SDGs(えすでぃーじーず)って何の略?“持続可能な開発目標”って何?カードゲーム「2030SDGs」で学んでみた

課外活動

SDGsって知ってる?説明できる?

みなさん、SDGsって知ってますか?「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略で、外務省の資料によると以下のような説明が出ています。

2015年9月の国連サミットで全会一致で採択。「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため、2030年を年限とする17の国際目標。

ニューアキンドセンターを読んでいらっしゃる懸命な皆様におかれましては、上記既に暗唱できる状態に達しているとは思いますが、私は正直「地球にやさしい感じの何かだろう」程度の認識しかありませんでした。

そんな折り、「SDGsについてゲームで学ぼう」というイベントが社内で開催されることになりました。そこまで興味があるわけでは無かったので、男らしく静観決め込ませて頂こうと考えていたところ、会社の偉い人から「SDGsが理解できていない人間に、WEBメディアを持続させることが可能なの?」と言われたので、参加することにしました。

SDGsについて学べるカードゲーム「2030SDGs」をやってみよう

ゲームのタイトルは「2030SDGs」という。ゲームのファシリテーターとして、徳田 真人さんという方がわざわざ弊社のある小田原まで来てくれた。徳田さんは元々は株式会社マーケットエンタープライズでリユースの事業を手掛け、退職後の現在は靴職人を目指してローファーを作成中という経歴を持つ。

ファシリテーターの徳田さん

徳田さんも元々 SDGsについて 詳しかったわけでは無く、たまたまSDGsカードゲーム「2030SDGs」を体験する機会があり、「感覚的にSDGsが理解できる!」と、感動して、その流れでファシリテートの資格を取っちゃったという。その徳田さんの記念すべきファシリテート一発目に、めでたく弊社が選ばれたというわけだ。平たく言えば実験台、肩慣らしである。

ゲームの前に、徳田さんからSDGsの基本的な知識について講義があり、これまでの国際的な取り組みとSDGsの違いや、目指しているものなどが何となく理解できた。理解はできたんだけど、刺さらない。徳田さんの話術がどうこうでは無く、話が大上段過ぎて、壮大過ぎて、しっくりこないのだ。

そこで、ゲームの登場である。

「2030SDGs」 ってこんなゲーム

配られるカード

プレイヤーには予め4種類のカードが配られる。

ゴール

プレイヤーが目指す状態が書かれたカード。お金至上主義の「大いなる富」や、時間重視の「悠々自適」、環境のために己の全てをかける「環境保護の闘士」など、それぞれ全く違うタイプのゴールが記載されている。プレイヤーはこのゴールカードに記載された状態の達成を目指す。

ゴールカードは前半に具体的な目標(〇〇カード15枚等)、後半に抽象的な目標(××な世の中になっていること等)が書かれている。

プロジェクトカード

実行できるプロジェクトが記載されたカード。青(経済)、緑(環境)、黄色(社会)の3色ある。

タイムカード

そのまま「時間」。プロジェクトを実行する際に必要。

マネーカード

そのまま「お金」。プロジェクトを実行する際に必要。

プロジェクトの実行と事務局の役割

プレイヤー以外に「事務局」という人が存在する。プロジェクトを実行する際は、この「事務局」の人にプロジェクトカードと、必要なタイムカード、マネーカードを手渡す。そうすると、プロジェクトカードに記載されたもの(タイムカード、マネーカード)と、渡したプロジェクトカードと合わせて、そのプロジェクトが達成済で、その後使用不可であることを示す「ACHIEVED」と書かれた赤いカードを渡してくれる。間違えるとゲームの結果が変わってしまう重要な役割なので、今回は徳田さんが務める。

配られたカード

プロジェクト実行で、世界の状況が変わる。

プロジェクトが実行されると、手持ちのお金や時間が変わるだけではなく、世界の状況が変わる。これがこのゲームのミソだ。

世界の状況はホワイトボードにくっついたマグネットの数で表現される。多ければその領域が良い状態、少なければ好ましくない状態だ。マグネットの色の意味はプロジェクトカードと対応しており、青は経済、緑は環境、黄色は社会だ。

例えばホワイトボードに緑のマグネットが多ければ環境が守られ、自然が守られている状態。少なければ地球環境が破壊され、汚染が進んでいるということになる。

世界の状況はプロジェクトカードの実行によって変化する。例えば、「交通インフラの整備」という青(経済)のプロジェクトカードがある。交通インフラが整備されると経済が発展するというイメージだ。これを実行すると、青いマグネットをホワイトボードに1つ追加することができる。一方で、緑のマグネットは1つ減らさなくてはいけない。交通インフラを整備するために森を開拓したのかもしれない。

プロジェクトカードの説明

全てのカードは取引自由

なお、このゲームの大きな特徴の一つに「他のプレイヤーと自由に取引が可能」という点がある。ACHEVEDとなったプロジェクトカード以外全てのカードが、トレード可能だ。周りから見て不釣り合いな取引でも、両者が合意すればOK。

ただし、プレイヤー同士のリアルな力関係で迫るのだけがNGだ。このゲーム会には社内の偉い人もゲームに参加していたので、私のようなドブ川の底を這う生物にとっては非常にありがたい。

ゲーム開始。SDGsの実現は遠い夢。そして修羅の国へ…

説明を一通り聞いてみたが、分からなかったことがある。それは「結局どうしたら勝ちなの?」ということだ。徳田さんに聞いてみると「個人としてはゴールカードにあるゴールの達成が目的です。ただし、勝ち負けを競うものではないんです。まあやってみましょう。」とのこと。

ゲームをやるからには勝ちたいが、仕方ない。とりあえずやってみよう。ゲームは前半9分、中間の状況確認が入ったあと、後半12分。

ゲームスタート

私のゴールカードは「悠々自適」。書かれているのは「15枚以上の時間をゲーム終了時に保持している。得た時間を十分に堪能できる豊かな世界に住んでいる。」だ。後半はずいぶん抽象的なので、一先ず忘れる。まずはプレイヤー間の取引で有利になるようにお金を集め、後半で金に物を言わせて時間を買い集めるという作戦にした。

お金を手っ取り早く集めるには青(経済)のプロジェクトカードを実行するのが手っ取り早い。他の事に目もくれず、実行できる限りの青カードを実行しまくる。その甲斐あってお金が随分集まった。しめしめ。

他の人とも取引をすることもないまま、前半が終了。他の人も、他のプレイヤーの状況をチラリと見に行く程度で、取引をしている様子はなかった。そして世の中はこうなった。

▲ヒャッハー!地球温暖化?男女平等?くそくらえ!

酷い。

皆私と同じような考えだったのか、経済がやたらに発展している。ただ、社会と環境が絶望的だ。北斗の拳みたいな世の中に違いない。助けてケンシロウ。

▲私の目の前でプレーしていたT君。見事青カードばかり実行している。金の亡者。

前半の反省は〇〇が少なかったこと

一体なぜこうなってしまったのか。前半終了間際に聞こえたのは「社会がヤバい!」「環境がヤバい!」という声だ。そんな声もむなしく、前半はそのままタイムアップしてしまった。

前半の最大の反省は、プレイヤー同士の会話が少なかったこと。私含め、基本自席と事務局を往復するだけ。取引はほぼ皆無。また、「世の中、このままじゃまずいよね」というのは後半戦に向けた共通認識となった。

地球を守れ!怒涛の後半!果たしてSDGsの行く末は…

前半の反省を踏まえ、後半は空気が変わった。前半稼いだお金を使って、環境や社会のためのプロジェクトを回す人が増えたのだ。環境と社会を表す緑と黄色のマグネットがみるみる増えていく。

プレイヤー間の取引は後半劇的に増えた。お互いのゴールを見せあいながら、「そのプロジェクトカード売ってよ」などというやり取りがそこここで発生している。私も「悠々自適」のために「タイムカード」を買い取った。

後半終了!

そして後半終了、結果発表。こんな感じでした。

▲劇的に世の中のバランスが良くなった

見事、青緑黄のカードが、それぞれバランスよく並んでいる。前半からしたら、奇跡だ。釘バットを持ったチンピラ、きちんと逮捕される世の中に違いない。

私はゴールカード「悠々自適」で目標になっていた「タイムカード15枚」に1枚だけ足りなかったが、世の中のバランスが良いので、そこそこ狙い通りの生活ができるのではないか。

最終的なゴール達成は7名中6名。(前半終了時点は7名中2名)。優秀な結果だけど、まさかの私だけ達成逃していたとは…

カードゲーム「2030SDGs」をやってみた感想

前半、多くのプレイヤーが「まずはお金だ」という行動に流れた結果、経済のみ発展した、異常に偏った世の中になってしまった。そして、多少そんな世の中に違和感があっても、手持ちのカードでは明らかにどうにもならないし、誰かに相談するのはなんか億劫で、個人プレーを続け、取引が生まれなかった。

自分にとって要らないカードでも、違うゴールを目指す人にとっては重要だったりする。後半は積極的に話し合って、取引したことで、経済の発展と世の中の状況のバランスを取り戻すことができた

世の中の状況については「こうあるべき」という正解が提示されているわけではないが、前半の惨状から、「バランス良い方が良いよね」という共通認識が醸成された。それに基づいて、多少身を削りながらも世の中のバランスを取る動きがあったので、最終的にはこの結果になった。環境保護を謳うNGOがこのゲームをやると、緑がめちゃくちゃ突出するらしい。

「2030SDGs」 を通して気付いたこと

終わった後の感想会では「やっぱり社会とか環境について投資できるのは、自分にある程度余裕ができてからだった」という意見があった。物凄く無理をしても、継続できない。SDGsのキモもそのあたりにあるのではないか。

「余裕ができた人」は、国際社会では「先進国」と言い換えられる。先進国による環境保護活動、発展途上国への投資は、一見豊かな人が貧しい人を一方的に援助しているように見えるが、別の視点で考えれば、豊かに見える人もまた別のリスクを負っているに過ぎないということだろう。

バランスを欠いた世の中のままでは、先進国にもダメージがある。ゲームでいえば、ゴールカード後半に書かれた、抽象的な目標が達成できない。例えば「悠々自適」なら、タイムカードが15枚そろっても、世の中が「得た時間を十分に堪能できる豊かな世界」でなければ意味がないのだ。

また、実際の世の中を見てみれば、意外とゲームっぽいことが行われていることにも気付く。「排出権取引」などはその最たる例だろう。実際の国際社会も、意外とゲーム感覚で回っているのかもしれない。

なんてことを色々考えさせられて、SDGsについてもゲーム前より少しだけ理解できたような気になった、とても良いゲーム会でした。徳田さん、ありがとう。今度はドンジャラでもやりましょう。

会社の入り口にあるiFaceの顔出しパネルにて