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「馬鹿ブス貧乏」の著者藤森かよこが語る
藤森かよこ
藤森かよこ氏

コロナ禍により私たちの生活は大きく変化しました。これからどう生き抜いていけばよいのでしょうか。ヒントとなる書籍のひとつに『馬鹿ブス貧乏な私たちを待つろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください。』(※)があります。

著者の藤森かよこさんは、アメリカの国民的作家・思想家のアイン・ランド研究の第一人者です。アイン・ランドの大ベストセラー、『水源』『利己主義という気概』を翻訳刊行されています。世の中の女性に向けて、物事や人間の本質を鋭く突き、一見残酷なようなことを、愛を持って伝える物言いは、多くの女性から人気を呼んでいます。

藤森さんは新型コロナウイルスによってもたらされたさまざまな事柄を「コロナ危機」と呼んでいます。著書には、世の中の女性がコロナ危機をどう前向きに捉えて、どう乗り越えていくのかが綿密にしたためられています。

今回、ご著書からは著者の藤森さんに、「残酷なようだけど、知らないと損する10のトピック」として、これからの時代をサバイブするために知っておきたい事柄を伺いました。今仕事や人間関係で悩む方、コロナ禍によって自身の状況が厳しい方は注目です。また著書では語られていない、最新の話題にも伺いました。

【ご本人のプロフィール】
名前:藤森かよこ(twitter
福山市立大学名誉教授。1953年、愛知県生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課程満期退学。元桃山学院大学教授、福山市立大学名誉教授。アイン・ランド研究の第一人者で、訳書に小説『水源』、政治思想エッセイ集『利己主義という気概』。

【トピック1】親は「子育てはしんどいものだ」と認めることで楽になる

—ご著書の第1章で、コロナ禍で学校が一斉休校になったとき、「もう認めましょう、子どもと離れている時間が欲しいことを」と述べ、学校が「デイケアセンター」化してしまっていることを指摘しています。

藤森:両親は私に「本当は子どもはいらなかった」と平気で言うんです(笑)。この話を人にすると「ショックだったでしょう」と言われるのですが、私はショックと思ったことはなかったです。子どもを育てることって大変なことじゃないですか。両親は「産んだ以上は責任をもって面倒を見よう」という感じだったのでしょう。

親にとって子どもはかわいい存在でありながら、負担でもあると思いますよ。今の日本の子どもはいつまでも親に甘えていいと思っているし、親は親で、子どもとずっと関わっていたい、子離れできないという人も多い。

子どもはしんどい存在でもあると認めた上で、成人するまでは仲良く一緒にいる時間を大事にする姿勢が大切なんだと思います。「親として、子どもと一緒にいることが当たり前」「親は子どもとの時間を喜ばなければならない」、こうした思い込みがあるからプレッシャーを感じてしまうし、学校がデイケアセンター化してしまうのだと思います。

【トピック2】 すでに日本人は監視社会を求めている

—第3章では、コロナ危機により、監視社会になりつつあると言及しています。監視社会についてはどうお考えでしょうか?

藤森:感染拡大防止という大義名分のもとに、自由の制限と監視管理は許容されるべきというのが正論になりつつあります。また、日本人は自由になることのほうを恐れている人が多いと感じます。管理されている、支配されていることは刑務所の中にいることと同じだと思いませんか?それでも日本人の多くが自由よりも守られることを求めるのならば、監視社会の到来は仕方のないことだと思います。

—監視社会は怖いと思ってしまうのですが、藤森さんは怖くありませんか?

藤森:怖いですよ、でも、こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、ほとんどの一般人は大した秘密を持っていません。せいぜい浮気しているのがバレる、その程度でしょう。それに、SNSを使っている私たちは、何を話しているのかすでに監視されています。

【トピック3】 私たちがぼんやりしている間にも、国策は進んでいる

—第6章で、「官公庁には公開されているけど、国民の多くが知らない国策」とありました。私たち国民にとっては、官公庁に対してもう少しわかりやすく書いてほしい、もう少しわかりやすく発信してほしいと思うのですが…。

藤森:わざとわかりにくく表現されているんですよ。一種の記号のようなものです。

—わ、わざとですか?

藤森:情報が公開されているだけで、日本は相当恵まれている国だと思います。日本のこの状態に文句を言っていたら、他の国になんて住めないですよ。私は日本の今の状態がいいとは思っていないし、決して理想的な国ではありませんが、他の国と比べると恵まれた国だと思います。

—国のせいにせず、私たちが意識して、公開されている情報を読み取っていかなければならないということでしょうか?

藤森:あるとき日経新聞を広げると、いろいろな本の宣伝広告が載っていました。私は学校の教師だったので『先端教育』という雑誌が気になり、読んでみたんです。雑誌には、「GIGAスクール構想」を文部科学省と一緒に取り組んでいる研究者の文章が掲載されていました。

コロナ禍で教育のデジタル化の遅れが顕著になり、コロナ禍によってDXが進み始めたような印象を持つ人が多いですが、「GIGAスクール構想」は2019年に政府がすでに打ち出していた国策です。私たちがぼんやりしているだけで、政府はさまざまな国策を打ち出しているという現実に気づいた方が良いかもしれませんね。

—自分から情報を取りにいかなければならないということですね。

藤森:今はインターネットでいろいろ調べられますし。でも、ネットには誤った情報もたくさん載っています。それは骨董品と同じで、たくさんチェックして、自分なりに咀嚼するうちに、考えが養われていくのではないでしょうか。本や映画だって、ある程度量をこなさないと質が見えてこないのと同じです。

【トピック4】 求人票の見方を変える。思い込みを捨てて、いろいろな職に目を向けよう

—第9章では、コロナ危機によって女性の職が奪われつつあると述べています。職を失わずにコロナ危機を乗り越えるためにはどんな能力が必要なのでしょうか?

藤森:まずは、思い込みを捨てていろいろな職業があることに目を向けてほしいです。食べていくためにどこかの農業法人に入り込むとか、便利屋さんをやってみるとか。「私にはこれしかできない」と思い込んで、今までと同じような見方で求人票を見るのではなく、「こういうところで人が足りていないのではないか」というように、今までとは違う視点で考えることが大切です。本気で働く覚悟があるなら飛び込み営業のような仕事もあるし、女性が少ない電気関係の分野に行く手だってあるんです。仕事はいくらでもあるんですよ。

—国の制度を利用すれば、資格取得の勉強に補助が出ることもありますよね。

藤森:そういうのも調べるとありますよね。お金に余裕があるなら、半年くらい必死で勉強してみてもいいんじゃないのかなと。職業を得て食べていくというのは誰にとってもそんなに甘いものじゃないので、ある程度の勉強時間は必要です。とにかく、もうダメだと思い込まないこと、まずはやってみることです。

【トピック5】 リベラルアーツが必要になる時代に、リベラルアーツを教えられる先生がいない

—第10章では、リベラルアーツの力がなければこれからの時代を生きるのがいっそうつらくなると述べています。

藤森:義務教育では読解力を身につけてほしいですね。小学校の教育は、読んだことと自分の意見を頭の中で峻別して、まとめる力、まとめたものに対して自分がどんな疑問を持っているかを表現できる力を養うだけで十分だと思うんです。しかし現状では日本はそんな教育をしていません。それは教師にとってすごく大変なことだからです。まず読ませてみて、どれだけ理解できているのかを見て、作文だったら添削もしないといけない。

日本のほとんどの子どもは教科書を読んでも意味がわからないし、先生が何を話しているのか理解できない。英語なんかよりも、国語教育に力を入れようってことです。チラシとか新聞とか、身近な文章を読むことが重要なんです。意味の分からない評論文や、昔ばなしを読ませる必要なんてありませんよ。

リベラルアーツは論理的にわかりやすく表現する力を身につける学問ですが、今の義務教育ではその力は養われません。リベラルアーツを学ぶためには、義務教育の先生のお給料をもっと上げなければならないし、リベラルアーツを教えられる先生を連れてこなければなりません。

藤森:私の知り合いの図書館職員の話ですが、「本を借りるのは法学部、理系学部、医学部の生徒がほとんどで、人文学系、教育学部の学生は本を借りない」と言っていました。そうした学生が先生になる国だから、リベラルアーツが養われるはずがないんですよ。

AI化、ロボット化が急速に進めば、雇用は消滅します。今まで自分たちが依拠してきたカネや職場が消える時代には、自分で自分の時間を充実させる必要があるんです。そんな未来には、リベラルアーツによって培った表現力と論理力が役に立ちます。言い換えると、ひとり遊びが上手で、そのひとり遊びを面白く表現できて、そのひとり遊びの意義を説明できるような人間は強いということです。

【トピック6】 97%の人が「無用者階級」になる時代を生き抜くために、不利益な相手との付き合いをやめる

—第12章で、ほとんどの人間が仕事を喪失する「無用者階級」の時代がくると述べていますが、そんな未来を迎える私たちが、これからをサバイブしていくためには、何をするといいのでしょうか?

藤森:まずは自分にとって不利益な相手と付き合わないこと。第12章「消える仕事ではなく、今ない仕事を考える」で、私は「サイコパス出生防止技師」という今は存在しない仕事を提案しています。具体的に言うと、「無意味に周囲の人を傷つけずにはいられないようなサイコパス」を生まないようにする仕事です。詳しくは拙著第12章をご覧ください。この提案について「こんなの人権侵害だ!」といったレビューをもらったのですが、私が言いたいのは「自分にとって不利益な相手と離れることは普通なんだ」と考えたほうが生きやすいということです。

—世の中には親からDVを受けるなど、家族関係に悩む人も多いですよね。

藤森:人間社会というのは共同体でもあるけど利益社会でもあります。他人に害悪ばかり及ぼす人間に対して、私たちが我慢する必要はないですよね。これは仮に家族であっても同じです。例えば親が亡くなった際、遺体の引き取りから火葬までやっている代理業者があります。

不利益な相手と付き合わない前提で、人間関係や仕事選び、キャリアなど、今当たり前とされていること全てを疑う姿勢を持つことが大切ですよね。それができる人は、私が提案した「サイコパス出生防止技師」や、遺体の引き取りを行う代理業者のような、新しいビジネスチャンスを掴んでいくのだと思います。

【トピック7】 時代の流れに逆らい、自分のプライドに固執する人は「愛情のない人」

—第13章では、デジタルスキルを学ぶことの重要性を書いていますが、藤森さんがそう考えるようになった背景を教えてください。

藤森:先日とあるニュースで、90代でエクセルを使いこなす、中小企業に勤務する女性を知りました。このニュースを見て思ったのは、何歳になっても好奇心を持つことが大切だということです。

例えば、私が三重県のお店にしか売っていないお菓子を食べようとすると、一昔前までは三重県まで行かないといけなかった。しかし今はお店のECサイトで購入すれば、そのお菓子を遠くに住む友達に送ることができます。また、食事の予約だって電話が通じなければネット予約ができます。

ECが当たり前になっている世の中で、ECをやっていない会社は、なぜやっていないのか理解できないですね。顧客の便宜を考えたらやるほうが良いでしょう。これまでの当たり前を変えるのが嫌なのか、対面販売へのこだわりが強いのか、老舗の場合はオーナーが年齢を言い訳にしているのか分かりませんが、顧客にとってどういうものが一番扱いやすいか、買いやすいか、それが答えだと思うんですよね。

時代の変化に対して、好奇心を持って対応していかなければ、淘汰されてしまうだけではないでしょうか。そもそも自分の考えだけに固執することは、本当は愛情のない人たちなんだろうと思います。

【トピック8】 女性は自分の真面目レベルを4割下げると、生きやすくなる

—最近の出来事として、先日、東京オリパラ組織委員会元会長の森喜朗氏が「女性のいる会議は長引く」と発言をしたことが大きなニュースになっていましたが、この件に関して、どうお考えでしょうか。

女性がいる会議が長引くことは多いかもしれませんね。私は大学の教授会では、女性の意見は長いといつも思っていました。もちろん全員ではありませんが。今回、森さんは不用心にポロッと言ってしまっただけですよね。「話が長い」と言われたら少し反省して、「もう少し端的な話し方をしようかな」と思うくらいでいいのでは、と思いました。

—過去には医学部の入試で女性が減点される問題も起こっています。これらのジェンダー問題に関してどうお考えでしょうか。

藤森:「医師は知力と体力が必要な仕事ですから、体力のある人を採用します。勉強の成績が良くても体力のない人は採りません」と、先にはっきり言っておけばいいのに、陰でこそこそやったところに問題があると思いました。お医者さんってものすごくハードな仕事ですよね。例えば外科手術で7時間立ちっぱなし、トイレにも行けず、おむつをつけて手術をしている人もいると聞きます。体力とタフさがないと務まりません。

男女の体力の差は明らかなのだから、何でも男女平等と言っていたら、世の中おかしくなってしまうよって言いたいですね。中には「正義は通用する」「理屈から言って正しいほうが勝つべき」と思って、正義感に駆られている女性もいます。もちろん気持ちは分かるけれど、現実にはどっちでもいいことも多いし、大事なことは大局を見てうまくいっているかどうかです。細かいことばかりを言っていてもしょうがないと思うことが多いですね。

だから、女性には自分の真面目さのレベルを4割ぐらい下げて、労働の場に挑んでみてはと伝えたいです。そうでないと疲れるだけです。でも、私自身、こう考えるようになったのは50代になってからです。30代の頃はまともに怒ることもありましたから。嫌な思いをしている、怒っている渦中の女性からしたら、「藤森、何言ってんだよ」って思うだろうけど、それすらも思い込みで、「あまり過敏に反応しないようにね、大したことではないんだよ」と言いたい。

それから、男女平等といっても、性差別の歴史のほうが長かったのだから、男性はそんなに簡単に教育されないです。男性が既得権を持っていた時代が長すぎるのだから。だけど、そんなセクハラ・パワハラをする男性はいずれ消えていきます。今の30代、40代で露骨に性差別をする人は減っていますしね。

利害関係のない人たちと集まって、助け合ってほしい

—コロナ危機は依然落ち着く見通しが立っていません。ご著書は全15章編成ですが、16章、17章と続きを書くならば、どういったことを追記しますか?

藤森:本著の続きを書くならば、「人との繋がりを持ってほしい」と言いたいですね。コロナ禍により分断されて、孤独な人たちが増えると、人とのつながりを感じられる場所を作らなければならない。例えば、有名な読書会の猫町倶楽部とか、哲学カフェとか、そういったものができて不特定多数の人がある趣味を通じて集まる。そこで地縁・血縁関係、また職業生活ではない何の利害関係のない人たちが集まって交流すると、そこから助け合うような関係が生まれてきます。SNSは現代風の結社。うまく活用していきたいですね。

人は一人で生きているけれど、一人で生きているわけでもないという矛盾した存在なので、つまらない話でも話せる相手がいれば救われます。そういった人間関係を築くことで生きやすさを感じる人が増えるといいなと思います。

明日地球が壊れるわけではないので、希望を持っていい

—最後に、コロナ危機でも不安を過度に感じずに生きるにはどうしたらいいでしょうか?

別に明日地球が壊れるわけではないので、希望を持って大丈夫です。Twitterを見ていると、自分の恐怖を世界に反映している人が多いですよね。自分が「不幸感」を持っているから、世界も未来も不幸だろうと思い込んでいる。コロナ禍といっても10年、20年、30年のスパンで考えたら、数年くらい不自由な思いをしたってどうってことないんじゃないのかなと私は思います。

でも、「今が全て」と考えてしまう人もいます。そうなるとつらいとは思いますが、歳を重ねると「死にたい」と強く思うことがあっても、3日間我慢すれば死にたい気持ちが消えることがあります。まず3日間じっとしていましょう。そのためには決めつけない、やはり思い込みを外すことですよね。それといろいろな情報を集めてください。そうすると怖いものが減っていき、世の中そんなに怖がるようなことはないとだんだん分かってくるので。私自身にも、まだまだたくさんの思い込みがあると思うので、その思い込みを外すことは常にしていかないといけないと思っています。

※「馬鹿ブス貧乏」とは、全人口の97%の人としています。悪口ではなく、以下の意味を込めています。
馬鹿:全人口の上位三%の知力の持ち主以外の人
ブス:美貌やプロポーションの良さだけで高収入を得ることができない人
貧乏:どんな政治的社会的変動があっても、生活が安泰な超富裕層以外の人

※この記事は2021年2月に遠隔取材を行ったものです。
※写真提供:藤森かよこさん

編集後記

一般論ではなく思わぬ視点からのアドバイスの数々に目からウロコが落ちるばかりの取材でした。藤森さんが何度もおっしゃった「思い込みを外す」こと。暗いニュースの多い現在ですが、当たり前を疑い、思い込みを外して、さまざまな生き方を模索しつつ、前向きに生きていこうと思えた時間でした。

この記事を書いた人

フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)、『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)、『生きづらさにまみれて』(晶文社)。趣味はサウナと読書、飲酒。

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