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  前回の記事では「言葉を再定義すれば強いコンセプトを作ることができる」というお話をしました。今日はその先の話をしようと思います。その先、つまり「作った商品やサービス」をいかに生活者に情報として流通させるか、というお話です。 コミュニケーションで重要なこと。作ってどうやって広めるか。 こんな記事を書いている私ですが、広告代理店入社当時は、いい表現を作ることしか考えておらず、その表現が話題になって広告主の商品やサービスが知られたり、売れたりする所まで考えきれていませんでした。それは、TVCMや新聞広告といったメディア出稿が主流で、表現と売りの相関性が検証しづらかったというのもありますが、結果に対しての責任感が希薄だったというのが正直な所です。。   責任追及がないことをいいことに「いい表現を作れば自然と見てもらえるし、話題にしてもらえる」そう軽く考えて、自分が満足いく「表現だけ」を求めていました。   しかし、昨今のようにデジタル技術が進化し広告主側で、「表現がどれだけ流通したか」「表現がどれだけ売りにつながったのか」の効果測定がしやすくなってくると、「結果の出せる表現」が求められるようになります。「作るまで」が広告クリエイターの仕事だったものが「作ってどうやって拡めるか」までが仕事となったのです。   YouTubeをはじめとした動画メディアやFacebookをはじめとしたソーシャルメディアなどの登場で表現を見せる場所代(媒体費)が下がり、資金的な体力のない個人、企業でも簡単に発表できるようになったことも「拡める技術」が必要になった理由です。流通する情報量が10年前に比べ500倍にもなっていると言われ、昔は見てもらえていた表現が、母数の上昇により見てもらえなくなってきたからです。   このような現状で、ビジネスやコミュニケーションを行なっていく上で、重要になってくるのが「PR思考」です。   クリエイターのみならず、広告主を含めたビジネスマン全てに必要な思考です。「PR思考」とは簡単に言うと、消費者に好意的に情報を受け取ってもらい拡めてもらうため、表現内容、発信場所、発信のタイミングを考えるというものです。   「新商品を作れば自然と話題になる」「新しいサービスを作れば自然とみんなが使ってくれる」そう思っていてはもはやダメで、企業にとって拡めたいものを、メディアにとって取り上げたくなるもの、消費者がソーシャルメディアで発信したくなるものに加工しなくてはいけなくなりました。   PR思考の5要素 いきなり「PR思考を身につけろ」と言われても困ってしまいますので、今日は「PR思考」にかかせないと私が考えている5要素を紹介します。PR思考のとっかかりとして使ってみて下さい。   1、時流 2、ギャップ 3、あるある 4、使える 5、新しい   順番に説明していきます。   1、 時流 これは「PR思考」をする上で最も重要な要素。「なぜ今なのか?」を考えるということです。2017年という年、5月という季節、世の中の流行りや空気を踏まえてビジネスやコミュニケーション、表現を思考することで流通力のあるコンテンツを生むことができます。   2、 ギャップ これは1を踏まえるとよりパワーが増しますが、拡散される情報の鉄板パターンと言えます。「信じられないくらいマズそうなフレーバーなのに、信じられないくらいうまい」「こんなに可愛いのに瓦10枚頭で割っちゃうんだ」など「ぽくないを作る」を頭に入れて思考して下さい。   3、 あるある 「そうそう、それ初めて言われたけどめちゃくちゃ共感出来る」という要素を盛り込むのがこれです。注意したいのは「誰かが言ったあるある」ではダメで「初めて言われたけど確かにそうだ!」というものを見つけなくてはいけません。これがなかなか難しくもあるのですが、前回書いた「再定義」の手法で突破口を見出せる場合もあります。   4、 使える 商品やサービス、情報も今や使えなければ、見過ごされてしまう危険性があります。「この記事読んだから家事の時間が半分になった」「このサービス使ったから自分の苦手なことが克服できた」など使えるビジネス、使える企画は流通力のあるコンテンツとなります。   5、 新しい これは当たり前といえば当たり前ですが、圧倒的に新しいものはそれだけでかなりのアドバンテージがあります。過去にある商品やサービス、表現と比較して圧倒的に「ないもの」が見つかったら変に加工をせずファクトを前面に押し出せばOKです。     以上のように、これからは「情報をどのように消費者に拡めていくか」を踏まえて、ビジネスやコミュニケーション、表現を考えなくてはいけません。「面白いから広まるだろう」「面白いから売れるだろう」ではダメ、というのを肝に銘じてPR思考を磨いていきましょう。     ...

  私は社会人になって14年間、「言葉」を生む仕事をしてきました。しかし、言葉と言うものは、ただ「表現する」ためだけに存在するのではなく、商品やサービス、プロジェクトの「コンセプト」や「進むべき方向性」を指し示すものとして機能します。   そう考えれば、どんな業種、どんな職種で働かれている方も「強い言葉を生む技術」は、仕事をする上でとても重要で、持っていると強い武器になるものと言えます。   そこで今日は、そんな「強いコンセプト」や「強いディレクション」につながる「強い言葉の作り方」について、具体的な例を交えて、お伝えしたいと思います。 「強い言葉」を生むために言葉を再定義する 「強い言葉を生む」ためには、いくつか方法論があるのですが、今日は最も使い勝手が良く、本質的なものについてお伝えしたいと思います。それは       言葉を再定義する       というものです。簡単に言ってしまえば「ある言葉」や「ある考え方」を、「別の言葉で言い換える」というものなのですが、これがとても有効なのです。わかりやすい例を出します。       四十歳は二度目のハタチ。(伊勢丹)       これは、2009年にお亡くなりになられたコピーライター、眞木準の伊勢丹のキャッチコピーです。おそらく「伊勢丹に四十歳のターゲットを集客したい」というクライアントの要望を受け、開発されたキャッチコピーだと思います。   クライアントからこのお題が出た時、きっと駆け出しのコピーライター(若い頃の自分も含め)は   ・洋服にこだわる四十代は、かっこいい。 ・今日初めて、娘のインスタグラムにのった   などと書いてしまいます。   ・クライアントの戦略ワードをキャッチーに言語化する ・ターゲットのインサイトをつく ・ターゲットの背中を押す要素を入れる   という「キャッチコピーのあり方」に照らし合わせれば、悪いキャッチコピーではないと思います。しかし、このコピーは、ポスターや新聞広告など「限定された場所」でしか使えない「表現のコピー」に留まってしまっています。   言い換えると「コンセプト」や「ディレクション」にはならない“枝葉”のコピーであって、様々な施策に「広げる」ことができる“幹”となる言葉にはなりません。その視点で「四十歳は二度目のハタチ」を見てみるとどうでしょう?   この言葉は「四十歳」を「二度目のハタチ」と再定義するコピーであることがわかります。つまり “幹”(コンセプトやディレクション)となって、広がりが容易に想像出来ます。少し考えただけでも、   ・二度目の成人式 ・四十歳から飲める「大人の中の大人」限定の飲料キャンペーン ・二度目のハタチ採用活動   など、単なる「百貨店のキャンペーン」を超え、世の中の「四十歳」を再定義し、社会の価値観をも変えてしまう力を秘めていることがわかります。   このような言葉こそが「強い言葉」と言えるのです。   言葉を再定義し「強い言葉を生む」ための、オススメのやり方もご紹介しておきます。「再定義すべき言葉(課題となっているキーワード)」を、ノートの真ん中に書き、周りに言い換えを書いていきます。       他の言葉で、例を出してみます。   【飛行機の言い換え】 ・空飛ぶ映画館 ・電車より安全な交通手段 ・最速の移動手段   【水の言い換え】 ・お湯が冷えたもの ・薬(サプリサプリメント)を飲むもの ・植物の食事       飛行機を「空飛ぶ映画館」だと捉えれば、映画館で行っているサービス、例えば、3Dメガネを配って3D映画を上映したり、数種類のポップコーンが食べられたり、さらに進めると映画に合わせた飲食を提供したり(フランス映画とその地方のワイン、チーズなど)と、コンセプトからどんどん機内でのサービスへアイデアを広げていくことができます。   水を「薬を飲むもの」だと捉えれば「薬を飲むためだけのお水」というコンセプトが生まれます。酸性の薬(サプリメント)にも、アルカリ性の薬(サプリメント)にも合う中性、しかも成分の吸収を助けたり、新陳代謝を促したりすることができれば画期的な水が生まれます。これからの高齢化社会にあった商品として話題にもなりそうです。同じように水を「植物の食事」と捉えれば「植物専用のミネラルウォーター」というコンセプトで、植物の成長に適した成分を含んだ水、しかも人間も飲めるものを生むことができます。ペット専用のミネラルウォーターを作っても面白いかもしれません。   実際は、商品化やサービスの実現化に向けては、様々な検証、そして収支が合うかなど検討すべき点が多々ありますが、コンセプトづくり、アイデア出しというフェーズで見れば、かなり有効に使える方法論だと言えます。   以上のように、どんな業種、職種で働かれている方でも必要となる「強い言葉を生む技術」は、「再定義するコツを掴むだけ」で容易に手に入れられることがわかります。   何の拠り所もなく、コンセプトを生もうとしても、なかなか難しいものですが「再定義する」というシンプルな目標を掲げて、連想ゲームのように言葉を書き出していけば、驚くほど簡単に「強い言葉」「強いコンセプト」にたどり着くことができるのです。   課題を抱えて、頭を悩ませている方がいらっしゃったら、一度「再定義する」を試してみてはいかがでしょうか?     ...

  2017年4月3日月曜日、通勤で使っている六本木駅には、こわばった表情の新入社員らしき「社会人」が髪を整え、着心地悪そうにスーツを着て、足早にどこかに向かっていた。   そんな新社会人達を見ていると、ジーパンにセーターで出社する自分にまで緊張感が伝わってきて、ふとあの頃を思い出した。   14年前。   2003年4月1日、出来たばかりの電通ホールで私は、六本木駅で見かけた新社会人のような出で立ちで、大きな不安を抱えていた。   どうしても入りたかった電通の入社式当日。嬉しいはずのその日に、私の頭の中には全く違う想いがあった。   「この会社で正しかったんだろうか」 「この会社で一生やっていけるだろうか」 「落ちこぼれたりしないだろうか」   「フレッシュマンブルー」とでも言うのだろうか。全く知らない世界に飛び込む不安と恐怖に押しつぶされそうで、周りにいる180人の同志(同期)の顔さえ、グレーのフィルタがかかって見えていた。   そして、あの日の自分は、強く、疑いなく、こう思っていた。   「早く、新人という肩書きから抜け出したい」   六本木駅で見かけた新社会人の多くも、似たような想いを持っているのかもしれない。   しかし、14年後の今、あの頃の自分に。そして2017年、不安を抱えるすべての新社会人に「このこと」を伝えたいと思う。   「1年目の君にしか、できないことがあるよ」 この一年は、二度と来ない。 当たり前のことだが、社会人1年目というものは一度だけしかない。二度とやっては来ない。これから約40年。君たちは会社の一員として、社会の一員として、長いプロとしての人生を生きる。いい意味でも悪い意味でも、どんどんこなれてくるだろう。だからこそ、この一年でしかできないことをして欲しい。変に背伸びしたり、誰かの真似事をするのではなく、今の君の「強さ」で戦って欲しい。 インターネットを捨てよう。 上司や先輩になくて、君にあるものは何だろう? 「時間」だ。今しかないその時間を使ってどんどん外に出かけよう。「ググれカス」なんて定型文は聞き流し、現場に足を運ぼう。担当する商品やサービスがある現場に行って、ライバル商品と並んだ時の見え方、買っていく人が何分で、何を見て、購入を決めているかを観察しよう。インターネットには載っていない情報が、現場にはある。それを手にして会議に臨もう。沢山の業務を抱えている上司や先輩には得難い情報。それこそ、1年目の君にしか持てないものだから。 「最強の素人」になろう。 素人の目を持って仕事ができるのは、社会人1年目だけ。逆に素人同然の意見として許されるのも、社会人1年目だけだ。2年目以降は色んな大人の事情がわかってきて、嫌でもプロの視点を持つようになる。また、1年目であれば許されていたことが、2年目では許されなくなるし、「2年目なのにそんなこともできないのか」「2年目なのにそんな質問をするのか」と言われたり、思われたりする。   人は成功したことからより、失敗したことから、かけがえのないものを学ぶ。   これは、私がこの14年間で得た教訓だ。人は成功したことはすぐに忘れてしまうが、失敗したことは絶対に忘れない。そして、同じ失敗を繰り返さないよう努力する。つまり、人は失敗した回数が多いほど、大切な局面で失敗しにくくなる。だからこそ「失敗が許される1年目」にできるだけ失敗を重ね、2年目以降での成功率を上げてほしい。   「恥ずかしいから」とか「どうしよう」とか言ってる間に、1年は過ぎ去る。どんどん打席に立って、どんどん空振りしよう。ホームランバッターはそうして生まれるから。 「この人だ」という師匠を見つけよう。 14年間広告の仕事をしていて、つくづく感じるのが、優秀な人間が生み出すものは「学生っぽい」ということだ。言い換えると「実現可能性が怪しいもの」。過去の実績や、予算、スケジュールのしがらみを取っ払って、たどり着けない場所にたどり着く。圧倒的に「なかったもの」を世の中に見せつける。   では、新人の「学生っぽいアイデア」はなぜ実現しないのか。   「個人の実績」と「人脈」の問題がある。   仕事は人についてくる。過去の仕事ぶりと実績から「この人なら大丈夫だ」という人に、チャレンジングな仕事がやってくる。また、どんな優秀なプロでも一人で仕事を仕上げることはできない。同じく「この人にならついていく」という優秀な仲間が、優秀なプロの周りにはいて、ともに新たな実績を作っていく。さらに実績に魅せられた優秀な仲間が集まり、人脈もどんどん拡がっていく。   そこで、こう考えてみるのはどうだろう?   「僕の学生っぽいアイデアは、優秀な師匠となら実現できるかもしれない」   入社したての君は、おそらく君の配属先と、君の上司を選べない。だからこそ、やることがある。会社の中を見渡し「この人だ」という師匠を見つけ、つけ回そう。   部署が違ってもいい。君の仕事は、君の直属の上司から命令されたことだけじゃない。10年後の君のために、ついていくべき指針を見つけ、やるべき仕事を終えた後、師匠の仕事を手伝い、技を盗むんだ。「残業は絶対したくない」という考え方も否定はしない。でも、10年後に打席に立っているのは今、がむしゃらに目を輝かせている新人だという事実も、一方である。   今は師匠の実績と人脈でしかないものが、やがて、君の実績と人脈を形作っていく。 「あと38年しかない」と考えられるか、どうか。 2003年の入社式から、もう14年も経つ。 冗談抜きで昨日のようだし、そろそろ社会人の折り返し地点だと思うと、言いようのない焦りさえ感じる。   近ごろ、こんなことを考える。   「あと何年働くんだろう?」   スタート地点で見る14年先は遥かに遠い。でも今、後ろを振り返って思うことは「14年はあっという間だった」ということだ。この調子だと、きっと60歳で後ろを振り返ったとしても「昨日のようだった」と言っているのだろう。   生きる早さが変えられないとすると、今、何をすべきか。   「今、それに気づくこと」だと思う。   60歳で後ろを振り返った時の「今」を、今、意識するか、しないか。   それこそが「今」を大切にできる、最良の方法なのだと思う。   私は、1年目にそれができなかった。   教えてくれる人もいなかった。   だから、この記事を書こうと思った。   今、1年目である新社会人の君たちに。そして14年前の自分に、はっきりこう言ってあげたかったのだ。   「今、君にしかできないことがあるよ」と。     ...