【つぶやきシロー×たけもこ対談】Twitterフォロワー95万人。つぶやきシローが支持される理由をマーケターが勝手に分析

ニューアキンド

はじめまして、たけもこ(@moeko_takemo )と申します。私はIT企業でWeb広告のマーケターとして働きながら、ライター、タレントとしても活動しています。

さて、皆さんはTwitterを利用しているでしょうか。日々の出来事を「つぶやく」、最近では情報発信の手段として活用されることが多いTwitterですが、1日1投稿を10年間ほぼ毎日継続しているお笑い芸人がいます。フォロワーが思わず「あるある」とうなずくネタを、独特の栃木訛りで語る、つぶやきシローさんです。Twitterのフォロワー数は約95万人。

投稿への「いいね」の数は毎回4桁、多いときには4000を超えるほどの人気っぷりです。

「コメントやリツイートの内容などは、一切振り返らない」と話すつぶやきシローさん。過去のツイート(あるある)をともに振り返りながら、人気の秘訣を伺いました。しかし、「いいね」「リツイート」など、Twitterの機能について何も分かっていないつぶやきさんとのトークは、決して簡単ではありませんでした…。つぶやきさんの「ひねくれ力」に打ちのめされながら、インタビューはスタートしました。

名前:つぶやきシロー
年齢:49
肩書:お笑い芸人
趣味:食うこと、すそあげ
特技:つぶやくこと、立ちこぎ

名前:竹本萌瑛子(たけもこ)
年齢:24
肩書:マーケター、ライター、モデル
趣味:読書、ゲーム、焼肉
特技:野球

フォロワーが潜在的に感じている日常のあるあるを“切り取る”力

今日はどうぞよろしくお願いします!

あなたどこの出身?

熊本です。

火の国か…。気性が荒い。怖いんだよ、熊本っ子は、からし蓮根にすっごい辛いからしをたくさん入れて…。

偏見が強過ぎます(笑)! 今日は、Twitterのフォロワーが約95万人いらっしゃるつぶやきシローさんと、Twitterについて語り合うためにここに来ました!

Twitterは何も考えずにやっているだけなんだけどね。

そうなんですか? つぶやきさんのツイートを見ていると、「すごいなあ」と思う点がたくさんあります。

すごいところなんてないよ…。じゃあ、すごいと思うところ教えてよ。

興味持ってくれましたね! 今日は伺いたいこともたくさんあります。あ、本題に入る前にお伝えしたいことがあって。実は昨日、つぶやきさんの思考を探るために、私もあるあるネタツイートをしてみたんですよ。

おお。なんてつぶやいたの?

これなんですが…。

普段だと約100「いいね」は反応があるんですけど、58「いいね」しか反応がありませんでした。

俺のまねして反応悪かったってこと? なんか俺が悪いみたいじゃん。

そんなことが言いたかったんじゃないです(笑)!

この表現だと、テレビに夢中で化粧がおざなりになったのか、出演者を真似て濃くなっちゃったのか、分かりづらかったのかもしれないね。

おお、本気のフィードバックをありがとうございます!

早速ダメ出ししてやりましたよ。

たけもこ的つぶやき分析①絶妙な日常の切り取り力

 (伸びこそしなかったものの)私もあるあるネタツイートを実践して感じたことは、つぶやきさんの“日常の切り取り力”です。例えば、おしゃれなインスタグラマーのフィードを見ていると、「部屋の関節照明の光でできた観葉植物の影」といった写真が結構あるんですよね。

 思わず「そこを撮るんだあ」と感動してしまいます。つぶやきさんのツイートは、フォロワーが潜在的に感じていた「あるある」を、日常から絶妙に切り取っているところが、人気の理由の一つだと分かりました。

1日1投稿でフォロワー95万人。「砂場」をつくって構築した信頼関係

ツイートの内容もさることながら、毎日投稿されている継続力もすごいと思っています。あるあるネタを毎日、どのように考えているんですか?

あるあるなんて、誰でも思いつくよ。ひとつの出来事も見る角度を変えたら、悲しくなったり楽しくなったりするでしょ。「面白いこと言おう!」って思うと疲れるし、そう思った時期もあったけど、やめた。自分でハードルを上げるから続かないのであって、ハードルを上げなければ続けられるもんだよ。

なるほど。気楽に投稿しているツイートだから、見てる側も気楽に「いいね」や「リツイート」ができるのかもしれませんね。私も犬猫の癒し動画とか、気付くと無意識に「いいね」を押しています。つぶやきさんの飾らない雰囲気がフォロワーにも伝わっているから、継続的に多くのリアクションがつくのかもしれないですね。

結局Twitterって「いいね」が多いと良しとされるの? 俺、いまだに「いいね」と「リライト」の違いも分かってないよ。

ええ!? しかもリライトって…それは「リツイート」ですね(笑)。

「いいね」はすごいの? 「リツイート」って何? どっちが多かったら偉いの?

(まるで子どものような、無知ゆえの難しい質問…!)うーん。明確に数字の基準があるわけでもないので答えるのは難しいですが…。フォロワーが継続的にリアクションをしているところが、つぶやきさんのツイートの魅力を表している思っていて。どんなツイートにも一定数のリアクションがある、というのは誰にでもできることではないと思いますよ。

ふーん。そういうものなんだね(あっさり)。

フォロワーが多いことについて、ご自身ではどう分析されてますか?

そんなに不思議なんだね、どうしてこんなやつにフォロワーがたくさんいるのか、不思議だってことだよね。お前ごときがってことだよね。

ち、ちがいますよー! ひねくれ力が高すぎる。

一応これ俺なりのツッコミなんだよね…。

いや、全然いいんです。もっとください。

俺は、10年前くらいにTwitter始めたんだよね。きっかけは仕事で、「つぶやきシロー=ツイート」という単純な理由で仕事の依頼があったんだよ。全然知らないんだけど、若い子って1日に何回もツイートするんでしょ? 俺は1日1回しかしない。もしかしたら、フォロワーの邪魔にならない程度だから、見てくれているんじゃないかな。俺は誰もフォローしていないから、人のツイートを見ることはないけど。料理の品数が多すぎると、お腹いっぱいになりすぎちゃうのと一緒かもね。

確かに、つぶやきさんのツイートって毎日“量”が安定していて、さらに、主張が強すぎないので、穏やかに見ていられるのかもしれませんね。

ああ、Twitter上で喧嘩してる人もいるらしいね。そんなの信じられないよね。

私の経験上、強い意見を発信したり、ネガティブなことをツイートしたりすると、ネガティブな反応が返ってくることが多いんですよね。つぶやきさんのツイートのリプ欄は荒れているのも見たことないです。

俺、コメント(※たけもこ注 リプライのこと)も全く見ていないから分からないけど、みんな、俺のツイートはネタで書いているって分かってくれているから、ネガティブな反応がないのかもね。知らないけど。

それは、つぶやきさんとフォロワーとの信頼関係が構築されているってことですよ。

信頼関係はないよ…。なんかこの段落を無理やりきれいにまとめようとしてない?

いやいや! ネタへのマジレスがTwitterの世界ではもはや風物詩になっていて、フォロワーにネタだと分かってもらえていることに絆を感じたんです…。まして95万のフォロワーがいるのにもかかわらず。まあなんか、つぶやきさんのツイートって、ちょうど良いんですかね(笑)。

おい、急に雑になったな! やっぱり無理やりまとめてるじゃん。

たけもこ的つぶやき分析②公園の砂場理論

 つい先日、つぶやきさん、書きかけの文章を誤ってツイートしちゃったことがあるようで、そのツイートの続きをフォロワーが大喜利のようにそれぞれ書いて楽しんでいるのが興味深かったです。

 それを見て私は「つぶやきさんのツイートって、『公園の砂場』のようだな」と思いました。「いいね」も「リツイート」も全く見ないつぶやきさんは、砂場のようにただそこにいるだけで関与はしない。でも子どもたちが泥だんごをつくったり、穴を掘ったり、遊びに来て帰っていく。 そんなイメージです。

まさに砂場のようだと感じました。
ちなみにこの砂場の例え、つぶやきさんは全くピンときてなかった…。

SNSに繋がりは求めない、SNS時代の他人には期待しない生き方とは

もし、つぶやきさんがTwitterをしていなかったら、できていなかったと思うことはありますか?

何だろうね。まずこの取材はなかったよね。

お仕事が生まれるというのは1つありますよね。じゃあ少し聞き方を変えて、やっていて良かったと思うことはありますか?

Twitterはネタ帳になっているかもね。例えば番組の冒頭コメントで、自己紹介代わりにあるあるネタを言うことがあるんだけど、Twitterから引っ張ってくることもあるかなあ。

なるほど! ざっと10年分、約4,000ツイートありますもんね。

ツイートの量、自己紹介の量(仕事の量)に全然追いついてないんだけど。実はツイートの内容って、過去のボツネタが多いんだよね。せっかく生まれてきたのに世の中に出られなかったかわいそうな子たち。

切ない…ネタの供養なんですね。

そうだね…。やってて良かったところはそんなところかなあ。1日の終わりにツイートして、「はあ、一仕事終わった!」って感覚だし。いつやめても良いと思っているから。やめるきっかけをください(笑)。

そうなんですか! 話を伺っていると、一貫してTwitterへの熱量は低いようですが、10年間も、どうして続けられているんですか?

もしかしたら、俺のツイートを毎日楽しみにしてくれている人が日本に10人くらいはいるかもしれないと思っていて。そう考えるとやめづらいんだよね。

もっといると思いますけど…。でもその感覚は私も共感します。意地悪なコメントをしてくる人がいると、「Twitterって面倒くさい」と思うことがあるんですけど、一方で、面白いコメントをくれる人や、リアクションをしてくれる人がいるから、目を向けるべきはそっちだなと思うこともあって、私は続けられています。

でも、今俺良いこと言おうとしたね、見栄を張った。そこまで思ってないもんね(笑)。いつやめても良いと思ってるし、続けるにしても、嫌なコメントは見なければ良いと思うよ。

私も今のところ嫌なコメントは見ない、というのが最善策だと思ってます。正直、意地悪な人は素早くミュートするようにしていて。でも、意地悪なコメントのせいで落ち込んでしまう人もたくさんいると思うんですけど、そういう人たちに何かアドバイスをお願いできますか?

やめればいいじゃん。何事もやるからには良いことも悪いこともあるよ。反対に、自分だって悪気はなくても、いつの間にか誰かに嫌な思いをさせているかもしれないでしょ? 悪いことは1つも起きないって、そんなうまい話はないよね。

なるほど。悪気はなくても自分だっていつの間にか嫌な思いをさせているかもしれないというのは、全員が持っておくべき考えですね。

俺はSNSに繋がりを求めてないから、楽なのかもしれない。みんな寂しいからSNSをやっている部分はあるでしょ? スマホを持っていたら、どこにいようとも誰かに捕まっちゃう状態、俺は嫌だもん。LINEだって「既読なんとか」とかって言われるんでしょ。めんどくさい。

(既読スルーのことかな)確かに、SNSは嫌でも誰かと繋がりますからね。そこが良いところでもあるんですけど。

気持ちはわからなくもないけどね。でも、繋がるせいで嫌なことが発生するというのは、SNS以外でも同じだから。SNSが特別ってわけでもない気がするなあ。

スマホが生まれて、新しいSNSが生まれて、リモート飲み会が生まれて、新しいものが生まれるたびに新しい課題は発生しますからね。では最後に、環境が変わっても、嫌なことを乗り越えるためには何が必要だと思いますか?

「自分が変わる、自分を変えることだよ」みたいなことを言うとかっこいいと思うんだけど、自分は変わらないし、同じく他人も変わらない。結局他人には期待しないことが大事なんじゃないかな。

他人に期待しない、このSNS時代にすごく刺さるメッセージですね。ありがとうございました!

取材を終えて

 2020年夏には誹謗中傷などの対応策として、リプライできる人間を制限できる機能が追加 されました。Twitterも閉鎖性が高まる傾向にあるのかもしれません。そのような状況下で、SNSをコミュニケーションツールにするのではなく、自分のネタを発信し続けて支持を得ているつぶやきさんのスタイルは、見る人にとって心理的に安心できる、これから必要になってくる在り方だと感じています。

株式会社アマヤドリにて、広告制作・SNSマーケティング・メディア運用・ライティングなどを担当。複業ではライターやモデルとして活動し、小さなころに考えていた「毎日ちがう仕事がしたい」を叶えるために奮闘中。

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