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ホーム > アキンド探訪  > なぜ「パパパパパイン」はパイナップルラーメン一本で6年間繁盛し続けたのか?

中央線の西側、高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪あたりにはラーメンの名店がひしめいている。
 
昔ながらの中華そば「春木屋」、濃厚塩スープが人気「チキュウ」など枚挙にいとまがない。うまいラーメンをだしてなお生き残りが難しいこの戦場でパイナップルラーメン1本で営業を続ける異色の店がある。西荻窪の「パパパパパイン」だ。

提灯だってパイナップル「パパパパパイン」

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西荻窪駅から徒歩2分。通りを歩いているとパイナップルの提灯がひときわ目をひく。券売機をみると「パイナップル塩ラーメン」「パイナップルしょう油ラーメン」「パイナップルつけめん」「パイナップルえび塩ラーメン」と、本当にパイナップル メニューしかない。
 
2011年のオープン当初から6年間、パイナップルラーメン一本で勝負してる異色の店だ。繁盛の結果、2016年には2店舗目のラーメン店「81番」をオープン。こちらは一般的なラーメンを提供している。
 
私は「東京別視点ガイド」というサイトで、日本全国の変わった飲食店をめぐっている。なかにはコーヒーラーメン、ココアラーメン、青汁ラーメンを提供する店もあるが、あくまで数あるメニューのなかの1つで変わり種はいろいろだ。さもなければ商売が成り立たない。
 
しかし、パパパパパインパイナップルラーメン一本のストロングスタイル。
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看板にはこんな問いが投げかけられている。
ラーメンとパイナップルが大好きだからラーメンの中にパインがはいってもいいんじゃない?
 
こんなに力強く問われたら「はい、いいです」と肯定するしかない。
いまだ「酢豚にパイナップルを入れるのは是か非か」を論争している我々がちっぽけに思える。私は近くに住んでいたこともあり、何度か通っていた。
 
そんなおり流れてきたのがこのツイート。2017年4月末に閉店とのこと。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
閉店前に店長さんにくわしくお話しを伺いたく、
 

  • ・変わり種ラーメン1本で激戦区を戦い抜けたわけ
  • ・なぜパイナップルラーメンが勝負したの
  • ・閉店の理由と今後の展望


 
などを伺った。
 

▼お店の場所はこちら▼

「パパパパパイン」パイナップルラーメン、うまい!

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店長の倉田さん。「お客さんがいてもなんでも答えますよ!」と気さくに受け答えしてくれた。
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パイナップルグッズだらけ。カウンターのタイルも黄色い。
 
「ほかにお客さんがいても、なんだって聞いちゃってください!」と気さくな倉田店長。パイナップル柄のアロハシャツを着ている。客席は黄色いカウンターだけで6人もはいれば満員。椅子も壁もドアもすべてパインカラーに統一されている。
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パイナップルワイン 400円
 
パイナップルワインを飲んで、ラーメンの完成を待つ。
なにからなにまでパイナップル一色だ。
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パイナップル塩ラーメン+トッピングいっぱいん 920円
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トッピングはのり・ほうれん草・チャーシュー・刻みねぎ・糸唐辛子。
中央にこんもり盛られたパイナップルを除けば、端麗系のさっぱりとしたラーメンのようだ。
 
スープの4分の1はパイナップル果汁なので甘くてフルーティーな味わいだ。意外にもベースの塩味となじんでいるので、正直いってうまい。チャーシューも肉厚で食べごたえがあるし、これはこれで全然アリだ。
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味つけたまごはパイナップル風味。いままで食べたことのない甘さ、美味しさでこのラーメンによく合っている。この味つけたまごにハマってしまう常連さんもおおいのも頷ける。

パイナップルラーメン「パパパパパイン」はメディアに取り上げてもらわないとどうしようもない

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-いきなりですが閉店についてです。4月末閉店ということですが、どういう理由でしょうか?
 
倉田店長:建物の老朽化です、水漏れしたりするので。業者に見積もってもらったら、ゼロから改装しなくてはならないほど大規模な修繕が必要でした。それなら、もっと大きいとこでやり直したほうがいいかな、と。
 
-あ、商売上の問題ではないのですね
 
倉田店長:まあ、正直にいえば大家さんとソリが合わないんですよ!ここにお金払いつづけるぐらいなら他でやったほうがいいやって感じです。このインタビュー、商売人向けのサイトにのるんですよね?だとすれば、大家さんとの関係ってけっこう重要ですよ!
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-もう次の店舗はめどがたっているんですか
 
倉田店長:まだ全然です。昨年の2016年2月に町田で「81番」というラーメン屋もオープンしたので、そちらを経営しながらゆっくり探していくつもりです。長く続けられる場所をみつけたいですね。
 
-やっぱり西荻窪あたりがいいんでしょうか
 
倉田店長:自宅も昨年オープンしたお店も町田なので、その近くがいいですね。通いやすいですから。もともと西荻窪に縁やゆかりがあったわけじゃないんですよ。やることがやることなんでメディアにひろってもらわないとどうしようもないと思ってたんで、このお店に関してはなるべく都心部に近づきたかったんです。
 
「1人でやるから狭くていい」と店舗探しをしていたら、この物件が見つかって。もともと焼き小籠包の店だったものを居ぬきで借りてます。それがたまたま西荻窪だったんです。いまなら知名度が広がってますし、賭けにはなりますが町田でもやれるかなと思いますね。
 
-次の店では「これはやらない」って決めてることはありますか?
 
倉田店長:うーん、より研究してパイナップルラーメンを美味しくしようとは思わないですね。ラーメンの味は変えない。ただ、内装とか居心地のよさは追及して、そこにはお金をかけたい。
 
-どんな内装ですか?
 
倉田店長:パイナップル感をもっとだしたいんですよ。ラーメン屋には見えないお店にしたい!

「面白さ重視」パイナップルラーメン「パパパパパイン」の生き残り戦略

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-そもそも、なぜパイナップルラーメンなんですか?
 
倉田店長:パイナップルが特別好きなわけじゃないんですよ。自分で「おいしい」と思って出してるわけじゃないんで。おいしさよりも面白さ重視です!面白くてそれなりのものが出せればいいなと。
 
-おいしさより面白さとはおっしゃいますが、このラーメンすごくおいしいですよね
 
倉田店長:はじめは「おいしいね!」って言われるとショックだったんですよ。「いや、別においしくはないだろ!」って。でも、それだとリピーターがつかないので、リピーター獲得のためにラーメンっぽいラーメンを作ろうとパイナップル海老塩ラーメンを開発しました。パイナップルの味はもちろんしますけど、エビ油を効かせてるんでラーメンっぽいんですよ。
 
開店当時からパイナップルラーメンの味も変わってますよ。最初はもっとパイナップルでしたから。パイン汁の割合は当時から4分の1なんですけど、ダシの厚みを強くしてます。じょじょにパイン感を減らしていってます。
 
-もともと大勝軒で修行されてたんですよね?
 
倉田店長:アルバイトですけどね、フロムエーで募集してたので。本格的に修行したのは高田馬場の渡なべです。そこでいろんな限定ラーメンをつくる機会があったんです。わたしの担当で変わったラーメンも作りました。そのとき「パイナップルでいこう」と決めたわけです
 
-ちゃんとしたラーメン屋で修行して、正統派で勝負することもできましたよね。なぜ変わり種路線にしたんですか?
 
倉田店長:おいしいラーメンなら一通り作れるようになっちゃうんです。でも「これだ」ってやりたいことがない。わたしには1つのことを突きつめていく職人気質がなくて。先輩たちもすごい人たちばかりでかなわないかもしれない。ならば、これぐらい変わったことをやれば目立てるんじゃないか。そういう考えですね。
 
-自分の性格も念頭にいれた生き残り戦略だったわけですか
 
倉田店長:変わり種といってもいろいろ試されてるんですよ。レモンラーメンは昔からあるし、フルーツならインパクト残せるかなと思いました。修行時代に何度か使ったことがあったのでパイナップルにしましたけど、もしかしたらリンゴになってたかもしれないですよ。
 
ただ、店名のゴロはいいでしょ、パパパパパインって。パパパパパフィーからもじったんですけど。
 
-パイナップルラーメンをつくるさいのこだわりってありますか?
 
倉田店長:スープにいれるパイナップルジュースは100%果汁のを使うってぐらいですかね。パインの実は缶づめですしね。
 
-缶づめの銘柄は厳選したんですか?
 
倉田店長:いやいや、たまたま発注したのをそのまま使ってるだけ。途中で一回変えたこともあるんですよ。わたしとしてはたいして変わらないと思ったんですけどね、お客さんたちに「前のほうがおいしい!」って言われました。お客さんの口がこの味に慣れたんでしょうね。
 
-町田で普通のラーメン屋さんもやってますけど、なにがいちばん違いますか?
 
倉田店長:モチベーションが違いますね。こっちは美味しいと思ってやってるわけじゃないけど、あっちは美味しさを追求してますから。エンターテイナーと職人。2重人格のように分けてます。
 
ラーメンとしてはあっちのほうが上ですけど、このパイナップルラーメンと同じだけお客さんが喜んでくれて話題になるお店は作れません。町田の店名「81番」は英語にすると「NO.81」。つまり「ノーパイン」ってわけです。パインがあるからこそ、普通も面白い。2つで1つです。

パイナップルラーメン「パパパパパイン」のメディア戦略

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-開店時から順調だったんですか?
 
倉田店長:お店をはじめて半年間は絶望してました。とにかくお客さんが来ない。オープン景気を見込んでたんですよ。「変な店ができたからとりあえず行ってみよう」ってなると思ってたんですけど、警戒されちゃってぜんぜん来ない。口コミみても悪い評価が多かったですし。正直なところ、他の物件を探しはじめてました。
 
-「本気だせばうまいのも作れるのに」って気持ちもあるでしょうし、悔しいでしょうね
 
倉田店長:人が来ないと「なんでこんなことやってんだろ」と思っちゃいますね。
 
-何をしたらメディアが反応しはじめたんですか?
 
倉田店長:最初はたまたまです。「やっちまったレジェンド」ってテレビ特番でパイナップルラーメンが取り上げられたんです。テレビに出ては客足が増え、しばらくするとまた落ちるを繰りかえしてました。つねにメディアにでれるよう、話題になる仕掛けが必要ですね。
 
-具体的にはどんな仕掛けですか?
 
倉田店長:パイナップルラーメンも徐々に慣れてきてしまうので、定期的に期間限定ラーメンを出してます。たとえばキウイラーメンとか、2月にやってるチョコラーメンとか。常にそういうのを出して、変わったラーメン屋として話題をつくってます。そのラーメンも素材の味がするかどうかがポイント、美味しいかどうかじゃないんです。
 
-一番反応があった限定ラーメンはなんですか?
 
倉田店長:やっぱりチョコラーメンですね。毎年定番になってるぐらいですから。これはかなりチョコですよ、タンタン麺仕立てなので甘辛い。リピーターも多いですし、僕自身もこれは好きですね。
 
-最後に、これから商売をはじめる人に伝えたいことってありますか?
 
倉田店長:なにが起きても自分の責任だとおもえる人じゃないと難しいですね。運とかももちろんあるし、失敗するか成功するかは自分次第。「それでもやるんだ!」っていうやる気が必要です。
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◎取材協力:「パパパパイン」
住所:東京都杉並区西荻南3-12-1
アクセス:西荻窪駅から徒歩2分
営業時間:11:00~23:00/日曜・祝日11:00~20:00

 
 

この記事を書いた人

◎取材・文:松澤茂信 「東京別視点ガイド」の編集長および観光会社「別視点」の代表。各種専門家をガイドに、体験型タモリ倶楽部みたいなツアーを月5~6本運行してます ◎撮影:齋藤洋平(Instagram) 観光会社「別視点」副代表。観光カメラマン。

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