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ホーム > アキンド探訪  > 「世界を変える」とナメた学生起業で人間不信。あの日の未熟な自分を責めたい

 
学生時代、世界は変えられると思っていました。専門は国際政治で、紛争解決。ビッグな研究にビッグワード。さすがに平和を作れるとまでは思っていませんでしたが、平和が生まれる仕組みくらいは解明できるだろうと。
 
ビッグなテーマを扱うと、夢も大きくなる。学生起業を思いついたのは、そんな時のことでした。
 
結論から書きますが、私は2社起業して両方ポシャりました。2社目はそこそこ起動に乗せましたが、最初の失敗はひどかった。けれどひどい失敗ほど学びも大きいものです。ですから今回は大言壮語を振り回して盛大にズッコケた最初の起業についてお話させていただきます。
 
起業したのは帰国子女向けの教育事業でした。海外に長年滞在した高校生は、大学受験で帰国生向けの推薦入試を受けられます。推薦入試とはいえ事前に滞在国のセンター試験結果に近いスコアを提出する必要があるほか、大学によっては別途筆記試験も課されます。
 
ところが帰国子女の高校生には卒業して日本へ帰ってから、最初の入試まで準備期間が2カ月しかありません。それゆえ本来の能力を発揮できず第一志望に通らないことも多々ありました。それで「通信教育で帰国前から対策できる仕組みを作ればいいんじゃないか」と考えたわけです。

目的に合致した人しか起業仲間にしてはいけない

ここで私は、起業家が「絶対にやってはいけない」ミスを犯しました。当時の彼氏と起業したのです。他に参加したのは彼氏の友達。そして私以外の創業メンバーは金に困っていました。考え得る限り最悪のチョイスです。
 
何があっても、起業はビジョンが合う人としかやってはいけません。目的に合意できないと、経営方針がブレるからです。私が通信教育で作りたかったのは「帰国生が実力を発揮できる世界」でした。当時の彼氏が求めていたのは「東大に通っている自分の学力で楽にこなせる仕事」でした。彼の友人が求めていたのは「すぐ手に入るキャッシュ」でした。
 
全員、目的がバラバラです。目的が違えば細かい施策で揉めます。揉めている間は商品の質が上がりませんから、盛大な時間ロスになりました。実例として、知名度を上げるために広告を打とうとしたことがあります。海外在住の日本人向け新聞へ出稿したのです。
 
そのときは残念ながら集客に繋がりませんでした。しかし「帰国生が実力を発揮できる世界」を目指す仲間なら、広告をどう直すべきだったのか、媒体は正しかったのかレビューしたでしょう。しかし「すぐ手に入るキャッシュ」を求めていた彼の友人はみんなで出し合った広告費が捨て銭になったと怒りました。
 
テストプランとして出稿したイギリスの新聞広告は、2017年現在もたった£12(約1,600円)。(http://www.news-digest.co.uk/news/classified/apply.html)けれど彼の友人はお金がなく、とにかく儲かると信じて起業に参加していました。だからわずか1,600円で大揉めしたのです。
 
目的が違う相手と起業してはいけないと書きましたが、特にお金に困っている人と組んではいけないと学びました。仕事柄、ベンチャー企業へ伺うことも多いのですが、成功事例を聞いていても最初の1年は赤字覚悟。正直、お金に余裕のない人間は家庭教師のバイトでもした方がよさそうです。
 
けれど起業の声かけをして集まる人の半分は「事業売却でがっぽり儲ける」「寝てても従業員が働いて儲かる仕組み」を夢見ています。こういうタイプをスタートアップ期に招き入れるのは最悪の選択肢です。

具体的な失敗と廃業までの流れ

ここからは、あまり振り返りたくもない廃業までの流れをご覧いただきましょう。最初は口コミもありそこそこ生徒が集まりました。時給2,000円のバイト程度。これでやる気を出した我々3名は、さらなる集客を考え広告投資を決めます。
 
「帰国子女にヒアリングしたから」と自信満々に新聞広告を打ちましたが、前述の通り集客へ繋がらず、彼の友人が怒ります。「儲からないなら教材づくりは協力したくない」「じゃあ報酬は払えない」などしょうもない小競り合いをするにも時間を使います。
 
次第に全員が「何でこんなに時間を使って儲からないんだ」という思考になっていきました。揉めているだけで何も顧客へ価値を提供していないのに、働いたつもりになってしまったのです。
 
その後は「広告に出資した金返せ」なんて話になった挙句、彼の友人が音信不通に。添削指導にも人材が必要なので、人手不足から通信教育の質が下がり、ゆるやかに生徒が減り始めます
 
仲間を探そうと起業の話を同級生にしてみましたが「一攫千金」タイプが集まるばかり。安定した年商が上がったら法人化しようと思っていたのが不幸中の幸いか、アッサリ廃業が決まりました。彼との関係はこの後しっちゃかめっちゃかになり、最後はmixiで相談を聞いてくれた女性に寝取られてTHE END。

起業は華やかで、経営は地味だから

起業」という言葉は華やかです。ベンチャー企業のウェブサイトには、顧客の世界を変えるソリューションが溢れています。しかし経営廃業はとても地味。ビッグマウスにふさわしいスモールワールド。けれどすべて自分の責任です
 
調子に乗った自分が友情と恋愛関係を壊しました。金じゃどうにもならない人間関係を、金でトラブって壊してしまった。当時は人間不信っぽく相手を責めてみましたが、悪いのは全部自分です。バカ、本当にバカ。あの日の未熟な自分を殺してやりたい。
 
その後、目的が合う相手と再び企業を志すものの同じく広告戦略でコケて頓挫。モノの売り方を学ぶため、就活で外資系企業のマーケティング部門へ入りました。
 
今の私は、世界を変える起業はできないかもしれません。けれど自分の担当した商品が売れることが大きな喜びです。それは当時の私が死ぬほど成し遂げたくて、できなかったことでした。

 
 
執筆:トイアンナ
ブログ:トイアンナのぐだぐだ
 
 

この記事を書いた人

慶應義塾大学在学中に起業を2回経験。卒業後は外資系企業に勤め現在は独立。フリーのマーケターとして活動するほか、ブログ『トイアンナのぐだぐだ』(http://toianna.hatenablog.com/)をきっかけにライターとしても活動中。

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