事業に失敗した経営者の話と「コンプライアンス」の重要性について

ニアセ寄稿

 
僕は26歳から会社を経営しております。現在も一応、法人は残っているので、今年で6年目になるわけです。色々なことがありました。事業が5年続くというのは、実のところを言いますとかなりレアケースです。ちょっと調べてみたら、5年続く会社は15%くらいみたいですね。でも、実を言うとこのデータ怪しいと思います。というのも、僕だって現在も法人は生きているんですよ。事業がもう動いていないだけで。このデータ上、僕は「生存」にカウントされていると思います。
 
もちろん、法人は維持費がかかりますから休眠や解散を選ぶ人も多いと思いますが、様々な便宜の問題で事業が終わっても存続させることが多々あります。大量に赤字積んであったりもするし、リベンジを志す人もいるでしょう。僕もそのケースです。たまに「借金玉社長」って呼ばれると「勘弁してください」という気持ちになります。まぁ、そんなわけで企業生存率は5年で15%より大分低い、というのはほぼ間違いないと思います。しかも、これ「法人」での起業に限っての数字ですからね、なんだかんだお金のかかる法人登記をせず、個人事業で起業するケースだって多々あります。そちらの生存率も、まぁ高くはないでしょう。
 
同期に起業した若手連中は、もう連絡がつく人間がほとんどいません。自分の成功を1ミリも疑わなかった皆さんが、どんどん消えていきました。しかも原因は「事業の失敗」ばかりではないんですね。突発的に悲惨な出来事が起きる会社が大変多かった。そういうわけで、悲惨な事態に遭遇した企業経営者のケースを僕が知る限り書いてみようと思います。

持ち逃げ

会社を経営している皆さんにとってはあるあるだと思いますが、本当に多いですよね・・・。僕の周囲でも数件発生しました。そのまま即死した会社もありました。創業期の会社のお金の管理というのは、往々にして杜撰です。しかしこれ、つまるところ仕方ないことでもあるんですよ。というのも、プレイヤーに決裁権限を与えず都度確認を取るということは、イコールで社長の業務負担が増えるということです。「信用するしかない」という悲しい現実があります。プレイヤー社長の会社なんかでは、「社長が会社のカネについて全く把握できていない」なんてこともよくあります。でも、それはそれで合理的はあるんです。カネの面倒はカネの面倒を見るのが得意な人間がやればいいわけで。
 
ある日突然、口座の金がスっと消えます。また、諸事情(大抵ろくな事情ではない)から現金を金庫なんかに突っ込んでいた場合もスッと消えます。同時に人間が消えます。起きた時点で全損を覚悟しましょう。回収はほぼ不可能です。また、刑事事件にもなかなかしにくかったりします。まぁ、想像はつきますよね。口約束で全てが進展しがちな創業期の会社におけるお金の権利なんて、大抵がグチャグチャです。果てしなく裁判で争うことになるでしょう。言った言わないあいつが悪い、俺は被害者だ、想像出来る限り最悪のことが全部起きます。
 
「金を盗まれたんだ」と主張しても支払い日は待ってくれませんし、従業員は給料の遅配を許してはくれません。そして、盗んだ人間を処罰するにもお金がかかります。刑事事件にするということはつまるところ、相手の弁済能力を下げる結果にすらなります。民事で泥沼の戦いをしても、得をするのは弁護士だけです。現金の持ち逃げカマす奴に賠償に充てられる資産なんてあるわけもない。そして、これは「やられた!」という社長あるあるなんですが、「俺にも後ろ暗いところが自分にもあるから公式に裁けない・・・」というあれが大変にありがちです。詳細とか語らなくていいですよね。コンプライアンスは最終的に自分の身を守るためにあるということです
 
創業直後の会社は大体コンプライアンスなんてガン無視しています。「何それ?食えるの?」みたいな話だと思います。それはそれである意味仕方ないのですが、いざ大問題が起きた時に大変なことになります。風向きがいいときはナアナアでやっていけた相手も、いざ大問題が起きると容赦なく殴りかかって来ます。
 
創業当初から、「とにかく身綺麗にする」ということは心がけた方がいいでしょう。会社の経営者というのはやろうと思えば様々なあまり順法的ではない小細工が出来ます。しかし、その小細工に他人を利用していた場合、そこには回避不能のリスクが出てくるということはとにかく認識しましょう。本当に生死を分けます。「表沙汰にしたら俺も社会に怒られてしまう・・・」みたいなパターンは本当に辛いと思いますが、自業自得と言う他ありません。
 
「あれをこうすればばめっちゃ良い感じじゃん。問題はバレたら怒られることくらいで」みたいな発想、経営なんかしているとどんどん出てくると思います。コンプライアンスと100回唱えて悪魔を振り払いましょう。部下が金を持ち逃げしたのに怒ることすら出来ない。そういう羽目になった社長、いっぱいいます。

横領

これもまた実にあるあるです。例えば飲食店経営で他人を雇ってお店を任せた場合これを完璧に防ぐ方法は無いと言っていいと思います。ラーメン10杯分の原料で11杯作って、1杯分の売り上げをポケットに入れればいいだけのことですからね。経営者が現場に精通していない場合なんて、やろうと思ったらナンボでもやり放題だと思います。「誰かを雇って、あるいは出資して飲食店をやろう」というタイプの人はこの点について考えておくことが大事です。
 
横領は実際のところ思った以上に簡単です、特に創業初期の会社にコアメンバーとして入っているのならば、やろうと思ってやれない環境の方が珍しいでしょう。つまるところ、横領などの不正が不可能な状況を作るコストが高すぎてやれないという話にもなります。100万の横領を防ぐためには300万かかってしまう、そういうことはよくありますよね。
 
また、横領に関しては社長自体がやることもよくあります。出資者が会社のお金の流れに明るくない場合なんて完全にやりたい放題ですよね。誰が住んでいるのかよくわからない社宅、出社してこないアルバイト、何をしているのか誰にもわからない役員、御社にも存在するのでは?色々書類を眺めていると人類の悪さが見えてくることはよくあります。出資を考えている皆さん、この点はとにかくよく見ておいた方がいいですよ。
 
また、横領というのは往々にして会社が好調の時に起こります。毎月赤字を垂れ流しているような状態なら流石にお金のよくわからない動きがあれば気づきますが、ガンガン利益が流れ込んで来ている時にそれに気づくのはとても難しい。事業自体は好調なのにこのような事態が社内で発生し、そのまま空中分解してしまった会社もありました。最終的には刃物などが登場し警察が介入したと聞きますが、本当に不幸でしたね・・・。
 
ちなみに、横領に関しても「表沙汰にしたら俺も怒られるから表沙汰に出来ない・・・」という話がよくあります。横領ブチかまして退職して、元気一杯次の横領が出来る会社を探しに行く人類は存在しますよ。

社員が全員辞めた

社員が全員辞めてしまった」というお話、聞いたら笑っちゃいますよね。僕も起業する前は「どんだけアホならそんなこと起きるんだよ」って思っていました。しかしですね、創業初期の会社では普通に起きます。想像してみてください。わりと儲かっている社員5人の会社、そこから5人の社員をまとめて引っこ抜いたら、すぐに儲けが出る会社がやれたりするわけですよ。そりゃ引っこ抜きますよ。
 
創業初期の会社というのは人材の奪い合いです。市場に「すぐに利益を出してくれる人材」なんてそんなに転がっていません。転がっていてもとても値段は高い。社長さんたち「他社の有能なあいつ欲しいなぁ・・・」と思ってコナかけたこと絶対ありますよね。正直に言うと、僕もあります。自社の人間に他社からコナかけられたらブチギレてましたけど、コナかけたことはある。しょうがないじゃない、経営者だもの。
 
有能な社員を囲っているが経営者への不満が蓄積している会社、というのはたまにあります。また、社員は有能なのにも関わらず経営方針がイマイチで利益が出ていない(社員に十分な給与を払えていない)会社なんてのもあります。そりゃ奪い取りに行きますよね。有能な人間というのは現金が落ちているようなものです。拾わない手はない。
 
有能な人間を雇うのは難しいですが、有能な人間を雇い続けることはもっと難しい。更に、有能な人間は当然ながら「俺が経営する側に回ればいいじゃん」という発想にも至ります。具体的に言うと、「社員全員引き連れて退職して全く同じ事業内容の会社興せばいいじゃない」というのは大変正しいのです。「この会社に最も必要ない人間は社長ですよね」というお話です。俺が興した会社から俺が追放された、そういう悲しい物語は本当にいっぱいある。
 
また、創業初期の会社というのは当然ながらメンバーにガンガン裁量を振ります。会社にシステムがないんだからそれしかありません。そういう場所では人間がどんどん成長します(さもなければどんどんリタイアします)。当たり前ですよね、仕事しているわけですから。他人がほどよく育てた果実をベストなタイミングで収穫するの、やりたいに決まっていますよね。しかも、大手から引き抜くブランド人材と違って給与も安く抑えられますし。これらの構造的圧力を上手いこと捌くことが出来なければ、「コアメンバーが全員退職した」なんて事態は、むしろ起こって当たり前です。

どうしましょう?

ちなみに、これらのケースは「事業が上手くいって収益が上がっていたとしても尚起きる」問題です。こういう問題以前に「そもそも事業が上手くいかない」という話があります。これから創業を考えている皆さん、是非とも徹底的に考え抜いておいた方がいいと思います。考え抜いて考え抜いた末に「対策はない、問題が起きた時に困ろう」という決意に辿り着くとしても。心の準備だけでもあれば大分マシです。
 
これらの問題の発生を防ぐことはもちろんできます。やり方はいっぱいありますよね、持ち逃げや横領を防ぐ方法はありますし、社員の退職や引き抜きを防ぐ方法だってないわけではない。では、これらを有限の資源の中でやっていくにはどうしたらいいのか?というお話です。へこんだアルミ缶を元に戻すような話です。あっちを叩けばこっちが出っ張る。完璧を目指して頑張った結果、見事社長が過労死という話もあります。
 
話にオチがなくて恐縮ですが、この話の一番大きい教訓はコンプライアンスだと思います。コンプライアンスを守らない者はコンプライアンスに守られません。「俺は上手くやるから大丈夫」という人もいるでしょうし、それはもう止めませんが、そこまで思えない人はとにかく身綺麗にしておくことが身を守る上で最も重要だ、という点を覚えておいて欲しいと思います。
 
そして、連絡が完全につかなくなってしまった皆さん、僕はとても寂しいです。いつかまた、どこかで酒でも飲み交わしましょう。僕はまた頑張ります。やっていきましょう。

 
 

1985年生まれ、早稲田大学卒業後金融機関勤務を経て起業するが大失敗。
現在は雇われ営業マンをやりながら、ブログを書いたり
ツイッターをしたり、フリーライターをしたりしています。
発達障害(ADHD)持ちです。そちら関係のブログもやってます。
Blog http://syakkin-dama.hatenablog.com/
Twitter https://twitter.com/syakkin_dama

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