「プロ大道芸人・ジョー次」の日常。お金とお客を集める話。

ニューアキンド

 
公園に歩行者天国、デパートの屋上、ロックフェスまで、さまざまな場所でパフォーマンスを見せ、人々を楽しませる大道芸。その大道芸の収入だけで生活している「プロ大道芸人」のジョー次。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

日本では数少ない「プロ大道芸人」のジョー次にインタビューをおこなった、柔道場で。

 
 
 
 
 

大道芸人になろうと思った理由

 
―プロの大道芸人をやってらっしゃるということで、他に仕事はせずにこれ一本で生計を立てているということでしょうか?
 
ジョー次:そうです。数年前まではアルバイトもしていたのですけど、最近は全くそういうのやらずに、パフォーマー1本でやってます。地元の静岡を中心に活動しています。

 
―大道芸に興味を持ったきっかけは?
 
ジョー次:毎年、「大道芸ワールドカップ」というイベントを地元の静岡でやってるんですよ。中学2年生の時にそれを友達に誘われて見に行ったんです。そのイベントにジャグリング専門ショップが出店していて、その体験コーナーで初めて中国ゴマに触りました。
 
当たり前ですけど、全然できなくて。でも、お店の人が親切にやり方を教えてくれて、それがすごく楽しかったんです。その場で思わず一番小さいのを一つ買っちゃいました。小さいのは扱いにくいんですが、それが一番安くて。それで頑張って練習し始めたのが最初ですね。
 
人前で披露することにハマったのは高校生のときです。学校内でやったパフォーマンス大会にジャグリングで出て、すごく盛り上がったんですね。自分が何かをやって盛り上がるって状況にハマっしまいました。
 
―学校を卒業してすぐ大道芸人になったんですか?
 
ジョー次:いや、中学、高校、専門行って就職して、2年少しやってから、こっちにきましたね。自分が好きなもので生活できたら一番それがいいんだけど、そこに向けて努力してこなかった自分に気づいてしまって。ジャグリングが上手な人たちが陰でものすごく努力していることも知って、自分もちゃんとやってみようと向き合ったのが7年前ぐらいです。

大道芸人の数

 
―今静岡で大道芸人だけを商売にしている人ってどのくらいいるんですか?
 
ジョー次:全国だと1,000人くらい、静岡だけだととても少ないですね。10人はいないと思います。静岡の大道芸ワールドカップ出演者も、ほぼ県外の人ですね。働きながら土日だけパフォーマンスやるっていう人であれば、もう少し増えますが。
 
―何県の人が多いんですか?
 
ジョー次:東京、神奈川が多いですね。あとは名古屋とか愛知県、大阪。ライセンスがあるところは盛り上がってる感じがしますね。
 
―ライセンスって?
 
ジョー次:自治体が発行する「大道芸ができるライセンス」というのがあるんです。例えば東京都公認の「ヘブンアーティスト」。都内には上野公園や葛西臨海公園、お台場とかいろいろポイントがあって、そのライセンスを取得するとそこで大道芸ができるようになります。仙台の「まちくるパフォーマーズ仙台」、大阪の「大阪パフォーマーライセンス」とかも有名ですね。いずれも審査があるので、それをパスする必要があります。

大道芸人の日常


 
―普段はどこでパフォーマンスをしているんですか?
 
ジョー次:メインは静岡県内ですけど、県外も。北は北海道で南は愛媛県まで。少し中途半端ですね(笑)。海外も合わせると2016年に台湾とイタリアに行きました。台湾ではアジアカップというのに出たり、マジックのコンベンションのゲストステージに出させていただいたりしました。イタリアでは大道芸のフェスティバルに出演をしました。土日でイベントが入ってないときは、投げ銭でできる場所で大道芸をしてますね。

 
―イベントはオファーが来るんですか?
 
ジョー次:オファーを頂くときもあれば、自分から申し込むこともあります。オファーを頂くのは静岡とかその近県が多くて、遠方からはあんまり無いですね。交通費とか高くなっちゃうからだと思います。
 
―厳しい世界ですね…。ゲリラ的にパフォーマンスを行うことはあるんですか?
 
ジョー次:ゲリラでやっている方もいますが、僕の場合はきちんと許可を取っています。静岡市には昔から「しずおか大道芸のまちをつくる会(通称「しまる会」)」っていうNPOがあるんです。その会では静岡の伊勢丹前の十字路と、商業施設のエスパルスドリームプラザ、日本平動物園。その3カ所で許可を取ってパフォーマーが大道芸できるように、予約を受け付けているんです。今僕はその会の代表もやらせてもらってます。

 
ー話全然変わるんですが・・・そのバッグ、かっこいいですね?
 
ジョー次:あぁ、これ使い勝手すごく良いですね。
 
 
道具も入るんです。
 

お客を集めるコツ

 
―大道芸を見てる人って最初からそれを目的に来るんじゃなくて通りがかりの人が多いと思うんですが、そんな人たちを立ち止まらせるコツはあるんですか。
 
ジョー次:まずはワイヤレスのマイクで喋って集めます。「今から始まりますよ~」という感じで。それで、なんとなく見てくれそうな雰囲気を持った人、「この人止まるな」って人が分かるので、その人たち中心に声をかけて、「ここまで寄ってもいいですよ」というロープまで寄ってもらいます。

 
―まずは「しゃべり」で勝負ってことですか?
 
ジョー次:はい。でも「しゃべり」はあくまで最初のとっかかりですね。人を集めるためにはもう一工夫必要です。多くの大道芸人さんは自分なりの集客用の小ネタを持っています。僕の場合は「風船ひねり」を使います。
 
―細長い風船をひねるやつですね。
そうそう。あれをいくつか作りながらしゃべります。そうすると高確率で家族連れのお子さんが食いつくんですよ。子供が「見てく~」って言いだせば、しめたものです。
 
ただ、子供だけが楽しんでも、親御さんが「もう行くよ」となってしまうので、親御さんにも「見たい」と思わせる必要があります。そこで、風船をやっている間に「僕は中国ゴマを15年もやっててスキルが凄いんですよ!」「2016年に日本チャンピオンになってますよ」というのをしゃべってアピールして、大人の足を完全に止めにかかります。
 
―それで風船が出来上がったらお客さんプレゼントして、いよいよ中国ゴマと…
 
ジョー次:いや…、ちょっと違うかな…ちょっと生々しい話になっちゃうんですけど…
 
―ぜひ教えてください。
 
ジョー次:うーん…風船つくってその場であげちゃうと、もらった人がそのまま帰ってしまう可能性がありますよね。それを見て他の人も「もらえないんだ」と帰っちゃう可能性があるじゃないですか。だから、プレゼントはしないで、飾っておくようにしてますね。「インスタ映えしそうな場所に置いておきますね~」って。
 
―あげないんですか?節約ですか?
 
ジョー次:いやいや!盛り上げるテクニックです!それに、持って帰っちゃうんじゃなくて、一番盛り上がってくれた人に最後はプレゼントしてますよ。節約とかじゃないです。
 
―やっぱり盛り上がってくれるお客さんが大事ってことですね。
 
ジョー次:そうそう。その盛り上がりを見てまたお客さんが増えていくという感じなので。

 
―じゃあやっぱりサクラを雇って盛り上げたりしてるんですね?
 
ジョー次:そんなことしてないです!でも、最初の方に見始めてくれた人にサクラになってもらうってことはあります。「今からコマを投げてキャッチするんで、わざとらしくでいいんで、盛り上がってもらっていいですか」と声をかけて。「大げさに盛り上がってください!」ってわざとらしくお願いすると、そこで少し笑ってもらえたりもしますし。

お金の話


 
―ぶっちゃけ儲かるんですか。
 
ジョー次:う~ん、「儲かる人は儲かる」って感じですね。危険な芸や、高さがある芸をやっている人は儲かる印象があります。集客面で強いので。とはいえ、危険な芸じゃなくても、この職業だけで生活できる程度には稼げますよ。よく「夢を追ってるんだね」と言われるんですが、そんなことは無いです。しっかり現実を見ています。
 
―収入は投げ銭だけですか?
 
ジョー次:投げ銭だけの時もありますが、出演料をもらう場合もありますね。出演料は無しだけど投げ銭取っていいですよという場所は、予約しても別のイベントなどでキャンセルされてしまうことがあるんですよ。逆に僕から「雨が強いので今日はできなさそうです」と断ることができたり。融通がきく場所が多いですね。
 
「この日この時間に必ずやってほしい。」というオファーを頂くこともあって、そういう時は雨が降ろうが槍が降ろうがキャンセルできない。そのような依頼の場合は必ず出演料を頂くことにしていますね。

今後の目標


 
―大道芸人のプロとして、今後の目標はありますか?
 
ジョー次:年に1回あるジャグリングの世界大会で良い成績をとりたいですね。あとは、今中国ゴマの教室もやっていて子供たちに教えたりしているので、その活動を通して中国ゴマの魅力をもっと日本に広めたいですね。中国ゴマは練習すればちゃんとできるようになるので、「練習したらできた!」という喜びを子供たちに感じてもらいたいですね。
 

実績

■2015年
・台湾ディアボロアジアカップ1ディアボロ(ベアリング)部門 準優勝
・静岡ディアボロコンテスト エンターテイメント部門 優勝
・全日本ディアボロ選手権大会1ディアボロ水平軸(ベアリング)部門5位入賞
 
■2016年
全日本ディアボロ選手権大会 1ディアボロ水平軸(ベアリング)部門 優勝
 
■ライセンス
・ヘブンアーティスト審査会合格 ライセンス取得
・江ノ島大道芸コンテスト 審査員特別賞受賞 ライセンス取得

編集後記

ジョー次さんは物腰こそ柔らかく、ノリのいい青年という雰囲気だが、言葉の端々にプロの大道芸人としての誇りを感じることができた。
パフォーマンスをどこでやるのか、どうやって足を止めさせるか、止め続けさせるか、お金を得るか(投げ銭、出演料)。試行錯誤を続けることで、芸人として生き残ってきたのだ。
 
「夢を追っているわけではない」という言葉があったが、これは決して夢が無いという意味ではない。世界大会での好成績や、中国ゴマの認知拡大という大きな目標を達成するためには、しっかり稼いで自分の生活を安定させる必要がある、ということだ。
 
大道芸と聞いてなんとなくイメージがわいても、「大道芸人」と聞いてパッと誰かの顔が思い浮かぶ人がどれだけいるだろうか。日本ではまだまだ認知されているとは言い難い大道芸人。ジョー次さんの今後の活躍から目が離せない。

 
 

野口さん

商売繁盛を応援するWebメディア・ニューアキンドセンターのセンター長。 もっとエッジを効かせたい、もっとトンガリたい。どうぞよろしくお願いします。

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