広島東洋カープにみる人材育成ポイント

ニアセ寄稿

25年ぶりの優勝を遂げたカープ
 
1991年以来、25年ぶりの優勝を遂げた広島東洋カープ。惜しくも32年ぶりの日本一こそ逃しましたが、ペナントリーグでの独走はファンの喜びと驚きを呼びました。そこで、今回はカープの強さの一因でもある「人材(選手)育成」に焦点を当てて、ご紹介していきます。最後までご覧ください。

お金が使えない……からこそ人材育成に注力

球団創設から、カープは一貫して「人材育成の球団」とも言われています。
 
今年活躍した選手を見てみても、センターとして3番打者を一年間打ち続けた丸佳浩、セカンドの名手である菊池涼介、そして「神ってる」という言葉で一躍脚光を浴びた鈴木誠也など、助っ人外国人を除くほぼすべての選手が生え抜きの選手です。
 
12球団唯一の「市民球団」として、親会社を持たないがゆえに資金には恵まれておらず年俸も多くの額を出すことができず、自由に他球団と契約を結ぶことのできる権利である「FA権」を行使するような有名選手の獲得にもなかなか動けないカープが、こうして生え抜きの選手を多く使うのは当然ともいえます。しかし、ここまでそれぞれの選手が活躍するのはなぜなのでしょうか。

「選手表」と「独自の視点」で宝を見つけるスカウティング

まず、その理由としてあげられるのは「スカウトの能力」です。カープのスカウトには「年齢別選手表」というものが配布されており、選手それぞれの年齢と守備位置が記載されてています。これを見れば、「いま、どのポジションが手薄なのか」「何年後にどのポジションが空くのか」というのが一目瞭然です。
 
これに沿ってドラフト戦略を立てることで、主力選手が抜けたあとにも次々に有望な選手が登場してくるのです。また、それ以外にもカープのスカウトには特徴があります。
 
それは、「能力以外のところをチェックする」という点です。2016年に最多勝を獲得した野村祐輔投手を2011年に指名した際には、野村の能力もさることながら、それ以外の点にもスカウトは注目していました。
 
基本的に、投手は投球を終えたあとに肩をアイシングするのですが、野村はそれをせず、試合が終わったあとにも走り込みをする習慣があり、それを知ったスカウトが、「これならプロに入っても期待できる」と、1位指名を決めたそうです。
 
また、今年引退を決めた黒田博樹投手を獲得する際にも、肝心の投球よりも打席に立った際の全力疾走や、メンタル面に注視していたようです。
カープのスカウト能力の高さは、日本人の獲得だけにとどまりません。
 
エースとして活躍しているジョンソン、今年20本のホームランを放ったエルドレッド、セットアッパーとして大車輪の活躍をしたジャクソンやヘーゲンスなど、カープは助っ人外国人にも恵まれていることで知られています。
 
その陰には、「シュール便」とも呼ばれている優秀なスカウトの存在があります。以前カープに在籍していたシュールストロム氏です。過去に巨人から高額のオファーも受けましたが、「カープには一生の恩がある」と断ったことでも有名です。
 
そのほか、ドミニカ共和国で展開している「カープアカデミー」という野球のスクールでも育成を行い、アカデミー出身である選手の中にはメジャーリーグで大活躍している選手もいます。

12球団随一の練習量

また、なんといってもカープの選手は練習量がとても多いことでも知られています。キャンプ中には休むことなく朝から日の暮れたあとまでどっぷりと練習をこなし、ランチタイム以外はほとんど練習、練習です。
 
阪神タイガースから復帰し、今年は2000本安打、300本塁打を記録し4番として精神的支柱の役割を担った新井貴浩選手も、多くの練習をこなすことで知られています。
 
新井選手はもともとはドラフト6位指名での入団でした。身体こそ190cmの身長で大柄な新井選手ですが、ドラフト使命に至ったのも「コネ」だったこともあり、当初はあまり期待されていませんでした。
 
しかし、「アニキ」と慕う現在は阪神タイガースの監督を務める金本知憲とともに猛練習に励むことで、その資質を開花させました。こういったハードな練習をこなすことで、個々の選手が持っている資質を存分に開花され、続々とカープの生え抜き選手が活躍するバックボーンとなっていそうです。

まとめ

さて、今回はカープの生え抜き選手が活躍する理由を探ってみました。他の球団よりも使える資金が少ないぶん、育成に注力するカープの秘訣はスカウトと練習量の二つにありました。来年こそ、この育成力で日本一を奪還してほしいですね。

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