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マーケティング戦略のプロ、トイアンナ氏がECのノウハウについて語る【ECやるならトイアンナに聞け】。最終回はEC×SNSで売り上げアップを狙う方法です。アカウント作ったけど、その後運営どうすりゃいいの?と悩んでいる方も必見です。...

『婚活商売』が乱立中。婚活マニア歴6年の著者がご案内 書籍『「婚活」時代』が発売されてから10年。婚活はいまや一般用語として普及した。婚活の手段も従来のお見合いや合コンだけでなく、選べないほど多数の選択肢がある。   であるからには、そろそろ「婚活にはどんなものがあるか」網羅的に見てもいいのではないか。そこで今回は、結婚希望者からの人生相談を6年ほど受け続けてきた"婚活マニア"としての経験をもとに、婚活業界をご案内したい。   これが婚活業界マップだ 婚活業界はおおまかに11種類へ分かれている。 ▲婚活業界マップ   高単価なものでは3万円程度かかるが、低単価なものは1,000円台から参加できる。真剣度は「結婚とは限らず恋愛や友人関係を探しにくる」人の割合でマッピングした。   以下、各項目を解説する。   (1) 合コン 歴史はなんと明治時代にさかのぼる、出会いを促進する飲み会。株式会社ぐるなびの調査では婚活で選ばれる手段の3位にランクインしている。   だが実施する人の多さと対照的に、成婚率は低い。リクルートブライダル総研の『婚活実態調査2018』によると、合コンで出会った相手と結婚した人は2017年に成婚した人のわずか9.6%に過ぎない。これまで人生相談を900件近く受けてきた筆者としても、既婚者がよく混ざっている、盛り上がりを優先して個々の相手と話しづらいなど課題が見られる。楽に開催できる反面、効率はよくない婚活といえる。市場規模は不明だが、飲食店業界へ一定の割合で貢献していることは間違いない。   (2) 街コン 飲食店と提携し、多数の店舗を回ることで婚活を楽しめる合コン。従来の合コンと異なり、見知らぬ男女が集まるのが特徴。2014年の意識調査によると、合コンよりも結婚への真剣度が高いことが判明している。   街コン単体での市場規模を推察することは難しいが、大手街コン企業の株式会社リンクバルの決算資料を読み解くと、街コンよりイベント型婚活で業績を伸ばしていることからやや縮小傾向にあると思われる。 (3)...

かつては「安定の象徴」だった公認会計士だが… 「公認会計士」といえば、かつては安定の象徴ともいえるキャリアだった。5%ともいわれる難関資格をくぐりぬければ、あとは監査法人へ就職すればリストラもなく初任給600万と高給だ。   しかし、2006年から2010年には公認会計士バブルが発生。合格者を15,000人も出したことから、当時の公認会計士は報酬減額と就職難に見舞われた。   そのころから、公認会計士が監査法人以外のキャリアを考えるようになったと思われる。従来であれば選択肢になかったベンチャー企業の役員一覧で、公認会計士がちらほら登場するのはここからだ。   そこで今回、なぜ安定高給の象徴であった公認会計士がベンチャー企業を志すのか、実際の経験者からお話をうかがってきた。   当時最年少 で会計士資格を取得した天才の選ぶ道 お話を聞かせてくださったのは、株式会社ごちぽんで経営企画部の部長を務める井上健さんだ。井上さんは大学在学中に公認会計士試験へ当時最年少で合格した天才肌。卒業後は大手監査法人の花形部署で大手企業を中心に監査を担当していた。     ― 監査法人にお勤めのころ、ベンチャー企業をどう見ていましたか?   井上さん:クライアントとしてのかかわりはありませんでした。当時、クライアントが大手の事業会社や外資系企業の日本支社でして。そのこともあり、ベンチャー企業が話題に上ることがあまりなかったと思います。就職先も監査法人、投資銀行の監査、もしくは親の跡を継いで会計士事務所へ行くか。   ベンチャー企業へ転職したのは、20名いた仲良しの同期でも私1人だったと記憶しています。転職後も肩書に公認会計士とある方はほとんどいなくて、「起業を志す会計士で集まろう!」と顔の広い先輩が声を方々へかけても集まったのが4人だったことがあります。   ―...

起業家失格を乗り越えて。気づいた「成功者の特徴」3つ  失敗してきた。人生全般に…なんていうと、太宰治の追っかけになってしまう。ただ起業に関して言えば、失格もいいところだ。    私は教育と葬祭の2つの業界で起業を志し、「客が来なくて自滅」と「創業メンバーが揉めて解散」のわかりやすい失敗をした。それでも懲りずに3社目を動かしている。だがこれだけコケてきたおかげで、成功者と敗者の分かれ目は見えてきた。    ここの記事では、成功した人間だけがやっていて、私ができていなかったことを3つピックアップし、1つずつ解説する。   成功者の特徴① 「必要なアドバイス」に耳を傾ける  名だたる起業本には「人の意見ばかり聞いてはならない」とよく書かれている。ある意味では事実だ。財務知識が皆無な彼女・彼氏へ経営方針を聞くのはよろしくない。あなたが不幸になればいいと願っている同業者ははねのけたほうがよい。    一方で、自分より優れた人のアドバイスを無視するのが失敗者の典型例だ。誰から助言を聞くべきか考えるとき、冷静なときは我々も「自分より優れた人がわざわざ言ってくれてるんだから、取り入れよう」と思える。だが、いざ経営が厳しいとき、助言をしてきた相手が自分より年下ならどうか。学生ならどうか?自分よりすぐれた専門知識を持っているとわかったとき、頭を下げられるだろうか。   成功者は、頭を下げられる。敗者にはそれができない。    また、「誰のアドバイスを聞くべきか」を選別するのは最も重要なポイントだ。敗者は「好きな人」からアドバイスをもらおうとする。高校時代から尊敬している先輩。会社の元上司。親。彼らが一度も起業なんてしたことがないにも関わらず、感情で人を選んでいるのだ。    このミスを犯さず「自分よりその分野で成功している人」をアドバイザーに選べたとしよう。飲みに連れていってもらい、頂いたアドバイスをすぐに実行できるだろうか?多くの人は「はぁ」と受け流すのではないだろうか。    ある方から、起業相談をいただいた。私にできる範囲でお応えしたが、数か月たっても変化がない。「どうされてますか?」と聞いても「いやあ、ためになりました」とお礼が帰ってくるばかりだ。    そこで彼と飲みに行き、詳しく話を聞いたところ「自分は頭がいいと思ってこれまで生きてきた。だから自分がもの知らずだと指摘されるのがどうしても耐えられない」とおっしゃられた。私も決して頭がいいわけではないが、もし自分より専門性が高い人のアドバイスを同様の理由で無視するなら成功者にはなれまい。    成功者は、助言をすぐ実行する。このバーに通えばよくしてくれると言われれば通い、営業へ行けと言われれば100件電話する。どんな助言も、実行せねば成功できない。成功者はアドバイスを聞いてから実行するスピードが、とてつもなく早いのだ。   成功者の特徴② 大企業から学ぶ  私がかつて葬祭事業を立ち上げたとき「大企業の時代は終わりだ。これからはベンチャーが世界を席巻する」と思っていた。とんだ勘違いだった。    数珠、骨壷、霊柩車、卒塔婆……あらゆる道具でイノベーションを狙ったベンチャーが、葬儀場から火葬場まで全部揃える馬力のある、総合商社の参入で木っ端みじんになったのだ。私が足しげく営業をかけて広げてきた努力は水の泡となった。なにしろ、営業をかけた寺院自体が経営危機に陥ってしまったからだ。    成功者は大企業から学ぶ。彼らのもつスケールへ経緯を払う。大企業がリターンを考えると手を出しづらいゾーンから手を出していく。一流企業に登りつめたメガベンチャーを見れば一目瞭然だ。DMM.com、メルカリ……どれも最初は大企業がひるむジャンルへ打って出た。そして徐々に自浄作用を働かせ、一流企業へ転身していったのだ。   成功者の特徴③ 「誰から嫌われるか」を決めている  「いい人」が起業をすると、誰からも好かれたがる。消費者、出資者、株主、取引先。しかし思い切った施策は必ず、このどれかから反感を買う。ある社長は、経営難に陥っていた。そこでコンサルタントが入り、すぐに人件費が高すぎることに気づいた。世間の相場より1.5倍もの賃金を払っていたからだ。    だが、それを指摘すると、経営者は首を横に振った。「これまでずっとお世話になった社員だから、これくらい払わなくては」。その結果、社員の給与が足を引っ張り、研究開発へ資金を回せずにいた。そうすると良い製品は生まれない。巡り巡って人件費を払えなくなる。    「いまは苦渋を飲んでくれ。そうすればだれもが納得する成果を出せる」と、反発を抑え込み、時には悪役となるのも社長の役目だ。社員のことだけを見て会社を回すと、めぐりめぐって消費者や株主をないがしろにしてしまう。そうするとモノが売れなくなるから、最後は本丸ごと潰れてしまうだろう。    最近だと、日大の不祥事がわかりやすい。日大アメフト部が反則行為を行ったとき、とっさに日大は組織のナンバー2だったアメフト部監督を守る方へ動いた。しかし日大の資金源は助成金を出す国と学生だ。この2社へ背を向けて社員を守った結果ブランドイメージを傷つけ、売上ダウンへの道を歩んでしまった。    成功者は、好かれるべき相手へ優先順位をつけられる。取引先を怒らせてでも、圧倒的な売り上げで黙っていただくしかないこともある。株主を怒らせてでも、売りを取るべきときがある。社員に対しても然りである。   まとめ  成功者がやっていることは、とてもシンプルだ。助言をすぐ実行し、大企業へ敬意を払い、好かれたい相手を選ぶ。たったこれだけのことをするのが、いかに大変か。私自身もまずはアドバイスへ忠実に従うことで、次こそは成功への切符を掴もうと思う。...

TOKIO山口氏、福田前次官。責任ある立場で相次ぐ性暴力の問題 日本は2018年4月、性暴力に覆われた。財務省の福田前次官によるセクハラ、TOKIOの山口氏による強制わいせつ。どちらも公の場で追及され処分が下っただけでも前進はあったとみている。   一見関連性のない2つの事件だが、実は「職場の関係者が上下関係を利用して行った暴力」である点が共通している。福田前次官は自分を取材する女性記者へ向かって情報を漏らす代わりに「胸触っていい?」「浮気しよう」とセクハラを繰り返した。TOKIOの山口氏が呼び出したのは、テレビの仕事で知り合った関係者と言われている。どちらも仕事上で関係がある目上の人間から呼び出され、断りづらい状況で起きているのだ。   だからこそ、筆者は職場で性暴力が消える日は来ないとみている。なぜなら仕事上で発生する性暴力には、3つの力がはたらくからだ。   クライアントが無茶ぶりをしたとき、無視できる企業は少ない 私はメーカーの内勤出身で、比較的セクハラが少ない業界にいた。メーカー内勤でなぜセクハラが少ないかといえば、「加害者になりうるのが社内の上司しかいない」からだ。セクハラは十中八九目上の人から行われる。目下の人間から起こされても、すぐに叱って止められるからである。社内の人間としかやりとりしないなら、セクハラは内部でしか起こりえない。それなら問題があっても、社内のルールを徹底すればどうにかなる。どうにもならない腐敗した企業もあるが、たいていはセクハラ起因の離職率増で生産性低下というしっぺ返しを食うだろう。   しかし、外部にクライアントがいる職種、業種なら話は別だ。大手広告代理店の社員から話を聞くと「自社内でセクハラはそうないが、クライアントがひどい」という訴えをよく耳にする。   胸をつかまれた、夜更けにホテルの一室へ呼び出され寝ることを拒否したら土下座させられたなど「これは本当に現代日本か?」と思わされるセクハラが横行している。被害者は女性だけではない。男性もクライアントによって裸で歌うことを強要されたり、女性と寝るよう迫られたりしている。   そして多くの企業は、「太い」クライアントをセクハラだけを理由に切り捨てる勇気を持てない。中小企業ならその会社を切った瞬間に倒産することもある。だから、社外のセクハラを止められないのだ。   連鎖も?セクシャルハラスメントの被害を止められない上司の罪 クライアントがセクハラをしてきた場合、頼れるのは上司しかいない。だが、上司だってセクハラだけを理由に「A社との取引は一切やめさせてもらおう!」と言い切る権限はない。広告代理店ならまだ他のクライアントを見つければいいが、福田前次官のような「替えがきかない取引先」だってある。   だから上司も「お前さえ我慢してくれれば、うちへ優先して融資してくれるかもしれないから」と言いかねない。この発言自体もセクハラなのだが、ややこしいのは上司が同性で、しかも下っ端のときに同じ苦痛に耐えた人間の場合だ。「私も耐えてきた。分かるよ。つらいよな。お前も頑張れよ」と言われて、ふざけるなと怒りを表せる部下は少ないだろう。   「お客様は神様です」がいまだに生き残っている社会では「よし、セクハラを訴えよう」とはなりにくい。なるべくことを荒立てないよう、せいぜいセクハラを受けにくい人へ配置換えをするくらいが関の山だ。となれば、セクハラを訴える社員はより裏方業務に回されることになる。セクハラを訴えると、左遷されるリスクすらあるのだ。   「被害を受けるお前が悪い」という言説の無理解さ 今回、TOKIO山口氏に関する言説で、特に目立ったのが「家へノコノコ行く方が悪い」といった、被害者を責めるものだった。だが想像してみてほしい、高校時代の自分を。あなたは友達の親に家へ呼ばれた。その親御さんは好感度の高い芸能人で、自分の親も尊敬している。だから安心して友達と2人で家へ入ったらむりやり襲われ、キスされた。トイレへ駆け込んで助けを呼び、親へ迎えに来てもらった。それを周囲から「40代の異性の家へふたりきりで行くなんて、お前が悪い」と言われたら……高校時代の自分はどう思っただろうか?   日本に限らず、性暴力では「理想的な被害者でなければ許されない」風潮がある。若く美人で、道端で全く知らない人間からいきなり襲われないと同情してもらえないのである。 だが実際にはレイプですら加害者の6割が「よく知っている人」なのだ。そこには職場の取引先や友人、以前付き合っていた相手、そして親を含めた家族。好意を持っていた相手からむりやり襲われたケースも多いだろう。   だからレイプに限らず、性暴力の被害にあった方は訴えを起こしづらい。何よりも自分自身が、自分が悪かったのではないかと責める。   訴えるに至っても、周囲から「お前が誘ったんじゃないか」 「これで仕事がうまくいくなんて得じゃないか」とまで言われる。訴えず泣き寝入りすれば、今度は「どうせ被害にあったのも嘘だったんだろう」と今度は言われてしまうのだ。時間が経ってから決心して届けを出すと「金に困ったのか」と。性暴力を受けた人は、こんな状況でどう強く生きたらいいのだろうか?   きっかけは被害者の勇気。経営者は決断すべき 今回、それでも進展があったのはセクハラ、性暴力を受けた側が勇気を出してくれたからだ。テレビ朝日は「セクハラを報道したほうが、社員へ耐え忍ばせてネタをもぎ取るより視聴率を稼げる」と理解しただろう。企業側が「セクハラ・性暴力を訴えでたほうが会社にとってカネになる」理由を見つければ進展はたやすい。   テレビ朝日も、セクハラを他社メディアに流されず自社テレビで「大スクープ!福田前次官のセクハラ疑惑」と訴えれば最高のネタになったであろう。それが「セクハラなんて耐えてネタをもらうものだ」という古い慣習を守らせて時流を忘れ、儲けるチャンスを逃したのだ。倫理はもとより、ビジネスセンスが不足していたことも会社として反省すべきだろう。   どの業界にも、無茶なクライアントは大勢いる。「私は耐えたんだから」とセクハラを容認させる上司もいる。だが、今回の2つのニュースで大ナタを振るうきっかけはできた。   セクハラをしてくるたった1社の取引先に依存した経営体制なら、ポートフォリオを分散したほうが財務上も健全になる。どの会社もセクハラをするクライアントを蹴るならば、クライアント側の内部統制もかかるだろう。その大ナタを振るえるのは経営者だけだ。長期的な生き残りを模索するならば、取引先のセクハラを公にするべき。その意識が浸透してほしい。...

「インフルエンサー」という言葉が一般化した。インフルエンサーは直訳すると「影響を与える人」を意味する。ファンがその人にあこがれ、同じようになりたいと願っている。それだけなら従来のアイドルと変わらないが、大きな違いはネット上で芸能事務所にも所属していない「素人」が影響力を持った点にあるだろう。 芸能人が推した商品は「どうせスポンサーがいるんでしょ」とうがって見る視聴者が増えたいま、あえて素人感のあるインフルエンサーから紹介してもらえば商品が売れる。なによりインフルエンサーはテレビ広告に出るような芸能人より単価が安く、コスパが良い。大企業に広告費の予算で後れを取るベンチャーがこぞってインフルエンサーへ投資し、そこに大企業も追従した。 私が新卒でマーケティング職についたとき、世間は「インフルエンサーの時代」の黎明期であった。「ブロガー」という言葉がようやく大企業の経営層にも認知された。自社製品のPR文を書いてもらおうと、企業はテレビ広告のコストをインフルエンサーへ割き始めた。 だが、断言してもいい。今の方法でインフルエンサーへ投資しても商品は売れない。その理由は大きく分けて2つある。 マーケターが陥る罠…インフルエンサーの特性を無視した広告文 まず、インフルエンサーごとの特徴を無視したPR文の依頼が多すぎる。別にこちらも「個性を見て!」とワガママを言いたいのではない。インフルエンサーの基礎的なジャンルすら間違っていることが多すぎるのだ。 たとえば私は「外資系OLのぐだぐだ」というブログでフォロワーを獲得した。このタイトルから想定されるキャラは「キラキラ☆いけ好かない☆女子力」といった感じだろう。だから私にはコスメやファッションのPR文掲載依頼が大量に来る。だが、私のTwitterを3日でもフォローすれば気づくはずだ。 「こいつ、まったくオシャレに興味がねえ」と。 恥ずかしながら私がメイクを始めたのは29歳、つまり去年だ。ちょっとコスメに気を使っている中学生より素人である。服を買うときは人に選んでもらっている。さもないとトンデモな服を着ることを知っているからだ。なお、私のワードローブの半分は「お姑さんからお譲りいただいたもの」で占められている。自分で買った服すらない悲しみのファッションモンスター。それが私である。 こんな私にファッションのPR文を依頼するのがいかにばかげているか、すぐに分かるだろう。だが現実にはバンバン依頼をいただく。期待していただけるのはありがたいが、受けたくても受けようがないのだ。何なら、高級時計のマーケティングをしていたので男性ファッションの方が詳しい。 と、「ブログのタイトルから受けた印象」「主な読者層」だけを根拠にインフルエンサーを選ぶ企業はかなり多い。 なぜそんなことになってしまうのか?スポンサー企業は「このインフルエンサーはアラサー女性に人気で、単価もお安いのでお勧めですよ」と広告費の投下を持ちかけられる。インフルエンサー候補は、ざっと100名を超えることもある。担当者も忙しいから、各個インフルエンサーの実態を調べる時間がない。 あなたが担当者なら「じゃあこの人で」と100名のおまとめ発注を出すだろう。だが、そこには確実に、あなたの商品を売るのに適していないインフルエンサーが混ざっているのだ。 インフルエンサーに依頼する前に。マーケターとしてこれだけは確認すべき インフルエンサーには「PRの依頼をいただけるだけでありがたいから」と何でも受注してくれる人がいる。なんでも引き受けてくれるインフルエンサーは、限られた仕事しか受けない頑固な、そして実は誠実なインフルエンサーよりも代理店にとってありがたい人材だろう。大量のインフルエンサーを使って商品を拡散したいとき、断らないインフルエンサーは確実に候補者リストへ入る。そしてあなたの商品が自分経由で売れないと分かりながら告知してくれるのだ。そしてあなたの商品は売れないだろう。 だから過去100件の投稿だけでもいい、商品を本当に売りたいなら出稿者はきちんと確認すべきだ。自分で投稿を追う時間がないなら、下記2点だけでも広告代理店に問い合わせてみてほしい。 このインフルエンサーのファンは何を理由にフォローしているのか? 「外資系OLのぐだぐだ」というタイトルだが、実は「アラサー女って主婦、バリキャリ、両立とどれを選んでもバッシングされてしんどいよね」という趣旨でご支持いただいていることが理解できれば、「愛されメイク」なんて絶対に依頼すべきではないと分かるだろう。 過去にこのインフルエンサーがバズらせた商品は何があるか? PRでなく、純粋なオススメでバズらせた商品をピックアップしてもらうと自然な波及効果がみられてよい。 私の実例では、下記がある。 https://twitter.com/10anj10/status/757970743913242628 メイクやファッションではザルな私だが、実はシャンプーマニアをやっていた。こういった「このジャンルならこの人が詳しい」というフォロワーからの信頼が確立しているインフルエンサーへ、同ジャンルのPRを依頼するとバズりやすい。ただし、こだわりがあるインフルエンサーには「純粋にオススメできる製品でないと嫌だ。御社製品はXXが理由でオススメできない」という理由で依頼を断られる可能性もある。 わずかこの2点を質問するだけで、「商品を売ってくれるインフルエンサー」に出会える可能性はぐっと上がるだろう。売れない広告を出すくらいなら、投下しない方がマシである。インフルエンサーへの投資が増える今だからこそ、ザルな投資にならないよう警鐘を鳴らしたい。...

  起業しよう。   そう考えたあなたは、すぐに自分ひとりでできることの限界に気づくだろう。営業は得意だが経理に疎い。法的知識はあってもプレゼンがド下手。誰だって得手不得手はある。ワンピースのルフィだって、仲間がいなければすぐに夢破れるはずだ。   だから事業が黒字化する前の段階で、あなたは仲間を募るのは自然な流れだ。   しかし、ふわっとしたアイディアしかない段階で労力を割いてくれる人、仲間になってくれる人は少ない。もとい皆無に近い。愛しの彼氏・彼女ですら「その起業、やめたら?」とやんわり制止するだろう。数少ない友人だけが「それ面白いじゃん」と寄ってきてくれる。かくしてあなたの孤独な起業プランは、仕事仲間となった友人とともに描く壮大な夢となる。 友情か、成功かを問われる日がくる そして労力の末に、売上は伸びる。仲間は有頂天になる。会社を辞めてよかった。お前を信じて良かったよ。チームは互いを褒めあい、さらにハードワークをこなす。   だが夢の楽園は続かない。   あなたはより大きな社会的成功を夢見て、事業の規模をどんどん大きくしたくなる。もっと人を雇おう。経営を多角化しよう。今の儲けを投資しよう。そして仲間の反対に出会うだろう。「何で今のままじゃだめなんだ?もうこんなに儲かってるのに」「IPOがそんなに大事か?いまのうちに事業売却する方が賢いんじゃないか?」   あなたは愕然とするだろう。「共に成功しよう」と語り合ったはずなのに、成功の定義が仲間と大きく違っていたことを思い知るからだ。あなたは年商100億円がほしい。でも仲間は5,000万円あればいいと言う。そこであなたは選ばなくてはならない。仲間を全員切り捨てて大きな成功を目指すか?それとも小さなビジネスで満足するか。 人を切り捨てる痛みに耐えられるリーダーは少ない これは私の話だ。かつてうまくいった起業があった。といっても個人事業主に毛が生えるくらいの売上を作っただけだが、学生起業にしては軌道に乗った方だと思う。しかし社員を何人も食べさせられるほどの儲けではなかった。売上がその程度だった理由は、単なるサービスの知名度不足だった。つまりここでVCからの投資や借金をしてでも営業・広告へ予算を割けば、れっきとしたビジネスになる可能性は大きかった。   けれど仲間は満足してしまった。「このまま会社員として就職すれば、この副収入で幸せに暮らせるぞ」と。そんなものは私の望んだ未来ではなかった。   そこで私は仲間を全員リストラし、事業を拡大できる人材を求め……はしなかった。残念ながらやる気が失せてしまった。年商1,000万円を切る段階で満足してしまうチームに失望しながらも、全員に裏切り者とののしられてまで友人達を切り捨てる勇気はなかった。だから事業ごと手放すことにした。「じゃあ好きにやっていいよ」と放流したプロジェクトは、いまもどこかで「副業」にふさわしい売上を作っているのかもしれない。私の知ったことではないが。   かつて「結局、皆で和気あいあい仲良くを目指すのか、厳しくとも成長する会社を選ぶのかって話になってくる」と堀江貴文氏は語っていた。(参考記事:スタートアップの会社に優秀な人材を集める方法?ふざけたことぬかすな)この指摘は、痛いほど真実だ。そして、長年培った友情と成功を天秤にかけて、それでも成功を取れる人間は少ない。   ほとんどの人にとって「なぜ成功したいか」という疑問の答えは「家族や友達を幸せにする力が欲しい」からである。目的となる周りの人を不幸にしてまで、成功をつかみ取りたい人はそういない。私だって違う。だから私は成功しなかった。シンプルな話だ。 憎まれてもいい仲間を、あらかじめ選ぶしかない そしていま、私は起業家をしている。「仲間」を失うことに怯えた起業から数年。また起業にチャレンジできたのは、友達や家族を起業「仲間」として巻き込むのをやめたからだ。私は「仲間」とミーティングをしない。代わりに従業員を雇い、彼らを信頼している。   従業員へは、仲間と同じような待遇を心がける。けれど「仲間」とは本質的に違う相手だ。彼らが私と一緒にいてくれるのは給料が支払われるからで、私が好きだからではない。もしかすると好いてくれているかもしれないが、だからといって余計に働いてもらったり、進んでタダ残業してくれたりするわけでもない。だから従業員は根本的に「仲間」とは違う相手だ。   そして従業員は「仲間」ではないからこそ、安心して起業の一翼を任せられる。ビジョンを少し違えただけであなたを憎んで裏切り、会社のカネや人を持っていきかねない「仲間」と比べて、給与を目当てに働いてくれる従業員のなんと頼もしいことだろう。起業家に必要なのは「私たち、ズッ友だよね☆」とビール缶片手に語り合う友ではない。給与の関係で結ばれた、ドライな仕事の同僚たちなのである。   いつか仲間を憎み、切り捨てる結果を迎えるくらいなら――雇用関係ほど信頼できるものも、そうないのだ。もちろん従業員だって、あなたに反旗を翻すことは多々ある。だが、そのときあなたは、相手を躊躇なく切り捨てられるのだから。     ...

就活業界にいると「ダイバーシティ」という単語を腐るほど聞くことになる。   ところが実際にトップ企業へヒアリングをすると、驚くほど多様性とはかけ離れた現場に遭遇するだろう。   就職活動を始めたばかりの学生はよく「女性が男性と同じように働く」のは当たり前だと考える。学生にとってわざわざ取り組むべきダイバーシティとはLGBTQ(性的マイノリティ)や外国人、障がい者採用を指すものだ。   そして説明会やOBG訪問で「ダイバーシティについてどうお考えですか?」と気軽に質問し、まさかの「総合職女性の採用を頑張っています」発言に衝撃を受ける。この国は女すらまともに採用していなかったのだと、初めて知ることになるからだ。 世界3位のGDPを支えるモノカルチャー 管理職女性比率は、驚くほど低い。三菱商事は「東大卒、男性、体育会系、留学経験者」という超マイノリティで固められた企業だ。近年はダイバーシティの一環として各業界で女性の採用を推進しているが、いまだに女性管理職比率は6.4%(参照:女性が管理職として活躍できる会社を探そう)。ライバルの住友商事にいたっては2.2%に留まる。   たかが女性すら活用できていない社会で、まして他のマイノリティやいかん。同じく総合商社に就職したゲイの男性は、女性と結婚した。「いい年して結婚していないと、出世に関わるから」だそうだ。婚姻制度を使えないジェンダーなど、はなから想定されていない。   だが……ここで逆転の発想をしたい。ダイバーシティとはそれほど「よい」ものなのだろうか?    西欧倫理的には「よい」だろう。反差別。自由。平等。いい言葉だ。だが、コテコテの反ダイバーシティ企業が立ち並ぶにもかかわらず、世界3位のGDPを生む国がここにある。   かつて、「ジェンダーギャップ指数」と「GDP」が相関するか試算したことがある。もしダイバーシティに経済的なメリットがあるなら「ジェンダーが平等な国であればあるほど、GDPが高くなる」はずだと仮定して。   しかし、結果は違った。まったくの無相関。グラフには点が散らばった。ジェンダーギャップと、GDPには何の関係もなかったのだ。 ダイバーシティがありそうに見せている米系企業 そして一見、ダイバーシティがありそうな海外企業においてもそれは虚像だとわかる。たとえばプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は女性管理職比率が2014年時点で34.0%(参照:P&Gが役員の女性比率No.1に週刊朝日-女性が活躍できる会社)と、先述の総合商社を圧倒する。障がい者雇用にも熱心であり、日本支社にも外国人比率が高い。   しかしその一方で、採用時には心理テストによる厳正なふるいわけを行う。ウェブサイトへ社員のあるべき姿として「誠実さ」「リーダーシップ」「責任感」「勝利への情熱」「信頼」を明記する(参照:目的、価値観と原則)。   ただ標榜するだけではない。採用プロセスでは明確にこれらの素養を持っているか、具体的な過去の経験から深堀りされる。特殊な5つの性質を兼ね備えた人間しか生き残れない会社であるならば、たとえ人種やジェンダーが何であれ、それは立派な「モノカルチャー」だろう。   これはP&Gだけの特徴ではない。むしろ、時代を超えて存続する企業の共通項として「宗教じみた文化の統一」は挙げられている。   IBMは社歌を歌わせた。マッキンゼー・アンド・カンパニーはメールの作り方にまで「お作法」を用意した。日本の総合商社は外面の属性で、同じようなメンタリティを持つ人間を集めている。海外企業は宗教的な型でふるいわける。ただそれだけの差だ。 ダイバーシティによる失敗と、そこからの学び そして私は、ダイバーシティを誤解して一度失敗した。まったく共通点のない、異なる人材を集めて会社を作ったのだ。「違う強みを各メンバーが発揮すれば、チームが強くなる」と信じて。戦略立案が得意な私、ビジョンを掲げるのが得意なBさん、細かいところに気が回るCさん。   結果は惨憺たるものだった。「〇日までに売上を出すなら今から準備しないと」と言い出す私。そんなこと気にすんな、いつか俺たちは成功すると夢を語るB。メールの誤字脱字ばかり気にして前に進めないC。全員が自分の正しさを主張し、起業チームはバラバラに砕け散った。ほとんどの起業はそもそも日の目を見ない。なぜならモノが世に出る前の段階で、チームが崩壊しているからである。   そこから初めて愚かな私は本を読み、学んだ。この世に純粋なダイバーシティなどない。   ただし、参与しているメンバーに「ダイバーシティがある」と思わせることが大事なのだと。   誰だって閉塞感よりは多様性に惹かれる。だから今回の起業で、異なる強みを持つ人は集めた。ただし今回はエニアグラムと呼ばれる心理テストを導入し、性根は全く同じ人だけで固めることにした。そして今のところ、仕事はうまく回っている。   純粋なダイバーシティなんて、ただの無秩序だ。   経営者に求められているのは「あたかも自由があるかのように信じさせ、従業員のストレスを減らす」ことだけである。そのためにダイバーシティという単語がふさわしいなら、喜んで使おう。たとえその舞台裏には、緻密に計算されたモノカルチャーが控えているのだとしても。   参照 ワンキャリア編集部『一流内定』プレジデント社、2017年 ジム・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』日経BP社、1995年     ...

あなたは時給いくらだろうか?   私も大して稼いでいるわけではないので偉そうなことは言えない。だが自分が経営者となって驚かされた。この世には「最安値で働きたい人材」がいくらでもいるということを。 承認欲求で労働する人間 「最安値で働きたい人がいる」ことを知るきっかけとなったのは、ライター・編集者のオンラインコミュニティ。数千人規模でライターが集う掲示板には、記事の告知とライター募集が飛び交う。そして、そのフィーは驚くほど安い。たとえばグルメライターは食費込み1記事1,500円で募集されていた。   平均的な情報記事の原稿は筆が速い人でも執筆に1~2時間かかる。さらに店の取材で短くとも1時間。そして経費が追加される。おそらくこの原稿は赤字になるだろう。つまり「金を払って仕事をする」のだ。正気ならば、こんな仕事を受けるはずはない。   しかし、現実には応募者が殺到している。なぜなら「媒体へ寄稿できるライター」「グルメに詳しい人」という承認を得られるからだ。   募集している媒体がぐるなびやRetty、あるいはグルメ雑誌だったら私もまだ納得しただろう。有名媒体で働いた実績があれば、単価が上がる。単価が上がれば、その仕事は赤字でも間接的に将来の時給を上げられるからだ。しかし、募集媒体には無名のブログもどきも大量にあった。   承認欲求で労働する人間は、金を払ってでも働きたがる。それが、私の結論である。 金を要求してこない人間は信頼できない だが、経営者になってわかった。承認のために安く働く人材に、ろくなやつはいない。彼らは無能というわけではない。身を粉にして働いてくれるため、むしろ優秀なことも多い。だが彼らは賃金以外の報酬として「承認」を常に求めてくる。   承認欲求で働く人材は、根本的に自分を承認できていない。だからマネージャーへ承認を要求する。それが満たされなければ、   「トイアンナさんは、私のことが嫌いなんですか?」 「どうせ私は、そろそろクビになるような人材ですよね?」   とメンヘラも驚く批判が飛んでくるのだ。   褒めるのはやぶさかではないが、毎日「今日はこれができたね」「この才能があるよね」「●●さんがいてくれて嬉しい」とコンスタントにチヤホヤできるマネージャーは少ない。マネージャーにだって忙しい日もあれば、余裕のない状況もある。   だが承認欲求をモチベーションにする人材は、そこで不満を抱く。「私はこの職場で愛されていない」という感情は、やがて上司への憎しみにもつながる。そして彼らは退職を検討し始める。そのため、承認欲求をベースに働く人材は自己都合で会社を転々とする傾向にある。 承認欲求オバケを手懐ける人間 だが、この承認欲求オバケを手懐ける人間もいる。ブラック企業だ。ブラック企業では頻繁に社員を貶める。貶めぬいた上で「そんなお前を雇ってやれるのは、弊社しかない」と洗脳するためだ。承認欲求に振り回されている人ほど、その誘惑に弱い。   だからこそ資金力のないスタートアップや、自転車操業の薄利企業ほど「承認」を売りにする。表向きの言葉に言い換えれば「やりがい」「成長」だ。「承認さえ与えれば、タダでも働く人がいる」と知った企業が、承認を「福利厚生」として与える代わりに最安値で買いたたくのをどう責められようか。承認欲求オバケへ代わりに給与を与えても「ここではやりがいが感じられない」と転職してしまうのだから、企業も欲するものを与えているだけである。   私も、承認を餌にファーストキャリアを選択してしまった同じ穴のムジナだ。短期間で「世界のどこでも働ける人材になれる」という言葉が好きだった。厳しい上司がプロジェクト明けに「Well Done(よくやった)」と一言メールしてくれたときは、印刷して手帳に挟んだ。いまだって、ブログやTwitter廃人をするような承認オバケである。   だから、あえて発信している。承認をモチベーションにすると買いたたかれるぞ、と。 承認とカネは、どちらも手に入る そもそも、承認欲求で動く人間は「認められたいなら、タダででも労働しなければ」と思い込みがちだ。しかし承認とカネは同時に手に入る。正当な対価をもらい、きちんと仕事を納品する。その積み重ねが信頼になり、承認となる。「私は有名媒体のライターだ」というのと同じくらい「私は一度も原稿を落としたことがない」という言葉は価値がある。   承認をモチベーションにするのは一向にかまわない。むしろ、カネがもらえるからと常に人格否定されたり、殴られたりする職場なんかにいてはいけない。「カネも」手に入れるべきなのだ。承認のために自分を値切ってはいけない。あなたは正当な承認とカネ、両方を手にすべきだからである。   この原稿は、ある学生から「タダでもいいので弟子入りさせてくれ」と言われたことがきっかけとなった。個人的なメッセージかもしれないが、たとえ学生で、未経験であっても身銭を切って働いてはいけない。なぜなら自分が値切ったつもりでつけた時給が、いずれはあなたの固定給になるからである。     ニアセ編集部からのコメント 承認されることだけに意味はありません。承認されることに満足することはやめてください。自分の価値を高めることが重要です。この人だから頼みたい、相談したいと思ってもらえるよう努力していきましょう。     ...

残業は悪。という考えがついに日本へ上陸してくれた。だがその背景には高橋まつりさんの死があり、さらにたくさんの判例があった。現在でも毎年のように訴訟が取りざたされる中、必ずこういうリアクションを目にする。   「残業するヤツなんて無能なだけでしょ」と。   最初に言っておくが、私はそういう意見を愚かだと思っている。そして今からこの記事でボコボコに殴るつもりだ。洗練されたロジックなんて、用意するつもりもない。それでもいいという方だけ読み進めてくれればよい。 定時退社をする人が、やっていること 書籍『  新 13歳のハローワーク』『  「会社四季報」業界地図 2018年版』を開けば、この世にはさまざまな労働があることを体感できるはずだ。そして個人しだいで早く帰れる職業も大量にある。   実際の話をしよう。ある知人が、銀行で働いている。一般的には激務と呼ばれる部門にいるが、彼は毎日きっかり17時半に帰宅する。理由は明確で「家でやりたいことがたくさんあるから」だ。彼はプライベートが確保されれば出世できなくてもいいと思っている。   彼は叱られない程度に業務をこなすため、ほとんどの作業をExcelのマクロで組みなおして部署全体の業務を効率化した。1年目のころは「先輩より早く帰るな」と指導を受けたが、彼はかたくなに定時帰宅を続けた。そして今では「あいつはそういうやつだから」と治外法権を与えられている。   彼は業務を効率化する能力の高さと、出世よりプライベートを優先する一貫した態度で帰宅する権利を得た。もしこの企業でワーク・ライフ・バランスを重視する施策が実施されたら、出世も手に入るかもしれない。   だが、彼のスタイルを維持するには最低でも下記の条件が必要だ。     <有能でさえあれば早く帰れる人材が持っている条件>   ・効率化できる業務が多い 彼は業務をマクロ化することで定時帰宅を実現した。しかし、そのためには「マクロ化できる業務」であることが必須である。効率化しやすい業務は、ルーティーンの多い作業だ。自分に割り当てられた仕事に「決まりごと」が多くなければ、効率化も難しい。   ・仕事を効率化して同僚が感謝する風土がある 仕事を効率化したら誰もが喜ぶ職場は、限られている。たとえば、子供ができたから多く働いて残業代を稼ぎたいという人にとって、効率化は「何てことしてくれたんだ」と受け止められるだろう。自分がトップならそういう人材を切ればよいが、下っ端ならどうしようもない。   ・プライベートにやりたいことがある 有能な人材ほど、仕事でほめられやすい。だからもっと仕事に精を出す……というサイクルに陥りがちだ。ホワイト企業へ転職した激務を経験した社員がプライベートに物足りなさを感じ、再び激務に戻っていくケースはまぁまぁある。残業を無くすためには、そうしたいと思わせるほどのプライベートが必要なのだ。 私が激務だったころ、私以外は有能だった 対して、私が激務だった頃を見てみる。当時の自分が激務だったのは無能なせいだった。だが、取引先の広告代理店はそうではなかった。彼らは労働集約型の仕事をしていたせいで、激務になっていたのだ。   まず、彼らは弊社から依頼を受け、広告戦略を立てていた。広告枠の購買や制作スケジュールも考えると、できれば1年前から準備をしたいところだ。しかし予算確保がギリギリまで決まらないこともある。「〇〇の広告の予算、弊社内でもらえないかもしれませんのでもう少しお待ちいただけますか?」という言葉で、簡単にスケジュールはぶっ壊れる。   そして、信じられないような納期になってようやく「やっぱり広告打ちたいです」という恐ろしいオーダーを受け取ってからが勝負だ。広告媒体に「もう広告枠に空きはないよ!」と怒鳴られ、制作会社には「こんな納期で広告を作れるわけないじゃないですか!」と泣かれ、そして弊社からは「こんな広告で売れるわけない。台本全部作り直して」とボツにされる。   それでも彼らは動くしかない。広告代理店は「人」が商材だ。もし彼らが広告を出せなかったら「じゃあもういいよ、直接媒体へウチがかけあうから」と切り捨てられてしまうだろう。ある程度のムチャを代わりに引き受けてもらえるから、彼らに価値がある。そう思われている限りは労働集約型のビジネスをやるしかないのだ。そこに無能も有能もない。むしろ無能なクライアントを抱え、有能な社員が振り回される。 激務にメスを入れられるのはトップの決断だけ 一応断っておくが「広告代理店だから」激務なのではない。たとえば「弊社は戦略立案を強みとする代理店だ。ムチャを要求するクライアントの仕事は受けない」という経営方針が徹底されていれば、こんなことにはならない。   だが経営者にとって、これは苦渋の決断だろう。売上は少なくとも短期的にガクンと落ちる。社員の給与も減る。高い給与が出せないなら「戦略立案がまともにできる優秀な社員」も自社を受けなくなるだろう。100億円、1,000億円をポンと出してくれたクライアントは、ムチャを引き受けてくれるところへカネを払う。この世から激務は無くならない。仕事の上流にいる人間が、ムチャな依頼をする限り。   業界全体の仕事のやり方が、あるいは取引先が咎を背負うべき事例はいくらでもある。だから残業をいち企業の責任、さらに言えば個人の責任にするのは愚かとしか言いようがない。どうしても残業代を減らしたいなら、利益と給与を犠牲にしてでもメスを入れるしかないのだ。   最後に、私が経営者として利益を減らしてでも残業を無くせた仕組みだけ紹介しておこう。「1日3時間以上の業務を残業とみなす」ことだ。これなら「思いっきり残業したい」人もせいぜい1日6時間しか働かない。定時はすでに「残業」扱いなのだから、誰も17:30にはオフィスへ残らない。   もしあなたが経営者で、何が何でも残業を減らすと決意したなら使ってみてほしい。実施すれば気づくはずだ。   残業は個人の能力とは全く関係ない、トップダウンのシステムで変わるものだと。     ...