちゃう。そこを越えられる店員さんって少ないんですね。
アルバイトの子も多いから、マニュアル重視の接客指導になってしまうのは仕方ない部分もあるんですが、本当の接客を指導できる経営者がなかなかいないっていうのもありますね。
特にチェーン店はそういう事が多いですね。
 
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本当はお店の人と仲良くなっちゃえば、お客さんとしても楽だと思うんですけどね。でもお客さん側には「売りつけられるんじゃないか」っていう不信感みたいなものが少なからずあるでしょう。特に10~20代のまだ買い物慣れしてない人とかは、そういう傾向にあると思います。「やべえ、何か売りつけられるんじゃないか」って(笑)
お客さん側としては、店の人と仲良くなっちゃえば、買い物も楽しくなるし楽になる。だからお店側も、お客さんと仲良くなれるような方法を店員に指導できれば、そういうこともなくなるのかなと思いますね。
だから今度からお店の人に聞きたい事は聞いて、ずけずけ行っちゃっていいと思いますよ(笑)ちゃんとした店なら、店員さんもちゃんとそれに応えてくれるはずです。
それこそ「何を買うか」より「誰から買うか」っていう部分なんですね。
 
―今日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。最後に一言、商売をしている方々へメッセージをお願いいたします。
 
新倉氏:調子に乗って偉そうにしゃべってしまいましたが、デニムマンはまだスタートして4ヶ月。成功とも失敗とも言えません。ただ、今後うまくいけば、店のオーナーさんや働いている方に「こういうやり方もあるのか」という気付きになるかもしれません。
「お客さんが来てくれなければ自分で行けばいい」っていうような発想の転換のきっかけになれれば嬉しいです。
もし自分もやってみたいって人がいれば喜んでアドバイスさせてもらいます。
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編集後記

「何を買うか」より「誰から買うか」。人と人とのつながりを大事にして、お客様に納得していただける商品を自分の手で届ける、この姿勢は「商いの原点」だと感じました。商売をしていく上で忘れてはならないことを教えてくれたデニムマン新倉さん、もう我々はファンです。
 

野口さん

商売繁盛を応援するWebメディア・ニューアキンドセンターのセンター長。 もっとエッジを効かせたい、もっとトンガリたい。どうぞよろしくお願いします。

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