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放送作家2年目の僕が出会った、「あるブログ」  放送作家2年目のハシモトコーキです。僕は4年前に熊本から上京し、現在、事務所所属の放送作家をしています。昔からお笑いが好きで、テレビやラジオが好き。憧れの仕事に就くことができて「さぁこれから!」と意気込んでいた矢先のこと、15年先輩の放送作家である細田さんのブログ『ハガキ職人から放送作家、そして廃業へ。』に出会ってしまいました。読めば読むほど襲ってくる迷いのようなもの。「僕はこのまま放送作家を続けてもいいのだろうか?」。   メッセを送ったら返事が来た!  僕はその答えを求めて、Twitterを通して細田さんに連絡を取らせていただきました。すると、細田さんからの返答は「続けたいで続く仕事ではないし、頑張ればどう、ってことでもない。もっと気楽にやった方がいいですよ」。あっけらかんとそう言い放つ細田さんに、他の放送作家とは全く違う空気を感じました。「この仕事には夢がある」「儲かる」「売れたいなら頑張れ」。僕が今まで先輩たちから聞いてきた言葉とはまるで逆。なんなんだこの人は!?細田さんにもっと詳しく、お話を聞いてみたい。というわけで、今回の記事を企画しました。   お話スタート。まずは「放送作家って何をする人?」 細田さん、今日はよろしくおねがいします。 よろしくお願いします。 「放送作家」とはどんな仕事なのか。あらためて、細田さんからご説明いただけますか? ざっくりいうと、番組の「台本を作る」お仕事です。 そうなりますよね。 ざっくりとしか言いようがないんですよ。会議や打ち合わせに参加したり、企画案を考えてプレゼンをしたり、収録現場ではフロアディレクター※みたいな役割を頼まれることもあります。それらすべてが「台本を作る」ことに関連しているので「どんな仕事?」と聞かれたときは、こう答えるようにしています。 ※フロアディレクター…収録現場で、カメラの横から出演者にカンペなどで指示を送る役割。 特に細田さんの場合は、いろんな媒体でお仕事されていますよね。 レギュラーではネット番組とテレビ、ラジオもやらせていただいています。あと、最近は広告の案件にも関わっています。 すごい!それだけ幅広くやっている人は珍しいと思います。 すごくはないですよ。確かに、ラジオならラジオだけをやる、テレビならテレビだけをやるという作家さんが大半ですが。私の場合は「これ!」と未だに定まらなくて、結果的にいろいろやっている状態です。   テレビ、ラジオ、ネット…放送作家が目指すべき場所って? 現在、放送作家の主戦場がテレビ、ラジオ、ネットだとして。僕たちのような若い作家は今後、どこを目指すべきなんでしょうか? 目指す目指さないではなく、この仕事は巡り合わせです。「テレビをやりたい!」と言って、やらせてもらえるわけでもなく、オファーをくださる人がいて初めて成り立つ仕事なので。一つ言えるとすれば、依頼をいただいた時に最低限「それに応えるスキル」を備えておく必要はあると思います。要はテレビもラジオもネットもどれにでも対応できるようにしておけばいい、ということです。 それって難しくないですか? それぞれ特徴が違うだけで、基本的にはやることは同じです。私はラジオからこの業界に入った人間なので、そう感じるのかもしれませんが、ラジオの原稿が書ければテレビもネットの台本も書けると思います。ラジオの音声に映像(動き)が付いたものがテレビ、それに(視聴者との)双方向性を加えたものがネット番組と考えれば、それほど変わりはないです。   放送作家ってどうやったらなれるの? 話は少しそれますか、放送作家を目指す人は細田さんのように「ハガキ職人から放送作家」のプロセスをイメージする人が多いと思うのですが、それについてはいかがですか? 私がそれで入ったのはもう17年も前ですからね(笑)。今そのプロセスを踏もうとするのは、かなり遠回りだと思います。だって、放送作家に「なる」ということだけなら、今すぐに誰にでも出来るじゃないですか。例えば、ハシモトさんのように作家の事務所に連絡して所属させてもらうとか。この業界、基本的に的には来る者拒まずですよね? はい。僕の場合は事務所に企画書を送って、面接をして入りました。 なるのがこんなに簡単な職業は、他にないと思いますよ。名刺を作ってしまえば「はい、放送作家です」ってことだし。つまり、なれるかなれないかではなく、やるかやらないか。実際にやってみた上で向いてるかどうかを見極めて、続けるか続けないかを自分で判断する。放送作家に限らず、仕事ってそういうものだと思います。   放送作家には、先輩も後輩もない!? 細田さんは、(どこにも所属せず)ずっとフリーで活動されているんですよね? そうですね。仕事を始めてしばらくした頃、いろんな事務所さんから(所属の)お誘いがありましたけど。所属すると、どうしてもその中で先輩・後輩という関係が生まれてしまって、面倒くさそうじゃないですか(笑)。 確かに。 そもそも、放送作家に先輩・後輩の感覚って必要ないと思うんです。もちろん、長くやっている人に対してはリスペクトの気持ちはあります。しかし、仕事上で意見をぶつけ合う時、そこを気にしてモノが言えなくなってしまったとしたら、それは弊害でしかない。 それは下の人に対してもそうですか? 私は、ハシモトさんのことを「後輩だ」と思う感覚もないですよ。 やめてください(笑)、だいぶ後輩です。 例えば、私とハシモトさんが同じ会議に参加したとして。私が先輩風を吹かせてハシモトさんの意見を押さえつけてしまったら、そのアイディアの可能性が一つ消えてしまう。それって、全体から見ると損ですよね。 そこまで考えますか。 何年やっているとか、過去にどんな番組をやって来たとか全然関係なくて、今の時点で何が出来るか。案件に対して常にフラットな立場でアイディアを出せるからこそ、放送作家という立場に価値があると思います。   若手作家あるある。「雑用仕事」という名の「雑用」は断るべき? 僕ら若手作家には「修行」といった名目で、雑用仕事が回ってきます。僕は極力そこを避けたいのですが。かといって、そういった仕事を断るにも勇気が要ります そういうの、あるみたいですね。「こういう人(出演者候補)、探してきて」とか「こういうお店を探して」とかいう、いわゆるリサーチの発注がよくくると聞きます。 まさに、それです。 ハシモトさんは今「雑用仕事」と言いましたけど、雑用と仕事ってはっきりと線引きできると思うんです。ギャラが支払われるのであれば仕事だし、無いなら仕事ではない。 そういう発注には、たいていお金の話は書かれていないですね。 つまりはそういう事。発注元がリサーチ会社なりに支払う予算がないからこそ、たくさんいる若手作家たちにバーっと発注がかかるわけで。要は足元を見られているということです。「修行」に限らず「勉強になるから」とか、「コンペ」や「オーディション」もそう、立場が上の人に圧倒的な有利がある言葉に対しては、見極めが必要だと思います。 細田さんが若い時は、どうしてたんですか? 全部、断ってました。「ギャラが出ないなら、仕事じゃない」とか言って。生意気な奴ですよね(笑)。 出来ることなら、僕もそう言いたいんですけど。これを断ったら先が続かないんじゃないか、とか思ってしまいます。 そもそも、そういう発注をしてくるのは、こっちを一人の仕事相手と見なしていないわけで、今後ハシモトさんに(正式な)仕事を頼んでくるとは考えにくいですよね。「避けたい」という気持ちがはっきりしているのなら、さっさと断って、別のことに時間を割いた方がいいかもしれません。   放送作家として成功するにはどうするべきか? ずばり、放送作家として成功するには?稼げるようになるにはどうしたらいいですか? 何を持って成功とするか、だと思います。自分はまだ、自分の中で「成功」したと思える位置にはいませんし、稼げているとも思っていません。私が若手の頃は、エンタメ業界もまだこれほど縮小していなくて、放送作家は「楽で」「稼げる」仕事でした。でも今は、それなりに稼ごうとすると、それなりに大変ですよ。だからと言って、あくまで放送作家は誰かから依頼されてはじめて成立する仕事。自分であれこれしなきゃと、もがいたところでそれほど意味がない。 そんな中で、細田さんが心がけていることがあれば教えてください。 常に機嫌よくいる、ということですかね。あとは常に元気でいる、とか。 シンプルですね。 逆にいうと、それくらいしか出来る事がないんですよ。放送作家は才能やセンスが問われるような仕事じゃないし、ある程度の場数を踏むとスキルは大体みんな同じになる。そんな中で「この人と一緒に仕事がしたい」と思ってもらうには、いろんな2択で勝つしかない。例えば、見た目も技術も全く同じで「機嫌がいい人」と「機嫌が悪い人」がいたら、誰もが「機嫌がいい」方に仕事を頼みませんか? 機嫌か…。考えたこともなかったです。 最近は、日々を正しく生きることも意識しています。電車でおばあさんに席をゆずる、とか、赤信号を無視しないとか。小学校で習ったようなことを今さらになってやってますよ(笑)。放送作家の仕事の依頼って、ある日突然くるじゃないですか。私の場合はLINEやメールでくる事が多いんですけど、新しい仕事が入ってきたときに「日頃の行いがよかったから、このお仕事をいただけたのかも」とか勝手に思うと、楽しいですよ。   放送作家は「看板」が武器になる!? では、仕事の上で心がけていることは? 人を相手に仕事をする以上、「何者か」を早い段階でお伝えする努力はしています。 どういうことでしょうか? 社会の中で、仕事をするには「自分は何者か」ということを相手に伝える必要があります。初めましての時に、名刺交換をするのもその一つ。しかし、私の感覚では「放送作家」という紹介だけではまだ足りない、プラスアルファが必要だと思っています。私は、ありがたいことに「ナインティナインのオールナイトニッポンのハガキ職人から放送作家になった」という過去があって、どの現場に行っても、特に同世代の人から「ラジオ聴いてました!」「あの顔面凶器さんですか?」なんて言ってもらえるんです。 細田さんはかつて「顔面凶器」というペンネームで、ハガキ職人をされていたんですよね。 正直いうと30代前半ぐらいまでは、これがコンプレックスでしかなくて。いく先いく先で「この作家さんは元ナイナイANNのハガキ職人で…」と紹介されるたびに、「昔の話、持ち出してんじゃねーよ」と内心イラっとしたりして(笑)。 はたから見ると、とても羨ましいことですが。 去年、『ハガキ職人から放送作家、そして廃業へ。』というブログを書いて、自分のこれまでのことを見つめ直すことが出来て。新たな気持ちで仕事に取り組む中で、今ではとても大切なものの一つです。「この作家さんは元ナイナイANNの…」と、誰かが私のことをそう紹介してくださるだけで、紹介された側は「なら大丈夫ですね」「(この仕事を)安心してお任せできますね」となる。もちろん、言っていただいた以上、その期待に応えなければという別のプレッシャーは生まれますが。こんなにありがたく、幸せなことはないですよ。 細田さんにとって、一つの看板になっているこということですね 話を戻すと、これからは「放送作家」という肩書きにプラスして、仕事相手を安心させたり喜ばせたりする、「この人と一緒に仕事をしてみたい」と思わせる何かは必要になってくると思います。「SNSのフォロワーが10万人います」とか「並行してyoutuberやってます」とか、「お豆腐屋さんもやってます!」というのでもいいと思います。 これからは、放送作家1本じゃダメなのか… そういうものがあるに越したことない、という意味です。私自身も一つでも多く、新たな看板を見つけたいと思っています。 最後に、「放送作家2年目の僕に、17年目の細田さんから何か一言」いただけませんか? 特にないなぁ(笑)。ただ、同じエンタメ業界の端っこに関わる者として「自分以外の誰の言うことも聞くな!」ということだけはお伝えしておきます。この業界、もとよりこの世の中、本当の正解を知っている人なんて誰一人いないと思うんです。「お前は間違ってる」と上から怒られたり、批判されたりすることもあるでしょうけど、何が本当に正しいのかは誰にも分からない。これを突き詰めて行くと結局、自分が正解だと思えることをやっていくしかない。少なくとも、他人の意見に振り回されて自分の可能性を狭めてしまうことだけは、もったいない。「自分が思うまま、好きなようにやればいい!」ということですかね(笑)。 細田さん、ありがとうございました! こちらこそ、楽しかったです。   編集後記  現役の放送作家である二人の会話。いかがでしたか?放送作家とは「台本を作る人」。ただ、その働き方、自分ルールは千差万別。その中で、ベテラン作家である細田氏が心がけていることは、まず「自分は何者か」を伝えること。そして、先輩後輩関係なく相手をリスペクトし、いつも機嫌よく、日々を正しく生きる。放送作家という特殊自営業ですが、大切な事は会社で働く我々と同じということですね。ハシモトさんにはどう響いたでしょうか。新ジャンル「お豆腐屋さんの放送作家」が誕生するかもしれませんね。    細田さんはあのナインティナインのオールナイトニッポンでハガキ職人から放送作家になったというご経歴があります。番組のヘビーリスナーの1人としては、今回の企画を通してあの「顔面凶器」さんが今も放送作家として元気に活躍されていることを知ることができて非常に良かったです。...

起業家失格を乗り越えて。気づいた「成功者の特徴」3つ  失敗してきた。人生全般に…なんていうと、太宰治の追っかけになってしまう。ただ起業に関して言えば、失格もいいところだ。    私は教育と葬祭の2つの業界で起業を志し、「客が来なくて自滅」と「創業メンバーが揉めて解散」のわかりやすい失敗をした。それでも懲りずに3社目を動かしている。だがこれだけコケてきたおかげで、成功者と敗者の分かれ目は見えてきた。    ここの記事では、成功した人間だけがやっていて、私ができていなかったことを3つピックアップし、1つずつ解説する。   成功者の特徴① 「必要なアドバイス」に耳を傾ける  名だたる起業本には「人の意見ばかり聞いてはならない」とよく書かれている。ある意味では事実だ。財務知識が皆無な彼女・彼氏へ経営方針を聞くのはよろしくない。あなたが不幸になればいいと願っている同業者ははねのけたほうがよい。    一方で、自分より優れた人のアドバイスを無視するのが失敗者の典型例だ。誰から助言を聞くべきか考えるとき、冷静なときは我々も「自分より優れた人がわざわざ言ってくれてるんだから、取り入れよう」と思える。だが、いざ経営が厳しいとき、助言をしてきた相手が自分より年下ならどうか。学生ならどうか?自分よりすぐれた専門知識を持っているとわかったとき、頭を下げられるだろうか。   成功者は、頭を下げられる。敗者にはそれができない。    また、「誰のアドバイスを聞くべきか」を選別するのは最も重要なポイントだ。敗者は「好きな人」からアドバイスをもらおうとする。高校時代から尊敬している先輩。会社の元上司。親。彼らが一度も起業なんてしたことがないにも関わらず、感情で人を選んでいるのだ。    このミスを犯さず「自分よりその分野で成功している人」をアドバイザーに選べたとしよう。飲みに連れていってもらい、頂いたアドバイスをすぐに実行できるだろうか?多くの人は「はぁ」と受け流すのではないだろうか。    ある方から、起業相談をいただいた。私にできる範囲でお応えしたが、数か月たっても変化がない。「どうされてますか?」と聞いても「いやあ、ためになりました」とお礼が帰ってくるばかりだ。    そこで彼と飲みに行き、詳しく話を聞いたところ「自分は頭がいいと思ってこれまで生きてきた。だから自分がもの知らずだと指摘されるのがどうしても耐えられない」とおっしゃられた。私も決して頭がいいわけではないが、もし自分より専門性が高い人のアドバイスを同様の理由で無視するなら成功者にはなれまい。    成功者は、助言をすぐ実行する。このバーに通えばよくしてくれると言われれば通い、営業へ行けと言われれば100件電話する。どんな助言も、実行せねば成功できない。成功者はアドバイスを聞いてから実行するスピードが、とてつもなく早いのだ。   成功者の特徴② 大企業から学ぶ  私がかつて葬祭事業を立ち上げたとき「大企業の時代は終わりだ。これからはベンチャーが世界を席巻する」と思っていた。とんだ勘違いだった。    数珠、骨壷、霊柩車、卒塔婆……あらゆる道具でイノベーションを狙ったベンチャーが、葬儀場から火葬場まで全部揃える馬力のある、総合商社の参入で木っ端みじんになったのだ。私が足しげく営業をかけて広げてきた努力は水の泡となった。なにしろ、営業をかけた寺院自体が経営危機に陥ってしまったからだ。    成功者は大企業から学ぶ。彼らのもつスケールへ経緯を払う。大企業がリターンを考えると手を出しづらいゾーンから手を出していく。一流企業に登りつめたメガベンチャーを見れば一目瞭然だ。DMM.com、メルカリ……どれも最初は大企業がひるむジャンルへ打って出た。そして徐々に自浄作用を働かせ、一流企業へ転身していったのだ。   成功者の特徴③ 「誰から嫌われるか」を決めている  「いい人」が起業をすると、誰からも好かれたがる。消費者、出資者、株主、取引先。しかし思い切った施策は必ず、このどれかから反感を買う。ある社長は、経営難に陥っていた。そこでコンサルタントが入り、すぐに人件費が高すぎることに気づいた。世間の相場より1.5倍もの賃金を払っていたからだ。    だが、それを指摘すると、経営者は首を横に振った。「これまでずっとお世話になった社員だから、これくらい払わなくては」。その結果、社員の給与が足を引っ張り、研究開発へ資金を回せずにいた。そうすると良い製品は生まれない。巡り巡って人件費を払えなくなる。    「いまは苦渋を飲んでくれ。そうすればだれもが納得する成果を出せる」と、反発を抑え込み、時には悪役となるのも社長の役目だ。社員のことだけを見て会社を回すと、めぐりめぐって消費者や株主をないがしろにしてしまう。そうするとモノが売れなくなるから、最後は本丸ごと潰れてしまうだろう。    最近だと、日大の不祥事がわかりやすい。日大アメフト部が反則行為を行ったとき、とっさに日大は組織のナンバー2だったアメフト部監督を守る方へ動いた。しかし日大の資金源は助成金を出す国と学生だ。この2社へ背を向けて社員を守った結果ブランドイメージを傷つけ、売上ダウンへの道を歩んでしまった。    成功者は、好かれるべき相手へ優先順位をつけられる。取引先を怒らせてでも、圧倒的な売り上げで黙っていただくしかないこともある。株主を怒らせてでも、売りを取るべきときがある。社員に対しても然りである。   まとめ  成功者がやっていることは、とてもシンプルだ。助言をすぐ実行し、大企業へ敬意を払い、好かれたい相手を選ぶ。たったこれだけのことをするのが、いかに大変か。私自身もまずはアドバイスへ忠実に従うことで、次こそは成功への切符を掴もうと思う。...

岐阜県最大の歓楽街「柳ケ瀬」  岐阜県最大の商店街・柳ケ瀬。昼は商店街として、夜は歓楽街として、違った顔を見せる。繊維が日本の花形産業だった頃、岐阜は東京・大阪に次ぐ繊維の一大産地だった。戦後の闇市からはじまった岐阜の繊維産業は、古着商から既製服産業へと発展。岐阜アパレルが全国を席巻した。岐阜駅前には既製服を販売する繊維問屋街が形成され、どんなに仕入れても、すぐに売れた。1日の売上金で金庫があふれ、蓋が閉まらなくなった。儲けた金を握りしめ、あるいは顧客の接待で向かったのが、柳ケ瀬だった。夜の柳ケ瀬には、小料理屋からキャバレー、風俗店まで全てが揃った。    それらのうち一つでも失われてしまえば、一気に求心力が低下する。柳ケ瀬浄化運動によって風俗店が撲滅されると、遠方から訪れる客が激減。繊維産業の衰退とも相まって、柳ケ瀬から賑わいが徐々に消えていった。かつては肩をぶつけ合わないと歩けないとまで言われた大通りは、今は見る影もない。夜の柳ケ瀬は人影がまばらで、通行人よりも客引きのほうが多いほどだ。   夜の街・西柳ケ瀬。通行人の姿も少ない。    そんな柳ケ瀬で、「のんびりお酒が飲めるスナック」という業態は、幅広い層から重宝され、愛されてきた。柳ケ瀬のスナックは、表通りから1本入った横丁に集中している。横丁のひとつ、「丸川センター」では、狭い路地に20軒ほどのスナックや飲み屋がひしめいている。昭和39年に開催された東京オリンピックを記念して作られたという五輪のネオンサインが特徴的だ。   丸川センターの頭上を彩る、今から54年前に作られた五輪のネオン。   はじめての訪問。柳ケ瀬で昭和59年から続くスナック  私がはじめて訪問した2017年の時点で、営業しているのは「スナックさざめ」の一店のみになっていた。お店のドアを開けると、70歳くらいのママが迎えてくれた。時間が早かったせいか、お客さんの姿はない。水割りを飲みながら、ママに色々な話を聞いた。スナックさざめは昭和59年に開店した。丸川センターでは最も新しい店だ。以前は喫茶店で働いていたが、頼まれてこのスナックのママになったのだという。    お酒が苦手なのにスナックで働くようになり、最初は嫌で、とりあえず3日やろう、3ヶ月やろう、3年やろうと思っているうちに、30年が経っていた。お店が終わるとお客さんと一緒に飲みに行くこともあったが、貸し借りは作りたくなかったので、おごってもらうことはなかった。逆にお客さんの分まで払うこともあり、売り上げはちっとも手元に残らなかったという。    お客さんが来てくれない日は寂しかったが、常連さんに電話をかけたことは一度もない。電話したらきっと来てくれるけど、人それぞれのペースがある。困っていると思われて、気を遣わせるのも嫌だった。「やっぱり給料日にはお客さんが多いんですか?」と聞くと、意外な返事が返ってきた。「給料日はね、逆にお客さん少ないんですよ。みんな、給料を払う側になっちゃったから。」なるほど。聞けば納得の答えだ。    そんな話をしていると、お客さんが入ってきた。見慣れぬ私の姿に、早速声をかけてくれた。こうした気取らない昔ながらのスナックでは、はじめての来店でも、みんなフレンドリーに接してくれる。お客さんは80代の男性で、元々裏社会に生きていた人だった。派手な刺青を隠すため、真夏でも長袖しか着られないとのこと。引退した今でも世間の目は厳しく、転居を繰り返しているという。今住んでいるアパートも、大家が家賃を受け取ってくれなくなった。「もうすぐ追い出されるだろう」と笑う。そこへママが「こんな話してるけど、いつもニコニコしてるし、幼稚園の園長先生みたいに見えるでしょ?」とチャチャを入れてくる。どんな人であっても、何の駆け引きもなく、気兼ねなく楽しくお酒を飲める。とても心地のよい空間だ。   スナックさざめの店内は、穏やかな時間が流れている。   2回目の柳ケ瀬・さざめ訪問。ツイートした犯人発見に沸いた夜  それから半年ほどが経った頃、スナックさざめが廃業するという噂を聞いた。一度しか行ったことがないというのに、何故かとても心がざわついた。また行きたいと思っていたし、失いたくない場所となっていたのかもしれない。居ても立ってもいられず、まだ開店前だというのに、店の前まで来てしまった。スナックのドアには、2018年3月末をもって閉店するという貼り紙が張られている。閉店の噂は、本当だった。 スナックさざめが閉店すれば、東京オリンピックから続いていたネオンのアーチも消されてしまう可能性が高い。「ひっそりと消えてゆくのはもったいない」という思いから、私はネオンの画像とともに、スナックさざめの閉店情報をツイートした。   お客さんが作ってくれたという閉店を知らせる貼り紙。本当は31年間ではなく33年間だが、「大きな違いはないから」と、そのままにしていた。    3月の最終週に入り、スナックさざめを訪れた。たった2回目、しかも久々の来店だというのに、ママは覚えていてくれた。店内には常連客が数人いて、盛り上がっている。聞き耳を立てていた訳ではないが、自然と話が聞こえてくる。どうやら、あるツイートがきっかけで、インターネット上でこの店のことが話題になっているとのこと。それを見て、遠方からわざわざ来てくれる人も複数いたらしい。「発信した人は絶対お客さんだと思うけど…」と話していた。自分のほうにも話が回ってきて、見覚えのあるツイッターの画面を見せられた。   【悲報】岐阜柳ケ瀬・丸川センターで最後まで営業を続けていたスナックさざめが今月限りで閉店へ。それに伴い、1964年の東京オリンピックから灯されていた五輪のネオンサインも消灯。二度目の東京オリンピック叶わず。 pic.twitter.com/1ScIShtJoG— よごれん...

大人には想像不能⁉10代の起業家に仕事観、価値観を聞いてきた  飲食店経営及び経営コンサルタントをしております「えらいてんちょう」です。皆様こんにちは。初めましての方は初めまして。  今回お届けするのは3名の高校生起業家へのインタビューです。高校1年生の起業家3名ということで、2002~2003年生まれ、ほとんどの読者の方より年下だと思います。中には自分の息子・娘が同世代という方がいらっしゃるかも知れません。今回はスマホネイティブ世代の彼らの仕事観について、インタビューを通じて詳らかにしてまいりたいと思います。次世代の仕事観は目新しく、資金調達や雇用、事業について他の世代と全く異なった認識をもっているため、その橋渡しができれば幸いです。 ワクワクを貫いて、目指すは現代の「百姓」。いわたがくさん 1人目は、いわたがくさん(twitter) 都内の国立高校に在籍しながらも、「中高生のための一人旅」を企画し、クラウドファンディングでの資金調達も行った方です。   -今日はよろしくお願いします。簡単な自己紹介をお願いします。   いわたがく(以下いわた):こんにちは。いわたがくと申します。都内在住の高校1年生です。中高生の選択肢を増やすことを目的とした、genateという学生団体を主催しています。最近ではメディアやカフェの立ち上げにも関わっています。   -まずはいわたさんの起業や就職についての意見をお聞きしたいです。   いわた:僕は起業については肯定的な意見を持っているのですが、周囲を見ていると現実的な選択肢が就職しかないように感じています。僕は例えるならば「百姓」のように幾つもの仕事を手掛けて、人生を駆け抜けていきたいという思いがあります。その生き方を実現する手段として、現時点では「起業」を考えています。もし就職するとしても「パラレルキャリア」を体現していきたいと考えています。ただ、多くの人にとって就職はいい機会だと思います。現行の教育の仕組みでは問うことのない、「人生の目的」について自問自答する良い機会になると思うので。   -百姓というのは面白い例えですね。もう少し詳しく教えてもらってもよろしいでしょうか。   いわた:一つの仕事やプロジェクトに専門として従事するのではなく、「百の生業」を持つ百姓のように、多くのプロジェクトを仕掛けていきたいという思いがあります。   -なるほど。多くのプロジェクトを同時並行で動かせるようになりたいということですね。この考え方は堀江貴文さんの「多動力」に通じるところがありそうです。資金調達や従業員の雇用と言った点についてはどのようにお考えですか。   いわた:資金調達や従業員の雇用は、あくまで実現したいことの手段として個別に精査していくべきだと思います。会社経営についてはあまり詳しくはありませんが、従業員を雇用することよりもクラウドソーシングで外注する方が、コストが低い印象があります。   -お話を伺っていると、「上場」という起業の分野でのゴールはあまりイメージされていない印象を受けました。いわたさんにとっての仕事のゴールというのはどのようなものでしょうか。   いわた:私にとっての仕事のゴールは「自分にとってのワクワクを貫く」ことですね。同じように世の中をワクワクするようなことで溢れさせていきたい。お金についてあまり執着はないですね。美味しいご飯が食べられるくらいで丁度いいです。   -いわたさんにとって仕事というのは「遊び」や「ゲーム」の1種でリスクも少なく楽しめるものという位置づけなんですね。大変勉強になりました。本日はありがとうございました。     起業か就職課は関係ない。重要なのは「熱量」。高木俊輔さん 2人目は高木俊輔さん(twitter) 中学校の文化祭のためにpolcaというサイトを使って、スポンサーを集めてしまったという方です。     -本日はよろしくお願いします。中学生で文化祭にスポンサーを獲得したというのは凄いですよね。まずは高木さんの就職や起業についての考え方を伺いたいと思います。   高木俊輔(以下高木):起業に関しては「お金を出せばすぐ出来るもの」という認識です。難しいものではないですね。業を起こすと書いて起業ですし、世の中になじめなくてもリスクを取れる人ならどんどんやってもいいのではないのでしょうか。就職は、ある意味では、最もリスクを取らずに攻めの姿勢でいられるポジションです。結局はその人に合う場所で行動するのが1番ではないでしょうか。   -なるほど。就職してから人脈や経験を積んで起業するという考えもあると思うのですが、この点について高木さんの意見を伺いたいです。   高木:就職にこだわる必要はないように感じます。就職しなくても人脈は作れますし、就職しても作れます。しかし、自分自身の熱量が下がってしまうことや、「これは自分のやりたいことではない」と感じるような時間があるとすれば、すぐに起業するべきだと思います。   -なるほど就職していなくても人脈を構築することや、経験を積んだりすることは出来るわけですね。資金調達の方法や従業員の雇用についてはどうお考えですか。   高木:資金調達についてはネット上で募れば良いのではないでしょうか。従業員についてはSNSで自分の事業について発信して、やりたいと手を挙げる人をどんどん雇っていけばよいと考えています。   -なるほど。資金調達についてはクラウドファンディングなどのサービスを使って事業に魅力を感じてくれる人を募るというような形ですね。従業員やプロジェクトメンバーもSNS経由で募って、黒字化して利益が出るまで活動して、利益が出たらメンバーに配分していくというような形になりますかね。経営者と株主をSNSやクラウドファンディングで募るイメージでしょうか。   高木:そんなイメージです!これからは収入に依存して、仕事にいやいや取り組む人は減っていくと思うので。「このプロジェクトは潰れてもいいか」という気軽なスタンスで、仕事に臨むような人が増えるのではないのでしょうか。   -なるほど。そもそもあまりお金に執着しているわけではないのですね。今の中高生の起業家は何をゴールにしているのでしょうか。   高木:単純に勉強よりも起業している方が楽しいからですね。使いたいときに足りる程度のお金を稼げれば問題はないという考えです。   -遊びの延長線上に起業があるというわけですね。たかが遊びの一つなので、一つの商売に対して執着もしない。上手くいって楽しければ続ける。遊びは真剣にやらないと楽しくないので、姿勢は真剣そのもの。このような取り組み方でしょうか。   高木:その通りです!   -なるほど。そのような姿勢で仕事に取り組まれているんですね。大変勉強になります。最後の質問なのですが、中高生の起業家の皆さんは本名でネットの活動を行っています。匿名で活動するとは考えなかったのでしょうか。   高木:自分は人とよく会うので、顔出ししている方が安心できるんです。あとは自分の名前をブランド化することも狙っています。   -なるほど。名刺の代わりとしてネット上にある実績を使っているわけですね。本日はありがとうございました。     起業もクラウドファンディングも若いうちが有利⁉益山永遠さん 3人目は益山永遠さん(twitter) 胸の大きい女の子向けの下着ブランドを展開されています。     -簡単に自己紹介をお願いします。   益山永遠(以下益山):益山永遠(ますやまとわ)高校1年生、15歳です。胸が大きな女性のための下着ブランドEteranun(エテラナン)を立ち上げ、その資金調達としてクラウドファンディング中(5/19まで)になります。3/19に65万を目標に開始し、現時点で74%を達成しました。   (クラウドファンディングのページ)    世間一般的に贅沢な悩みとされる「大きな胸」に着目し、また私自身が当事者だったことから事業を展開することにしました。下着ブランドなのでアパレル業になりますが、日本や世界を良くしようとする起業家の方々にも影響を受け、ベトナムやバングラデシュといった発展途上国での工場開拓や生産を通し、発展途上国の工場の環境改善など社会課題解決型の事業へも広げられたらと考え動いています。   -もう既に商品をつくって販売されているのでしょうか?   益山:商品をつくるお金すら無かったので!クラウドファンディングを駆使しました! まだ法人化をしていないこともあり、お金が無い状態だとどこの工場にも相手にされなくて…。まずは商品を作るお金を集めなければならない、クラウドファンディングに全力をかけることが私の出来ることなのかなと思い動いています。   -中学生で起業をしようというのは珍しいと思うのですが、影響を受けた起業家がいれば教えてください。   益山:影響を受けた起業家は、というか起業したいという夢が起業するという決意に変わったのは、14歳からのスタートアップという番組に出演されていた八木澤玲久さん、川島康平さんがきっかけとなりました。同年代の方がここまでしているのか…(語彙力)と感銘を受けたあの瞬間のことを今でも肌感として覚えています。初めて知った、見た、学生起業家があのお二方なので私自身あのお二方を基準としている所があったりします。(※八木澤玲久・高校3年生の時起業コンテストで最優秀賞を獲得、地元那須をPRする旅行代理店「那須旅」を設立、川島康平・高校2年生の時にQRコードを使った地方創生観光ビジネスを手掛ける株式会社NEXTremeを設立。現在はNEXTreme合同会社CEO)   -なるほど。起業や資金調達をする上で、年齢が影響すると思いますか?  資金調達については、「年齢って武器になるなぁ」とクラウドファンディングを初めてより一層感じております。簡単な話、私が今やろうとしていることを30歳の人がやってもここまで集まらないと思うんですよね。まだまだガキんちょの女の子がなんか社会課題を解決するためにやってんなー、若いのにすごいなー。ってなるんですよね。事業内容より年齢を先にみられるというか。それを嫌う人もいるようですが、私はこの年齢で動いたからこそチャンスを頂いたと思っています。  起業のハードルも若ければ若いほど低いと思います。失敗しまくれるので。起業を1番学べるのって起業することだから、バンバン行動して沢山失敗してそれらを次に生かせたらいいのかなぁというのが私の考えです。   -同じ内容でも、若さがあれば応援される、応援されれば資金調達もできるし、事業でつまったときも助けてもらえる、というイメージなわけですね。 一般的に起業に失敗するとお先真っ暗、借金まみれ、堅実に就職、みたいな価値観があると思いますが、そういった価値観に対してはどう思いますか?   益山:そんな価値観あるんですか〜!もちろん事業内容や想いも前提ではありますが…若ければ若いほど得をするってイメージです!私的には失敗も失敗じゃないというか…だって…DJ社長なんか、何千万と借金あるけど幸せそうじゃないですか〜!(※人気YouTuber・DJ集団「レペゼン地球」のリーダー。ピーク時の借金は6,000万円という)その環境をどう受け止めるかは本人次第だし、いかにその状況を楽しむ力があるのかだと思うんですよね。起業関係なく。それに、みなさんだっていつリストラされてもおかしくないじゃないですか…。サラリーマンが安定とは思いません。  AIが発達してきてる今、固定概念に囚われない想像性や柔軟性、スピード感大事だと思うんですよね。時間って命なので!やりたいことやった方がいいです絶対!好きじゃない仕事なんてやらない方がいいです。私も最近苦手なことしておっきなニキビできたので。できるできないじゃなくて、やるかやらないか。使い古された言葉ですけど、「こういうことか!」って分かるのはやってからだと思います。   -起業のことは起業した人にしか分からないって感じですね…。実際起業するにあたって親御さんの意見はどうだったかについても伺いたいです。   益山:最初は周りは応援してくれてなかったですよ!両親、親戚含め。当たり前のように「子供に何が出来るんだ」って沢山言われました。けど、やってたら本気度伝わったみたいで今は応援してくれてると思いますよ!   -「親は親、自分は自分」って感じなんですね。益山さんも、ほかの中高生起業家のみなさんにインタビューしたときもそうなんですけど、お金持ちになりたい!みたいな感覚が薄いですよね。   益山:ほんまにそうすよ!ゆうて他人なんで。親であろうとも100%分かり合えることなんてないと思います。でもそれを悪いことだなんて思いません。学生起業家にとって親って大きな壁だと考えがちですが、意外とそうじゃないです。分かってくれないなんて!って思わずに、「あ〜そういう価値観なんだな〜!でも私はこういう風に思うねんなぁ」って感じで良いと思います。悟り世代って言われるじゃないですか、私たち笑。バブル世代の両親を持って、それを見てて「あ、お金を持つこと=幸せではないんだ」と気づいたんですよね。お金はより幸せになるためのものであって、「お金持ちは幸せ!貧乏は不幸!」ではないんです、決して。   -では、起業する上での目標、ゴールはどういうところになるのでしょうか?   益山:ゴールかぁ、私ないです!私、計画性めちゃくちゃなくて笑。ほんとにその時に「やりたい!」と思ったことに素直になってるだけというか…。なので、長期的なプランがあって、そこから逆算して今何をするべきかというよりその場その場での感情を大切にして動いてますー!   -その場でワクワクすることをやって、ワクワクしなくなったら切り替える、って感じですね。大変勉強になりました。最後に、中高生起業家のみなさんは本名で活動されてる方が多いですが、「ネットに個人情報を出さない」といった考えはあまりないのでしょうか?   益山:ほんまに一人の起業家として名前出してる感じですね。中高生だからどうとかじゃない気がします。   -ひとりの起業家として名前を出して売っているわけですね(私は出してない…笑) 大変勉強になりました。商売の成功をお祈りしてます!   まとめ さて、次世代のエリートの考えを紹介いたしましたが、読者の皆様はどのような感想をもたれたでしょうか。 特徴的な考えとして   ①起業を特殊なことと考えていない。会社員としての修行を経てからのような考えは皆無。 ②起業が失敗しても破滅しないことを知っている。借金をしないから。ビジョンさえ魅力的ならクラウドファンディングで大金がすぐに集まる。 ③ひとつの事業に愛着を持ってやり続ける、という意識が薄い。いろいろなことをやってみたい、常にワクワクしたい、起業はその手段である、という意識。 ④仮に失敗してもそれも一つの経験と捉える。 ⑤親の話が少ない。親は親、自分は自分といった自立心が強い。   といったものがあげられます。大学進学などを重視していないのも特徴です。SNSネイティブの彼らの価値観が主流になるのも時間の問題に思えます。読者諸賢におかれましては、新しい価値観を吸収していかれると、次世代と一緒に仕事がしやすいかも知れません。...

起業。自分で会社を作るということで、世の中には「起業家」なる肩書きまで存在する。ただ多くの場合、起業しているのは普通の人だ。メディアでもてはやされる「イケてるビジネスパーソン」ではなく、ごく普通の人が、就職でも、転職でもなく、起業する。どんな考えでそれに至ったのだろうか。 ということで、最近起業したばかりの人に、「どうして起業したの?一般ピープルが起業するってどんな感じなの?」ということを聞いてみたいと思う。   イケてるビジネスパーソン?いやいや、典型的な「一般人」が起業した 起業と言われると我々一般人には、全く関係ない話のように感じる。知らない男性の昨日見た夢の話のような、もう全く興味がないと言ってもいいかもしれない。私にしても起業って何?食べられるの?みたいな感じだ。 ちなみにこれを書く私(地主)は無職です!   しかし、私の知り合いに起業した人が現れた。雑誌やテレビによく出る煌びやかなビジネスパーソンではない。失礼だけれど、もう本当に一般ピープルなのだ。では、なぜ彼は起業をしたのだろうか、一般ピープルだったのに。 起業した杉野卓也さん(43歳)   杉野さんは東京農業大学で林学を専攻し卒業後、大学で研究員をしながら、「多摩川源流大学」という学内プロジェクトを担当していた。ただ今年の4月に「合同会社流域共創研究所だんどり」という会社を起業した。社長なのだ。ぜひお話を聞きたいと思う。   きっかけは後ろ向きな出来事。「普通のおじさん」が起業したワケ いきなりですが、一般ピープルですよね? そうですね、一般ピープルですね でも、今は社長! 正確には、社長ではなくて「代表社員」なんだけどね。株式会社と違って、合同会社には社長というのが厳密にはなくて、「代表社員」というものになります でも、社長なんですよね? 役職的にはそういうことにはなるね! メガネの存在に初めて気がついた社長   なんで一般ピープルが起業したんですかね? 簡単な話だよ。大学の雇用期間が終了したから 研究員にも期間があるんですね ある人もいるよ。で、それをきっかけに「合同会社流域共創研究所だんどり(以下、だんどり)」を起業したわけです 後ろ向きに前向きな理由ですね 10年ほど学内のプロジェクトをやっていて、学内だと色々と制約があるので、2年ほど前から一度大学の外に出てやってみたらどうだろう、みたいな話を周りの人たちと話していて、雇用期間の継続のタイミングで、いっちょやってみるか、と 「だんどり」はどういう仕事を? 簡単に言えば、地域にいる地域づくりをやりたい人と都会にいる専門家とか、都会に住んでいる人をつないだり、その場を「だんどり」する仕事かな そういう仕事ならたとえば、地域系のコンサルの会社に就職するとかはなかったですか? 意外にも、そういう仕事をしている会社って少ないんだよね。10年ほどそのプロジェクトをやってきて、「だんどり」が目指す仕事をしている人は少ないし、いてもボランティア的だったり、補助金頼み過ぎだったり。それで、地域と都会を結びながら、両方の地域振興やコミュニティ作りをやろうという人は間違いなく必要だとわかったというのも起業の理由の一つではあるんですよ 必要な会社なんですね 今までは、主に農山村などの困っている地域をよく見ていたので、そういう地域が専門家にどうアプローチすればいいのか、アドバイスする人がもっといればいいなと思った。あと、地域の住民の方々と話し合いをするときに、司会の人の立場によって、恣意的な会の雰囲気にどうしてもなってしまう時がある。そうなると住民としては「やらされている感」が出てきてしまうこともあった。そういう時に「だんどり」では、第3 者的な司会(ファシリテーター)を用意して、トップダウン型の地域づくりではなく、ボトムアップ型で住民も専門家も行政もちゃんと参加して、みんなで地域を作り上げていく、納得のいく地域づくりをお手伝いをしたいな、と なるほど! 地域の状態やニーズ毎に、必要な人をセッティングすることをお手伝いしたい。例えば、会議やワークショップなら司会(ファシリテーター)だったり、農業の問題なら専門の先生を呼んだり、商品作りをしたいならブランディングの専門家を呼んだりなど、私たちの会社がワンストップの場所として機能すればいいいなと。だから社名が「だんどり」なんですよね 真面目な話だ! 大丈夫?こういう話で。読んでくれるかな? 猫の写真を入れときます。みんな猫が好きなので! 猫は可愛いですよね!   あら、かわいい! ラーメンも入れましょう!みんな好きだから! ラーメンもみんな好きだよね!   あら、美味しそう!ね!   「社長になりました!」は事後報告。その時、家族の反応は? 起業して、失敗する可能性もあるわけですよね? ある!今までで一番自信に満ち溢れた回答ですね! 2年持つかな、とは思ってるけどね! 来年危ない! 地域づくりのワークショップに特化したり、その成果の情報発信もできたりなど、入口と出口がワンセットということが「だんどり」にはできるので需要はあると思うけどね でも、2年後に潰れている可能性もある? あるね!ありすぎるね!奥さんは何も言わなかったですか? 設立登記した日に初めて奥さんに「会社になりました、社長になりました」と言いました 事後報告! 会社を作るかも、とは言っていたけど、なんの会社なのか、そもそも本当に作るのか、などは事後報告だね 奥さんは「就職して安定して」とか言わなかったですか?お子さんもまだ小学生と幼稚園生ですし 言わなかったね。奥さんは私よりタフだから。奥さんの実家は自営業だからかな、肝が据わっている。むしろ私の両親はサラリーマンだから、大丈夫なの?と今でも心配しています。嫁は潰れたら、潰れたで働くんでしょ、とおおらかな感じ いい奥さん!潰れたら働くんですか? 働くよ!なんでもいいから。ただ逆に地域系のコンサルみたいな「だんどり」に似ている会社には行かないかな。全然違う分野の仕事をしてみたい! 働くのは好きなんですね そうだと思うよ。起業する人は仕事が好きな人だと思う。私も働くのもこの仕事も好きだし! なるほど!私が起業も就職もしない理由は働くのが嫌だからなんですね! そうなのかな、でも本人が言うならそうなんじゃないかな めっちゃ稼いでも会社は続けます? いや、3億たまったらやめる! 働くの好きでもやめるんだ! 3億貯まったらやめると語る社長   今後会社をどうしていきたい?ビジョンは?イメージは? 今後の会社のイメージはありますか? うーん、他の社長さんなら明確なビジョンがあるんだろうけど…とりあえず1、2年後に誰かを雇いたいなくらい。ただ100人も200人も雇うという会社のイメージはなくて、毎年1人くらい雇っていって、その人が勤めて3、4年経ったら、地域に分社を作ったり、独立したりしてくれたらうれしいですね。その人達がそれぞれの地域でいろいろなネットワークを作って、いつか一緒に「だんどり」できたら楽しそうでしょ 5年後の会社のイメージを書く社長 5年後はこうなる! 線がフニャフニャで不安を感じる! それは偶然よ、たぶん! 個人的な目標とかは? 大学にいて思ったのは、今の座学メインの教育より、もっと地域に出て、課題のある現場で学ぶ機会を増やして、それも単位に認めてあげられるようにしたい。現場に行っていろんな体験をするのが大切だと思うので。その中で、学ぶ心が育まれれば勉強も楽しくなる。学生を受け入れた現場も元気になるんじゃないかと思う。そして、そういう機会のマッチングを「だんどり」でやってあげたい。先生たちが受け入れ先を探すのは意外に大変なのよ すごい目標だ!でも、3億貯まったら… やめる! スパッとやめる! そこにはすごい自信を感じるんだよな やめることにすごい自信を見せる社長!   「怖くて…」あの人気番組が見られない?社長になって変わったコト 社長になって不安とかはないですか? 不安だらけだけど、仕事を選ばなければ、どこかで働けるだろうと思っているから 潰れることを前提に考えていますね! 不思議とそうなったね! 起業して社長になって変わったことはないですか? ないな…。あ、「ガイアの夜明け」を見られなくなった! なんで! 怖くて。起業前は見てたんだよ。でも、起業してからは怖いというか、俺も頑張んなきゃな、を急き立てられるようで。裏で頑張ってんだろうな、この手続きどうやってるんだろうな、とか考えちゃう。頑張っている人が眩しすぎるんだよね 他にないですか?急にバスローブを着て、葉巻を吸い始めたとか ないよ、社長のイメージにそれがない!ただスーツを仕立てに行こうとは思っている。身だしなみに気をつけようと。今日も、ちゃんと髭剃って来たからね!! 娘さんがなんか言ったりしてないですか?学校で「うちのパパ、社長なんだ!」って自慢したり ないない、まだ小学3年生だからあんまり社長にピンと来てないみたい 晩御飯が何かを考える社長!   もっといろいろと変わって欲しかったんだけどな まだ会社の規模が小さいし、社員も自分を入れて3人だし。ただ今後もし会社が大きくなって、私が変わったら注意してほしい。急にブランド品しか身につけなくなったり、ワインがどうの、とか言い出したりしたら諭してね 現状は大丈夫ですね! たぶんずっと大丈夫だと思うけどね。ただ起業してグローバルというのが大切だと思ってきたから、子供をインターナショナルスクールに通わせようと思っている!インターナショナルスクール、いいでしょ!インターナショナルよ!インタっしょ! あ、早々と諭す時が来た! 晩御飯をハンバーグと聞いて喜ぶ社長   理由は後ろ向きでもいい!なんとなくでもいい!大事なのは… ということで、一般ピープルの起業について聞いた。思っていたより、ハードルは低いようだ。問題はキッカケだけ。杉野さんにしても、雇用継続見直しのタイミングという、なんとなく後ろ向きなタイミング。でも、それでいいのだ。一方で、自分が立ち上げる仕事のニーズについてはしっかりと考えられていると感じた。ごくごく一般人、杉野さんが立ち上げた会社は果たしてどのような道をたどるのか、興味は尽きない。 「働くのが好き」というのも大きなポイント。私には無理だと悟った。 透明な「ひのきの棒」を大切に持ち上げる社長   <協力> 合同会社流域共創研究所だんどり https://www.facebook.com/dandoridori/...

TOKIO山口氏、福田前次官。責任ある立場で相次ぐ性暴力の問題 日本は2018年4月、性暴力に覆われた。財務省の福田前次官によるセクハラ、TOKIOの山口氏による強制わいせつ。どちらも公の場で追及され処分が下っただけでも前進はあったとみている。   一見関連性のない2つの事件だが、実は「職場の関係者が上下関係を利用して行った暴力」である点が共通している。福田前次官は自分を取材する女性記者へ向かって情報を漏らす代わりに「胸触っていい?」「浮気しよう」とセクハラを繰り返した。TOKIOの山口氏が呼び出したのは、テレビの仕事で知り合った関係者と言われている。どちらも仕事上で関係がある目上の人間から呼び出され、断りづらい状況で起きているのだ。   だからこそ、筆者は職場で性暴力が消える日は来ないとみている。なぜなら仕事上で発生する性暴力には、3つの力がはたらくからだ。   クライアントが無茶ぶりをしたとき、無視できる企業は少ない 私はメーカーの内勤出身で、比較的セクハラが少ない業界にいた。メーカー内勤でなぜセクハラが少ないかといえば、「加害者になりうるのが社内の上司しかいない」からだ。セクハラは十中八九目上の人から行われる。目下の人間から起こされても、すぐに叱って止められるからである。社内の人間としかやりとりしないなら、セクハラは内部でしか起こりえない。それなら問題があっても、社内のルールを徹底すればどうにかなる。どうにもならない腐敗した企業もあるが、たいていはセクハラ起因の離職率増で生産性低下というしっぺ返しを食うだろう。   しかし、外部にクライアントがいる職種、業種なら話は別だ。大手広告代理店の社員から話を聞くと「自社内でセクハラはそうないが、クライアントがひどい」という訴えをよく耳にする。   胸をつかまれた、夜更けにホテルの一室へ呼び出され寝ることを拒否したら土下座させられたなど「これは本当に現代日本か?」と思わされるセクハラが横行している。被害者は女性だけではない。男性もクライアントによって裸で歌うことを強要されたり、女性と寝るよう迫られたりしている。   そして多くの企業は、「太い」クライアントをセクハラだけを理由に切り捨てる勇気を持てない。中小企業ならその会社を切った瞬間に倒産することもある。だから、社外のセクハラを止められないのだ。   連鎖も?セクシャルハラスメントの被害を止められない上司の罪 クライアントがセクハラをしてきた場合、頼れるのは上司しかいない。だが、上司だってセクハラだけを理由に「A社との取引は一切やめさせてもらおう!」と言い切る権限はない。広告代理店ならまだ他のクライアントを見つければいいが、福田前次官のような「替えがきかない取引先」だってある。   だから上司も「お前さえ我慢してくれれば、うちへ優先して融資してくれるかもしれないから」と言いかねない。この発言自体もセクハラなのだが、ややこしいのは上司が同性で、しかも下っ端のときに同じ苦痛に耐えた人間の場合だ。「私も耐えてきた。分かるよ。つらいよな。お前も頑張れよ」と言われて、ふざけるなと怒りを表せる部下は少ないだろう。   「お客様は神様です」がいまだに生き残っている社会では「よし、セクハラを訴えよう」とはなりにくい。なるべくことを荒立てないよう、せいぜいセクハラを受けにくい人へ配置換えをするくらいが関の山だ。となれば、セクハラを訴える社員はより裏方業務に回されることになる。セクハラを訴えると、左遷されるリスクすらあるのだ。   「被害を受けるお前が悪い」という言説の無理解さ 今回、TOKIO山口氏に関する言説で、特に目立ったのが「家へノコノコ行く方が悪い」といった、被害者を責めるものだった。だが想像してみてほしい、高校時代の自分を。あなたは友達の親に家へ呼ばれた。その親御さんは好感度の高い芸能人で、自分の親も尊敬している。だから安心して友達と2人で家へ入ったらむりやり襲われ、キスされた。トイレへ駆け込んで助けを呼び、親へ迎えに来てもらった。それを周囲から「40代の異性の家へふたりきりで行くなんて、お前が悪い」と言われたら……高校時代の自分はどう思っただろうか?   日本に限らず、性暴力では「理想的な被害者でなければ許されない」風潮がある。若く美人で、道端で全く知らない人間からいきなり襲われないと同情してもらえないのである。 だが実際にはレイプですら加害者の6割が「よく知っている人」なのだ。そこには職場の取引先や友人、以前付き合っていた相手、そして親を含めた家族。好意を持っていた相手からむりやり襲われたケースも多いだろう。   だからレイプに限らず、性暴力の被害にあった方は訴えを起こしづらい。何よりも自分自身が、自分が悪かったのではないかと責める。   訴えるに至っても、周囲から「お前が誘ったんじゃないか」 「これで仕事がうまくいくなんて得じゃないか」とまで言われる。訴えず泣き寝入りすれば、今度は「どうせ被害にあったのも嘘だったんだろう」と今度は言われてしまうのだ。時間が経ってから決心して届けを出すと「金に困ったのか」と。性暴力を受けた人は、こんな状況でどう強く生きたらいいのだろうか?   きっかけは被害者の勇気。経営者は決断すべき 今回、それでも進展があったのはセクハラ、性暴力を受けた側が勇気を出してくれたからだ。テレビ朝日は「セクハラを報道したほうが、社員へ耐え忍ばせてネタをもぎ取るより視聴率を稼げる」と理解しただろう。企業側が「セクハラ・性暴力を訴えでたほうが会社にとってカネになる」理由を見つければ進展はたやすい。   テレビ朝日も、セクハラを他社メディアに流されず自社テレビで「大スクープ!福田前次官のセクハラ疑惑」と訴えれば最高のネタになったであろう。それが「セクハラなんて耐えてネタをもらうものだ」という古い慣習を守らせて時流を忘れ、儲けるチャンスを逃したのだ。倫理はもとより、ビジネスセンスが不足していたことも会社として反省すべきだろう。   どの業界にも、無茶なクライアントは大勢いる。「私は耐えたんだから」とセクハラを容認させる上司もいる。だが、今回の2つのニュースで大ナタを振るうきっかけはできた。   セクハラをしてくるたった1社の取引先に依存した経営体制なら、ポートフォリオを分散したほうが財務上も健全になる。どの会社もセクハラをするクライアントを蹴るならば、クライアント側の内部統制もかかるだろう。その大ナタを振るえるのは経営者だけだ。長期的な生き残りを模索するならば、取引先のセクハラを公にするべき。その意識が浸透してほしい。...

ローカル新聞の雄、神静民報社に行ってきた! ニアセの本拠地は小田原にあるのですが、同じく小田原で活躍する地域新聞があると聞き、お話しを伺うことにした。   小田原駅からバスで20分。途中からはぐいぐい山道を登っていき、船原というバス停で下車。 バスを降りると、目の前には畑。その先には山が連なる。   畑の間を細い道が山へ向かって延びており、その道の入り口の電柱に「神静民報社」の看板を発見。 降りるバス停が間違っていなかったことが分かって一安心。   しばらく歩くと、神静民報社の看板を発見。そしてその先には社屋を発見。 早めに到着しすぎて、道路でウロウロしていた我々を社員の方が発見し、社屋の中に入れてくれた。 やさしい。執務室の中はこんな感じです。 設備は一般的なオフィスと同じ。でも、そこはかとなく感じる「田舎のおじいちゃんの家」感。   奥の部屋でインタビューを開始。ローカル新聞の社長ということで、頑固で高圧的な人を勝手に想像していたが、失礼な質問にもバシバシ答えてくれる気さくな社長さんでした。         神静民報の歴史   ―まず、神静民報の歴史を教えてください。   社長:創刊は1946年の2月。長く小田原の市長をしていた鈴木十郎さんが、私の祖父の田中要之助(元神奈川新聞 初代小田原支局長)に「ローカル新聞を出さんか?」と勧めたことがきっかけです。「地域を良くするには、地域紙がなければいかん」と言って。鈴木さんは読売新聞、朝日新聞で記者として働いていた人だから、郷里に新聞を作りたかったのかもしれないね。   歩いてきたの?遠かったでしょ。 前は小田原市栄町の繁華街に本社があったんです。ある時、新聞を2ページから4ページに増やすことにして、印刷機ももっと大きいのが必要になったんです。土地も高いし、どうしようかなと思ってたところで、この土地に巡り合った。ここは県西地域2市8町(小田原市・南足柄市・中井町・大井町・松田町・山北町・開成町・箱根町・真鶴町・湯河原町)の中心で、どこの取材に行くにも便利。空気も良いしね。シカ出るけど。   ―シカ出るんですね。田中社長は3代目ということで、入社した瞬間から社長だったんですか?   社長:そんなわけないでしょ。もともとは保険会社で数年間サラリーマンをしてから、28歳頃に神静民報に入社しました。記者として働いてから、父が亡くなった後に引継ぎました。36歳の時です。   ―新聞を創刊してからどのくらい経つんですか?   社長:創刊72年目に入りました。   ―歴史がありますね。   社長:いえいえ、小田原は「創業100年」など歴史ある老舗も多いから、まだまだですよ。 72年も続けられた理由と今後。電子版は?   ―なぜこんなに長く続けられることができたと思いますか?   社長:やっぱり「地域に生かされてきた」、ということに尽きますね。景気が悪い時でも広告を出してくれる中小企業さんも多くて、恐る恐る集金に行くと、「おたくの分は取ってあるよ」と1万円を渡してくれたこともあります。地元には「地域新聞は必要だから、生かすために取るよ」と言って下さる方もいる。   ―地元との結びつきが強いんですね。   社長:本当にそうだね。東日本大震災の時、ガソリンが品薄でどこにも無くなったでしょ?取材ができないと頭を抱えていたら、地元の方がまだガソリンがあるガソリンスタンドをこっそり教えてくれて。それで無事取材ができたってこともあったね。そうして生かされているから、私も「新聞を届けなくては」という使命感が湧いてくる。同じく震災の時だけど、計画停電中は自前の発電機を動かして編集から印刷までやったんだよ。印刷機は電気が来ているときに動かすから、停電中に編集作業をやらなくちゃならない。その時は、裸電球の灯りを頼りに作業したよ。   ―発電機?なんでそんなモノを自前で持ってたんですか?   社長:うちはカレンダーの赤い日(休日)以外は毎日、新聞を作っていて、とにかく新聞を届けることにこだわりがあるから。できる準備はなんでもやっておこうってことだね。この前の大雪でも、大手新聞は配達ができないところもあったけど、ウチは四駆のスタッドレスタイヤでガンガン販売店に新聞を届けることができたんだよ。ふふふ。   ―凄い執念ですね…   ―神静民報は日刊紙と「ぴ~あーる」というカラー版を発行していて、いずれも紙ですけど、電子版は出さないんですか?   社長:電子版ね。検討はしているんだけども、採算と人数の面から今のところ難しいかな。地域新聞で電子版というと、他の地域でもうまくいっていないと聞く。だから、まずはこの県西地域2市8町でしっかりと紙の発行を続けていこうと思っています。 小田原競輪はスゴイ⁉最近の小田原   ―最近の小田原の調子はどうですか?   社長:地方都市はどこもそうかもしれないけど、小田原駅も駅前はシャッターが下りたお店が目立つようになっちゃったね。 社訓に「地域社会の繁栄に尽くせ」というものがある。地域の企業や人がいなくなっちゃったら、うちの新聞も無くなっちゃう。地域活性化のために何かできないかは常に考えています。例えば、小中学校向けの俳句大会を開いたりしています。地元の子供がたくさん応募してくれて。今年は2,000人くらい応募してくれるんじゃないかな。地元の教育委員会も協力してくれています。   ―地域活性化と言えば、小田原競輪場で開催している「神静民報社杯争奪戦」って、神静民報が関係しているんですか?   社長:もちろん、関係してます。元々は2006年に日刊紙の60周年記念事業として始めて、震災のあった2011年を除いて毎年開催しています。   ―社長も車券買ってガッポリ…?   社長:買ってませんよ!小田原競輪は小田原市に収入面でかなり貢献しているんです。1949年の開設以来880億円。例えば小学校だとすると40校分になります。   ―すごい金額ですね。 新聞社ならではの「怖い体験」   ―新聞社ということは、誰かにとって都合の悪いことでも書くと思うんですが、怖い思いをしたことは無いですか?   社長:そうですね。良いことも悪いことも書くから、書いたことの反対側の主張を持った人たちから殺気のようなものは感じることがありますよ。最近は少ないけど、直接電話がかかってくることもありますね。でも、それは新聞社だったら少なからずあることですから。   ―怖いですね。   社長:初代社長の頃はもっと怖いことがあったと聞いています。鉄砲を持った若造が乗り込んで来たとか。初代社長が「俺はもう50過ぎてるし、いつ死んでもいいけど、おめえさんは20、30だろ?牢屋に何年ぶちこまれると思ってるんだ?」と諭したら、帰っていったって。   ―映画みたいなお話ですね。 〇〇から編集長というサクセスストーリー。記者兼編集長の出口さんにも聞いてみた 次に実際に日々取材に走り回って記事を書いている記者の出口さんにお話しを聞きました。   ―出口さんは記者兼編集長ということですが、元から記者志望だったんですか?   出口:いや、特に記者志望ではありませんでした。この会社にはパソコンのサポートをしに来たんです。アルバイトで。そこから色々手伝っているうちに、記事を書くようになって、今に至ります。   ―アルバイトから編集長に!サクセスストーリー。 記者の1日   ―1日はどんな感じの流れになるんですか?   出口:朝会社に来て、取材に行って、帰ってきて記事を書いて、組版をして…   ―組版までやるんですか?   出口:そうですね。小さな会社なので、1人1人が色々なことをやります。新聞が刷り終わった後の確認も仕事です。 大変だったことは?   ―大変だなと感じることはありますか?   出口:一番大変なのは印刷ミスですね。社内で印刷までやるので。そんなにしょっちゅうあるわけではないのですが、さかさまに印刷されてしまったり、日付を間違えてしまったりすることがあるんですよ。夕方印刷機を回して、出来上がったものにミスが見つかるとショックが大きいですね。そういう時はみんな無口になります。 ただ、自前の印刷機があるメリットも勿論あります。急に大きいニュースがあって載せたいときに、無理が利くんですよ。外部に委託しているとそうはいかないですよね。   ―他に大変なことはありましたか?   出口:大変なことばかり聞きたがりますね。うーん。あんまり無いですね。社長なにか言ってました?   ―震災の時に裸電球で作業して大変だったと…   出口:あー。ありましたね。震災の時は確かにそうでした。自分は震災直後に記者仲間で声を掛け合って、陸前高田で現地取材してきたんです。そこで現地の悲惨な状況を目の当たりにしたので、それを見てしまったら、うちの会社の苦労なんて苦労ではないな、と。本当に悲惨でしたから、向こうは。   ―説得力がありますね。 歴史ある印刷機を見せて頂いた 応接室で取材を終えた後、別の建物にある印刷の現場を見せて頂いた。印刷機は15年ほど使っているものの、まだまだ現役とのことこの機械を使って、毎日毎日新聞を刷っている。今の時代に自前で印刷機を持つことは、費用の面で必ずしも合理的とは言えない。「新聞を届けること」に並々ならぬ執着を持つ社長の強いこだわりを感じさせる。 編集後記 全国紙ですら販売数の減少が言われる中、地域密着で発行を続ける地域新聞。社長が何度も繰り返していたのは「地域に生かされている」ということ。地域の人が神静民報を生かし続けたいと思う理由は、「地域の人たちのために毎日新聞を届ける」という地道な活動と努力を知っているからだ。72年もの長きに渡ってこの新聞が続いてきたのは、この「地域との相思相愛の関係」が理由に他ならない。「地域密着」と言うのは簡単だが、実際に実現できている会社は多くは無い。まずはその地域のことを知り、誠実に向き合うことが大切ということを教えられた。     ---------------- 神静民報の facebookページはこちら...

「インフルエンサー」という言葉が一般化した。インフルエンサーは直訳すると「影響を与える人」を意味する。ファンがその人にあこがれ、同じようになりたいと願っている。それだけなら従来のアイドルと変わらないが、大きな違いはネット上で芸能事務所にも所属していない「素人」が影響力を持った点にあるだろう。 芸能人が推した商品は「どうせスポンサーがいるんでしょ」とうがって見る視聴者が増えたいま、あえて素人感のあるインフルエンサーから紹介してもらえば商品が売れる。なによりインフルエンサーはテレビ広告に出るような芸能人より単価が安く、コスパが良い。大企業に広告費の予算で後れを取るベンチャーがこぞってインフルエンサーへ投資し、そこに大企業も追従した。 私が新卒でマーケティング職についたとき、世間は「インフルエンサーの時代」の黎明期であった。「ブロガー」という言葉がようやく大企業の経営層にも認知された。自社製品のPR文を書いてもらおうと、企業はテレビ広告のコストをインフルエンサーへ割き始めた。 だが、断言してもいい。今の方法でインフルエンサーへ投資しても商品は売れない。その理由は大きく分けて2つある。 マーケターが陥る罠…インフルエンサーの特性を無視した広告文 まず、インフルエンサーごとの特徴を無視したPR文の依頼が多すぎる。別にこちらも「個性を見て!」とワガママを言いたいのではない。インフルエンサーの基礎的なジャンルすら間違っていることが多すぎるのだ。 たとえば私は「外資系OLのぐだぐだ」というブログでフォロワーを獲得した。このタイトルから想定されるキャラは「キラキラ☆いけ好かない☆女子力」といった感じだろう。だから私にはコスメやファッションのPR文掲載依頼が大量に来る。だが、私のTwitterを3日でもフォローすれば気づくはずだ。 「こいつ、まったくオシャレに興味がねえ」と。 恥ずかしながら私がメイクを始めたのは29歳、つまり去年だ。ちょっとコスメに気を使っている中学生より素人である。服を買うときは人に選んでもらっている。さもないとトンデモな服を着ることを知っているからだ。なお、私のワードローブの半分は「お姑さんからお譲りいただいたもの」で占められている。自分で買った服すらない悲しみのファッションモンスター。それが私である。 こんな私にファッションのPR文を依頼するのがいかにばかげているか、すぐに分かるだろう。だが現実にはバンバン依頼をいただく。期待していただけるのはありがたいが、受けたくても受けようがないのだ。何なら、高級時計のマーケティングをしていたので男性ファッションの方が詳しい。 と、「ブログのタイトルから受けた印象」「主な読者層」だけを根拠にインフルエンサーを選ぶ企業はかなり多い。 なぜそんなことになってしまうのか?スポンサー企業は「このインフルエンサーはアラサー女性に人気で、単価もお安いのでお勧めですよ」と広告費の投下を持ちかけられる。インフルエンサー候補は、ざっと100名を超えることもある。担当者も忙しいから、各個インフルエンサーの実態を調べる時間がない。 あなたが担当者なら「じゃあこの人で」と100名のおまとめ発注を出すだろう。だが、そこには確実に、あなたの商品を売るのに適していないインフルエンサーが混ざっているのだ。 インフルエンサーに依頼する前に。マーケターとしてこれだけは確認すべき インフルエンサーには「PRの依頼をいただけるだけでありがたいから」と何でも受注してくれる人がいる。なんでも引き受けてくれるインフルエンサーは、限られた仕事しか受けない頑固な、そして実は誠実なインフルエンサーよりも代理店にとってありがたい人材だろう。大量のインフルエンサーを使って商品を拡散したいとき、断らないインフルエンサーは確実に候補者リストへ入る。そしてあなたの商品が自分経由で売れないと分かりながら告知してくれるのだ。そしてあなたの商品は売れないだろう。 だから過去100件の投稿だけでもいい、商品を本当に売りたいなら出稿者はきちんと確認すべきだ。自分で投稿を追う時間がないなら、下記2点だけでも広告代理店に問い合わせてみてほしい。 このインフルエンサーのファンは何を理由にフォローしているのか? 「外資系OLのぐだぐだ」というタイトルだが、実は「アラサー女って主婦、バリキャリ、両立とどれを選んでもバッシングされてしんどいよね」という趣旨でご支持いただいていることが理解できれば、「愛されメイク」なんて絶対に依頼すべきではないと分かるだろう。 過去にこのインフルエンサーがバズらせた商品は何があるか? PRでなく、純粋なオススメでバズらせた商品をピックアップしてもらうと自然な波及効果がみられてよい。 私の実例では、下記がある。 https://twitter.com/10anj10/status/757970743913242628 メイクやファッションではザルな私だが、実はシャンプーマニアをやっていた。こういった「このジャンルならこの人が詳しい」というフォロワーからの信頼が確立しているインフルエンサーへ、同ジャンルのPRを依頼するとバズりやすい。ただし、こだわりがあるインフルエンサーには「純粋にオススメできる製品でないと嫌だ。御社製品はXXが理由でオススメできない」という理由で依頼を断られる可能性もある。 わずかこの2点を質問するだけで、「商品を売ってくれるインフルエンサー」に出会える可能性はぐっと上がるだろう。売れない広告を出すくらいなら、投下しない方がマシである。インフルエンサーへの投資が増える今だからこそ、ザルな投資にならないよう警鐘を鳴らしたい。...

  経営者のみなさん、きょうも「金は出せないが労働力が足りない」のジレンマと闘ってますか?   起業すると、だいたいここが悩むポイントになりますね。会社の経営状況を考えると高い給料を払って人を雇うのはしんどい。外注に出すとコストがかかる。この一見解決不能に見える矛盾を解決するために取り得る方法は、とりあえずひとつしかありません。   「まずは君が頑張れ!」です。詳しく解説します。 そもそも最初から人をお金で雇って利益を挙げるのは無理 あなたが起業するにあたって、どういう経緯でどれだけの資金をどうやって集めたかは知りませんが、そもそも起業して最初から、事業のみで、設備投資もふくめて安定して黒字であり続けられるのはよほど稀有な人です。   たとえば、今まで会社員としてやっていて、一定の取引先を確保できていた「あなたでなければできない仕事」を、退社後もそのままフリーになって請け負う、と言ったような特殊な状態でなければ、赤字は絶対に出ます。まず、自分ひとりで起業している状態で、社員やアルバイトを安定して雇えるようになるのは相当先の話だと思ってください。   アルバイト一人雇うのに、東京都だと最低時給は958円です。一か月の稼働日をざっくり20日として、7時間働いてもらったら、13万4120円という固定経費がかかることになります。あなたの事業は毎月13万4120円を人件費に取られても回り、なおかつ自分の生活も成立させられるほど儲かっていますか?儲かっていないなら、お金で人を雇うのは当分あきらめて、別の手段を考えましょう。 人にはお金を払わずに動いてもらう 自分一人でいくら頑張っても手が回らない、人手が欲しい…。事業をしていれば当然そういう状況も起こると思います。どうしますか。常勤バイトを雇うことはできない。では、短期バイトを雇いますか。それも、外注に出すのと同じことです。自分一人の生活すらおぼつかないのに、他の人をお金で雇ってコストをかけますか。そんなことをやっていたら、おそらく一生あなたの事業はパッとしないままでしょう。   ではどうするか。簡単です。「お金を払わずに人に動いてもらえばいい」のです。勘違いしてほしくないのは、これは別に人をタダ働きさせろという話ではないということです。つまり、人を動かす原動力はお金だけではない、ということです。   そもそも、なぜ人に仕事をしてもらうのにお金を払うかというと、「やりたくもないことをやらせるから」です。特に大企業や、ある程度安定した企業になると、業務内容が多岐にわたり、「やりたくないことが仕事内容に含まれてくる」ので、「毎月いくらのお金を払うから、あなたの好きなことも好きでないこともセットでやってくれないか」という雇用契約をきちんと結ぶ必要があるのです。   これが、「その人に完全にやりたいことしかさせない」のであれば、その人をお金で雇う必要はないし、むしろ嬉々としてやってくれるのです。そう、東京大学の本田由紀教授が提唱した「やりがい搾取」です。 「逃げ恥」から学ぶ「間違ったやりがい搾取」 「やりがい搾取」は基本的にブラック企業とセットで語られます。あるいは、ネットや友人関係で、他人の技術を安く(あるいは無料で)使おうとする人に対しても使われます。そして、これらの「やりがい搾取」が問題とされるのは、おおむね「やりがい搾取の方法が間違っている」からです。「やりがい搾取」という行為が一概に悪いわけではなく、「間違ったやりがい搾取」が問題なのです。   ひとつ、皆さんが理解しやすそうな例を挙げてみましょう。2016年の大ヒットドラマ、「逃げるは恥だが役に立つ」の中で、主人公の森山みくり(新垣結衣)が、商店街の面々に「人の善意に付け込んで、労働力をタダで使おうとする。それは搾取です!」と力説する場面があります。   この場面で描かれているのは、たしかに「間違ったやりがいの搾取」です。それも、「途中までは正しく、途中から間違ったやりがいの搾取になった」という意味で非常にいい例です。このシーンの展開を、あえて改行や太字を入れず、一連の流れとして起こしますので、皆さんも「どこから間違ったやりがい搾取になったか」を考えてみてください。   ==== 親友のやっさん(真野恵里菜)の経営する八百屋がなかなか上手くいかないと愚痴をこぼされたみくりは、再建策として、パン屋や八百屋とコラボするなど、アイデアを出してあげる。すると、やっさんに突然「一緒に来て!」と商店街を活性化するための会議に連れて行かれ、そこでみくりは近所の神社で青空市を開くことを提案する。その案は会議で採用され、さらにいろいろとアイデアを出すみくりは、商店街のメンバーから、青空市の運営について「森山(みくり)さん、手伝ってくれないかな?」と頼まれる。ノーギャラでやってほしいという商店街の面々に、みくりは立ち上がり、「人の善意に付け込んで、労働力をタダで使おうとする。それは搾取です。例えば、友達だから、勉強になるから、これもあなたのためだから、などと言って、正当な賃金を払わない。(中略)私、森山みくりは、やりがいの搾取に断固として反対します!」と演説する。 ====   さあ皆さん、どうでしょうか。どこで間違えたのかわかりましたか。みくりが親友のやっさんの八百屋に関する愚痴をこぼされて、再建策を考えてあげるのは、みくりがもともと突拍子もない発想や妄想をするのが好きで(その描写も何度もあります)、ほぼ100%みくりのおせっかいでやっていることです(むしろ以前には、やっさんがみくりの、経営の実態をわかっていない思いつき発言に不快感を示したことすらあります)。   この部分において、再建策を考えることはやっさんがみくりに頼んだことではありません。完全なみくりの自由意思(第一段階)です。これを受けて、みくりは商店会の会議に連れて行かれます。みくりは最初は困惑しつつも、青空市というアイデアを思いつき、やがて嬉々として青空市の展開案を語りだします。お店の業態によって青空市に出す品物まで考えてあげています。これは、やっさんがみくりに頼んだことではありますが、みくりはそれに面白さを感じ、自ら楽しんでアイデアを提供しています。   そして、みくりはここまで一切お金の話をしていないのです。ここまでが「正しいやりがい搾取」(第二段階)です。商店街のメンバーは、みくりがポンポンとアイデアを提供するので、じゃあいっそ、みくりに青空市を手伝ってほしい、と言い出し、盛り上がり始めます。ここでみくりは豹変します。「ちょっと待ってください。えっ、今の話によると、私に手伝えっていうのは、ボランティアで、ノーギャラでやれってことですか?」と言い出します。   ここが重要なポイントです。   みくりは発想や妄想をするのは好きで、そこまではタダでもやりたいと思っていますが、青空市を運営したいわけではないのです。商店街のメンバーが「俺たちだってノーギャラだよ?」と言い出し、みくりは「そりゃ皆さんは自分たちの商店街だから」と言い返し、そして例の「搾取」の演説につながるわけです。   つまり、みくりはイベントの運営なんてやりたくないことだからお金を要求したのです。やりたくないことをお金も払わずにやらせようとする、この部分は「間違ったやりがい搾取」(第三段階)となります。「逃げ恥」は恋愛や結婚についてきわめて秀逸な考察を含んだドラマでしたが、じつは全編通して「仕事とその対価」というものを徹底的に追求したドラマでもあるのです。 「正しいやりがい搾取」実例 前段で、「やりがい搾取」には三種類ある、という話をしました。   1.そもそも頼んでいないのに自由意思でやってくれているもの(第一段階) 2.頼まれたがそれをやることは好きで、むしろ積極的にやりたいので、無料あるいは格安の料金(や、お返し)でやってくれるもの(第二段階) 3.本人は別にやりたくないのに、友達だから、あなたの勉強になるから、などの「こっちが勝手に考えた理由で」料金を値切ったり、無料でやらせたり、場合によってはお金を取ったりすること(第三段階)   の3つです。   この中で「間違ったやりがい搾取」は第三段階で、世のブラック企業や、他人の技術を安く使おうとするのは基本的にこれです。「お金を払わずに人に動いてもらう」というのは、この第一段階と第二段階をうまく使おう、ということです。   具体的な場面が思いつかない人に、私の事業での例や、一般的な例を挙げてみましょう。   まず第一段階。私が経営しているリサイクルショップは、基本的に人が自由に出入りできるようにしています。私が店先にいたころは、来た人にタダで物をあげたり、ネット環境や寝る場所を提供したり、お菓子や食事を振る舞ったりしていました。そうすると、だんだん店が近所の暇な人の溜まり場になっていき、常時人がいるようになってきます。そうすると、誰かが勝手に店番を始めたり、店の掃除をしてくれたりするようになります。   私が何も頼んでいないのに、です。「いつも良くしてもらっているのに、何もしないんじゃ申し訳ないから」なんて言われたりします。私が経営しているバーも同じで、店を閉めるときにお客さんがグラスをまとめてくれたり、椅子をならべてくれたりします。   世の中の例で言えば、家の軒先に畑で獲れた作物を置いておいてくれるおばさんとか、飲み屋で楽しく話していただけなのに飲み代をおごってくれるおじさんとか、(今の世の中でそれが正しいかは別として)ある年齢まで独身でいると、「イイ人紹介してあげるわよ」なんてやたらとお見合いをセッティングしてくれるおばさんとかがそうです。   店番も野菜もお見合いも、しかるべきところに頼んだらお金がかかるものです。それをなぜ彼らはお金ももらわず、頼みもせずにやってくれるのか。友好関係にあるからです。普段から挨拶をしていたり、相手が忙しそうだったらちょっと手伝ってあげたり、お菓子をあげたりしていると、自然と向こうが手伝ってくれたり、親切にしてくれたりするものです。   つづいて第二段階。たとえば鉄道好きの人に「ここから青森まで新幹線を使わずに行きたいんだけどどんなルートがオススメ?」と聞くと、予算別と目的別に3つぐらい提示してくれたりしますね。これは「本人が趣味でやってくれる」パターン。「逃げ恥」のみくりの例もこれです。   この場合、それをやってもらうこと自体を本人は楽しんでいるので、やってもらうこと自体が対価になります。披露宴の友人余興なんかもそうです。余興やってよー、とお願いはしますし、場合によってはお礼をいくらか包むこともありますが、衣装を準備したり、練習時間を割いたりしてやってくれることに対して時給ベースで真っ当なお金は払っていません。それどころか、ご祝儀をくれたりします。   その代わり「私の時は〇〇ちゃんやってね」みたいな感じで、お返しを要求されることがありますが。あるいは、先日急逝された、俳優の大杉漣さん。話を聞く限り、お忙しい中、高校生劇団や大学生映画サークルが持ち込んだ脚本を読んで意気に感じ、ノーギャラや格安で出演されることがたびたびあったそうです。これは「やることに意義があるので、お金ではない方法で解決する」パターンです。   大杉漣さんほどの名優を動かす「情熱」だとか、演劇界発展のために、など「目的、意義をプレゼンできるかどうか」です。どちらの段階も、まずは「友好関係にある人を拡げる」ことが大事です。友好関係にある人が増えると、それだけ無料で動いてくれる人が増えるし、本人が趣味でやってくれることの種類も拡がるからです。もちろん、そのためにはこちら何か価値を渡してあげることが必要です。   先述したように、私の店ではタダで商品をあげたり、お茶やお菓子を出したり、人が忙しいときには手伝いに行ったりしていました。「やりがい搾取」は他人だけに向けるものではありません。自分にも向けるのです。冒頭に挙げた「まずは君が頑張れ!」とはそういう意味です。いくらなんでも通りすがりの人に店番手伝ってくれとは言えません。 「正しいやりがい搾取」の始め方 私が店で言われた「いつも良くしてもらってるのに、何もしないんじゃ申し訳ないから」とか、披露宴の余興を「私の時は〇〇ちゃんやってね」と言われる、などは、つまり「(擬似的な)債権債務関係を日本円以外で成立させる」方法であり、すなわち「人にお金を払わずに動いてもらう」手段なわけです。この概念は別に新しいものではありません。きわめて簡単な日本語で説明できます。「貸し借り」です。   現金でなくお互いの信用で取引する、ということを、人は昔からやってきているのです。その「貸し」を成立させるために、「まずはあなたが人のために何かをする」ことです。そうすれば、人はあなたのために、自分のやりたい範囲の何かを、お金を払わなくてもしてくれます。これが、「正しいやりがい搾取」のやり方です。「正しいやりがい搾取」は、お互いにメリットしかないので、どんどんやりましょう。   反対に、友達でもなんでも、信頼関係も出来てない人からやりたくないことを受けるときにはちゃんと金を取りましょう。突然DMを送りつけてきて、twitterのアイコンをタダで書けとか、ママ友が「裁縫得意でしょ、ウチの〇〇ちゃんのお弁当袋作ってよ、ちゃちゃっとやっちゃって」的なことを言い出したら馬鹿じゃないかと断ってかまいません。   「やりたいことはストレスがかからないから金をもらわなくてもやるが、やりたくないことはストレスがかかるから金をもらわないとやらないし、その金額がいくらかは自分で決めていい」のです。 「ストレスーノンストレス」バランスという概念 「ワークライフバランス」なんていまさら言いだしてももう遅いと思います。人はストレスを受けるのがイヤなのです。それに耐えられる人はごく一部で、そのストレスに見合ったお金をくれる企業もごく一部です。他の多数の企業は、「安いお金でいかに気持ちよく働いてもらうか」を考えなければならないという流れになるでしょう。これは、現在の好景気を受けた就活市場の活性化が十数年単位で続かない限り変わらないと思います。   企業は、「一旦上げた給料は下げられない」ことを長い不景気で知ってしまったからです。景気の波の動きが読めない中で、「固定給をベースアップする」という対応策を取れるのは、「うまく行かなくなったらすぐ潰す」つもりの企業しかありません。それ以外の企業は、現状の人件費の固定給ぶんを増やさずに、変動給で対応するか、アウトソーシングするか、その他の部分の待遇をよくして働いてもらうしかないのです。   こうなると、むしろ「お金は貰えてもやりがいがない」という方が問題です(お金を払わないのは問題外)。せっかく採った人材が「お金はそんなにいらないので楽に暮らしたい」という理由で辞めていってしまうからです。怒鳴られながら高い給料をもらうよりも、「いつもありがとう」とか言われながら、雰囲気の良い職場でやりたいことをやれるほうがよっぽど楽しく、よっぽど長く続くのです。   「安いお金でいかに気持ちよく働いてもらうか」。これこそがまさに「正しいやりがい搾取」です。人件費をかけられない経営者は、「ワーク」と「ライフ」のバランスではなく、「ストレス」と「ノンストレス」のバランスを考えなければならなくなります。   まとめるとこういうことです。人はやりたくないことは高いお金をもらわないと(あるいはもらっても)やりたくない。だが、やりたいことならタダでもやる。この「ノンストレスを価値化する」ことこそが次世代経営者の仕事なのです。   ひとがノンストレスで出来ることを見つけてあげましょう。それを経営に取り入れましょう。金がないなら搾取するしかありません。上手な搾取は、高い従業員満足度は表裏一体のものです。上手な搾取をやれる経営者になって、みんなを幸せにしましょう、みんなで楽に暮らせる社会を作れるように、やっていきましょう。     ...

  さぁ、事態は9回裏2アウト満塁の3点ビハインド。あなたがバッターボックスに立つ時がついにやってきました。磨き上げられたバットが初球の真芯を捉え、ボールはバックスクリーンに突き刺さる。そんな夢を見たことはありませんか?   残念なことですが、現実にそういう奇跡的な成功はあんまり起こりません。しかし、たまに起きることもあります。自分の身にそれが起きた人は「こうやったら上手くいった」というお話をするでしょう。あなたは「自分もやりたい」と感じると思います。   例えばこういうことです。あなたの描いた夢のような計画に数億の出資が集まり、事業は大成功。あなたは最年少上場記録を塗り替え、日本を代表する実業家となる。   そんな夢のような成功は、恐らくこれを読んでいるあなたには訪れないでしょう。少なくとも、僕には訪れませんでした。僕は数千万円という初創業にしては潤沢な資金を持って資本主義社会に挑みかかりましたが、巨大な資本主義の流れの中に、僕の夢を乗せたお金は飲み込まれていきました。僕がかき集めた出資金など資本主義の巨大さに比べれば、大河の一滴にもならなかったように思います。   今はどこを流れているんでしょうね、あのお金。 300万円の起業も3億円の起業も本質は同じ 初めて事業をスケールさせることをたくらむ時、多くの人は「なるべくデカくしよう」と考えてしまうと思います。デカい方がいっぱい利益出そうですし、格好いいですよね。社員何十人も使ってみたい、という気持ちはあるでしょう。しかし、往々にして正解は逆です。事業は利益率が同じなら、小さければ小さいほど優秀なのです。   例えば、飲食店の利益率は「かなり良い」お店で10%程度です。年に4,000万円(かなり立派な数字です)を売り上げて、400万円の利益です。年に4,000万円売り上げる店なら、従業員を3人くらいは使っているでしょう。店舗の賃料、設備、什器、その他もハチャメチャに金を食います。おまけに手間も時間も食います。   しかし、300万円で仕掛けた事業で年10%の利益を出すのなら、少なくとも飲食店を一軒構えるほどのリスクはまず生じません。全損しても「いい経験が買えました」と強がれると思います。   そして、300万円の事業を組むほうが、3億円の事業を組むよりも難しいとさえ言えます。3億円あれば色々なことができます。さまざまな無茶が利きます。金にモノを言わせてゴリ押しもできます。しかし、300万ではそうはいかない。ギリギリまで絞り込んだ極めてソリッドな事業計画が必要になります。   カネ、モノ、ヒト、加えて「リスク」。これらは全てギリギリまで絞り込むべきなのです。事業のサイズというのは、大抵の場合そのままリスクの大きさです。   例えば、飲食店には「食中毒」という恐ろしいリスクがあります。これは最悪、人が死ぬやつで、飲食屋はわりと保険に入らない人が多く(本当に多いんです)、恐ろしいにもほどがあります。「火災」とかもありますね。店舗数が多ければ、これらのリスクは当然増えます。小さいに越したことはない、というのはわかるでしょう。 リスクを小さく、試行を増やせ 「小さく産んで大きく育てろ」というのは遥か昔より言い伝えられている起業の原則論ですが、僕はこれに非常に懐疑的でした。だって、小さく産んでそこにフルコミットして育てていたら、資金はともかく時間はガッツリ持って行かれるわけです。   「そんなことなら、破産どころか物理死まで覚悟で大きく仕掛けてダメならくたばればいいじゃねえか、どうせたいした人生じゃねえんだ、死んでやろうじゃねえか。むしろ死なせてくれよ。」って思ってました。   これが僕の起業の失敗理由の一つです。   僕の創業動機を一つ一つ分析していくと、どこからともなく「それは破滅願望では?」というものが飛び出してきます。あまり直視したくありませんが、やはりそれは存在したのでしょう。ハッタリの限りを尽くして資金を集め、それを一つの事業に全力投入する「一点突破カミカゼアタック」。僕の人生を搭載したミサイルの威力は、資本主義の壁を打ち破るにはあまりにささやかでした。   夢のような計画が悪夢のような結果になる」ことは十分にありえること。また、「会社が潰れる」というのは経営者にとって大体の場合、悪夢ですので、設立後10年以内に94%の会社が潰れる今の日本では、大抵の起業は幸福な結果に終われないと言い切れると思います。   一度転んでも誰も同情しませんし、「あそこまでよくやったよな」とは言ってくれません。人格も尊厳も人生も全て否定されます。そういうものなのです。   人間はあまりに追い詰められると死んでしまいます。経営に失敗した社長も人間ですので、追い詰められすぎると死んでしまうことがあります。「死なないこと」が経営者にとって重要な資質であることは間違いないでしょう。死に至るリスクを、企業や経営者はどのように軽減すべきか、とても重要なテーマではないでしょうか。 事業は最速クリアしなくていい もっとも優れた起業計画とは「小さくて利益率が高い事業」です。加えて、成長余地が大きければ言うことナシ。しかし、いきなりこんなもんを生み出すのは大抵の人には不可能です。だから、僕は最近起業志望者にこんなことを言っています。   資金は分散しろ、事業は分散しろ。小さくいくつか仕掛け、全張りするならよく育った苗にしろ。中途半端に育った苗だって売って金にできたりもするんだ、と。これ、投資家にとっては基本中の基本ですよね。   おそらく、あなたの産んだタマゴは稚魚のまま、あるいはタマゴのままくたばることになるでしょう。しかし、あなたはそこから経験を持って帰ってくることができる。最悪でも「良い買い物をしろ」ということです。起業に関して「勉強して始める」というのを僕は推奨しません。実際に創業して事業をスケールさせるまでに「本で読んだ知識」で役に立ったものが、一つも思いつきません。   サッカーをやるならルールブックを読む必要はあるけど、それはゴールを決めるのとは関係ない話ですよね。もちろん、ルールを知らなければ即座に笛が鳴ってペナルティハンマーが人間を粉砕するのが市場なので、それはそれで大事だとは思うのですが。実際的なノウハウについては「死んで覚える」しかなかった、それは確信しています。   起業においては1-1のクリボーでガンガン人が死にます。ゲームを始める前に、ゲーム機の電源が入らない人もいます。いきなり猫がリセットボタンを押すこともあります。お母さんが掃除機アタックでセーブデータを消滅させることもあるでしょう。これらは全て「サイズ感によっては命に関わるやつ」の喩えです。市場では、人が死にます。   「なんで俺は残機ゼロからノーミスクリアできると思ったんだよ」って、僕はよく思います。せめて資金を2、いや3分割して3回仕掛ければよかった。それでも1発1千万円以上は使えました。   そして、現在の僕が「300万円でやれること」は創業初期の僕が「3,000万円でやれること」とあまり差がない、下手すりゃ前者の方が大きい可能性もあります。起業というのは、事業というのはそういう戦場です。   夢の計画を練ってみてください。人生の最速クリアを狙う必要は1ミリもありません。危うく最速クリアしそうになった僕が言うんだから信じてくれていい。さぁ、やっていきましょう。     ...

  公園に歩行者天国、デパートの屋上、ロックフェスまで、さまざまな場所でパフォーマンスを見せ、人々を楽しませる大道芸。その大道芸の収入だけで生活している「プロ大道芸人」のジョー次。                     日本では数少ない「プロ大道芸人」のジョー次にインタビューをおこなった、柔道場で。           大道芸人になろうと思った理由   ―プロの大道芸人をやってらっしゃるということで、他に仕事はせずにこれ一本で生計を立てているということでしょうか?   ジョー次:そうです。数年前まではアルバイトもしていたのですけど、最近は全くそういうのやらずに、パフォーマー1本でやってます。地元の静岡を中心に活動しています。   ―大道芸に興味を持ったきっかけは?   ジョー次:毎年、「大道芸ワールドカップ」というイベントを地元の静岡でやってるんですよ。中学2年生の時にそれを友達に誘われて見に行ったんです。そのイベントにジャグリング専門ショップが出店していて、その体験コーナーで初めて中国ゴマに触りました。   当たり前ですけど、全然できなくて。でも、お店の人が親切にやり方を教えてくれて、それがすごく楽しかったんです。その場で思わず一番小さいのを一つ買っちゃいました。小さいのは扱いにくいんですが、それが一番安くて。それで頑張って練習し始めたのが最初ですね。   人前で披露することにハマったのは高校生のときです。学校内でやったパフォーマンス大会にジャグリングで出て、すごく盛り上がったんですね。自分が何かをやって盛り上がるって状況にハマっしまいました。   ―学校を卒業してすぐ大道芸人になったんですか?   ジョー次:いや、中学、高校、専門行って就職して、2年少しやってから、こっちにきましたね。自分が好きなもので生活できたら一番それがいいんだけど、そこに向けて努力してこなかった自分に気づいてしまって。ジャグリングが上手な人たちが陰でものすごく努力していることも知って、自分もちゃんとやってみようと向き合ったのが7年前ぐらいです。 大道芸人の数   ―今静岡で大道芸人だけを商売にしている人ってどのくらいいるんですか?   ジョー次:全国だと1,000人くらい、静岡だけだととても少ないですね。10人はいないと思います。静岡の大道芸ワールドカップ出演者も、ほぼ県外の人ですね。働きながら土日だけパフォーマンスやるっていう人であれば、もう少し増えますが。   ―何県の人が多いんですか?   ジョー次:東京、神奈川が多いですね。あとは名古屋とか愛知県、大阪。ライセンスがあるところは盛り上がってる感じがしますね。   ―ライセンスって?   ジョー次:自治体が発行する「大道芸ができるライセンス」というのがあるんです。例えば東京都公認の「ヘブンアーティスト」。都内には上野公園や葛西臨海公園、お台場とかいろいろポイントがあって、そのライセンスを取得するとそこで大道芸ができるようになります。仙台の「まちくるパフォーマーズ仙台」、大阪の「大阪パフォーマーライセンス」とかも有名ですね。いずれも審査があるので、それをパスする必要があります。 大道芸人の日常   ―普段はどこでパフォーマンスをしているんですか?   ジョー次:メインは静岡県内ですけど、県外も。北は北海道で南は愛媛県まで。少し中途半端ですね(笑)。海外も合わせると2016年に台湾とイタリアに行きました。台湾ではアジアカップというのに出たり、マジックのコンベンションのゲストステージに出させていただいたりしました。イタリアでは大道芸のフェスティバルに出演をしました。土日でイベントが入ってないときは、投げ銭でできる場所で大道芸をしてますね。   ―イベントはオファーが来るんですか?   ジョー次:オファーを頂くときもあれば、自分から申し込むこともあります。オファーを頂くのは静岡とかその近県が多くて、遠方からはあんまり無いですね。交通費とか高くなっちゃうからだと思います。   ―厳しい世界ですね…。ゲリラ的にパフォーマンスを行うことはあるんですか?   ジョー次:ゲリラでやっている方もいますが、僕の場合はきちんと許可を取っています。静岡市には昔から「しずおか大道芸のまちをつくる会(通称「しまる会」)」っていうNPOがあるんです。その会では静岡の伊勢丹前の十字路と、商業施設のエスパルスドリームプラザ、日本平動物園。その3カ所で許可を取ってパフォーマーが大道芸できるように、予約を受け付けているんです。今僕はその会の代表もやらせてもらってます。   ー話全然変わるんですが・・・そのバッグ、かっこいいですね?   ジョー次:あぁ、これ使い勝手すごく良いですね。     道具も入るんです。   ...

モデルでタレントで下着ブランドの社長「原田 奈津美」。   芸能活動をしながら会社社長をやっている。実際に芸能活動をしている人間がどんな商いをしているのか、ランジェリーを扱う原田奈津美の商い戦術はうまくいっているのか・・・。   原田奈津美と番組で共演し、下着ブランド「ivyy(アイヴィー)」のPRにも協力している「RIEKO」をインタビュアーに据え、なぜランジェリーなのか、ivyyってそもそも知られているのか、どんな活動をしているのか、「原田奈津美」にいろいろ聞いてもらった。           ただ話を聞くだけではおもしろくないので、ivyyを着用して、ランジェリー姿で対談してもらった。 左:原田 奈津美 右:RIEKO ランジェリー商い「ivyy(アイヴィー)」で勝負する原田奈津美 ―今日はよろしくね。なっちゃんの商い話について教えて!   原田:はい!   ―なんでランジェリーを扱うことにしたの?   原田:芸能活動を続けるっていう未来を考えた時に、いつまで芸能で続けていけるのかなと考えて、芸能を辞めて、芸事が何もなくなって、そのあと私に何が残るのだろうと思った時に、男にすがって生きるしかないのかな?   芸能人を辞めて、その時、相手もいない最悪の状態だったら、また親に頼って生きなきゃいけない。そんな格好悪いことしたくないなと思って。   元々小学生の頃からビックスターになるという夢があって(笑)プラス、「人にありがとうと言われる仕事をしたい」っていうのもあったので、芸能活動以外で何かやりたいことがないか考えた。   モデルをやっていたので、服をたくさん持っていて、自分のクローゼットに入らない服を処分するか保存する場所として、貸出クローゼットみたいなビジネスを思いついたんだけど、それは既にあったんだよね。   既にあるものをやってもしょうがないし、そもそもつまらないなと思って、いろいろ考えた時に、自分が欲しいもので、他の人も欲しいなと思うようなものを作りたいと。そこで、自分って下着は海外に行った時にしか買わないなっていうのに気づいて。毎日着けるものなのに、海外に行った時にしか買えないのは、日本には胸のサイズが大きい人向けの下着の選択肢が少ないからだなって。 そう感じている人はたくさんいると思って、「下着作ろう、ないなら作ろう」っていう感じで。そもそも日本の下着メーカーさんの下着は着たくなかったんだよね。可愛いと思える下着が少ないし、ちょっと高くて。     「ivyy」のコンセプトのひとつは「買える値段でかわいいもの」。私と同じ年代ぐらい、20代の人でも買えるぐらいの値段設定にしたくて、原価から考えるとあり得ない値段設定にしてる。   海外には、かわいい下着がいっぱいあるし、選択肢がたくさんあって楽しいし、なんで日本にはないんだろうって。そういう女の子たちに選択肢を増やしたいっていうのでivyyをはじめたんだよね。   ―どんなことやってるの?   原田:ほぼすべての工程を自分でやってるよ。   ただ、デザインのパターン起こしっていう、パターンを起こすところに関しては、ちゃんとプロの方にお願いして、形にしてもらってる。デザインとどういう素材を使うかとか、そういうのはパタンナーさんと相談しながら作って、それを工場の方にお願いする形。   パタンナーさんがいないと、この工程はできないけど、私もイメージでしか分からないから、、とりあえずサンプル作ってくださいとお願いしてる。自分のサイズで作ってもらって、着用感を大事にしたいから「ここがおかしいです」みたいに言うと、原因を一緒に考えて修正してくれる。いろいろな人に助けられてもらって、やっている感じ。1人でやっているとは言ってるけど、周りの人がいないとできない。     私はアパレル業界も知らないし、下着業界も知らないまま業界に飛こんだというところもあるんだけど、下着って、ストラップとカップ、レース、後ろのホック、ワイヤーを保護するワイヤーループとか副資材が多くて、1個作るのにだいぶお金がかかる。   だから工賃もすごく高いし、ロットを積まないと縫ってくれない。繊細なものだからお金はかかるのは仕方ないけど、安く売るってなると、だいぶ会社の規模が大きくならないと利益が出てこないっていう厳しい現状はあるよ。 ivyy(アイヴィー)のプロモーションはやっぱりインスタ?   ―売ってるところって、ネット通販だけ?   原田:基本はネット通販。ただネットだけだと商品の良さが伝わりづらかったり、サイズ感もわかりづらいから、不定期でイベントを開催して私がお客様に直接説明をしたり試着ができたりする機会を設けてる。   購入率は当然といえば当然だけど試着した人の方が高い。リアルで接触して試着して、その後購入までしてくれるとリピーターになってくれる人が多くて、リピーターの方は基本ネットで購入してるね。地道な活動だけど、リアルなコミュニケーションも行った結果、認知度も上がってきて、安定して売れるようになってきてる。     ―リアルな接触以外で、認知度を上げる仕掛けはどんなことをやってるの?   原田:広告が多いかな。主にinstagram広告(以下、インスタ)とFacebook広告かな。   インスタ広告が一番インプレッションがあって、ターゲットとかも絞れるし、拡散力でいったらTwitterの方があるけど、商品を見せるという場ではインスタが一番、世界観も伝えやすくて。   あとは、私のもう1つの仕事がタレント業で、「社長」としての露出が増えてきているかな。メディアに出演すると認知度が上がって、インスタやTwitterのフォロワーがすごく増えるんだよね。やっぱり1番はテレビかな。すごい。サイトのアクセスもすごい延びる。みんな見てるよね、割と。   地道にポップアップストアに出店したり、百貨店でイベントに参加することも1つ認知度を上げるにはいい仕掛けとは思ってるけど、お金もかかる場合があるからivyyの認知度を上げるには私のタレント業を上手く絡めてPRしていく形が効率が良い。 芸能人より身近で親近感の湧く人   ―広告に芸能人を起用する?   原田:費用対効果を見ると芸能人より一般の方を起用させていただくことが多いかな。親近感がある人がよくて、加えてフォロワーが多い人。でもフォロワーが多いだけではダメで、やっぱり、いいね!やコメントが付いている人にお願いしてる。コメントみるのが一番大事。   フォロワー数が1万人以上いるのに、10人しかコメントが付いていないと、リアルなファンはついていないってこと。売りたい商品をPRしてもらって、購買まで繋げたいなら、フォロワー数より、コメント数が多い人の方が効果的。   広告予算をたくさんフォロワーを持っている人にドカンと使うんじゃなくて、コメントやいいね!が多い人たちをリストアップして、PRするのがいい。   ―やっぱりスタイルが良い人がいいのかな?   現実離れしていない身近に感じる、少し一般人寄りの体形が一番いいのかもしれない。自分(購入者)と比べてさほど遠くない、という距離感がいいかな。モデルさんよりも、親近感わく子のほうが今は売れるってこともあるし。     親近感っていっても外見クオリティはやっぱり大事で、自分がかわいいと思わない人から買おうとは思わないし、興味も湧かないから、外見クオリティも大切。きれいな子が載っていたほうが、こうなれるのかなって思ってもらえるし。   ―やっぱり見た目は大切ってことだよね。   うん。でも、外見クオリティの高い子って、立ち振る舞いから違うと思うんだよね。私は口が悪い方だけど、顔だけ良くても言葉遣いだったりとか、動きだったりとか、そういう所作が悪いと外見クオリティは高められないし、美女にはなれないと思う。   顔はぱっと見で美女だと思われないけど雰囲気がかわいい子で、所作が綺麗な子だったら美女って言われるかもしれない。やっぱり中身は大事かな。努力でちゃんと自分を磨いていないと、美女と言われないと思うし。努力していて諦めない子は外見クオリティを高めていけるんじゃないかな。   早々に諦めて、「自分にはこういうの似合わないし」とか、「努力しているのに」みたいに思っている子は性格も良くなくなっていく。荒んだ感じになっていっているなと思う。生まれながらに美女といわれる子も、向上心を持って努力をしないと女の子は輝けないよ。     ―宣伝してくれる人探すの大変じゃない?   原田:かなり大変だよ。インスタ見てるだけだと、何カップか分からない。だから、希望するカップサイズだと思われる人たちを集めてくれる方に頼んだり、周りのインフルエンサーの友達に頼んだりしてEカップ以上の人を探す。   「ivyy」の商品でいうと、女の子に対して女の子のファンがついていないと、効果的ではないんだよね。RIEKOちゃんみたいに女性のファンもついていて、女性からのコメントもついている、憧れの存在というか、「何の下着を着けているんですか」って質問される人じゃないと、認知度をあげるためのPR効果は薄いかな。   Iカップにサイズ展開増やした時、RIEKOちゃんに協力してもらったけど、費用対効果は、かなりある。RIEKOちゃんが上げてくれると、アクセス数もすごく増えるし、買ってくれる子も増えるので、RIEKOちゃんは女性から憧れの存在なんだなって思う。   ―実際「ivyy」で芸能人を使ったパターンと、一般の人を使ったバターンと両方試したことはある?   原田:あるよ。でも、胸が大きい子に特化しているので、芸能人となると、どうしてもグラビアアイドルの方になっちゃうんだよね。グラビアアイドルの方って男性のファンが多くて、認知度としては広がるけど、購入率としては一般の方のほうが費用対効果はあるのが現状かな。だからファン、フォロワーの男女比率層も考えてプロモーション依頼する人を決めてる。 「ivyy(アイヴィー)」の今後の作戦   ―「ivyy」の次の仕掛けは?   原田:新作からのモデルも私が主に広告塔になっていきたいと思っているんだけど、今までとは違うカテゴリの子にも協力してもらいたいなぁって思ってるの。   例えば、ゴーゴーダンサーの方に下着を着用してもらって、費用対効果はどれぐらいあるとか試してみたい。広告宣伝費使ったけど、全然リターンなかったですってなるかもしれないけど、それも1つの勉強だと思ってる。   今流行りのインスタやインフルエンサーマーケティングじゃなくて、原点に戻って手売りという手法もやってみたいと思ってる。商品に対する思いも話せるし、直接会って伝えたほうがやっぱり伝わりやすい。商品渡さなくてもチラシ作って、渡しながら説明するとか、いろいろなやり方があるかな。それはまだ模索中だね。         限定企画!「ニューアキンドセンター...

  起業しよう。   そう考えたあなたは、すぐに自分ひとりでできることの限界に気づくだろう。営業は得意だが経理に疎い。法的知識はあってもプレゼンがド下手。誰だって得手不得手はある。ワンピースのルフィだって、仲間がいなければすぐに夢破れるはずだ。   だから事業が黒字化する前の段階で、あなたは仲間を募るのは自然な流れだ。   しかし、ふわっとしたアイディアしかない段階で労力を割いてくれる人、仲間になってくれる人は少ない。もとい皆無に近い。愛しの彼氏・彼女ですら「その起業、やめたら?」とやんわり制止するだろう。数少ない友人だけが「それ面白いじゃん」と寄ってきてくれる。かくしてあなたの孤独な起業プランは、仕事仲間となった友人とともに描く壮大な夢となる。 友情か、成功かを問われる日がくる そして労力の末に、売上は伸びる。仲間は有頂天になる。会社を辞めてよかった。お前を信じて良かったよ。チームは互いを褒めあい、さらにハードワークをこなす。   だが夢の楽園は続かない。   あなたはより大きな社会的成功を夢見て、事業の規模をどんどん大きくしたくなる。もっと人を雇おう。経営を多角化しよう。今の儲けを投資しよう。そして仲間の反対に出会うだろう。「何で今のままじゃだめなんだ?もうこんなに儲かってるのに」「IPOがそんなに大事か?いまのうちに事業売却する方が賢いんじゃないか?」   あなたは愕然とするだろう。「共に成功しよう」と語り合ったはずなのに、成功の定義が仲間と大きく違っていたことを思い知るからだ。あなたは年商100億円がほしい。でも仲間は5,000万円あればいいと言う。そこであなたは選ばなくてはならない。仲間を全員切り捨てて大きな成功を目指すか?それとも小さなビジネスで満足するか。 人を切り捨てる痛みに耐えられるリーダーは少ない これは私の話だ。かつてうまくいった起業があった。といっても個人事業主に毛が生えるくらいの売上を作っただけだが、学生起業にしては軌道に乗った方だと思う。しかし社員を何人も食べさせられるほどの儲けではなかった。売上がその程度だった理由は、単なるサービスの知名度不足だった。つまりここでVCからの投資や借金をしてでも営業・広告へ予算を割けば、れっきとしたビジネスになる可能性は大きかった。   けれど仲間は満足してしまった。「このまま会社員として就職すれば、この副収入で幸せに暮らせるぞ」と。そんなものは私の望んだ未来ではなかった。   そこで私は仲間を全員リストラし、事業を拡大できる人材を求め……はしなかった。残念ながらやる気が失せてしまった。年商1,000万円を切る段階で満足してしまうチームに失望しながらも、全員に裏切り者とののしられてまで友人達を切り捨てる勇気はなかった。だから事業ごと手放すことにした。「じゃあ好きにやっていいよ」と放流したプロジェクトは、いまもどこかで「副業」にふさわしい売上を作っているのかもしれない。私の知ったことではないが。   かつて「結局、皆で和気あいあい仲良くを目指すのか、厳しくとも成長する会社を選ぶのかって話になってくる」と堀江貴文氏は語っていた。(参考記事:スタートアップの会社に優秀な人材を集める方法?ふざけたことぬかすな)この指摘は、痛いほど真実だ。そして、長年培った友情と成功を天秤にかけて、それでも成功を取れる人間は少ない。   ほとんどの人にとって「なぜ成功したいか」という疑問の答えは「家族や友達を幸せにする力が欲しい」からである。目的となる周りの人を不幸にしてまで、成功をつかみ取りたい人はそういない。私だって違う。だから私は成功しなかった。シンプルな話だ。 憎まれてもいい仲間を、あらかじめ選ぶしかない そしていま、私は起業家をしている。「仲間」を失うことに怯えた起業から数年。また起業にチャレンジできたのは、友達や家族を起業「仲間」として巻き込むのをやめたからだ。私は「仲間」とミーティングをしない。代わりに従業員を雇い、彼らを信頼している。   従業員へは、仲間と同じような待遇を心がける。けれど「仲間」とは本質的に違う相手だ。彼らが私と一緒にいてくれるのは給料が支払われるからで、私が好きだからではない。もしかすると好いてくれているかもしれないが、だからといって余計に働いてもらったり、進んでタダ残業してくれたりするわけでもない。だから従業員は根本的に「仲間」とは違う相手だ。   そして従業員は「仲間」ではないからこそ、安心して起業の一翼を任せられる。ビジョンを少し違えただけであなたを憎んで裏切り、会社のカネや人を持っていきかねない「仲間」と比べて、給与を目当てに働いてくれる従業員のなんと頼もしいことだろう。起業家に必要なのは「私たち、ズッ友だよね☆」とビール缶片手に語り合う友ではない。給与の関係で結ばれた、ドライな仕事の同僚たちなのである。   いつか仲間を憎み、切り捨てる結果を迎えるくらいなら――雇用関係ほど信頼できるものも、そうないのだ。もちろん従業員だって、あなたに反旗を翻すことは多々ある。だが、そのときあなたは、相手を躊躇なく切り捨てられるのだから。     ...

業務の効率化を阻んでいるものとは?   「女性の労働参加率を高めろ」「残業時間を減らせ」など、働き方改革では様々な業務の見直しが叫ばれている。だが、その中でも一番の見直しポイントは「労働生産性を高めること」ではないだろうか。   日本は先進国の中で、労働生産性がすこぶる悪い。もちろん、生産性を高めるために様々な策を講じている企業も多いと思われるが、なかなか結果に結びついていないのが現状だろう。   それでは、なぜ日本の労働生産性は低いのだろうか?私は、日本人が労働時間に対して報酬をもらう“時給制”が当然だと認識していることが問題なのではないかと考えた。   アルバイトをしたことがある人ならわかってもらえると思うが、時給制で働くと「早く終わらないかな」「ちゃんとやっても時給は10円くらいしか上がらないし適当にやろう」と怠けてしまいやすく「生産性を高めよう」という気持ちは起きにくい。   そのため、報酬を受け取る態度が「拘束されてやったんだからお金をくれ」となり、生産性を高めて結果を出すことに、日本人はそこまで意識が向かないのではないだろうか?   そこで、結果や成果に対してのみ報酬を支払う“脱時給制”にすれば、労働生産性は上がるのでは考えた。今回は、脱時給制のメリットやそれを実現することの難しさなどについて語らせていただきたい。 脱時給制の3つのメリット まず、脱時給制にするメリットを紹介していきたい。   メリット1:効率や生産性を意識しながら働ける   クレーム処理やよくわからない会議など、生産性の低い仕事に時間を奪われてしまうケースは多い。   脱時給制にすれば、「1秒でも生産性の高い業務に取り組まなければ」と労働時間への認識がかなりシビアになり、生産性が低く成果に結びつきにくい業務に時間を取られることに激しいストレスを感じるようになる。   そのため、「それはやるべき業務なのか?」「もっと効率的にできないか?」と業務の効率や生産性を常に高い水準で意識するはずだ。   また、“生産性は低いけど必要な業務”があれば、丸ごと外注するのはどうだろうか?外注すれば全体の仕事量は減り、わざわざ人員を足す必要はなくなり、人手不足も解消され、生産性の高い仕事にのみ意識を注げられる。   人手不足を叫ぶ企業も多いが「業務が多いから人を足す」と考えるのではなく、「業務を人任せにする」という発想も今後ますます大事になっていくだろう。   メリット2:残業代目的に残業する必要がなくなる   仕事が終わらないために残業する人は多いが、残業代をもらうために意図的に残業する人も少なくない。そういう人は日中にキチンと取り組めば終わるような仕事を、夜までダラダラ引き延ばして終わらせようとする、まさに“労働生産性を下げる”最低な働き方をしていると言える。   しかし、脱時給制にすれば、残業代目当てに残業をしても報酬は上がらない。ダラダラ仕事をするほうが無駄に時間を消費することになるので、自分の与えられた仕事をさっさと終わらせようと、効率的かつ生産性の高い働き方をせざるを得なくなる。   また、基本給が少ないために残業代という“プラスα”を求めて残業していた人も、働き方次第では残業代をもらっていた時よりも高い報酬を獲得できるかもしれない。無理やり会社に残業を減らされた結果、「残業代が減ってしまい以前より苦しい生活を強いられた」ということもなくなるだろう。   メリット3:公平な給与システムになる 現在、日本の多くの企業は、年功序列で報酬が上がるシステムを採用している。もちろん、年功序列型を否定する気はない。年功序列型にすれば社員は長く会社に勤めてくれるので、戦力が流出するというリスクを減らすことができる良いシステムだと思う。   だが、年功序列型が機能するのは景気が上向いている時に限った話。「人手不足だ」「生産性が上がらない」と叫ばれている現代で、悠長に勤続年数で報酬を決めているようでは、「どれだけ頑張っても意味ないじゃん」「俺のほうが結果を出してるのに何で先輩のほうが高いんだ」と社員のモチベーションは上がらない。   脱時給制では、年齢や勤続年数に報酬が影響しないので、公平な給与システムを提供できるだろう。   そもそも、海外では“能力”や“結果”ではなく“年齢”で報酬を決めるのは差別だと考える傾向がある。イギリスでは、2009年に「年功序列は差別だ」という訴えが80件以上起きており、私たち日本人は「なぜ給料の高さに年齢が関係するのか?」という根本的な部分に疑問を持つ必要がありそうだ。 結果よりプロセスが大好きな日本人 脱時給制のメリットについて語ったが、正直、脱時給制を導入するのは様々な障壁がある。その中でも私が一番のネックだと考えているのが日本人のある特性だ。   日本人はとにかく結果ではなくプロセスを重んじる人種である。例えば、毎日素振りを1000回している生真面目な高校球児が内野安打を打つのと、全然練習に参加していない不真面目な高校球児がホームランを打つのでは前者の方が日本人ウケするだろう。   もちろん極端な例だが、日本人は結果よりも「頑張っている過程」「努力の量」と意識しすぎる傾向がある。脱時給制は、そういった努力や過程を一切鑑みずに結果のみで評価するシステムだ。   日本企業はすぐにでも結果がほしい状況に置かれているが、そういったシビアな視点で判断を下せるのかは疑問が残る。 みなし残業とかいう制度は最低 また、多少話が脱線してしまうと思うが語らせてほしい。私は、みなし残業は労働生産性を押し下げる最悪の制度だと考えている。   「みなし残業」とは、正式には「みなし労働時間制」といいます。あらかじめ月給の中に、一定時間分の残業代が含まれている賃金体系を指します。例えば月給額に月20時間分の残業代が含まれている場合は、月の残業時間が20時間以内の場合は残業手当はつきません。20時間を超えた場合に、21時間であれば1時間分、30時間であれば10時間分の残業手当がつきます。   つまり、残業代が基本給に含まれているため、規定時間内に残業しても残業代が出ない「サービス残業」になってしまうわけだ。   みなし残業を採用すると、残業することが当たり前になり、残業をイレギュラーな行為として捉えられなくなってしまう。その結果、業務の効率化や生産性に疑問が持ちにくくなり、労働生産性は一向に改善しない。   また、みなし残業として月20時間分の残業代が基本給に含まれている職場で働いている人がいるとする。その人が15日現在で、すでに18時間の残業をしていたらどうだろうか?あと、2時間残業すればそれ以降残業代が発生するので、「もう今月は残業しないぞ」というモチベーションは消えてしまう恐れがある。   みなし残業を「残業しなくても残業代が入ってくるなんてラッキーじゃん」と考える人もいるかもしれない。確かにその通りだ。だが、みなし残業を設ける会社がそんなホワイトな労働環境であるケースは少ない。   みなし残業は、残業を常態化させ、社員のモチベーションを奪い、サービス残業を合法化しただけの最低な制度と言って良い。と私は思う。 まとめ 「自分の時給がいくらなのか」「今日どれだけの価値を生み出したのか」を真剣に考えて働いている人は少ないだろう。そういった意識が欠如していることが労働生産性の低さに強くつながっている。   “時間”で働くのではなく、“結果”で働くようになれば、今よりもっと報酬がもらえるかもしれないし、自分の仕事の価値をより感じることができるようになるだろう。   労働時間で報酬をもらうほうが、確かに安心感はあるが、脱時給制は決して悲観するアイデアではないと思う。   引用:https://employment.en-japan.com/tenshoku-daijiten/9838/    ...