「3つの条件」クリアしてますか?社長が自分の給料を止めてでも手放したくない人材とは

ニアセ寄稿

起業、何人でやりますか?もちろん、「一人」という方もいらっしゃるでしょう。それは、実はとても賢明な判断です。自分は他人より信用できる、そういう原則は一般にあります。
 
しかし、自分に足りない能力があったり、あるいは業務領域が多分野に渡ったり、もっと単純に業務の物量が一人では捌き切れない。そうなれば早晩人を雇う必要は出てくるでしょう。そういう時にどんな人材を選ぶべきか、そういうことについて考えていきたいと思います。
 
さて、このコラムを読んでくださる方は、既に起業済みでなければ「起業」というものに興味を持っている方だと思います。ところで、「起業」によって利益を得たいと思った時に、本当に「起業家」になる必要があるのか、というところに僕は結構疑問を抱いています。
 
というのも、「絶対に必要」な会社のメンバーになれば「株を寄越せ」と要求する機会はありますし、逆に逃がしたくないと考えた経営者が「株を持たないか?」と提案してくることもあると思います。
 
新規創業はリスクも大きく、また代表取締役は債務の連帯保証を求められるなどの怖さがあります。しかし、創業メンバーとして入りこんで美味しいところはしっかりいただく。こういうことも、僕の経験からすれば「可能」だと思います。そういう目線で読んでいただいてもいいかもしれません。それでは、よろしくお願いいたします。

条件1. 横領しない・裏切らない・信頼出来る

「そんなの当たり前だろ」という声が聞こえてきそうですが、それは甘いです。むしろ、創業メンバーなんてものは横領して当たり前、裏切って当たり前です。というのも、創業期というのは一人一人の業務の属人性が大きく、監視機能など無に等しいため「やろうと思えば何でも出来る」環境なのです。
 
これは創業されればわかると思いますが、そういうことは起きます。かつては未来を誓い合った創業メンバーが裁判所で骨肉の争いをしている、なんてのはよくある話です。民事で済めばまだマシで、刑事まで行くこともザラです。
 
そういうわけで、創業期においては「信頼出来る人間」の価値がとてつもなく上がります。これは、心理的なものもありますが純粋なコストの問題もあります。人間を監視するにはとてもコストがかかるのです。そういうわけで裁量をポンと預けて安心して仕事を任せられる人間にはとてつもない価値が発生します
 
それは「仕事が出来る」という意味ではなく、「お金を盗むことはないだろう」「会社に背信行為を働くことはないだろう」という程度のものでも、とてもとても大きな価値なのです。
 
例えば、想像してみてください。社長とあなた二人の会社で一定の裁量を任せられている時に、あなたがどれくらい「悪いこと」が可能かです。例えば、80万円で仕入れられる商品を他社の担当者と共謀して100万で仕入れたことにして、差額の20万を抜く。こんなことはとても簡単です。誰にでも出来ますし、一工夫すればまずバレないでしょう。
 
実際、僕がお仕事をしていても「会社に入れるべき金を私の個人口座に振り込んでください」というような要求をしてくる担当者は結構存在しました。飲食店なら話はもっと簡単です。あんなものは横領天国です。やろうと思えばナンボでもやれてしまうでしょう。
 
また、他社への利益供与などに関しては更にありますよね。僕も、自分の商品を自社の人間の手引きで他社に引き抜かれたことがあります。そういうことはとにかく起こる、人間は悪い。どうしようもない。…と言いたいところですが、僕にも「絶対にこいつはそういうことはしない」と信頼を置いていた部下がいました。
 
僕が彼を信頼した理由は、上手く言語化できません。結局「信頼」というのは究極的に非言語的なものなのだと思います。人間性、能力、そして「合理的に考えてやらないだろう」という観点、それらの総合です。こういう人材が一人でもいると、起業は桁違いに楽になります。なにせ、業務がスムーズにですから。いちいちチェックもいらなければ面倒な確認作業も要りません。スピード感第一の創業フェーズだと「信頼は出来ないが任せるしかない」ということも多いと思います。
 
「信頼を得る方法」について僕は上手く言語化できなかったので、僕を信じて数千万円のお金を預けた出資者に「何故僕を信じたんですか?」とたずねてみました。返ってきた答えは「こっそりバレないように金を盗むような賢い奴はこんなトチ狂った起業なんかしないだろ」でした。大笑いしましたが、正しいかはともかく(僕がお金を盗んでいない根拠は出資者から見て一つもありません)これは一つの真理だと思います。時に狂気は信頼につながるのでしょう。
 
そう考えてみると、僕が部下を信頼した理由もわかってきます。彼も、本来は僕の部下なんかに収まる程度の能力ではありませんでした。といいますか、明確に僕の10倍くらい優秀でした。しかし、「面白そう」という理由だけで給料も安く何の保障もない弊社に飛び込んで来た彼の狂気は、僕にとって信頼に値しました。それは「合理的ではない」からです。彼の狂気こそが信頼の源泉でした。
 
創業メンバーに関しては、「狂っている」が一つの信頼ポイントなのは間違いないと思います。それが正しいかはともかく、僕にも出資者にも同じような判断が発生していました。「こいつの狂気は合理性や銭金では計れない」そう思われると、それが正しいかはともかくとして大きな信頼が発生するのは間違いないと思います。

条件2. 話が通じる、指揮系統を理解している

「条件1.」では「狂気」が重要であると述べましたが、完全に狂っている、具体的に言うと「日本語が通じない」「契約等の概念を理解できない」「会社としての命令系統を理解出来ない」みたいな人間はダメです。というのも、こういうタイプは横領などの小ざかしい真似はしないかもしれませんが、制御不能だからです。
 
会社である以上、トップが命令したならば従わねばならない、さもなければ会社を去るしかない。それが実感として一切理解出来ない人というのは存在します。創業メンバーとして信頼に足る「狂気」を持ち、また同時に高い実務能力を持っている。この条件を満たしたとしても、話が通じず指揮系統を理解しない人間は、かならず暴走します。
 
起業」であるからには、創業主体が存在します。それは、多くの場合、代表取締役でしょう。オーナー社長か、あるいは出資を受けての創業かなど諸々条件面での差はあるでしょうが、会社のトップは必ず存在するはずです。(理論上は株を半々で持ち合ったり、同等の権限を持つ代表取締役を複数置くなども可能ですが、絶対にお勧めしません)
 
仮に平時は民主主義的な前提を採用するとしても、いざというときはトップの決断が会社の意思になる。これが会社組織の前提です。しかし、この前提が一切理解出来ない人というのは存在するのです。このタイプは、契約で縛ろうがどれほど説得しようが何をしても無駄です。
 
そして、社内の一定の権限と職務領域を占有した人間が暴走した場合に、損失を出さずにそれを抑える手段は現実的にほとんどありません。「クビにしたいけどクビに出来ない」のような状態が発生すれば、会社の主導権すら奪われます。
 
人間は「俺が社長なのだからいざとなれば命令すればいいだろう」のような甘い予断を持ってしまいがちで、僕も失敗しました。ある種の人間は、何をしようと指示に従いません。そういうタイプを要職に就けた時点で失敗は目に見えているのです。
 
逆に言えば、平時は闊達に意見を述べるがトップが決断したとなれば粛々と従う。そのような人材はまさに宝です。

条件3. トップを立てられる

優秀な部下が大活躍して、あなたの会社は躍進を遂げました。そういう時に起こりがちな問題が、「社長よりも部下の方が社内で発言力を持ってしまう」という状態です。これは、社長にとっても部下にとってもあまりよい状態ではありません。もちろん、会社を乗っ取るであるとかそういう目的がある場合は別かもしれませんが、過去にも書かせていただきましたとおり、この状態は社内紛争へ間違いなく直結します。
 
会社というのは民主主義的組織ではないのですが、人間というのはやはり民主主義を好みます。「みんなが好きな人がトップに立って欲しい」というのは、人の性でしょう。しかし、それが会社経営上恐れるべき事態だということは誰しも理解できると思います。そういう時に、トップを上手に立てられる部下が存在すれば、それはもう絶対に手放してはいけない人材だと思います。あなたの給料をゼロにしてでも雇い続けるべきでしょう。
 
社長が出資者と従業員の間を取り持つ存在であるように、経営幹部はトップと従業員の間を取り持つ存在です。しかし、この仕事が果たせる人間はそう多くありません。多くの会社がこの点で失敗し、功績ある幹部の粛清あるいは幹部による反乱という事態を招くのです。しかし、人間の自然な心理として「俺がこの会社を支えているんだ、俺は社長よりも優秀だ」というような気持ちは発生してしまいますし、それは時に事実です。
 
その感情を上手くコントロールし、トップに対して評価と褒章を求めつつも部下に対してはトップを立てる姿勢を忘れない。これこそ、究極の創業人材の条件だと思います。これ、従業員100人とかの会社をイメージされるかもしれませんが、現実を言うと5人も人間がいれば問答無用でこの力学は発生します。社内で一番偉い人選挙が自然発生した時点で手遅れなのです。社内デモクラシーの発生は破滅の足音です。民主化、ダメゼッタイ。
 
起業家というのは、究極的にはお金を調達してお金を何らかの形で使うことで利益を出す人のことだと思います。ビジネスプランは極論すれば買ってもいいですし、自分自身に能力がないなら人材を雇えばいい。これは真理です。
 
しかし、会社を統治する上で会社のトッププレイヤーが社長ではない、というのは大問題を起こします。人間は「一番仕事が出来る奴がトップであるべき」と極めて自然に考えます。その時に現実のトップを上手に立てて従業員との間を取り持ってくれる幹部がいれば、これより心強いことはありません。最高の部下と言えるでしょう

まとめ

 

条件1. 小賢しく金を抜くような合理性を感じさせない狂気
条件2. 話が通じて指揮系統を理解している
条件3. トップを立てられる

 
と3つ並びましたが、この上に更にもう一つ言うまでもない条件があります。業務遂行能力です。これは言うまでもありませんよね。しかし、これら全ての条件を満たす人材を見つける難度を想像してみてください。僕はたった一人だけ、これらを満たす人材を確保しましたが、もう一回確保出来るとはとても思えません。
 
そもそも、この条件はわりと矛盾しています。狂気を持ちながら会社の仕組みを理解し合理的に振舞うというのはかなり厳しい要求です。ならば、この三つの条件を部分的に満たすかどうかで判断してもいいと思います。どれを優先するかは好みもありますが、個人的には条件2>条件3>条件1の順番だと思います。でも、「起業するならある種の狂気が重要だろう」と考えるのであれば、条件1を優先してもいいと思います。勢いのある会社になるでしょう。
 
「こいつは金を盗むようなことは無いだろうが、指揮系統の重要性は理解出来ない」「こいつはトップを立てることは出来るが、金を抜く可能性はある」というような、生臭くうんざりするような判断を、是非ともやっていってください。人を雇うというのはそういうことだと僕は思います。実際、創業時に人間を完全に監視するのは不可能なので、個人の性向を睨みながらリスクの所在を決め打ちするしかないだろうと思います。時にはそれも出来ないかもしれませんが…。
 
逆に言えば、経営者に愛され重用される人材というのがどういうものか、このお話から逆算できると思います。「手放せない人材」になれば、下手をすると会社の実権すら握ることが出来ます。それを狙って創業メンバーに入り込むという選択肢、僕は「アリ」だと思います。成功率もそれなりにあるでしょう。
 
そして、この極めて弱い社長の立場をよく理解して行動すれば、「手放せない人材」になることはそれほど難しいことではないと僕は思います。もちろん、会社にとって必須の業務遂行能力があることが前提ですが。会社の金が消滅し、部下の暴走と反乱が発生し、従業員たちにトップとしての資質を大いに疑われた僕が言いますが、それは「出来る」と思います。
 
さて、この人間と人間のグチャグチャに入り混じる「起業」ですが、非常に面白いものではあります。一回やれば非常に良い経験にはなります。あなたが起業家として参加するのか、それとも創業メンバーとして参加するのか、あるいは出資者として参加するのかわかりませんが、どの立場から挑むにせよ僕はあなたの成功を心から祈っています。
 
そして、願わくば出資者も社長も部下も誰も彼もが信頼しあい、わかりあえる最高の会社を作り上げて欲しいと思います。僕にはそれは出来ませんでしたが、あなたにそれが出来ないと言い切ることは誰にも出来ません。やっていってください。僕ももう少ししたらまたやっていきたいと思っています。

 
 

1985年生まれ、早稲田大学卒業後金融機関勤務を経て起業するが大失敗。
現在は雇われ営業マンをやりながら、ブログを書いたり
ツイッターをしたり、フリーライターをしたりしています。
発達障害(ADHD)持ちです。そちら関係のブログもやってます。
Blog http://syakkin-dama.hatenablog.com/
Twitter https://twitter.com/syakkin_dama

シェアする
ニュー アキンド センター
タイトルとURLをコピーしました