300万円の起業も3億円の起業も本質は同じ。事業は小さいほど優秀。

ニアセ寄稿

 
さぁ、事態は9回裏2アウト満塁の3点ビハインド。あなたがバッターボックスに立つ時がついにやってきました。磨き上げられたバットが初球の真芯を捉え、ボールはバックスクリーンに突き刺さる。そんな夢を見たことはありませんか?
 
残念なことですが、現実にそういう奇跡的な成功はあんまり起こりません。しかし、たまに起きることもあります。自分の身にそれが起きた人は「こうやったら上手くいった」というお話をするでしょう。あなたは「自分もやりたい」と感じると思います。
 
例えばこういうことです。あなたの描いた夢のような計画に数億の出資が集まり、事業は大成功。あなたは最年少上場記録を塗り替え、日本を代表する実業家となる。
 
そんな夢のような成功は、恐らくこれを読んでいるあなたには訪れないでしょう。少なくとも、僕には訪れませんでした。僕は数千万円という初創業にしては潤沢な資金を持って資本主義社会に挑みかかりましたが、巨大な資本主義の流れの中に、僕の夢を乗せたお金は飲み込まれていきました。僕がかき集めた出資金など資本主義の巨大さに比べれば、大河の一滴にもならなかったように思います。
 
今はどこを流れているんでしょうね、あのお金。

300万円の起業も3億円の起業も本質は同じ

初めて事業をスケールさせることをたくらむ時、多くの人は「なるべくデカくしよう」と考えてしまうと思います。デカい方がいっぱい利益出そうですし、格好いいですよね。社員何十人も使ってみたい、という気持ちはあるでしょう。しかし、往々にして正解は逆です。事業は利益率が同じなら、小さければ小さいほど優秀なのです。
 
例えば、飲食店の利益率は「かなり良い」お店で10%程度です。年に4,000万円(かなり立派な数字です)を売り上げて、400万円の利益です。年に4,000万円売り上げる店なら、従業員を3人くらいは使っているでしょう。店舗の賃料、設備、什器、その他もハチャメチャに金を食います。おまけに手間も時間も食います。
 
しかし、300万円で仕掛けた事業で年10%の利益を出すのなら、少なくとも飲食店を一軒構えるほどのリスクはまず生じません。全損しても「いい経験が買えました」と強がれると思います。
 
そして、300万円の事業を組むほうが、3億円の事業を組むよりも難しいとさえ言えます。3億円あれば色々なことができます。さまざまな無茶が利きます。金にモノを言わせてゴリ押しもできます。しかし、300万ではそうはいかない。ギリギリまで絞り込んだ極めてソリッドな事業計画が必要になります。
 
カネ、モノ、ヒト、加えて「リスク」。これらは全てギリギリまで絞り込むべきなのです。事業のサイズというのは、大抵の場合そのままリスクの大きさです。
 
例えば、飲食店には「食中毒」という恐ろしいリスクがあります。これは最悪、人が死ぬやつで、飲食屋はわりと保険に入らない人が多く(本当に多いんです)、恐ろしいにもほどがあります。「火災」とかもありますね。店舗数が多ければ、これらのリスクは当然増えます。小さいに越したことはない、というのはわかるでしょう。

リスクを小さく、試行を増やせ

小さく産んで大きく育てろ」というのは遥か昔より言い伝えられている起業の原則論ですが、僕はこれに非常に懐疑的でした。だって、小さく産んでそこにフルコミットして育てていたら、資金はともかく時間はガッツリ持って行かれるわけです。
 
「そんなことなら、破産どころか物理死まで覚悟で大きく仕掛けてダメならくたばればいいじゃねえか、どうせたいした人生じゃねえんだ、死んでやろうじゃねえか。むしろ死なせてくれよ。」って思ってました。
 
これが僕の起業の失敗理由の一つです。
 
僕の創業動機を一つ一つ分析していくと、どこからともなく「それは破滅願望では?」というものが飛び出してきます。あまり直視したくありませんが、やはりそれは存在したのでしょう。ハッタリの限りを尽くして資金を集め、それを一つの事業に全力投入する「一点突破カミカゼアタック」。僕の人生を搭載したミサイルの威力は、資本主義の壁を打ち破るにはあまりにささやかでした。
 
夢のような計画が悪夢のような結果になる」ことは十分にありえること。また、「会社が潰れる」というのは経営者にとって大体の場合、悪夢ですので、設立後10年以内に94%の会社が潰れる今の日本では、大抵の起業は幸福な結果に終われないと言い切れると思います。
 
一度転んでも誰も同情しませんし、「あそこまでよくやったよな」とは言ってくれません。人格も尊厳も人生も全て否定されます。そういうものなのです。
 
人間はあまりに追い詰められると死んでしまいます。経営に失敗した社長も人間ですので、追い詰められすぎると死んでしまうことがあります。「死なないこと」が経営者にとって重要な資質であることは間違いないでしょう。死に至るリスクを、企業や経営者はどのように軽減すべきか、とても重要なテーマではないでしょうか。

事業は最速クリアしなくていい

もっとも優れた起業計画とは「小さくて利益率が高い事業」です。加えて、成長余地が大きければ言うことナシ。しかし、いきなりこんなもんを生み出すのは大抵の人には不可能です。だから、僕は最近起業志望者にこんなことを言っています。
 
資金は分散しろ、事業は分散しろ。小さくいくつか仕掛け、全張りするならよく育った苗にしろ。中途半端に育った苗だって売って金にできたりもするんだ、と。これ、投資家にとっては基本中の基本ですよね。
 
おそらく、あなたの産んだタマゴは稚魚のまま、あるいはタマゴのままくたばることになるでしょう。しかし、あなたはそこから経験を持って帰ってくることができる。最悪でも「良い買い物をしろ」ということです。起業に関して「勉強して始める」というのを僕は推奨しません。実際に創業して事業をスケールさせるまでに「本で読んだ知識」で役に立ったものが、一つも思いつきません。
 
サッカーをやるならルールブックを読む必要はあるけど、それはゴールを決めるのとは関係ない話ですよね。もちろん、ルールを知らなければ即座に笛が鳴ってペナルティハンマーが人間を粉砕するのが市場なので、それはそれで大事だとは思うのですが。実際的なノウハウについては「死んで覚える」しかなかった、それは確信しています。
 
起業においては1-1のクリボーでガンガン人が死にます。ゲームを始める前に、ゲーム機の電源が入らない人もいます。いきなり猫がリセットボタンを押すこともあります。お母さんが掃除機アタックでセーブデータを消滅させることもあるでしょう。これらは全て「サイズ感によっては命に関わるやつ」の喩えです。市場では、人が死にます。
 
なんで俺は残機ゼロからノーミスクリアできると思ったんだよ」って、僕はよく思います。せめて資金を2、いや3分割して3回仕掛ければよかった。それでも1発1千万円以上は使えました。
 
そして、現在の僕が「300万円でやれること」は創業初期の僕が「3,000万円でやれること」とあまり差がない、下手すりゃ前者の方が大きい可能性もあります。起業というのは、事業というのはそういう戦場です。
 
夢の計画を練ってみてください。人生の最速クリアを狙う必要は1ミリもありません。危うく最速クリアしそうになった僕が言うんだから信じてくれていい。さぁ、やっていきましょう。

 
 

1985年生まれ、早稲田大学卒業後金融機関勤務を経て起業するが大失敗。
現在は雇われ営業マンをやりながら、ブログを書いたり
ツイッターをしたり、フリーライターをしたりしています。
発達障害(ADHD)持ちです。そちら関係のブログもやってます。
Blog http://syakkin-dama.hatenablog.com/
Twitter https://twitter.com/syakkin_dama

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