【その兼業カッコ良すぎる!】SNSで注目を集める「リアルすぎる医師芸人」の日常は?

ニューアキンド

 今注目なのは、若手芸人の井たくまさん(29)です。芸人として始動してからわずか1年、しかも所属事務所もないのに、SNSで累計2万6千人のフォロワーを獲得。ティックトックユーザーなら「よくオススメに出てくるアノ人?」とピンと来る人も多いのでは。

 そんな井さん、実は現役のお医者さんです。「医師で芸人」といえばしゅんしゅんクリニックPさんが有名ですが、井さんは他の追随を許さない(というかそもそも目指さない)「The☆医者」な風貌で、リアルな「病院あるある」を繰り出します。

「どこからどう見ても医師にしか見えない男」がなぜ芸人を目指したのか。その理由、そして野望とは…。

<プロフィール>
井(い)たくまさん(リンク一覧
フリーの医師芸人。佐賀県で医師免許を取り、2021年に上京。太田プロエンターテインメントカレッジの芸人コースに入学。以降医師としてアルバイトをしながらお笑いの修行に励む。2022年からコンビを解散し、ピン芸人に。SNSでフォロワー2万6千人を集める。現在、医師として働きながら、お笑いライブに出演中。

─はじめまして、ニューアキンドセンターです。では、インタビューを始めます。

恥ずかしい…。というのも、僕は去年まで太田プロのお笑い養成所にいたんですが、講師からも見放されていて、卒業ライブの評価が「C」だったんですよ。親にも昨年芸人になると言ったら「(井さんが生まれてから)28年間、お前で笑ったことないけどね」と返されたくらい。なのにインタビューだけ受けるって(笑)。悪目立ちです。

─でも逆にすごいです。井さんのネタ(YouTube)にも「優しくて優秀な医者、意外と留年とか浪人してたりする」とありましたが、まさにそのパターンではないですか?

いや、何の成果も出してないですから。でも嬉しいですね。SNSで発信してよかったと思います。硬派な芸人は「舞台で売れなきゃ」と言うし、僕も舞台で活躍している芸人さんに憧れていましたが、今は手段を選べる状況ではありません。釣りでいえばいろいろなところに針を仕掛けて、なにかひっかかればいいなと。

普段は都内の某クリニックにて勤務。「勤務先の人にはお笑いのこと言ってないんです」(井さん)

─やはり芸人さんとして売れたいのですね。では、なぜ医師という職業を選んだのでしょうか?

通っていた中学が進学校で、友人に医者志望が多かったんです。それで「じゃあ僕も」と。あとは、野球部で落ちこぼれたのもあるのかも。3年間ずっと補欠だったんですけど、最後の試合の前に僕だけ顧問に呼び出されて「お前は勉強頑張れ」と(笑)。「そっか。じゃあ勉強やるしかないな」って。正直、医学の道に志があったわけではないんですよ。

─なるほど。そんな軽い理由で、よく医師免許までたどり着きましたね。よほど地頭がいいのでしょうか。

いや、大学の時はめちゃくちゃ勉強が苦手で、何回も留年しかけて「医者になれないかもしれない」と思っていました。軽い気持ちで医学部に入っちゃったから、毎日「こんなに勉強しなきゃいけないなんて…」と思っていました。芸人は、逃避の意味もあったかもしれません。「勉強で頭角を現すことができないから、人前に出ることで活路を」と。

─それは意外です。いかにも優秀そうなお顔立ちなのに。でも、さまざまある逃避の中から「お笑い」を選んだのはなぜでしょうか。

中学の頃に勉強しすぎて、病んだ時期があったんです。その頃に芸人さんのラジオを聴いて、「面白いじゃん!」と感動して。何もする気が起きないのに、ラジオだけはずっと聴けたので「芸人ってすごい仕事だな」と思いました。

「先人たちのあるあるの集合体が医学です。これだけは覚えて帰ってください」(井さん)

─笑いに救われたのですね。その頃お好きだった芸人さんは?

くりーむしちゅーさんとか東MAX(東貴博)さんの「オールナイトニッポン」が大好きでラジオにハマったのですが、特に好きだったのはオードリーさんです。当時(2008年)オードリーさんはM-1で敗者復活から2位を獲得し、話題になっていました。その勝ち方がカッコよすぎて度肝抜かれたんです。もともと幼馴染同士でコンビを組んでいる芸人さんに憧れがありました。オードリーさんも気のおけない関係でバカをやっている、一蓮托生のコンビ仲なところが好きです。

─たしかに、芸人さんのコンビ愛は結婚よりも美しいですね。ラジオの視聴者参加コーナーにメールを出したりは?

中学生の頃、東MAXさんが早口言葉を募集するコーナーがあり、一度だけ採用されました。それとオードリーさんのオールナイトニッポンでも、メールが読まれたことがあります。「今度NHKさんとのラジオ企画があるから、絶対にシモネタは送って来ないでください」と言うので、その回にキ○タマがどうしたとかめちゃくちゃなシモネタを送ったら「こういうのは採用しません」と、ダメな例として(笑)。本当に鳥肌が立ちました。マジで人生で一番うれしい瞬間でした。医学部に受かったときの何倍も嬉しかったです。

─そういう体験があると、夢が確固たるものになりますね。ところで、若手芸人さんは極貧、医師は裕福だと思われがちですが、井さんの生活は?

ぶっちゃけ言うと、同世代の中では収入が多いかもしれません。養成所でも仲間からネタは評価されないのに、めっちゃ「金貸して」って言われました(笑)。だからハングリー精神はないし、芸人を続ける上でお金がモチベーションにはなりません。

─なるほど。でも、私がその立場なら、芸人は諦めそうです。やはり「売れればビックマネー」というのが芸人の魅力だと思うので。

そうですね…。人間って、どうせすぐ死ぬじゃないですか。だったら過程が楽しい方がいいと思うんです。医者だけに絞っても「このポジションをこなせば次のステップに」を繰り返しながら死ぬわけで。たとえば年を取って働けなくなったとき「俺、本当はお笑いやっていたら売れてたと思うんだよね」とか言うの、カッコ悪いですよね。一回やってみて売れなかった人と、やらずに言っている人とは全然違いますから。

月に4〜5回はお笑いライブのステージに立ち、自作イラストを使ったフリップ芸を披露

─その発想、とてもカッコいいですね! でも、それなら逆に、芸人だけに絞ればいいと思うのですが。

それも考えたことはあるのですが、養成所の講師には「医者を前面に出せ」と言われていたんです。たしかに僕が普通にネタをやっても、面白い人には勝てません。講師にも「なんで普通のネタ?医師免許の持ち腐れだよ」って言われますし。面白い人を100としたら、僕の面白さは40くらかもしれない。でも、医師免許という個性を上乗せすることで、その人を超えられると考えたんです。医師を辞めて個性をゼロにしてしまうのは、もったいないと。

─たしかにそうですね。ただ、医師とお笑いという二足のわらじはあまりにも大変な気がします。不安はありませんか?

本音を言えば、医師と芸人どちらも中途半端になるのでは、と悩むことがあります。35歳まで売れていなければ諦めようか、とか、10年後には医者としての地位もお笑いも両方失っているのでは、と不安になったり。しゅんPさんとはタイプが違うので、僕の前にこの道を歩いた人がいなさすぎて、正直なにが起こるのかわからないんですよ。とにかく40歳になるまでは、なんとかして売れたいです。

─今、まだ迷いのさなかなのですね。

はい。よく「夢を追うならすべてを捨てろ」とも言われますし。まあ僕の人生なんで、別にいいのでは…と思いますけれど(笑)。でも僕が成功したら「夢を追うのためには、生活を支えるための仕事も大事だ」と言えますよね。

─迷っているといいつつ、きちんと筋がありますね。では、今後どのような活動を?

とりあえず、2021年はR-1の2回戦で落ちたので、今年は優勝を目指します。本当は「3回戦進出」が目標なのですが、YouTubeで紺野ぶるまさんが「優勝を目指さないと先へ進めない」と言っていたので(笑)。テレビ出演もしたいですし、SNS、とくにYouTubeの登録者数を増やせたらいいな、と思います。

ファンは医療関係者が圧倒的に多い。「あるあるに共感してくれているんですね」(井さん)

─それはぜひ実現していただきたいです。最後に、ニアセの読者にメッセージを。

やりたいと思ったことやらないと生きてる意味ない…ないっすよね。医者で頑張っている人たちは人を救いたいと思っています。僕は、自分が楽しく生きられることを考えています。どちらもトータルで見て、楽しければいいと思うんです!

─元気の出るお言葉、ありがとうございました。井さんの今後のご活躍、期待しています!

長谷川 京子

東京生まれ、横浜育ちのライター。サブカル書店員、旅館の仲居、夜の蝶、キャンギャル、大手広告会社(の窓なし室で資料を番号順に並べる係)勤務、芸能学校ワークショップ講師・脚本家などを経て、2008年より広告ライターに。超大御所コピーライターのゴーストライター、某企業代表のゴーストライター、某高級料亭ブログのゴーストライター、某お父さん川柳のゴーストライター、ダイエット食品の広告モデル(ビフォーの役)などで活躍し、現在はカルチャー誌、女性誌、Webなどで執筆。

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