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アキンド探訪

  2017年5月、米グーグル傘下の人工知能(AI)開発ベンチャー「ディープマインド」(英国)の囲碁ソフト「アルファ碁」が世界トップ棋士・柯潔氏に3戦全勝したことで話題になりました。囲碁、その知名度に反して、ルールを知っていたり実際に打ったことがある人はそれほど多くありません。   そんな囲碁のプレイヤーを広げる活動をしている会社があります。その名も「IGOホールディングス株式会社」。なんともスケールの大きな社名です。誰でも参加できる囲碁イベントや囲碁の上達プログラムなど、囲碁にまつわる取り組みをしています。   2017年6月にはクラウドファウンディングプロジェクトを立ちあげて目標額を達成しました。募った資金で「囲碁打てます」と書かれたステッカーを作り、囲碁が打てる人を可視化しようと試みています。   今回はIGOホールディングスの井桁健太代表に、世にも珍しい囲碁ビジネスの今についてお話しをお伺いしました。 事業戦略その1. 「3ヶ月で囲碁初段プロジェクト」。成長意欲が高いビジネスマンがメインターゲット   ――IGOホールディングスはいつ立ちあげたんでしょうか   2015年5月15日設立なので今年で3期目です。ちょうど囲碁年(2015年)のGO囲碁(5月15日)の日に、囲碁仲間4人で立ちあげました。   ――いまもその4名でやってらっしゃるんですか   喧嘩別れではないですが、現在は私1人です。もともと私は食品メーカーの営業を1年8か月やってまして。趣味で囲碁イベントを主催してました。そのうちに「これを本業にしてみたいな」と思うようになってメーカーを辞め、イベント時など一緒に動いてたメンバー達と会社を作りました。   特に起業するつもりがあったわけじゃなかったんですが動けば動くほど「あなたたち4人はどういう関係なんですか?」とメンバーの関係を聞かれるようになりまして。囲碁という共通点はありましたがやってることはバラバラだったので、外から見たときに分かりやすいよう箱を作ろうと会社にしました。   ――どんなメンバーがいたんでしょうか   例えば、プロ育成の子供向け教室をやってるメンバーがいました。彼の場合は「人生を決めようとする子どもたちとその覚悟を受け止める自分がいる一方、ビギナーの方を相手にする自分もいて、その両立が難しい」と会社を抜けました。いまも、なにか一緒にできることがあれば手を組もうという関係です。   IGOホールディングスは業界の高齢化もなんとかしたいとも思っているので、どうしても現役で働かれている方が多くなり、ゼロから始める人に向けての働きかけが多いんです。ビギナーの方と対局したり、振り返りをする際にはまず良かったところを伝えます。悪かった手は「悪かった」と言わず言葉を変えて「改善すべきところ」として伝えています。   ――現在、IGOホールディングスはどのような事業をされてるんでしょうか   個人のお客さまへのレッスンが収益の柱です。特に「三か月で囲碁初段プロジェクト」ですね。ビジネスマンは仕事で忙しいですから、短期間に集中して取り組んで上達をしようというものです。囲碁は一度覚えれば一生楽しめますので、そういうスタイルの方が向いていると思っています。(現在は第六棋生を募集中)BtoBはこれからです。囲碁を企業研修に入れられないかなと考えています。   ――3か月で初段。普通なら初段取るのにどれぐらいかかるんですか?   1年半~2年かかるのが一般的ですね。囲碁初段をとる難しさは、マラソンでいえばサブ4(フルマラソンを4時間以内で走ること)と同じくらいです。初段プロジェクトではプロジェクトメンバーとして10名募集して、3か月フルコミットで挑戦します。認定大会という公式の大会がありまして、初段を目指す人同士で対局して4戦中2勝すれば初段です。これまで50人参加して10人が初段になりました。   少しでも囲碁を知ってる方をプロジェクトの対象にすれば、もう少し合格率が上がると思うんですが、本気で「やってやるぜ!」と奮起する人ってそれまでまったく囲碁に触れたことのない人が多いんですよ。   ――まったく囲碁やってない人のほうが多いんですか。初段プロジェクトって178,000円しますよね。まったく囲碁をやったことがなくて、その金額払うのはどんな層なんでしょう?   成長意欲が高い人が申し込んでくれます。30~40代のビジネスマンが多いですね。男女比率は半々ぐらいです。単なる囲碁教室なら他の教室でもいいわけで、それでは差別化になりません。囲碁教室側からすれば長く通ってもらえば長く通ってもらうだけいいわけですから、普通は「3か月で初段」みたいに期限を決めないんです。そこを我々はあえて決めてしまう。   プロジェクトの金額は囲碁教室の相場からすれば少し高めですが、ビジネスマンにとっては時間への投資でもあります。「こういうプロジェクトなんだよ」と明確で高いゴールを説明すると、成長意欲が高い人が「よっしゃ、とってやるぜ」と本腰を入れていただけるわけです。そういう方々にとって初段プロジェクトは非日常で学びもありますし、知的な出会いもあります。   ――成長意欲の高い人が新しい思考ツールを手にいれるための囲碁ってわけですね   そういう方たちは囲碁を打つことだけを目的にしてないんですよ。例えば以前、朝7時からスタバでやる朝囲碁を開催してたんですが、お越しになる方々と接していくうちに「早起き」に価値を見出してるんだとわかりました。   ――ああ、囲碁を動機に早起きできること自体が商品価値だと   そうですね。会社のビジョンとしても「知的な出会い」を掲げています。年齢・性別・言語・国籍・人種・身体能力の6つのコミュニケーションの壁を超えた出会いですね。囲碁に興味を持ってやって来る時点で気が合う。参加者にフィルターがかります。そういう人たちとの出会いも価値だと考えてます。 事業戦略その2....

  みなさん日々、仕事上の様々なことで頭を悩ませていらっしゃるかと思います。そしてその多くが「考えるべき課題の答えが見つからない」ということではないでしょうか。私も企画の仕事をはじめて14年経ちますが、1年目より結論を導くスピードが速くなったかと聞かれたら、そんなことは全くなく、今でも同じように頭を悩ませています。   しかし、一方で。この14年間でスランプに陥った時の対処法、脱出法のようなものは14年の中で開発してきました。   その中でも最も使えるのが「視点の変え方、作り方」です。   そこで今日は、どんな職種でも使える「視点の変え方、作り方」についてお話したいと思います。 視点を意図的に変えると「考える」は爆発的に進む ビジネスのアイデアを生む時、担当する商品やサービスのアイデアを生む時、また表現のアイデアを生む時にうまく進まないのは大抵「視点が限定的」であるためです。つまり、視点を増やすことができればそれら作業は驚くほどスムーズに進められることができます。   以下に私が使っている具体的な「視点の増やし方」をご紹介しますので、ご自身のお仕事に取り入れてみて下さい。   1. 他者になりきる   これはまさに「視点を変える」方法です。意図的に他者になりきることにより「別の目」で課題にアプローチします。「どうやってなりきるの?」という方には「ものまね」をお勧めしています。まずは自分の身近な人から。その人が課題を直面した時に言いそうなこと、思いそうなことを想像してみるのです。そして、その視点のまま課題にアプローチしてアイデアを出して下さい。   少し慣れてきたら人間以外にも挑戦してみましょう。課題そのものに視点を設け、考えている自分を見たらどう思うか、何と言うか。考えあぐねている自分を、飼っている犬がみたらどう思うか。たまたま通りかかった宇宙人がこの状況をみたら何と言うか、を想像し、書き出してみるのです。   この方法の良い所は、他者になりきった数だけ視点が生まれるということです。自分の目でしか見えていないことも、意図的に他者の目で見ることで思わぬ発見があります。   2. 「らしくない」形容詞をくっつける   これも視点を作ったり、変えたりする上でとても有効な方法です。課題に絶対合わなそうな「らしくない」形容詞を強引につけることで新しい視点を生むというやり方。   ジェームス・W・ヤング氏が著書『アイデアのつくり方』で言っている「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである」という考え方がありますが、まさにこれを使って視点を生むのです。   例えば「今までにない本屋を考えてみよう」という課題があった時、「かわいい本屋」「怖い本屋」「硬い本屋」などと列挙していきます。「かわいい本屋」はJKをターゲットとした本屋のアイデアにつながるでしょうし、「怖い本屋」はお化け屋敷と本屋を融合したイベント施設のアイデアにつながります。どれもあくまで「一次アイデア」ですので過去事例との照らし合わせ、深堀り、フィジビリティの検証などは必要ですが、ブレストのテーブルにはのせられるはずです。   一方、「話題になる採用方法を考えろ」という課題があった時、「早い採用」「長い採用」「やさしい採用」などと列挙していきます。自分を写メで撮っただけで就活が終わる「1ショット採用」、大学4年間をかけてじっくり採用活動を行う「ダラダラ採用」、圧迫面接とは程遠い「接待面接」など、少し考えだだけでも色々なアイデアが生まれます。   「らしくない」をくっつけることで自分の脳が活性化され、視点を容易に増やすことができるのです。   3. 再定義する   最後にご紹介するのはこの記事(コピーライターが教える。ビジネスで使える「強い言葉」の作り方)でも触れた「再定義」を使った視点の作り方、増やし方です。課題を一度要素に分解し直し、分解した要素を独立させたり、どれかを強めたりすることで視点を作り出します。   例えば「本」を「トイレで読むもの」と再定義すれば「100冊の本が読める有料個室トイレ」というアイデアを生むことができますし、「インテリに見えるもの」と再定義すれば「洋書100冊付き本棚」という商品のアイデアを生むことができます。課題の近くにあるターゲットの潜在ニーズも意識しながら考えるとより精度の高いアイデアが生まれます。   「再定義」という方法は、少し違った角度から光を当て直して視点を作るというイメージですので、前の2つとは若干ニュアンスは異なりますが、確実に脳の切り替えを行ってくれます。 まとめ 以上、「ビジネスで使える視点の変え方、作り方」をお伝えしました。上記でご紹介したのは私の方法論ですので、どんどんご自身で開発したものを増やしていくと良いと思います。いずれにせよ、意図的に、強制的に視点を変えるテクニックを持つことで、企画スランプ、思考スランプから早く抜け出せたり、スランプに陥らずに済んだりします。   仕事を円滑に進めるテクニックの一つとして、活用されてみてはいかがでしょうか。     ...

  僕は26歳から会社を経営しております。現在も一応、法人は残っているので、今年で6年目になるわけです。色々なことがありました。事業が5年続くというのは、実のところを言いますとかなりレアケースです。ちょっと調べてみたら、5年続く会社は15%くらいみたいですね。でも、実を言うとこのデータ怪しいと思います。というのも、僕だって現在も法人は生きているんですよ。事業がもう動いていないだけで。このデータ上、僕は「生存」にカウントされていると思います。   もちろん、法人は維持費がかかりますから休眠や解散を選ぶ人も多いと思いますが、様々な便宜の問題で事業が終わっても存続させることが多々あります。大量に赤字積んであったりもするし、リベンジを志す人もいるでしょう。僕もそのケースです。たまに「借金玉社長」って呼ばれると「勘弁してください」という気持ちになります。まぁ、そんなわけで企業生存率は5年で15%より大分低い、というのはほぼ間違いないと思います。しかも、これ「法人」での起業に限っての数字ですからね、なんだかんだお金のかかる法人登記をせず、個人事業で起業するケースだって多々あります。そちらの生存率も、まぁ高くはないでしょう。   同期に起業した若手連中は、もう連絡がつく人間がほとんどいません。自分の成功を1ミリも疑わなかった皆さんが、どんどん消えていきました。しかも原因は「事業の失敗」ばかりではないんですね。突発的に悲惨な出来事が起きる会社が大変多かった。そういうわけで、悲惨な事態に遭遇した企業経営者のケースを僕が知る限り書いてみようと思います。 持ち逃げ 会社を経営している皆さんにとってはあるあるだと思いますが、本当に多いですよね・・・。僕の周囲でも数件発生しました。そのまま即死した会社もありました。創業期の会社のお金の管理というのは、往々にして杜撰です。しかしこれ、つまるところ仕方ないことでもあるんですよ。というのも、プレイヤーに決裁権限を与えず都度確認を取るということは、イコールで社長の業務負担が増えるということです。「信用するしかない」という悲しい現実があります。プレイヤー社長の会社なんかでは、「社長が会社のカネについて全く把握できていない」なんてこともよくあります。でも、それはそれで合理的はあるんです。カネの面倒はカネの面倒を見るのが得意な人間がやればいいわけで。   ある日突然、口座の金がスっと消えます。また、諸事情(大抵ろくな事情ではない)から現金を金庫なんかに突っ込んでいた場合もスッと消えます。同時に人間が消えます。起きた時点で全損を覚悟しましょう。回収はほぼ不可能です。また、刑事事件にもなかなかしにくかったりします。まぁ、想像はつきますよね。口約束で全てが進展しがちな創業期の会社におけるお金の権利なんて、大抵がグチャグチャです。果てしなく裁判で争うことになるでしょう。言った言わないあいつが悪い、俺は被害者だ、想像出来る限り最悪のことが全部起きます。   「金を盗まれたんだ」と主張しても支払い日は待ってくれませんし、従業員は給料の遅配を許してはくれません。そして、盗んだ人間を処罰するにもお金がかかります。刑事事件にするということはつまるところ、相手の弁済能力を下げる結果にすらなります。民事で泥沼の戦いをしても、得をするのは弁護士だけです。現金の持ち逃げカマす奴に賠償に充てられる資産なんてあるわけもない。そして、これは「やられた!」という社長あるあるなんですが、「俺にも後ろ暗いところが自分にもあるから公式に裁けない・・・」というあれが大変にありがちです。詳細とか語らなくていいですよね。コンプライアンスは最終的に自分の身を守るためにあるということです。   創業直後の会社は大体コンプライアンスなんてガン無視しています。「何それ?食えるの?」みたいな話だと思います。それはそれである意味仕方ないのですが、いざ大問題が起きた時に大変なことになります。風向きがいいときはナアナアでやっていけた相手も、いざ大問題が起きると容赦なく殴りかかって来ます。   創業当初から、「とにかく身綺麗にする」ということは心がけた方がいいでしょう。会社の経営者というのはやろうと思えば様々なあまり順法的ではない小細工が出来ます。しかし、その小細工に他人を利用していた場合、そこには回避不能のリスクが出てくるということはとにかく認識しましょう。本当に生死を分けます。「表沙汰にしたら俺も社会に怒られてしまう・・・」みたいなパターンは本当に辛いと思いますが、自業自得と言う他ありません。   「あれをこうすればばめっちゃ良い感じじゃん。問題はバレたら怒られることくらいで」みたいな発想、経営なんかしているとどんどん出てくると思います。コンプライアンスと100回唱えて悪魔を振り払いましょう。部下が金を持ち逃げしたのに怒ることすら出来ない。そういう羽目になった社長、いっぱいいます。 横領 これもまた実にあるあるです。例えば飲食店経営で他人を雇ってお店を任せた場合これを完璧に防ぐ方法は無いと言っていいと思います。ラーメン10杯分の原料で11杯作って、1杯分の売り上げをポケットに入れればいいだけのことですからね。経営者が現場に精通していない場合なんて、やろうと思ったらナンボでもやり放題だと思います。「誰かを雇って、あるいは出資して飲食店をやろう」というタイプの人はこの点について考えておくことが大事です。   横領は実際のところ思った以上に簡単です、特に創業初期の会社にコアメンバーとして入っているのならば、やろうと思ってやれない環境の方が珍しいでしょう。つまるところ、横領などの不正が不可能な状況を作るコストが高すぎてやれないという話にもなります。100万の横領を防ぐためには300万かかってしまう、そういうことはよくありますよね。   また、横領に関しては社長自体がやることもよくあります。出資者が会社のお金の流れに明るくない場合なんて完全にやりたい放題ですよね。誰が住んでいるのかよくわからない社宅、出社してこないアルバイト、何をしているのか誰にもわからない役員、御社にも存在するのでは?色々書類を眺めていると人類の悪さが見えてくることはよくあります。出資を考えている皆さん、この点はとにかくよく見ておいた方がいいですよ。   また、横領というのは往々にして会社が好調の時に起こります。毎月赤字を垂れ流しているような状態なら流石にお金のよくわからない動きがあれば気づきますが、ガンガン利益が流れ込んで来ている時にそれに気づくのはとても難しい。事業自体は好調なのにこのような事態が社内で発生し、そのまま空中分解してしまった会社もありました。最終的には刃物などが登場し警察が介入したと聞きますが、本当に不幸でしたね・・・。   ちなみに、横領に関しても「表沙汰にしたら俺も怒られるから表沙汰に出来ない・・・」という話がよくあります。横領ブチかまして退職して、元気一杯次の横領が出来る会社を探しに行く人類は存在しますよ。 社員が全員辞めた 「社員が全員辞めてしまった」というお話、聞いたら笑っちゃいますよね。僕も起業する前は「どんだけアホならそんなこと起きるんだよ」って思っていました。しかしですね、創業初期の会社では普通に起きます。想像してみてください。わりと儲かっている社員5人の会社、そこから5人の社員をまとめて引っこ抜いたら、すぐに儲けが出る会社がやれたりするわけですよ。そりゃ引っこ抜きますよ。   創業初期の会社というのは人材の奪い合いです。市場に「すぐに利益を出してくれる人材」なんてそんなに転がっていません。転がっていてもとても値段は高い。社長さんたち「他社の有能なあいつ欲しいなぁ・・・」と思ってコナかけたこと絶対ありますよね。正直に言うと、僕もあります。自社の人間に他社からコナかけられたらブチギレてましたけど、コナかけたことはある。しょうがないじゃない、経営者だもの。   有能な社員を囲っているが経営者への不満が蓄積している会社、というのはたまにあります。また、社員は有能なのにも関わらず経営方針がイマイチで利益が出ていない(社員に十分な給与を払えていない)会社なんてのもあります。そりゃ奪い取りに行きますよね。有能な人間というのは現金が落ちているようなものです。拾わない手はない。   有能な人間を雇うのは難しいですが、有能な人間を雇い続けることはもっと難しい。更に、有能な人間は当然ながら「俺が経営する側に回ればいいじゃん」という発想にも至ります。具体的に言うと、「社員全員引き連れて退職して全く同じ事業内容の会社興せばいいじゃない」というのは大変正しいのです。「この会社に最も必要ない人間は社長ですよね」というお話です。俺が興した会社から俺が追放された、そういう悲しい物語は本当にいっぱいある。   また、創業初期の会社というのは当然ながらメンバーにガンガン裁量を振ります。会社にシステムがないんだからそれしかありません。そういう場所では人間がどんどん成長します(さもなければどんどんリタイアします)。当たり前ですよね、仕事しているわけですから。他人がほどよく育てた果実をベストなタイミングで収穫するの、やりたいに決まっていますよね。しかも、大手から引き抜くブランド人材と違って給与も安く抑えられますし。これらの構造的圧力を上手いこと捌くことが出来なければ、「コアメンバーが全員退職した」なんて事態は、むしろ起こって当たり前です。 どうしましょう? ちなみに、これらのケースは「事業が上手くいって収益が上がっていたとしても尚起きる」問題です。こういう問題以前に「そもそも事業が上手くいかない」という話があります。これから創業を考えている皆さん、是非とも徹底的に考え抜いておいた方がいいと思います。考え抜いて考え抜いた末に「対策はない、問題が起きた時に困ろう」という決意に辿り着くとしても。心の準備だけでもあれば大分マシです。   これらの問題の発生を防ぐことはもちろんできます。やり方はいっぱいありますよね、持ち逃げや横領を防ぐ方法はありますし、社員の退職や引き抜きを防ぐ方法だってないわけではない。では、これらを有限の資源の中でやっていくにはどうしたらいいのか?というお話です。へこんだアルミ缶を元に戻すような話です。あっちを叩けばこっちが出っ張る。完璧を目指して頑張った結果、見事社長が過労死という話もあります。   話にオチがなくて恐縮ですが、この話の一番大きい教訓はコンプライアンスだと思います。コンプライアンスを守らない者はコンプライアンスに守られません。「俺は上手くやるから大丈夫」という人もいるでしょうし、それはもう止めませんが、そこまで思えない人はとにかく身綺麗にしておくことが身を守る上で最も重要だ、という点を覚えておいて欲しいと思います。   そして、連絡が完全につかなくなってしまった皆さん、僕はとても寂しいです。いつかまた、どこかで酒でも飲み交わしましょう。僕はまた頑張ります。やっていきましょう。     ...

  「ブラック企業が嫌いだ」といって反対する人は少ないだろう。定時よりフレックスの方が楽だし、有給休暇はたくさん欲しい。早く帰りたいし、給料は高い方がいい。もちろん私だってそう思ってきた。これまで個人事業主になるのも含めれば2回転職してきたが、いずれも、よりホワイトな労働環境を目指しての行動だった。   現在は1日平均8時間勤務、休暇は自己判断、年収はそこそこ。概ね満足している。しかし将来は子供もほしい、となれば多少背伸びをしてでも仕事を頑張りたい。   そうなると一番手っ取り早いのは、人を雇ってメールの返信や請求書作成などの事務をお願いすることだ。私は執筆業をしているので、原稿に向かう時間が増えれば収入が増える。無理に原稿料の単価を上げるよりも現実的だろう。   そこで初めて「ブラック企業の仕組みがどれほど雇う側から見ると魅力的か」と危うい知見を得てしまった。今日はその話をしたい。 零細企業が与えられる便益は「やりがい」くらいしかない そもそも個人事業主レベルの売上というのは、どこまで行っても零細企業並みである。年10億稼ぐ企業はごまんとあるが、年10億稼ぐライターなんて聞いたことない。新書で100万部売れたって、印税は6千万円くらい。毎年ミリオンセラー出しても企業にはかなわないのだ。ましてや私のような駆け出しライターをや。   というわけでアシスタントに出せる年収はあまりない。これが漫画家なら「先生のテクニックを盗んでいつかは自分もデビュー」なんて夢もあるが、ライターのアシスタントが文章を実際に執筆する例は少ない。せいぜい精度の高い資料の読み込みができるようになるくらいだろう。となると、私のような零細雇用主はやりがいをムリヤリ作るくらいしか応募者を集める術がない。   となると、応募項目はこんな風になってしまう。 「デビューから2年で独立! 次のヒットメーカーになれる職場」 「最速成長を実感できる」 「世界のどこでも働ける人材、なってみたくありませんか?」   なんと抽象的でブラックなフレーズだろう。こんなの、自分のアシスタント応募で書きたくない。たとえ本当に採用された方がやりがいを感じてくれるにしたって、嫌だ。 そうしないと零細企業には人が来ない現実 ところが相談した人材紹介会社の方は、こうおっしゃるのだ。   「でもね、怪しいやりがいでも書かないと零細企業に来てくれる人なんていないんですよ。ホワイト環境で働きたい人なら、誰でも福利厚生がしっかりした大手で高年収狙いますから。そうじゃない時点で応募者にも何かあるんですよ。 たとえば『やりがい』という名のもとに搾取されるのが好きという人は一定数いるんです。搾取されたい人はホワイト企業へ就職させても『やりがいが無い』って言ってすぐ辞めちゃって、結局、激務ブラックを選ぶ。採用者が嫌でも、零細企業でちゃんと働いてくれる人が欲しければブラックな文言を入れなきゃいけないんです」   だったら正規雇用は諦めて、派遣さんを雇おうか。けれど調べていくうちに、もっと嫌な事実と直面してしまった。正規雇用の方が人件費は安い。ある程度優秀な派遣社員なら、時給1,200円は払わないと成り立たない。それより退職金ナシの正社員の方が、よほど安いのだ。   調べるうち「正社員はクビにできないと言われるが、会社を廃業させてしまえばそのまま解雇できる。その後、別会社を立ち上げればよい」という恐ろしい文言まで見かけてしまった。正社員は安定しているなんてウソだ。経営者が「そこそこ優秀な人材を限られた予算で雇いたい」なら、やりがい搾取するのが一番合理的なのである。 下のさらに下を行く雇用の存在 さらに、社会的にマイナスとなる事情を1つでも抱えている人間は搾取の対象にされやすい。たとえば前科がある人、精神疾患で経歴にブランクがある人、知的障がいを抱える人。該当する方は「最低賃金でも貰えるだけマシと思え」的な扱いを受けることもある。   前科といっても過失によるものかもしれない。薬さえ飲めば通常勤務できるかもしれない。知性が必要な労働なんて全労働の何割だよ? そんな鬱積を雇用市場は「純粋なんだね」の一言で飲み込んでいく。   実際、統合失調症で今も闘う方から「これでも雇用があるだけマシ。じゃあ障がい者へも最低時給を適用しろって言ったらどうなると思いますか。クビになるだけです、私たち。それよりは少しでもお金をもらってる今がいい」と言われてしまった。その通りだ。だが中には「時給200円」で働かされるケースもあり(https://lmedia.jp/2015/09/01/67140/)、経済的虐待と言わざるを得ない。……言わざるを得ないが、零細雇用主にとってこれ以上合理的な選択肢があるだろうか。悪くなることは、なんと楽なことか。 実利を与えるのが、せめてもの善意 「じゃあ、零細の雇用主がこの絶望的だけど合理的な雇用環境でできることって何があるんだろうか」   という問いが、この数か月私の脳裏をぐるぐると回っていた。   結論としては2つ。   まずは賃金をできる限り上げることだ。ベンチャー創業期など、厳しい時期はあるだろう。しかし新興企業は助成金や補助金も多いため、雇用で補助金をもらいやすい。それを元手に給与を増やすことはできる。   次に「実になるやりがい」、すなわち将来のカネになるスキルを与えることだ。たとえば執筆が仕事の私なら、就業時間内の研修で実際の執筆方法を教えればよい。本当にライターとして育成し、独立できるシステムができればうちを踏み台にして羽ばたいていける。「こんなところ早く卒業して、別のところで立身出世しなさいよ」というのが、零細雇用主にできる最大のサポートだろう。   一方であまりに権限を与えすぎると、今度は会社を丸ごと乗っ取られたり資金を持ち逃げされたりするかもしれない。世界を率いるビジョナリー・カンパニーだって会社をわざと僻地に作って社外の交流を断絶させたり、会社を讃える歌を作って信仰心を高めたりしているのだ。零細だってそれくらいしなければ裏切者が出る。合理的な範囲で経営するなら、性善説ではやっていけない。   そんな風にして、今日も零細の雇用は回っている。     ...

今回紹介するのは『謎解き型ホラーゲーム』という一風変わったお化け屋敷「シカバネ」である。怖いものが苦手なのでお化け屋敷をさけてきた人生だが、これはまったく新しいエンターテイメントだと実感できた。   体験レポートとインタビューをご覧いただこう。   プレーヤーは自分、謎解き型ホラーゲーム「シカバネ」 謎解き型ホラーゲーム「シカバネ」は、イベントプロデュース団体「Clover」が運営するアトラクション。阿佐ヶ谷アニメストリートに「シカバネ」専用店舗があるという。 あった。 見つけてしまった、怖そう。…入りたくない。  ...

  学生時代の、思い出のお店があるだろうか?僕にとって、「みよし」という京都のラーメン屋がそれにあたる。今からそのラーメン屋の話をしたい。何の宣伝も、何のオチもない。     高校3年生まで神奈川県で過ごし、大学生になる時に京都に来た。わざわざ関東から京都の大学を受験した理由は言うまでもなく「一人暮らしがしたいから」であり、加えて「関西弁の女子にモテまくってブイブイいわせたいから」である。   実家を離れ京都に向かう途中のことを、鮮明に覚えている。期待と不安に胸を膨らませて、という表現があるがまさに文字通りのそれだった。関西に住むのは人生で初めて。   阪神タイガースのユニホームを着たゴリゴリの関西弁の男達が自慢のタコ焼きを振りかざしながら「ナンデヤネンっっt!」と叫びながらとんでもなく鋭いツッコミをいれてくる。   ヒョウ柄の衣装に身を包んだゴリゴリの関西弁のオバハン達がヒョウ柄のカバンから取り出したヒョウ柄のアメちゃんをマシンガンの如く乱射し「カメヘンっ、カメヘンっっっっt!!カメハメハっっぁっっっtああああゔぁあwぽえkp〜!!!」と絶叫している。   そんなスラム街を想像し、興奮しつつ身構えていた。   標準語は、嫌われてしまうかもしれない。     蓋を開けてみると関西の人達はオープンで暖かく、標準語の男性も直ぐに輪に入れてもらえた。タコ焼きを振りかざす魔人もアメちゃんをブッ放つ狂人もいない。会話のテンポが多少違うだけだ。   まだ桜の残る大学生活の始まりの頃、「京都はとにかくラーメンがウマいんだ」と言われて大学の先輩に連れて来られたラーメン屋。それが「みよし」である。   まず当時の僕が何に衝撃を覚えたかと言うと、京都はラーメンが美味い、という説明の元、満を持して連れて来られたラーメン屋が、「長浜ラーメン」だったこと。京都の一押し料理が、博多ラーメンだった。え?京都ラーメンじゃないの?   「いや、京都と言えばラーメンが最高なんだが、“京都ラーメン”なんてものは、ない。京都のラーメンは全て輸入品だ。でも京都のラーメンは最高。だから大丈夫だ。最高だから大丈夫。」そんな、よく分からない雑な説明を受けたのを覚えている。輸入品って何だ。   店の床は油っぽくて、お世辞にも清潔とはいえない。店主の小柄な金髪のオバちゃんが印象的だった。そして「みよし」のラーメンは死ぬほどウマかった。   ウマい。あれ。恐ろしい程ウマいぞ。余りにウマかったので、それが京都じゃなくて博多のラーメンだとか何だとか、そんなことは一瞬でどうでも良くなった。ウマ過ぎる。   どこ発祥のラーメンだとか何だとか、そんなつまらないことに拘っていた数分前の自分を撲殺したい。輸入品って何だ、って何だ。最高。一気食い。替玉。そんな感じで見知らぬ土地での生活は始まった。     昼に友達と「みよし」を食ってから学校に行き、授業を切り上げて酒を飲み始める。金がなくなっては親に仕送りをせがみ、その仕送りで「みよし」を食う。金が二進も三進もいかなくなると渋々バイトを始めるが、当日になるとバイトに行くのがダルいと項垂れる。   皆で勉強しようぜと学校で集まっては勉強などせずにダラダラし、とりあえず「みよし」を食う。単位が足りないと嘆き、そして足りない単位を忘れるために飲み会へ。   飲んだ後はベロベロで「みよし」を食ってから帰って爆睡し、次の日の授業は寝ブッチする。寝ブッチしてやることがないので、とりあえず「みよし」を食う。   その生活はと言えば、まさにどこにでもいる典型的な阿呆な大学生のそれである。一つ他の学生との違いがあるとすれば、「みよし」を食い過ぎているところくらいだ。「みよし」を、ラーメンを食べる回数が、異次元過ぎる。     あれ?さすがにラーメンばかり食い過ぎているんじゃないか?ラーメンばかり食べて、栄養が偏ってるんじゃないか?   ある日、突如として自らの健康面が不安になってきた自分は、野菜を摂取するために思い詰めた表情で再び「みよし」へと歩みを進めた。   食べ慣れたラーメンの上に、普段とは比べ物にならいほどの「ネギ」と想像を絶する量の「高菜」を乗せ、それをムシャムシャと食べる。むふふふふ。これだけネギと高菜を食べれば、野菜に関しては一切問題ないだろう。ラーメン健康法。これが当時の私の理論だ。   ネギと高菜を増やせば大丈夫。この、ラーメンの上に乗っている具材だけで自らの栄養バランスを軒並みコントロールしようとする強引な姿勢は、ベロを出しながらハァハァする活動だけで身体全体の体温を軒並みコントロールしようとする「犬」に通ずるところがあるだろう。ん?   例えが独特過ぎてよく分からない。     歌手のGacktは炭水化物をほとんど食べないが、年に一度だけ特別に炭水化物を摂取する時がある、それは「みよし」のラーメンを食べる時だ。こんな噂があった。   店の人に聞いてみると、実際にGacktが時々来るらしい。あの美食家のGacktも認めたラーメン屋。Gacktが時々来るラーメン屋。「みよし」を知らない人に「みよし」の説明をする時には、度々、Gacktの名前が出て来た。   みよしとGacktの関係性は、噂で広まるほどに誇張されていき、「Gacktが定期的に来るラーメン屋」になったかと思えば「Gacktが毎週のように来るラーメン屋」と語る人間まで現れた。   このまま噂が捻れていくと、いつか「みよし」は「Gacktが毎日いるラーメン屋」になり、やがて「Gacktの立ち上げたラーメン屋」になり、いつしか「Gacktの実家」になるだろう。そしてやがて「Gacktの認めたケーキ屋さん」になり、最終的に「CHAGEとASKAが出会った喫茶店」になる。間違いない。噂とはそういうもんだ。ああ恐ろしい。   ちなみに相当回数「みよし」を食べたが、残念ながらGacktは一度も見た事がない。     平和な時間が、ダラダラと流れた。標準語だったその男性もいつからか立派なエセ関西弁を使いこなすようになっていた。関西にかぶれたのである。気付けば、大学4年生になっていた。   毎日、授業がダルい、バイトがダルい、単位が足りない、と言いながら皆で飲み、ダベり、遊び、ただ漫然と時間を過ごしてきただけ。特に何も学んでいないし、何も成し遂げていない。そんな非生産的な大学生活は、悪くなかった。いや、控えめに言っても最高だった。たくさん友達が出来た。   社会人を目前にして、京都を離れて関東に戻るのが寂しくなった。京都最期の日は、「みよし」を食べようと決めていた。   関西の思い出は常に「みよし」と共にあった。最終日は友達が送別会を開いてくれる予定になっていたので、その飲み会の後に来るよと、「みよし」のオバちゃんに伝えておいた。     迎えた最終日、送別会で盛大に酒を飲んだ自分は、見事に潰れてしまった。飲み会の後に「みよし」に行くはずが、居酒屋で眠ってしまったらしい。   飲み会は夜通し続き、朝方に目覚めた。起きた瞬間、「みよし」に行きそびれたことに気付いた。営業時間を過ぎている。   せめて謝りたい、まだ誰かいるかもしれないと思い半泣きの千鳥足で「みよし」に向かった。店に着くと、バイト全員を帰したオバちゃんが、一人で店を開けて、自分のことを待っていた。   ずいぶん遅かったじゃないの、待ちくたびれたわよ。ネギと高菜が鬼のように乗った、いつもの健康そうなラーメンが出てきた。オバちゃんは、お金はいらないと言った。東京に行っても頑張りなさいと言った。涙が出た。   オンオンと泣きながらラーメンをすすり、自分の鼻水をスープにドバドバと垂らしてはそれをグイグイと飲むベロベロの青年は、そうとう気持ち悪かっただろうと思う。オンオン、ドバドバ、グイグイ、ベロベロ。   有難う有難うと言い、嗚咽を洩らしながら替玉まで食べ切った。スープが五臓六腑に染み渡って、それが至高の満足感をもたらした。大学生活が終わった。     それから随分と時間が流れ、先日、実に7年ぶりに「みよし」に行った。京都の最終日に食べて以来。   店に入ると、当時と変わらず小柄なオバちゃんがラーメンを作っていた。「みよし」に通っていたのは二十歳前後。   もうアラサーになった自分にはさすがに気付かないだろうと思いラーメンをシレっと注文すると、ネギと高菜が恐ろしいほど乗った、いかにも健康そうなラーメンがシレっと出てきた。「ずいぶん久しぶりじゃないの」。ああ、あの頃のままだ。   昔を思い出しながら、ラーメンをすすると、懐かしい味がする。「オバちゃん、俺の最終日に店を開けてくれていたのは、本当に感動したよ」   遠い目をしながらとうとうと思い出話に浸り始めた私に対して、オバちゃんは間髪入れず、「え?そんなことあったっけ?」と言った。辺り一面に、不穏な空気が流れた。え?なに?あの感動のエピソードを…覚えてないの!?!?   自分の中で美しい思い出となっているそれが相手と共有出来なかった時のシュールさは、物凄い。てっきり相手にとっても美しい思い出になっていると思い込んでいた。「勘違い野郎」である。   感動的なエピソードであるという自負からトンでもなくドヤ顔で語っていた自分は、何とも言えない恥ずかしさを覚えた。どうも自分の中で記憶が美化され過ぎたみたいだ。あれ?おかしいな。こんな筈じゃなかった。あれ?まあ、いいや。もう今さら、何でも良いや。   ラーメンが、相変わらずクソほどウマかった。細い麺が汁に絡んで、タマらない。スープが胃に染み渡って仕方が無い。京都のラーメンは最高だ。一気食いして、替玉を頼んだ。京都のラーメンは最高。       京都のラーメンは、最高だ。       ...

  起業は実際のところ、ほとんど何でもありです。資金調達、メンバー集め、経営方針、株の分配、事業内容・・・実にたくさんの要素が存在しますし、全く同じ形の起業なんてものは2つとしてありえないと言っていいでしょう。そもそも株式会社以外の会社形態だって存在するわけですし。人間がそれぞれ全く違うように、会社のあるべき姿もケースバイケースです。これこそが正しいというやり方は間違いなく存在しません。成功すればそれが正しいやり方なのです。   しかし、僕が自分の経験から最も重視するのは、創業期における社長のポジションです。実際、社長の業務というのは実に様々です。「ほとんど何もしない」という社長さえ存在します。このお話はどれが正しい、というような結論を出す話ではありません。実際のところ、起業をするときに自分の経営者としてのあり方を選べるなんてことは稀です。自分の持っている強みを生かして起業するしかないのですから。   しかし、その際のメリットデメリットについては考えておく必要があると思います。僕の知る限り、あるいは思いつく限りお伝えさせていただきます。業種を分類せず一般化して語っているのでその辺は多少雑ですが、雰囲気は掴めると思います。 創業者① スタープレイヤー社長 収益を生み出す基幹となる異能を社長自身が有しているパターンです。例えば、腕の良いプログラマであるとか料理人であるとか、誰にも真似出来ない商品開発が出来る、みたいな場合もあるでしょう。逆に「売る」方に特化した営業モンスターなんて場合もあるかもしれません。営業請負会社なんてのもありますし。   このパターンのメリットはまず、創業期における業務遂行の手堅さです。それこそ、部下の誰が辞めようが会社の一番の強みは社長自身が握っているわけですから、失いようがありません。いざとなれば、社長が3人分働けば急場は凌げてしまいます。そして、この手の社長は3人分くらい平気で働く人が多いです。序盤戦は圧倒的に有利でしょう。「俺がいれば大丈夫」という状態です。使えない人間には容赦なく解雇を宣告できます。最悪、部下が全員辞めてもなんとかやっていけることさえあります。   そして、もうひとつのメリットですが、このタイプの社長は現場で実際に業務を行う従業員の人心掌握に強みを発揮することが多いのです。というのも、専門技術の世界というのは、往々にして実力と実績がモノを言うタテ社会です。圧倒的に優れた能力を持った人間がトップに立っていれば、現場で働く人間の信任は極めて得やすいと言えます。実務的な異能には往々にしてカリスマとリーダーシップもついてきます。故に、経営が難所にさしかかっても人がついてくることが多いです。   しかし、もちろん弱点もあります。プレイヤーとして圧倒的な実力を発揮しながら、同時に会社経営と事業拡大をこなすというのは、ちょっと事業が膨らんで来てしまえば常人にはまず不可能です。また、経営者の仕事は第一に会社の意思決定、即ち決断です。これは、実に大きなエネルギーを要する業務です。あの巨大な心理的負荷を抱えながら異能を必要とする業務をこなせる人は、ほとんど人間ではないと思います。(まぁ、人間ではない人がゴロゴロしているのが市場ではあるのですけれど)なんにせよ、金繰りや経営判断などの会社の基幹となる部分を他人に委ねざるを得ないというのはかなりのリスクです。   しかし、経営パートに社長が関与すればするほどプレイヤーとしての出力は低下するジレンマが発生します。このタイプの社長はとにかく金を横領されがち、あるいは気づいたら財務が愉快な状態になっていることが多いという印象があります。   そして、スタープレイヤー社長の率いる会社の一番の困難は、拡大の難しさです。事業が大きくなれば、社長の異能ひとつで拡大出来る限界に必ず直面します。しかし、2番手3番手を張れるプレイヤーの育成は楽ではありませんし、個人の異能によらない収益の仕組みを作り上げることも難しい。   そして「プレイヤーとしての異能」だけを武器にした社長にとって、自分を上回る、あるいは代替し得る異能を持った人間の出現は社内における求心力の低下を即座に意味します。経営パートは他人に握られているわけですし、これは実に恐ろしいです。かつての英雄、今はお飾り社長。あると思います。会社なんて設立せず、フリーランスでやればよかった。そんな話も聞きましたね・・・。     スタープレイヤー社長の仕事まとめ     メリット ・創業期における業務遂行の手堅さ、人員の欠損への対応力の高さ ・小さく始めてある程度の大きさまで持っていくのは本当に強い ・プレイヤーとしての異能をテコにしたカリスマとリーダーシップ ・経営が難所にさしかかっても結構人がついてくるかもしれない   デメリット ・経営パートまで手が回らないので人を雇って任せるしかない ・社長が経営パートに関与すればするほど、プレイヤーとしての出力が落ちる ・社長の持つ異能のノウハウ化や共有が難しく、社長の出力の限界が成長の天井になりやすい ・業務拡大が上手くいったとしても、結果トップとしての求心力を失いかねない ・横領や会社を私物化されがちで、やはり社長が経営をちゃんと見ないのは怖い 創業者② 経営特化型社長 スタープレイヤー社長の対極となるタイプの社長です。このタイプは1にも2にも、まず資金をかき集める異能がなければ話は始まりません。有能な人材を見つけ、事業計画を書き、資金を調達する。それが経営特化型社長のやり方です。当然ながら、創業可能な事業の範囲が広いというメリットがあります。それこそ、いい人材や出資者を見つけたらその状況を軸に事業計画を書く、なんていうフリーダムな動きも可能になります。   経営特化型社長は現場にはあまり出ないことが多いでしょう。当たり前ですね、プレイヤーとしての能力を持ってないのですから。その代わり、経営判断は自分一人でガチガチに握ることが必須です。現場技能を持っていない以上、経営能力だけが存在意義となります。経営判断はトップの聖域にしておかなければ話にならない、そして、その正しさを常に示し続けて人を引っ張るしかありません。   また、事業拡大に強いことが多いです。そもそも人を雇って事業を行うのがベースですので、上手く事業が回ればどんどん人を雇って拡大していけるでしょう。そもそも「他人の力で儲ける」がベースですから。現場に出ない分、事業拡大に力を注ぐ余裕があります。事業が一定以上のサイズ感に成長すれば、コアメンバーが抜けた際のリスクも反比例して小さくなります。そうなれば、経営能力と資金調達能力の高さが存分に生かせるはずです。バシバシ人を切っては雇うタイプの経営をやる人もいますね。   デメリットも明確です。創業期に事業のコアとなるメンバーに逃げられたらその場で終わりです。自分の力で急場を凌ぐことさえ出来ません。メンバー3人で会社を回している時に1人が抜けてゲームオーバー、そういう話はよくあります。結局、「自力で稼げない」というのは恐ろしく大きい弱点なのです。   創業のテコとなるコアメンバーだけは、そうそう兌換が効かないので、序盤戦はとにかく脆い。小さく始めて大きく育てるは会社経営のひとつの理想ですが、経営特化型社長には鬼門です。ある程度の規模感で、誰が抜けても大丈夫な形で起業・・・出来たら苦労はないですね。   また、現場の統率やリーダーシップに弱みがある場合が多いです。前述の通り、現場で技能を発揮する従業員は、現場における職能の高さこそが最も重要だと考えている場合が多いのです。平たく言えば、「俺と同じ仕事が出来ない奴の命令なんて聞けるかよ」みたいなあれが発生しやすい。「事業計画の策定が得意」とか「資金を調達出来る」みたいな能力では、現場の敬意はそうそう勝ち取れません。文化が違います。故に資金枯渇など、経営の難所には弱いことが多いです。このタイプの社長はとにかく反乱を起こされがち、あるいは従業員に離反を起こされがち、という印象です。     経営特化型社長の仕事まとめ     メリット ・獲得した人材、あるいは出資者の意向に合わせて事業をデザインできる柔軟さ ・経営とコアメンバーのマネジメントに全力を傾注可能 ・事業拡大に強み ・経営や資金の状況を常に注視する余裕がある ・経営判断に十分な心理的リソースを割ける   デメリット ・小さく創業した場合、序盤戦が圧倒的に弱い。人が欠けても求人を出すことしか出来ず、自らプレイヤーとして動くことが出来ない ・現場実務に通じていないが故のリーダーシップの弱さ ・実務能力のある部下がいなければ本当に何も出来ない ・反乱起こされがち ・お金の切れ目が縁の切れ目になりがち 創業者③ 中間型社長 基本的には経営を担当するが、現場業務もそれなりにこなせる社長です。なんだかんだ、経営特化型社長も多少は現場業務が出来ないと面倒も多いので、経営特化型社長から始まって中間型社長に移行していく場合も多いでしょう。中には、資金調達と総務経理担当から参加して、業務の合間に死ぬ気で勉強した結果トッププレイヤーも兼任するようになったという猛者にも会ったことがあります。これはとあるIT企業の役員の方なんですが、すごい話だと思いましたね、多分、部下に果てしなくナメられるなどの辛い経験があったんだろうと思います。   このタイプは上手くやればバランスがいい反面、強みにも乏しいという問題があります。プレイヤーとしての業務に力を注げば経営がおろそかになりますし、経営に力を注げばプレイヤーとしての業務が疎かになります。その中間でバランスを取り続ける、という選択です。人間1人に処理可能な業務量は所詮有限なので、両方をうまいことやろうとした結果どっちもダメだったということも往々にしてあります。   僕自身もこのタイプでしたが・・・まぁ、楽ではないです。いっそ経営特化型に振り切った方が結果は良かったかもしれないと思うこともあります。まぁ、創業初期は人もいないし無駄金も一切使えないので、社長が現場業務をやらざるを得ないことも多いでしょうし、出来るとか出来ないじゃねえんだ、人がいねえんだから社長がやるんだよ。そういう世界観もあります。   少人数で会社を回している場合、どうしても体調不良などで現場の担当者が出られないことは避けがたくありますし、いざとなったら現場もやれるに越したことはもちろんないですよね。コアメンバーが抜け落ちても、次のプレイヤーが稼動し始めるまで自分が現場を守りきるという判断も出来なくはありません。もちろん、パフォーマンスはその業務に特化した人間に比べて大きく劣るでしょうが、出来ないよりはよっぽどマシです。   飲食の場合は「シェフがバックレた」なんてのは大変によくあるお話です。僕のかつて経営していたお店のすぐそばにあった店舗は、開店直前にシェフが「やっぱやめた」と言い出したそうで、1日たりともお店を営業しないまま風に消えていきました。あんまり詳しく書くとあれなんですが、専門性の高い料理店だったので代わりのシェフも確保できなかったんでしょうね、あるいは代わりのシェフを探す気力もないほどにオーナーが絶望してしまったのかもしれません。ピカピカの内装と厨房設備の居抜きを売っていくらか回収出来たんでしょうか。開店前、道に立ってサービス件を配っていたオーナーと思しき初老の男性のことを、今でも時々思い出します。もちろん、僕に他人に同情する資格なんて一切ないんですけど。     中間型社長の仕事まとめ     メリット ・突発的な人員不足やプレイヤーの離脱に多少は対応できなくもないかもしれない ・現場を知ってはいるのでそれなりに現場とも仲良くやれるかも   デメリット ・全てが中途半端、上手くバランスが取れなければスタープレイヤー社長、経営特化型社長の欠点を併せ持つ結果に ・結局、業務量が狂ったことになりがち ・現場でのパフォーマンスが低いと、どんどん部下に舐められる ・経営判断や経営実務のしんどさを理解してくれる部下はそんなにいない ・給与明細作って給料払って、帳簿処理して出資者に報告して、資金計画作って、現場が揉めたら間に入って求人出して、経営数値を分析して、店舗回って状況を見て、従業員からヒアリングして人事評価を行いつつ、プレイヤーとして店舗にも出る・・・ ・あ、そう予約モリモリなのにバイトがバックレ・・・うん30分で行く ・アウアウアー あなたはどのタイプで会社を起業しますか? 実際、起業を志す人は「何の特化技能もない、野心しかない」という人も多く、そういう人でも成功するときは成功しちゃうのが起業でもあります。プログラミングの一切出来ないIT企業の社長だって結構存在すると聞きますし、フライパンを振れない、トレンチの持ち方すら知らない飲食店経営者なんてもっといっぱいいるでしょう。飲食業界人どころか一般の方でも大体知ってる「俺の」チェーンを展開する坂本社長は、元はブックオフコーポレーションの創業者で、いきなり飲食業界に飛び込んで来た人です。   もちろん、坂本社長は創業時の資金量が一般的な起業家とは比べ物にならないほど多かったであろうことは想像に難くありませんが、それでも突然異業種に飛び込んで成功する起業家なんてザラにいます。バイト経験すらない全くの未経験からそれなりに参入障壁のある不動産業に飛び込んで儲けている猛者だっています。専門技能や知識、あるいは経験を有した人でなければ起業出来ないなんてことは全くありません。その一方、専門技能や知識経験を持った人が強いこともまた事実です。   起業にルールはほとんどありません。セオリーだってそう多くはありません。むしろ、セオリーに従って成功できるならみんな成功しているはずです。しかし、自分が起業した後の経営のあり方をリアルに想像出来るかどうかは、成功率に大いに影響するのではないかと思います。   僕は、創業の時にこんなことは一切考えず勢いだけで突っ込みましたので、実に多くのしなくてもいい苦労や失敗をしました。後知恵になりますが、多くの困難は回避可能だったと思います。実際、この文章を読んで「ではどうしたらいいか」については皆さんもかなり思い浮かんだのではないでしょうか。   初めての起業に挑む方は、本当に何もかもわからないと思います。しかし、断片的なものでもいいので情報を集めて、想像力を働かせることはとても大事だと思います。もう少し多くの想像力を働かせることが出来れば、そして起こりうる事態に対しての備えを作っておけば、僕にも違った未来があったかもしれないと未だに思います。後悔は尽きません、おそらく一生この感情はついて回るんだと思います。   どうか、皆様悔いの無い起業を、そしてあなたの成功を心からお祈りします。やっていきましょう。     ...

  「安い、早い、うまい」が売りのファストフード業界も単純な安売り戦略でなく、高級路線に走ったり、増税を理由にじわじわ値上げを行ったりしている。   そんな中、たったの200円でカレーライスを提供するカレー屋さんがある。店の名前は「原価率研究所」だ。   200円カレーと原価率研究所。 この2つのワードだけで、ただのカレー屋でないことは明らかだ。安売りだけでない、何か特別なビジョンがあるに違いないと感じ、経営哲学や戦略を取材してきた。 原価率研究所という名のカレー屋 原価率研究所は新潟県を中心に直営店2店舗・FC7店舗を構えるチェーン店だ。都内には竹ノ塚店と梅屋敷店の2店舗がある。取材で伺ったのは竹ノ塚店。駅から8分ほど歩いた通り沿いにある。 看板には「今回のテーマは『カレーライス』」と書かれている。 どこかしら突き放したような表現だ。間違いなく普通のカレー屋ではない。 「カレーライス」と「200円」ののぼりがはためく。 メニューはいたってシンプル。 カレーライス200円とチーズカレー300円、それにテイクアウト用の鍋カレー(ルーのみ)150円だけだ。辛さの設定やトッピングもなければ、ライス大盛りすらメニューにない。 ▲カレー200円(右) チーズカレー300円(左)   カレーとチーズカレー。 店内・テイクアウトともに、容器は使い捨てのプラスチック製を使用している。 洗う手間を省いて人件費を浮かせるためだ。 ...

  創業期の英雄、起業のコア人材 皆さんの会社には「英雄」が存在するでしょうか。創業期の会社には、大抵の場合、英雄が存在すると思います。この人抜きにしてこの会社はない、ある個人の能力、あるいは人脈、そういうものが会社経営に圧倒的に寄与したという話はどこの会社にもあると思います。   創業期というのは大抵の場合、あらゆる業務が属人的です。当たり前ですね、最初から儲けのシステムが完全に出来上がっている会社なんてものはまずありません。プレイヤーの戦力こそが創業期の会社における強さそのものなのですから。その環境からは必然的に英雄が発生します。   創業時、あるいは創業後の中核メンバー集めの際、創業者であるあなたは間違いなく「儲けを生む人間」、あるいは「自分の能力的欠損を埋め合わせてくれる人間」という基準でメンバーを選んだと思います。少なくとも、合理的な(合理的であるということは必ずしも良い結果を生むわけではありませんが)創業者であればそうするでしょう。その結果、あなたの人選はドンピシャに当たった。あなたの選んだメンバーは八面六臂の大活躍を果たし、会社は大きく成長した。そういう美しいお話は結構あります。素晴らしいですよね、あなたも創業者として大変、鼻が高いでしょう。   しかし、美しくない話がここから始まります。会社が上々の収益を上げているとなると、当然規模を拡大したい、そういう話になります。しかし、規模の拡大を志向するとなると、業務の属人性を解除し、プレーヤーの能力に依らない収益システムを構築する必要が出てきます。英雄の異能で利益を上げる限界が来たから人を増やすという話になったわけですから。   業務のマニュアル化とノウハウの言語化とシェア、そういうことが必要になります。また、そろそろ創業以来ハチャメチャだった就労環境も整えなければならないでしょう。人を雇うということは、雇った人が会社に残ってくれる環境を作らなければならないということです。ハチャメチャに耐え、狂ったモチベーションで前進してきた創業メンバーの時代は終わり、会社というシステムを組み上げる時代がやってきます。   これを、僕は「創業期の終わり」と呼んでいます。業種や業態にもよりますが、従業員が2桁に到達するころには、嫌でもその辺は考えなければならないでしょう。創業期の終わりはとても悲しい季節です。これまで、個人の異能と裁量を丸投げした意思決定の速度で前進してきた会社を、ルールとシステムの中に落としこむ必要が出てくるのです。ワーカホリック達の楽園、永遠のような文化祭前日は終わりです。社員の数を増やすということはそういうことです。創業メンバーだけで回していた頃のようなハチャメチャは、規模が大きくなってくるとそうそう通らない。(たまにネジ通す会社もなくはないですが・・・)     ↓こちらもおすすめ↓ 「起業失敗の話。起業を志す皆さんに敗残者からお伝えしたいこと」     創業期の終わりに。英雄頼りの会社経営から抜け出す理由 もちろん、この段階で事業の拡大を止めるというのもありえなくはない選択肢です。実際、十分な利益をあげ、大きな成長余力を有しながら、それでも従業員の数や事業の規模を頑なに拡大しない経営者は存在します。彼らは正に勝利者です。自分の会社の最も居心地の良い大きさを見つけ、後はそれを守っていくフェーズに入った人たちです。規模を志向しなくとも十分な利益が取れて、かつ社内の人間や出資者がみな満足するだけ配分できる会社にのみ許される最高の贅沢です。   しかし、出資を受けて創業した人間がここで立ち止まるのは余程理解のある出資者に恵まれていない限り、難しいでしょう。また、社内の人間が「成長を止める」という判断を呑んでくれるとは限りません。「ふざけるな、ここが上限なら俺は辞めるぞ」そういうことになります。この段階で「英雄」たるプレイヤーに抜けられることは、即ち事業の破綻、そこまで悪くなくとも大きな収益の減少を意味することは言うまでもありません。   余談ですが、社員数人くらいだけど羽振りのいいあの社長、実はすごい人なんですよ。会社経営において「成長を止める」という判断は恐ろしく、難しいものです。まず、自分自身が止まれない、自分が止まれても出資者が許さない、出資者が許しても社内の人間が許さない、そういうことです。銀行も金を貸しに来ます、社長ならやれるという声がどんどんかかります。新規の出資希望者だって列を成します。それでも、それら全てを振り切ってその場所にとどまったのが、「小さい会社の儲かっている社長」です。社長自身がスタープレイヤーであり、同時に会社のオーナーである場合が多いですね。このようなゴールを目指すなら、是非その形を作りましょう。   しかし、多くの人は成長余力のある限り拡大を目指すことになると思います。仕方のないことです。創業の仕方によっては宿命付けられていると言っても過言ではないこともあるでしょう。出資者は利益を求めます、従業員は給与を求めます、そしてあなたは栄光を求めるでしょう。となれば創業期は終わるしかないのです。もっと儲けるためには、英雄の異能を会社の仕組みに落とし込んでいくしかない。英雄頼りの経営を抜け出さねばならない。拡大するしかない。そして、もちろんコンプライアンスと労働環境だって整えていかねばならない。 英雄の時代、輝かしき創業期 話をわかりやすくするためにラーメン屋のチェーン展開のお話をしましょう。   あなたは、1人のとてつもなくラーメン作りが上手い人間(仮にAとしましょう)を役員として迎え入れて、1軒目のお店を見事大繁盛させました。Aはとてつもなく職人気質で仕事に一切の妥協はなく、1日14時間鍋の前に立ち続け、会社に大きな利益をもたらしました。ラーメン屋は当たると大きいのです。お店の前に行列は絶えず、店舗運営以外の実務一切を担当していた社長のあなたは鼻高々です。最早あなた自身が店舗に出てホールや調理補助をやることもありません、人を雇えます。14時間働いた後に社長業をやる地獄からも開放されました。次から次へとメディアの取材も押しかけるでしょう。最初の挑戦は大成功でした。   さぁ、2号店だ。あなたは考えます。今度は資金にも余裕がある、銀行もノリノリで貸してくれた。物件情報も内装についても厨房器具も什器も勝手はすっかりわかっている。協力者もたくさんいる。2軒目の店舗は大抵の場合、1軒目より遥かに効率よく作れます。もちろん、ラーメンのレシピも明文化済みです、難解な火加減などもあなたはAに付きっ切りで習得しました。Aは純粋なる職人肌で指導が出来るタイプではないので、新人は2ヶ月ほどAの下で研修させた後、すぐ2軒目に投入しました。新人は二人とも経験者でしたし、レシピさえあれば何とかなるとあなたは判断したのです。   研修の後、Aは新人に対して「1日14時間ぐらい働く根性がない奴に勤まるのかよ・・・」などとグチグチと文句を言っていましたし、新人からは「Aは最悪だ、社長の指示をまるで守らない、無茶苦茶に働かされた」という声が上がりましたが、気にしていられません。「まぁまぁ、2号店に移れば大丈夫だよ、君たちが主役だ」などと宥めて進めるしかありません。なにしろ、2軒目の店舗は出来上がっているんですから。   2軒目も大成功でした。新人1号と2号はなかなかの働きぶりを見せ、1号店を上回る利益を叩き出しました。もちろん、1号店も相変わらず大繁盛です。あなたの下には大量の利益が転がり込んで来ました。ここで、リスクを取って二人同時に正社員を入れたのが英断だったことがわかります。新人2号を次の店舗に投入すれば、すぐに3号店が開店できるのです。そのようにして、あなたは気づけば5店舗のラーメン店を持つ一端の実業家になっていました。あなたの店舗展開能力は確かだったのです。新商品の開発などはAが引き続き担当しました、それらも次から次へとヒットしました。ラーメンを開発することに関して、Aは正に天才でした。ベースのスープにも度重なる改良を加え、お客様を飽きさせない多様な味を作り上げることが出来ました。   ここで問題が発生しました。マネジメントの手が足りないのです。飲食店というのは放っておけば利益を産む魔法の箱ではありません。所詮は人間が運営するお店です、監視を緩めればすぐに従業員はスープの煮込み時間を短縮し、掃除をサボります。最悪の場合売り上げを引っこ抜きます。スープを水増しし、麺の本数を少々いじればそんなことは簡単に出来ます。架空のアルバイトをでっちあげることさえあります。帳簿だって任せきるわけにはいきません、仕入れ先からリベートを抜いていないかもチェックする必要があります。マネジメントや業務オペレーションが上手く回ってない店舗にはあなた自身が乗り込んで指揮を執る必要もあるでしょう。あなたはついに限界に達しました。   そこで、あなたは管理職を一人雇うことを考えました。しかし、そこにAからの異議が上がりました。自分がいつまでも現場にいるのはおかしい、現場の人間を増やした上で自分に管理職を担当させろ、店舗運営のことなら自分が一番わかっている。何より、ラーメンを俺より上手に作れるわけでもなく、まして社長でもない、ぽっと出の人間に管理されるのは我慢ならない。Aはそう主張しました。あなたは呑むしかありませんでした。確かに、筋をいえばその通りなのです。Aは金だけで動く人間ではありません、仕事の充実感がなければ最悪退職してしまうことさえ考えられます。   結果としてあなたが2店舗の管理、Aが3店舗の管理を行うこととなりました。あなたも社長業が忙しくなっていたのです。新店舗の展開もやらなければなりません。まだまだ成長する気は満々です。逆にAは1号店の運営から解放され、十分な時間的余裕が確保されました。分業体制の始まりです。あなたは口を酸っぱくしてAに言いました、労働法規を守れ、コンプライアンスを守れと。あなたがラーメン作りの天才なのはわかっている、でもそれだけは頼みましたよ、と。もちろん、就業規則も作成して備え付けてあります。Aには遵守する、という旨の念書さえ取る徹底をしました。   こうして経営の第2フェーズが始まったのです。     ↓こちらもおすすめ↓ 「「労働者は強い」僕が体験した、創業期における従業員の話」     英雄の反乱、会社経営の失敗 嫌な予感はしました。そして、それはもちろん当たりました。数ヶ月とたたずAの管理する店舗から、離職者が出始めたのです。客足は落ちていません、むしろ増加しています。従業員に支払う給与だって、業界水準から見ればまずまず以上に設定しています。福利厚生だって飲食業界としては高い水準です。なのに、離職者は発生してしまいました。あなたは大慌てで退職者に話を聞きました、結果としては「Aの業務における要求水準が高すぎる」「Aにマネジメント能力がない」「Aが業務コンプライアンスや労働法規を一切無視している」ということが伝えられました。   いや、正確に言えばこれは完全な事実ではありません。Aに何があろうと付き従うという人間も出てきていました。Aは半ば意図的に従業員の精錬を行っている節さえ感じられました。何があろうと自分に付き従う、能力の高い人間だけを残す。そういう意図が感じ取れました。もっともAは論理的な人間ではないので、そのような意図が言語化されているかはわかりません。それしか仕事の仕方を知らなかったのかもしれない。実際、彼が修行してきた場所はそういう環境だったのでしょう。   しかし、これは看過できません。Aは退職した従業員の穴を自ら働き、また自らに付き従う従業員に働かせて埋め合わせてはいましたが、完全に違法操業です。あなたは次々と辞めていく従業員から発生する問題を何とかお金と説得で解決し、求人を打ち、それでもまた辞めるという地獄に疲れ果てました。   しかし、この会社の責任者はあなたです。あなたは去っていく従業員から受ける批判と罵倒に何一つ反論出来ません、裁判を起こされたら矢面に立つのはあなたですし、労基署に怒られるのもあなたです。このままの状態では店舗数を増やすことも出来ません。成長が止まってしまいます。出資者からは新規店舗はどうした、利益は上がっているんだろう、という矢の催促が突き刺さります。悪いのは全てあなたです。経営のコントロールを失った社長に弁解出来ることがたったひとつでもあるでしょうか?   Aとあなたは何度も何度も交渉を重ねました。我々は会社組織だ、法を守らねばならない。従業員は必ずしもあなたの満足のいく能力を持っているとは限らない、それでも育てなければ利益は出ないし事業拡大も出来ないのだ、と。実際、採用して僅か2ヶ月の研修を経た人材が十分に店舗を繁盛させているではないか、と。しかし、Aは納得する素振りを見せても行動には移しません。売り上げは落ちていませんが、利益率はじわりじわりと下がり続けていました。当たり前です、従業員が定着しなければ人件費と求人費用は果てしなく嵩むのです。従業員の配置転換やローテーションなども試してみました。しかし、結果は同じでした。   また、経営方針の食い違いも大きくなってきました。あなたは言います、業務を効率化しよう、そろそろセントラルキッチンを検討してもいいのではないか、あるいは具材の調理を外注しても良いのではないか。いくつかの会社には話をもう振ってある、味見をしてみてくれ、私の味覚では十分な品質であると感じられる。しかし、Aは拒否します。全て手作り、店内自製、そうでなければうまいラーメンなど作れないというのがAの信念です。実際、この言葉には説得力があります。このラーメンチェーンを推進させてきた原動力がまさにそれなのですから。   そして、あなたはついに決断しました。Aを現場に戻す、もちろんしっかりと支払っている役員報酬はそのままで、あるいは現場に戻ることさえしなくてもいい。商品開発と店舗を見て回って味見と監視するだけの立場でもかまわない、あなたはラーメン作りの天才ではあるけれどマネジメントの能力は無い。それを受け容れろ、経営判断としてあなたにマネジメント業務を続けさせることは出来ない。言うまでもなく、AとAに付き従う人間たちは納得しませんでした。このようにして、戦争が始まったのです。   あなたの管理する2店舗の掌握は問題ありません、しかしAの管理する3店舗の軸となる従業員は、既にA派としてあなたに反旗を翻していました。Aを解雇するのであれば、我々も退職する。彼らはそのようにあなたに宣言しました。せめて2店舗にしておけば・・・今更、後悔しても遅いのです。また、Aをメディア向けの顔としていたのも不味かった。あなたは社長業として黒子に徹していたのです。業界知名度は圧倒的にAが勝っている、Aは最早業界の風雲児として揺るがぬ評価を獲得している。Aが大量の人員を連れて離反するのは大いに可能なことですし、それは会社の信用を途方も無く貶めることでもありました。   さぁ、あなたならどうします? 会社経営の手綱を放さないために、みんなで幸せになるために このお話は僕の経験を大きく膨らませたフィクションですが、往々にしてある話です。こういった戦争を経ていない会社の方がむしろ少数ではないかと思うくらい、あちらこちらで起きていると聞きます。このお話はコンプラインスや労働法規の話と、創業期の英雄の反乱がまとめて描かれているので複数の論点が混ざっているのですが、これがまた実によく発生するワンセットなのです。残業を減らし、コンプライアンスを徹底させ、業務を最適化する際の最大の障壁は大抵の場合、現場の人間そのものです。   要素を単純化するために、Aの持ち株や出資者の影響などには部分的にしか触れませんでしたが、現実的には勘案すべき要素はまだまだ増えます。ごちゃごちゃに縺れた(もつれた)人間の紐は、実際にはもっともっと複雑になっていきます。しかし、つまるところ話はシンプルでもあります。社長であるあなたを越えかねない影響力を持つ人間が社内に出現してしまった、その結果、指揮系統が乱れ、挙句の果てに反乱まで発生してしまった。そういうことになります。   このようにして創業期の英雄と社長の対立は始まります。人間同士の利害と信念を賭けた対立が話し合いで解決することというのは、本当に稀です。そして、この問題を起こさないための土台作りや設定は、創業初期にしか出来ないことなのです。そして、異能を持つ人間を雇い、己の持たざる能力を補完するという「人を雇う」ことの最大の利点は、そのまま欠点でもあるのです。その欠点は往々にして創業期の終わりに顕現してきます。   「狡兎死して走狗烹らる」という諺(ことわざ)があります。ご存知とは思いますが、敵国を滅ぼしたら、どれほど功績のある忠臣も不要になって殺される、という意味合いの故事成語です。しかし、僕には犬を煮る側の気持ちが痛いほどわかります。もちろん、創業の英雄を煮殺すのは褒められた話ではありません。創業メンバーがいつまでも円満に、お互いの能力を認め合いながらやっていければそれは間違いなく最高です。しかし、そうはならないこともある、むしろそうならないことの方が多いということを創業者は覚えておく必要があると僕は思います。僕も覚えておくべきでした、心から後悔しています。   この話はちょっと見ただけで幾つもの失敗が見て取れると思います。あそこをああしていれば、こうしていれば、皆さんもすぐに思いつくでしょう。しかし、断言してもいい。創業と拡大の熱狂の中でそれを考え、備えられる人はそれほど多くはありません。まずは、いつまでもメンバーがお互いを認め合っていける仕組みづくりを、そしてそれが上手く運ばなかった時のこと、あなたの最もやりたくないプランについても十分に考えておくことを薦めます。起業する人間なんてのは往々にして夢見がちな理想の高い人間です、功績ある創業メンバーに自ら引導を、それも計画的に渡すなんてことは考えたくもないと思います。   しかし、それでも僕は考えておいた方がいいと思います。もちろん、僕が底抜けの無能であった可能性も大いにあります。むしろ、結果を見ればその通りでしょう。あなたはそんなこと考えなくても上手くいくのかもしれない、いや、むしろそんなこと考えない方が上手くいく可能性だってもちろんあります。しかし、この敗残者の無様なお話をちょっとだけ、頭の隅に残しておいていただければ僕も多少は救われます。人生は残念なことにまだまだ続くので、僕もまたやっていきます。   長い長い文章の読了ありがとうございました。     ...

  大人の皆さん!   JK・JD(女子高校生・女子大学生)の事情についていけていますか!?   本サイトは「商人(あきんど)」を応援するサイトなのですが、野口編集長(30代男性)がポロっとこう言いました。   「JKって何買ってるのかなぁ……」   たしかに、最近の若い子って何を買っているんでしょう……。というか、最近の若い子たちって何が好きなんでしょう?何を考えて生きているんでしょう? そもそも最近って何が流行っているのでしょう……?   「何を買っているのか?」「どんなことにお金を使いたいと思うのか」「インスタを活用したマーケティングって本当に効果があるのか?」など、商売・サービスに関わるすべての大人たちが頭を抱える「JK・JDの生態」を、今回は調査してみました。   すると、驚きの生態がいくつも発覚。   例えば… ・SNOWはもう流行っていない? ・かわいいのトレンドはすべて「韓国」から! ・プリクラのヒエラルキーが存在する ・ネットで買うのは「安いから」 ・とにかくお金に堅実 ・普通のバイトは「拘束されるから嫌」⁇ などなど。   だいぶ長い内容ですが、かなり勉強になることばかりだったのでぜひ最後まで読んでくださいね。     ▼JK・JD775人にアンケートを取りました ▼JK・JDを知る鍵は「Instagram」 ▼インスタを使えば広告費は不要「Instagram」 ▼SNOWの次は?流行りのアプリは○○。 ▼「かわいい」はどこからくるのか? ▼メルカリで服を買うのは田舎者?     JK・JD(女子高校生・女子大学生)775人にアンケートを取りました 今回は、わたくしライターのさえりが運営しているLINE@のアカウントにて、775人のJK・JDにアンケートをとりました。775名の分布はこんなかんじ。 △JK・JDのお小遣い(収入)は、20,000〜50,000円が最多。   △一体何を買うんだろう……。   このほか、様々なアンケート結果をもとにして、今回は10代の女の子たちの事情にめちゃめちゃ詳しい、ドリコムの吉田優華子さんにお話を伺ってきました。 株式会社ドリコム 吉田優華子(ディレクター) 2013年に新卒でドリコムに入社。現在は「PASS-街あるきを楽しく、お得に。」というアプリを流行らせるべく奮闘中。     吉田:普段は、ドリコムという会社でディレクターをしています。とあるきっかけがあって、音楽業界の人に「10代の子たちを知るパイオニアになってよ。ラジオとかやってみない?」と言われたんですね。それで『放課後トーークラジオ』という番組を始めて、毎回10代の子を呼んで話を聞いていました。私が知っている子たちの話に限りますが、10代の生態を教えるような立ち位置でインタビューを受けることもありますね。   参考:10代女子とつながる方法(おじさんにはムリ) http://markezine.jp/article/detail/26182   トレンドは10代女子から火がつくことが多いので、直接仕事と関係なくても普段からチェックするようにしています。     ——...

  前回の記事では「言葉を再定義すれば強いコンセプトを作ることができる」というお話をしました。今日はその先の話をしようと思います。その先、つまり「作った商品やサービス」をいかに生活者に情報として流通させるか、というお話です。 コミュニケーションで重要なこと。作ってどうやって広めるか。 こんな記事を書いている私ですが、広告代理店入社当時は、いい表現を作ることしか考えておらず、その表現が話題になって広告主の商品やサービスが知られたり、売れたりする所まで考えきれていませんでした。それは、TVCMや新聞広告といったメディア出稿が主流で、表現と売りの相関性が検証しづらかったというのもありますが、結果に対しての責任感が希薄だったというのが正直な所です。。   責任追及がないことをいいことに「いい表現を作れば自然と見てもらえるし、話題にしてもらえる」そう軽く考えて、自分が満足いく「表現だけ」を求めていました。   しかし、昨今のようにデジタル技術が進化し広告主側で、「表現がどれだけ流通したか」「表現がどれだけ売りにつながったのか」の効果測定がしやすくなってくると、「結果の出せる表現」が求められるようになります。「作るまで」が広告クリエイターの仕事だったものが「作ってどうやって拡めるか」までが仕事となったのです。   YouTubeをはじめとした動画メディアやFacebookをはじめとしたソーシャルメディアなどの登場で表現を見せる場所代(媒体費)が下がり、資金的な体力のない個人、企業でも簡単に発表できるようになったことも「拡める技術」が必要になった理由です。流通する情報量が10年前に比べ500倍にもなっていると言われ、昔は見てもらえていた表現が、母数の上昇により見てもらえなくなってきたからです。   このような現状で、ビジネスやコミュニケーションを行なっていく上で、重要になってくるのが「PR思考」です。   クリエイターのみならず、広告主を含めたビジネスマン全てに必要な思考です。「PR思考」とは簡単に言うと、消費者に好意的に情報を受け取ってもらい拡めてもらうため、表現内容、発信場所、発信のタイミングを考えるというものです。   「新商品を作れば自然と話題になる」「新しいサービスを作れば自然とみんなが使ってくれる」そう思っていてはもはやダメで、企業にとって拡めたいものを、メディアにとって取り上げたくなるもの、消費者がソーシャルメディアで発信したくなるものに加工しなくてはいけなくなりました。   PR思考の5要素 いきなり「PR思考を身につけろ」と言われても困ってしまいますので、今日は「PR思考」にかかせないと私が考えている5要素を紹介します。PR思考のとっかかりとして使ってみて下さい。   1、時流 2、ギャップ 3、あるある 4、使える 5、新しい   順番に説明していきます。   1、 時流 これは「PR思考」をする上で最も重要な要素。「なぜ今なのか?」を考えるということです。2017年という年、5月という季節、世の中の流行りや空気を踏まえてビジネスやコミュニケーション、表現を思考することで流通力のあるコンテンツを生むことができます。   2、 ギャップ これは1を踏まえるとよりパワーが増しますが、拡散される情報の鉄板パターンと言えます。「信じられないくらいマズそうなフレーバーなのに、信じられないくらいうまい」「こんなに可愛いのに瓦10枚頭で割っちゃうんだ」など「ぽくないを作る」を頭に入れて思考して下さい。   3、 あるある 「そうそう、それ初めて言われたけどめちゃくちゃ共感出来る」という要素を盛り込むのがこれです。注意したいのは「誰かが言ったあるある」ではダメで「初めて言われたけど確かにそうだ!」というものを見つけなくてはいけません。これがなかなか難しくもあるのですが、前回書いた「再定義」の手法で突破口を見出せる場合もあります。   4、 使える 商品やサービス、情報も今や使えなければ、見過ごされてしまう危険性があります。「この記事読んだから家事の時間が半分になった」「このサービス使ったから自分の苦手なことが克服できた」など使えるビジネス、使える企画は流通力のあるコンテンツとなります。   5、 新しい これは当たり前といえば当たり前ですが、圧倒的に新しいものはそれだけでかなりのアドバンテージがあります。過去にある商品やサービス、表現と比較して圧倒的に「ないもの」が見つかったら変に加工をせずファクトを前面に押し出せばOKです。     以上のように、これからは「情報をどのように消費者に拡めていくか」を踏まえて、ビジネスやコミュニケーション、表現を考えなくてはいけません。「面白いから広まるだろう」「面白いから売れるだろう」ではダメ、というのを肝に銘じてPR思考を磨いていきましょう。     ...

  わたくし松澤は珍スポットと呼ばれる一風変わった観光地をめぐっては「東京別視点ガイド」で紹介しています。6年間で巡った総数は1,000ヵ所以上。年末にはその年巡ったスポットTOP10をランキング形式で発表しています。   2016年度ベスト1に選んだのが栃木県の「岩下の新生姜ミュージアム」です。テレビCMでおなじみの岩下食品が手がける企業ミュージアムなのですが、その展示内容があまりにもぶっ飛んでいるのです。オープンは2015年6月。経営者が高齢だったり客足が減ったりで、気がつけば無くなってしまいがちな珍スポット界隈において、あまりに突然でビッグな新風だったので度肝を抜かれたものです。 たとえばジンジャー神社。岩下の新生姜とおなじくピンク色です。狛犬として立っているのは角が新生姜の岩鹿(いわしか)ちゃん。 ご神体も新生姜ですし、お供えものも新生姜。この日はイースター企画で新生姜の神様に変わって、新生姜で色づけされた卵の神様が鎮座していました。 超巨大な顔ハメ看板もあります。 体を駆けめぐる新生姜気分を味わえるゲーム「ジンジャー・ツアーズ」。昔なつかしのテレビ番組、電流イライラ棒と同じルールです。 イースター企画でダチョウの卵が岩下漬けされていて、ピンクになっていたり。 極めつけは「新生姜の部屋」です。擬人化された新生姜と2ショット写真を撮れる展示です。 本棚には「100万個の新生姜を食べたねこ」「もしも高校野球部のマネージャーが岩下の新生姜を食べたら」「ゆきゆきて新生姜」などベストセラーが並んでいます。 岩下食品株式会社 4代目社長・岩下和了さんにお話しを伺った 企業ミュージアムでありながら、他を寄せ付けない独創的な展示の数々。いったいどういう狙いがあるのか、どういう想いが込められているのかを社長・岩下和了(いわした かずのり)さんに直接伺って参りました。 ▲岩下食品株式会社 4代目社長...

  経営者の夢 経営者の夢というのはいつの時代、どんな場所でも大体明確です。「給料のいらない従業員」「無料の労働力」これに尽きます。「絶対に儲ける方法」について考えていくと、「まぁ人件費ゼロなら間違いなく儲かるよね」という結論が必ず出てくるわけです。   仕事というのは、お金を介した労働力、ないし労働成果の奪い合いゲームという色が大変強くあります。安い対価で高品質な労働力、あるいは労働成果を手に入れることが出来ればその時点で大体勝ちなのです。しかし、もちろん経営者の「タダの労働力が欲しい」という強い気持ちを実現させるわけにはいきません。そういうわけで労働者は保護されています。経営者があんまり気持ちを前に出しすぎると、「違法ですよね、それ」という話になるわけです。   社会に怒られます。社会が怒ると怖いので経営者は「この辺までは大丈夫な気がする」と思いながら進み、たまにガッツリ怒られます。あ、流石にあそこまでやると怒られるのか、みたいな知見が発生します。   しかし、一回起業してしまうと個人事業主であれ法人であれ、「この対価でこの働かせかたはダメ」みたいな保護を受けることは一切出来ません。「その仕事を受けたおまえが悪い」という世界観になり、誰一人同情してくれないのです。赤字の仕事を受けざるを得なかったことくらい誰だってありますよね。法に守られた労働者の世界観と違い、フリーランスや経営者の世界はより露骨な奪い合いです。当然ながら、「奪うテクニック」もどんどん洗練されていく。市場参加者同士の奪い合いが飽和したら、当然「新規参入者から毟ろう(むしろう)」という世界観になっていきます。「起業しよう」あるいは「独立しよう」と思い立ったこと自体が既に落とし穴、ということもあるわけです。今日はそんな話をしようと思います。   今日はわりと込み入った話になってるので「まとめ」はありません。結論だけ理解しているとその結論からズレたものが来た時、対応できないので、そんなのむしろ読まない方がいいと思います。 起業とは・・・誰もあなたを止めてくれない 別に皆さんを不必要にビビらせたいわけではないんですけど、起業というのは割と危ないです。というのもですね、「起業」とか「独立」みたいなキラッキラした単語をエサに人間を沼地に引きずりこんで骨までしゃぶる皆さんというのは結構存在しています。具体的な名前を出すと訴状が飛んで来て後頭部に刺さりそうなので具体的な話は避けますが、ネットワークビジネス系の皆さんも最近は「起業」とかそういう単語を使うみたいですね。ブログ飯界隈もわりとそういう匂いがしますが、僕の鼻が間違っているのかもしれません。わからん、なんもわからん。   雇用関係も持たない個人に商品を卸してノルマを課して売らせるという経営者の夢みたいな状態を作り出す皆さんは大変賢いと思います。契約社員ですらない、「非契約社員」みたいな状態で人間を使いますからね、彼らは・・・。   で、まぁこの話題は危険が危ないのでこの辺にしますが、例えば、「俺は起業するぞ」と心に決めて知人の経営者にアドバイスを乞いに行くとするじゃないですか。「やめとけ」と言ってくれる人って実際少ないんですよね。大体の人が「リスクはあるけどやりたいならやったらいい、応援するよ」って言ってくれると思います。逆に、顔を真っ赤にしてやめろと言ってくれる人がいたらその人は心からあなたを心配する良い人です。あなたにマトモなこと言ってくれる可能性が高いのはその人ですね、大事にしましょう。   というのもですね、まぁ起業なんて95%以上が失敗に終わるんですけど、それでも起業しようとする人間に「やめろ、失敗するぞ」って言ったら嫌われるんですよ。わざわざ嫌われたい人間もいないじゃないですか。そして、その人がなんかの間違いで成功しちゃった場合「俺の成功を信じなかったバカな経営者」としてあれしてしまうという可能性もある。   それに引き換え、とりあえず起業さえしてくれれば何らかの方法で利益を抜ける可能性も出てくるわけじゃないですか。正直なところ、起業相談された場合の答えなんか「やったらいい、出来るなら協力はするよ」しか無いんですね。それが一番損をしない選択肢なんです。正直なところ、起業家なんて日常的にガンガン破滅してるわけですし、特に思い入れもない新規創業の若者が一人や二人吹っ飛んだところで、どうということはありませんからね。ペットのヤマトヌマエビが死ぬ方が悲しいですね。それくらいで悲しんでいたらやっていけない。   あなたが「会社を辞めて起業する」と言い出した場合、周囲の人間はとりあえず反対すると思います。でも、それも一定ラインまででしょう。だって、起業のことがわかる人間なんて普通のサラリーマンとして暮らしていれば周囲にはそんなにいません。説得力のある反対をすることも経験がなければ難しいです。そして、起業のことがわかっている人間ほど良い笑顔で「やったら?」って言うと思います。僕だって破滅的な創業計画を見せられても仏像のような笑顔を浮かべて、「頑張れ」って言いますもん。どうせ止めても止まらねぇし。下手なこと言ったら怒り出すし。知らねーよ。そして、この哀れな若手起業家の姿は数年前の僕そのものでもあります。   「非契約社員」の作り方、マーケットのなまはげ 例えばこんなことを考えてみましょう。あなたはなんらかの事業をやっていて、最近人手が足りないなー、需要に供給が追いつかないなー、機会を損失しているなーと思っています。まぁ、これもまた具体的な話をすると色々危ないので、商品Aの製造販売をしているということにしましょう。商品Aの生産量を増やすには、設備投資をして従業員を増やすしか基本的にはありませんよね。   でもあなたは思います「自分で設備投資するのはリスクもあるし従業員を増やすのも怖いな」と。「なんとかリスクを限定的にした上であわよくばコストも抑え込めないかな」と。そこにフワっと現れたのが「起業したい!」という若者B君です。B君はあなたと同業の会社で従業員として働いているので仕事の知識も経験も持っています。ただし会社経営や起業の知識はほとんどありません。だからあなたに教えを請いに来たわけですね。   あなたは思います、「あれ、こいつに創業させれば早くね?」と。「資金つけてやって創業融資の引き方もコーチしてやって、人雇わせてガンガン仕事振ればいいよね、経営権も握れるし、ずっと利用出来るな、しかも創業資金以上に損が膨らむこともないし、従業員への責任もB君持ちになる」   これが王道的なデス起業パターンです。もちろん、子会社として下請けから創業するのが必ずしも悪いと言ってるわけじゃないですよ。こういうところから始まって羽ばたいていった会社だっていっぱいあります。ただ、こういう形で起業する以上、初期設定やその後の立ち回りを間違ったら「食われる」ということはわかりますよね。   実際、こういう形を目指して「起業したい若者はいねがぁ」と言いながら市場を歩いているなまはげは結構います。起業するのにはこういう妖怪と出会うのが一番早いと思います。迅速確実に創業出来ますね。その後のことはわかりませんけど。   また、「ド素人でもそこそこの能力があれば起業させて下請けとして稼動させられるようにする」ノウハウを持っている人というのも存在しまして、ここまで行くと冒頭で触れた「非契約社員」という単語が再びフラッシュバックしてきますね。「個人事業主として仕事を受けさせて便利に使う」というのは某大手飲食チェーンなどでも採用されていたソリューションですが、こちらの場合、創業する人間にオウンリスクで借金をさせることも可能になるので大変戦略の幅が広がります。借金の保証人に親兄弟をつけさせればパーフェクトですね。逃げられないから。「仕事を受注出来ることが確定している、発注する側からの目論見が提示される」という強みがあればお金も引っ張りやすいですし、資金計画も書けますからね。   昔出会った人間がこのようなことを言っていたのを僕は鮮烈に覚えています。以前のエントリでもちょっと触れた話ですが「高い能力を持った人間を一年社員として拘束しようと思ったら、俺みたいな零細企業経営者なら安くて600万はかかるわけよ。でも、『1000万円出してやるから起業しろ、仕事も回してやる」って言えばいい大学出て良い会社に勤めてた若者が向こうから来るんだよ、そりゃ良い話だよな、どんどん起業させてやる』とのことでした。   起業のチャンスが到来している皆さん、大丈夫ですか?皆さんの出資者はどういう目論見であなたに金を出そうとしていますか?本当にそれは「起業」ですか、あなたを「非契約社員」にする目論見ではないですか?   「創業資金をつけてやる」「仕事も回してやる」「何なら創業期のサポート人材も貸してやるぞ」「取引先も紹介してやる、俺の口利きなら良い条件で取引出来るぞ」「心配するな、全部段取りはやってやるから」そういう話の前で悩んでいる皆さん、多分このエントリ読んでる人の中にもいると思うんですけど、よーーーーーーーく考えた方がいいですね。   ただ、必ずしも「やめろ」って言ってるわけじゃないんですよ。資金がついてきて仕事が回ってくるというのは、やはりチャンスでもありますし、後はどのように人間と渡り合うかというだけの話になります。   あなたは元気な身体とやる気だけ持ってきてくれればOK!この起業パッケージプランに全部お任せ、みたいな話はわりとあります。そういう話に飛び乗る時は色々考えた方がいいですね。繰り返しますが「乗るな」って言ってるんじゃないですよ。罠の中に餌が吊るされているなら罠を作動させずにエサだけ引っこ抜くことを考えるのは当たり前です。   また、出資する側と起業する側に双方利があるという形態は皆が幸せになる理想形とも言えます。このバランスが著しく崩れていて、しかも止めることが出来ない状態にさえならなければいいわけですよ。それだけのことです。 捕食者としての起業家 ここまで、「起業家がやっていこうとした結果食われる」というお話をしてきましたが、このような捕食妖怪を逆に食ってしまう起業家というのも存在します。まぁ当たり前です、「嵌める方法」が洗練されていけばカウンターの手法も当然出てくる。これを読んでいる皆さんも、「そういう前提ならあれをあれすればああなるな」という考えが幾つか浮かんでいるんじゃないでしょうか。その発想はとても大事です。   「罠がある」という前提さえ踏まえていれば、人間は賢いのでそれなりに対策を思いつくことが出来ます。ところがね、「資金!誰か資金つけてくれ!」って走り回ってるときというのは、わりと人間は弱いんです。人間を嵌める技というのは、「そんなの見抜けねえよ」みたいな高度な技という場合はそんなに多くなく(たまにはそういうのもありますけど)判断力の低下した状態の人間を、冷静な判断力さえ有していれば見え見えの落とし穴に誘導するというのが基本です。多重債務者になると「お金借りない?面白い金利で」みたいな連絡がいっぱい来ますよね。そういうことです。   創業して儲けるということは、法に守られない奪い合いゲームの中で勝ちあがっていくということです。「奪う権利」が与えられる代わりに、労働法規などの「奪われない権利」が失われるわけですね。その中で初めての創業に挑む人というのは、圧倒的に一番弱い存在です。経験がない以上、頼れるものは想像力しかありません。   「やれば出来る」ことは必ず誰かがやるのが市場という世界です。存在を想定出来る悪魔は必ず存在します。というか、ごく普通の経営者であっても「あ、これ儲かるな」と思った瞬間に悪魔に化けます。とはいうものの、それはあくまでルールの中で許容された立ち回りであって、「悪」ではないんですよ。強いて何が悪いかといえば、そんな状況を作り上げてしまった方が悪いんです。自戒も多分に含めてですが。   起業というのは、往々にして「先行事例」みたいなものがあまり見つかりません。「出資者からいい条件で金を引いてなるべく株を渡さない方法」とか書いた本はありませんし、「子会社として創業して親会社から利益と経営イニシアチブをぶっこ抜く方法」について書かれた本も(多分)ないと思います。各自やっていくしかないわけですよ。「株の10%で1500万引けたぜ」という人もいれば、「60%渡さないと1銭も出てこない・・・」というパターンもあります。   一回やっていって派手に失敗すればこの辺はわりと身につくわけですが、皆さんもちろん「起業に失敗してドブの底に叩き落される」なんて経験はしたくありませんよね。ドブの底に落ちるタイプはまだよくて、「なんで俺はこんなことしちまったんだろう・・・」って思いながら働いてる人もいっぱいいると思います。「仕事?いつでも辞めていいよ。次の代取が会社コカしたらおまえの実家売られるけど」みたいな悪夢のピタゴラスイッチが発生することもたまにはあるんですよ。   そういうわけで、今日はそんなお話でした。僕はいつも皆さんの成功を心から祈ってます。やっていきましょう。     ...

  「起業したいです。何から始めればいいですか?」と質問をいただくことがある。   私は起業経験こそあれポシャった人間なので立派なことは言えないが、少なくとも最初の1年を乗りきるために必要なことは、結婚式で全部学べた。極論だが起業したい人はもはや独身でも結婚式をすればいいくらいに思っている。なぜなら結婚式の準備をすればビジョンの共有、予算管理、リーダーシップの3点が余すところなく鍛えられるからだ。 「ビジョンの共有」をせねば夫婦喧嘩になる 結婚式準備は、式場見学から始まる。そう思っている人はすでに波乱含みだ。結婚式はまず、夫婦でひざを突き合わせて「どんなことをしたいか」ビジョンを話し合うところから始まる。キリスト・仏教・神前式のどれか。大人数を招くフォーマルな式か、こぢんまりとやりたいか。   普段「何でもいいよ~」と寛容な彼でも、意外と「え?結婚式って会社の人や親戚中呼ぶもんでしょ?」と、とんでもない前提をぶち込んでくる。お互い「それ、結婚式をするなら当たり前でしょ?」と思っている要素を言語化し、ビジョンをすり合わせる。これができないと、そもそも見学にすら行けない。   たとえば、私は結婚式を挙げるつもりすらなかった。自分のためにご足労願うのも申し訳ないし、なによりコスパが悪い。普段は効率厨の夫も絶対にそのつもりだと思って入籍の準備を進めていた。ところが夫の口から出てきたのは「え、世間的に結婚式はするもんでしょ」   「そういうことは早く言ってくれ!」と思ったが、ビジョンを共有しなかった私の落ち度である。   起業でも同じだ。なんとなく「いいじゃん」と集まった創業メンバーも、じっくり話し合うと全然違う夢を見ていたりする。最初にビジョンを一つにせねば起業は空中分解するだろう。経営ビジョンを共有できないグループはすぐに崩壊する。そして家庭は最小単位の経営チームだ。2人のビジョンを共有する結婚式は、まさに起業へうってつけのエクササイズなのである。 「予算管理」こそ結婚式の要 結婚式を挙げる上で最も喧嘩になりやすいのが予算だ。「たっぷりのブーケにお色直しは2回。ビデオ撮影もしたいな〜」なんて夢を詰め込むとあっという間に一千万円。引き出物を入れる紙袋が1つ500円の世界。予算管理なしに式が成り立たない。   新婚は引っ越しやハネムーンでただでさえ金がない。そしてゲストの満足度も気になる。「ドレスばっかり派手で食事はひどかったね」なんて語り草になりたい夫婦はいない。だから限られた予算でゲストにも楽しんでもらわねばいけない。自分のやりたいことを達成しながら客の満足度を最大化する―。まさにビジネスで肝となる考え方である。   私の結婚式では夫が夢を膨らませ、私が予算を緊縮する係だった。「オレンジのお花がいい」「いいドリンクを出したい」といった夢の呪文を唱えると、その都度十万単位でコストが増える。一方、みんなのウェディング調査でゲスト満足度が食事に影響されることを知り、食事予算を最大化するなど独りよがりにならない予算管理が求められる。   起業がすぐポシャる中には「創業者の夢だけいっぱい詰め込んで、客を置いてけぼりにしたサービスを出し、誰も使わず終わる」ものがある。どんな素晴らしいビジョンも、予算内で顧客満足度を上げられないなら意味がない。結婚式はそれを教えてくれる。   さらに結婚式では自分の両親、相手の両親など「最終決定権が自分にある」と思っているプレーヤーが大量に登場する。起業で言うところの株主だ。親族をどう説得して自分のビジョンへ近づけるかは、まさに起業家に求められるリーダーシップである。 「リーダーシップ」で予想外のトラブルを軟着陸させる そして、結婚式がビジネスマネジメントを学ぶ上で素晴らしいのは、予想外のトラブルが必ず起きるという1点に尽きる。私の場合は、友人のドタキャンによりテーブルが1つ消滅した。結婚式では座席表を各テーブルに配るのが作法だから、配置を変えるなら座席表も印刷し直し。深夜、もう間に合わないと泣きそうになったが24時間運営の印刷会社へたどり着いた。   スタートアップでは「いきなりのトラブル」が笑えるほどやってくる。そのトラブルを乗り切るリーダーシップは素質や才能として語られがちだ。しかしリーダーシップは技術。小さな修羅場で訓練すればいくらでも育てられる。結婚式は小さな修羅場の宝庫として、起業家のリーダーシップを鍛えてくれるだろう。   かつて冠婚葬祭の業界で起業したことがある。そのときはイベントへブース出展し、業界内での知名度を上げようとした。在庫手配も予算管理も完璧だったが、まさかのスタッフ不足が前日に判明した。もともと1人いればよいだろうと思っていたが、営業周りで他社ブースを回る間は店番が別途必要なことをすっかり失念していたのだ。マヌケとしか言いようがない。   こういう失敗も結婚式なら「スピーチを依頼していた人がまさかのインフルエンザ」「手紙を読んでくれるはずの親友が彼と浮気していた」などの修羅場で身をもって教えてくれるだろう。(後者はできれば経験したくない)土壇場のリーダーシップは、プライベートの修羅場でこそ磨かれる。「あの時に比べれば、こんなの屁でもない」といえる胆力こそ、起業家の能力だから。 結婚式のプランだけでもやってみる 起業家であれば、結婚式はぜひ挙げてほしい。彼女がいるなら籍は入れずとも結婚式だけでもぜひ。もし抵抗があるなら、100人単位のパーティ企画を1つ打つのが良いだろう。   ビジョンの擦り合わせ、予算管理、そしてリーダーシップの奪い合い……どれも肝がヒリヒリする経験だ。だが、ヒリヒリするのを快感だからこそ、スタートアップって楽しいんだろ?くらいに言える仲間ができることを、いち起業家として期待している。     ...

  肉、トマト、オニオン、チーズ、肉。   バンズのかわりにビーフパティでサンドした、肉バーガー「ワイルドアウト」をご存知だろうか?美味しそう×写真映え×ネタになるの三拍子が揃っていて、見るからにバズりそうだな!というのが、初見の素直な感想だ。   これは相当戦略を練って商品開発したに違いないと確信し、人気ハンバーガー店「シェイクツリー」に商品の開発秘話を伺ってきた。 行列のできるハンバーガー店「シェイクツリー」 2011年にオープンした「シェイクツリー」は、JR総武線錦糸町駅、地下鉄両国駅からそれぞれ徒歩10分のところにある。   多くのハンバーガーチェーンが駅近に店を構えるなか、シェイクツリーは、やや不便な立地に店を構えている。それにもかかわらず、連日盛況。週末には行列もできる。 店名の「シェイクツリー」は、「shake a person’s...