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ホーム > アキンド探訪  > 純粋な「ダイバーシティ」なんて、ただの無秩序だ。単一文化で会社は染めろ

就活業界にいると「ダイバーシティ」という単語を腐るほど聞くことになる。
 
ところが実際にトップ企業へヒアリングをすると、驚くほど多様性とはかけ離れた現場に遭遇するだろう。
 
就職活動を始めたばかりの学生はよく「女性が男性と同じように働く」のは当たり前だと考える。学生にとってわざわざ取り組むべきダイバーシティとはLGBTQ(性的マイノリティ)や外国人、障がい者採用を指すものだ。
 
そして説明会やOBG訪問で「ダイバーシティについてどうお考えですか?」と気軽に質問し、まさかの「総合職女性の採用を頑張っています」発言に衝撃を受ける。この国は女すらまともに採用していなかったのだと、初めて知ることになるからだ。

世界3位のGDPを支えるモノカルチャー

管理職女性比率は、驚くほど低い。三菱商事は「東大卒、男性、体育会系、留学経験者」という超マイノリティで固められた企業だ。近年はダイバーシティの一環として各業界で女性の採用を推進しているが、いまだに女性管理職比率は6.4%(参照:女性が管理職として活躍できる会社を探そう)。ライバルの住友商事にいたっては2.2%に留まる。
 
たかが女性すら活用できていない社会で、まして他のマイノリティやいかん。同じく総合商社に就職したゲイの男性は、女性と結婚した。「いい年して結婚していないと、出世に関わるから」だそうだ。婚姻制度を使えないジェンダーなど、はなから想定されていない。
 
だが……ここで逆転の発想をしたい。ダイバーシティとはそれほど「よい」ものなのだろうか? 
 
西欧倫理的には「よい」だろう。反差別。自由。平等。いい言葉だ。だが、コテコテの反ダイバーシティ企業が立ち並ぶにもかかわらず、世界3位のGDPを生む国がここにある。
 
かつて、「ジェンダーギャップ指数」と「GDP」が相関するか試算したことがある。もしダイバーシティに経済的なメリットがあるなら「ジェンダーが平等な国であればあるほど、GDPが高くなる」はずだと仮定して。
 
しかし、結果は違った。まったくの無相関。グラフには点が散らばった。ジェンダーギャップと、GDPには何の関係もなかったのだ。

ダイバーシティがありそうに見せている米系企業

そして一見、ダイバーシティがありそうな海外企業においてもそれは虚像だとわかる。たとえばプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は女性管理職比率が2014年時点で34.0%(参照:P&Gが役員の女性比率No.1に週刊朝日-女性が活躍できる会社)と、先述の総合商社を圧倒する。障がい者雇用にも熱心であり、日本支社にも外国人比率が高い。
 
しかしその一方で、採用時には心理テストによる厳正なふるいわけを行う。ウェブサイトへ社員のあるべき姿として「誠実さ」「リーダーシップ」「責任感」「勝利への情熱」「信頼」を明記する(参照:目的、価値観と原則)。
 
ただ標榜するだけではない。採用プロセスでは明確にこれらの素養を持っているか、具体的な過去の経験から深堀りされる。特殊な5つの性質を兼ね備えた人間しか生き残れない会社であるならば、たとえ人種やジェンダーが何であれ、それは立派な「モノカルチャー」だろう。
 
これはP&Gだけの特徴ではない。むしろ、時代を超えて存続する企業の共通項として「宗教じみた文化の統一」は挙げられている。
 
IBMは社歌を歌わせた。マッキンゼー・アンド・カンパニーはメールの作り方にまで「お作法」を用意した。日本の総合商社は外面の属性で、同じようなメンタリティを持つ人間を集めている。海外企業は宗教的な型でふるいわける。ただそれだけの差だ。

ダイバーシティによる失敗と、そこからの学び

そして私は、ダイバーシティを誤解して一度失敗した。まったく共通点のない、異なる人材を集めて会社を作ったのだ。「違う強みを各メンバーが発揮すれば、チームが強くなる」と信じて。戦略立案が得意な私、ビジョンを掲げるのが得意なBさん、細かいところに気が回るCさん。
 
結果は惨憺たるものだった。「〇日までに売上を出すなら今から準備しないと」と言い出す私。そんなこと気にすんな、いつか俺たちは成功すると夢を語るB。メールの誤字脱字ばかり気にして前に進めないC。全員が自分の正しさを主張し、起業チームはバラバラに砕け散った。ほとんどの起業はそもそも日の目を見ない。なぜならモノが世に出る前の段階で、チームが崩壊しているからである。
 
そこから初めて愚かな私は本を読み、学んだ。この世に純粋なダイバーシティなどない。
 
ただし、参与しているメンバーに「ダイバーシティがある」と思わせることが大事なのだと。
 
誰だって閉塞感よりは多様性に惹かれる。だから今回の起業で、異なる強みを持つ人は集めた。ただし今回はエニアグラムと呼ばれる心理テストを導入し、性根は全く同じ人だけで固めることにした。そして今のところ、仕事はうまく回っている。
 
純粋なダイバーシティなんて、ただの無秩序だ。
 
経営者に求められているのは「あたかも自由があるかのように信じさせ、従業員のストレスを減らす」ことだけである。そのためにダイバーシティという単語がふさわしいなら、喜んで使おう。たとえその舞台裏には、緻密に計算されたモノカルチャーが控えているのだとしても。
 

参照

ワンキャリア編集部『一流内定』プレジデント社、2017年
ジム・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』日経BP社、1995年

 
 

この記事を書いた人

慶應義塾大学在学中に起業を2回経験。卒業後は外資系企業に勤め現在は独立。フリーのマーケターとして活動するほか、ブログ『トイアンナのぐだぐだ』(http://toianna.hatenablog.com/)をきっかけにライターとしても活動中。

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