帽子ブランド「CA4LA」。100万人都市以上じゃなきゃ出店しない、吉澤利男の商売とは

ニューアキンド

 
クレイジーケンバンドの横山剣さん、SEKAI NO OWARIさんなど他数アーティストや芸能人も愛用する帽子ブランド「CA4LA」。

帽子をファッションとして打ち出し、帽子文化を発信し続け、日本のみならず海外にもファンがいる「CA4LA」を世に送り出したのが有限会社ウィーブトシ 代表取締役・吉澤利男。CA4LAの商売のやり方、ファンの作り方、日本のアパレル産業の現状、そして、世界の市場をどう分析しているのか。吉澤利男氏が考える商売の極意に迫ります。

CA4LAの商売「常に他と違うこと、一歩先をいくこと」


ーー現在の従業員数、店舗数はどのくらいですか?
 
約260人かな。国内に23店舗があって、ロンドンに1店舗。今から30年前にアメ横ではじめて、そこから4年後に年商8億、2015年に売上40億円。
 
ーー店舗を増やすにつれて、どうやって人を呼び込んでいったんですか?
 
今まで帽子屋っていうのは、何かあったらコピーして中国で安く作って売るというのが、帽子屋だった。要は雑貨屋だったね。そこにCA4LAはファッションを加えた。「ヘッドアパレル」という言葉を使って、並べ方から全部変えた。昔は全部引っ掛けて、ぶら下げていればよかったけど、内装もこだわって、ディスプレイしたんです。
 
色を全部そろえて、いわゆるキャップとただのハンチングだけだったところに、ハットをいっぱい増やしたの。『もうキャップの時代は終わったよ、ハットでお洒落しよう』というメッセージを込めてね。ハットにはみんな慣れてなかったんだけど、アーティストが被るようになったんで、ハットが爆発的に人気になった。
 
他の帽子屋にはない帽子がCA4LAにはあった。
 
ーーアーティストや芸能人が1つキッカケですか?
 
人気のアーティスト本人が直接買いに来るか、スタイリストさんが来て、舞台で被る用のハットやテレビ出演用のハットを借りに来てくれる。今でもそうだけど、芸能人の方々にたくさん来て頂いているので、そういう影響は大きい。

ーーオーダーメイドが多いですか?
 
表参道店の2Fのアトリエでオーダーを受けられるし、修理もできる、何でもできるアトリエ専門のデザイナーが常駐している。そこでブライダルのオーダーメイドや帽子の修理など、あらゆる注文に応えられるようになってる。

CA4LA常に他と違うことをやってないとダメだと思っているし、一歩先をいくように努力している。
 
昔はそれらをこなせるところが東京になかった。対応できるところが、東京にないので、CA4LAアトリエを作った。売るだけではなく、帽子を長く愛用してもらうために修理も対応する。そういう点が認められて国内外からたくさんのお客様が来るようになった。

他ができないこと、他にはないもの、他の帽子屋がやらないことをやらないとダメだね。帽子屋の範囲に留まっていてはダメ。ものづくりに関してもアパレルと同じように、素材や色、ディテールにとことんこだわる。流行を取り入れて、帽子も流行りものに敏感でないとダメ。今まで帽子業界はそういうのをやらなかった。アパレルと一緒に動いてなかったんだよね
 
ーー以前は帽子とアパレルは別々だったんですね
 
ヘッドアパレル、「帽子はファッション」だっていうのを打ち出してから、原宿で人気が出始めて、今に繋がった。アーティストや芸能人の方々がいっぱい買ってくれて被ってくれたという点も大きい。

でもね、帽子は生鮮食品と同じで、その時、売れなかったら来年は売れない。今のものを作らないと売れないし、先を読み込んだものを作らないといけない。だからデザイナーを11人も雇っているんですよ。常に新しいデザインの帽子を作っている。
 
ーーデザイナーの合計人数が11人?
 
オーダーメイドを行うアトリエデザイナーが7名。オリジナルの商品を作っているデザイナーが11名。アシスタントを含めると20名。だから毎年毎シーズン違うものが出てくるんです。他の帽子屋は去年売れたものを作っているわけですよ。今年売れたら、来年も作るんですよ。簡単だから。以前は流行が1年ぐらい持ったんだけど、今は持たなくなっちゃった。その場限りの流行になってるから、本当に生鮮食品なんだ。

日本の帽子業界はそういう点ではファッション的に発展したけど、ヨーロッパは昔からあるオーセンティックな帽子しかない。アメリカはベースボールを中心にした、ヒップポップとスポーツ関係の帽子しかない。日本はファッションに特化した帽子作りを始めたので海外の方から見たら、すごく新鮮に見える。
 
だから世界中からお客様に来て頂けているんです。そういう点で今、日本の帽子が非常に注目されている。新しい文化ができたんだね。
 
ーー文化を作られているんですね。
 
そうじゃないと売れないですよ。毎年毎年、去年と同じものを売っていたら、売れるわけないよ。去年と同じものを作って、誰かが持ってたら、2個目なんて買ってくれないよ。ないものしか売れない。
 
CA4LAは量産はしないから、小規模小生産で回転を速くしてボンボン出している。売れたからといって、めちゃくちゃ作らないし。途中でやめちゃう。
 
ーー途中でやめちゃう?
 
そう、最後まで追わない。最後まで追う頃には、他の店がみんな、やりはじめちゃうから。先行だね。60個単位で作って売る。
 
ーーそれをいつか買いたいなと思っている人にはどうしますか?
 
定番の商品もあるけど、少数生産のものはない可能性が非常に高い。オーダーメイドでの依頼であれば作りますが、基本的には同じものは作らない。在庫を持たないで売り切ります。もし余ったらアウトレットの店舗があるから、そこで安く売ります。我々は非常に在庫を持たない会社。

ファンがいるバンドの近くに、CA4LAがある


ーー新作が出ていく中で、それをどうやって知ってもらうんですか?
 
Webサイトや通販サイトなどネットからの情報が多い。それから、雑誌に出る機会とか、テレビに出る機会が多く、そこで知れ渡る。タレントさんやモデルさんたちが自分の写真を撮って、SNSでシェアしてくれるから、そういうところから流行が伝わっていくケースが増えましたね。
 
ーーファン作りはされているのですか?
 
ファンづくり?うちね、音楽に特化しているんですよ。うちの本社のメンバーはバンド崩れみたいなものが多いんですよ。昔、アメ横に店があったんですが、アメ横の町っていうのは、2、30年前はみんなロックアーティストのたまり場だったんです。割とみんなそこでやってたんですよ。
 
今はないCA4LAの店の近くにあったSHOPにはTHE YELLOW MONKEYのメンバーも1人いたし、非常に音楽に近い環境だった。アーティストはもちろん、音楽事務所やレコード会社ともすごく仲が良いんです。売れてるバンドはみんな被ってくれてるし、SEKAI NO OWARIの帽子なんかもCA4LAアトリエで作ってるんですよ。
 
かっこいいバンドの近くに、CA4LAがある。そういう点で、ファンづくりをしているっていうより、そういう人達がファンを連れてきてくれる。みんなの心の近いところにいるんですよ。

夏なんて言ったら、完全にフェスですよね、今は。1年間お金を貯めて、フェスに行くのが彼らの遊び。九州で会社員をやっている人だと、20万円ぐらい用意しておかないと来れないからね。飛行機代や宿泊費などで、ボーナスを全部そこにつぎ込むっていうのが、めちゃくちゃいるんです。
 
フェスには帽子がつきものだから、フェス用に帽子を買う人も多い。そういう人たちの影響もあるし、実際、世界中のアーティストが、日本のフェスに出演することが多くて、一気に全部聞けるから、海外からも人がいっぱい来ている。来日した方たちも、その時に買ってくれることが多いです。本当に嬉しい限りです。

バンドマンも店にいっぱい来ますよ。ファンも来る。音楽を中心に集って来てくれるんです。
 
そういう点でアーティストとの距離がすごく近いです。それが他の帽子の会社とは違っています。CA4LAは単価が高いから、20歳以下の若い人たちには難しいかもしれないけど、いつか挑戦してほしいと思っています。
 
ーー平均的な単価が1万5000円ぐらいなんですね。
 
国内生産にこだわっているからどうしても高くなる。それでもCA4LAの良さを感じて遠方から買いに来て頂いている。ものづくりをきちんとしていれば高くても売れるんです。

吉澤利男が見るこれからの時代


ーー基本的に首都圏に店舗が?
 
基本的にね、裏産業っていうか、ゲイとかオカマとか、レズビアンバーとか、ストリップ劇場とか、そういう文化がある町じゃないと帽子って売れないんですよ。
 
基本的に、飲み屋街が多いところ。そういう所にやっぱり、お洒落がありますからね。100万人都市以上じゃなきゃ無理。有名な飲み屋街がある所じゃないと、うちは出店しない、基本的に。
 
首都圏以外に出店している場所が、大阪、名古屋、博多、札幌だね。いろんな所からオファーがあるけど、売れないんですよ。1万5000円以上の帽子、何万円もする帽子を買える人って少ないですよ。いろいろなカルチャーがないと難しい。だから、それを買いにみんな東京に出てくるんですから。東京ってすごい街なんですよ。
 
ーーGINZA SIXに出店されていますよね?
 
最近だとGINZA SIXに出店しました。中国から来たお客様が25万円の帽子を買っていきましたよ。25万円ですよ。中国は今パーティーです。日本人はあまりパーティーしないけど、中国の富裕層は毎日のように、パーティーやっている。香港もそうだし、台湾もそう。
 
その東南アジアから来た観光客が高い帽子を買ってくれる。最近では富裕層だけでなく一般的な観光客も多い。

中国人があれだけお洒落になって、怖いですよ、もう直ぐ追いつかれますよ。完全に。日本は抜かれますよ。だから日本のアパレルがもっと頑張らないとダメなのに同じものを作ったり、解雇したり。同じようなマーケティングばかりやっているからね。
 
ーー中国や他のアジア圏の人達はどんな消費行動ですか?
 
東南アジアが衣食住に恵まれて、お洒落し出したら、こんないいタイミングはない。宝の山なんですよ、中国、タイ、シンガポール、香港にしろ、お洒落したくて仕方ないんだ。アジアの人達は子供にいっぱいお金を使うんだよね。子連れで日本に来るでしょ?日本人だったら子連れでなかなか旅行しないでしょ。赤ちゃんを連れて来るんですよ。大変なエネルギーですよ。それを平気でやれているんだから、彼らは欲しいものがあったら何でも買いますよ。
 
それを提供できない日本のファッション産業はダメなんです。今、ブランドしか買わないですからね。チャンスなんだけど、今アパレルに元気がない。デザイナーを平気で解雇する。全然デザイナーを大事にしない。いろいろなアパレル産業がダメなのは、デザイナーを生かしきれてないからだと私は思うんです。

消費型に捉えちゃって、若いうちじゃないとデザイナーはできないって思っている。そんなことないの。周りもみんな年取っていくのに、若くないデザイナーはいらないっていう企業が多い。海外のデザイナー達は年取ってる人も多いよね。日本のアパレルが異常なんだよ。
 
ーー具体的にどんな所がアパレル産業をダメにしていますか?
 
ブランドをたくさん作って、目先の売れるものばっかり作る。デパートに委託で入れる。そんなの儲かるわけない。百貨店の委託なんて返せるから、みんな責任ないんだもん。だから本当のファッションが生まれない。命掛けてないもん。金を掛けて、真剣勝負じゃない。情報集めてブレンドして、乗っけていく産業だから、ダメなんだよ。クリエイティブな面が、なさすぎる。
 
今、オンラインショッピングが主流になりつつあるけど、ネットで売るってことは、お店に来てくれなくなるということですから、半分はね。それが嫌だから、ネットで買う人にも、時にはお店に来てもらえる努力をするべき。お店が売れてなかったらブランド力ってなくなるんですよ。

自分が持ってる店が売れていることがブランド力であって、ネットで買われたって店に勢いも活気も出てこない、それじゃダメなんですよ。店は売る場所であって、それが売れなくなるようなネット通販だったらやめたほうがいいわけです。みんな通販で売って、1番店どこっていうと、「ネット通販です」って言うわけですよ。自分のメインの店より、ネット通販が売れているんですよ。

SNSがこれだけ浸透すると、どこでいつ火がつくかわからないし、中国はインフルエンサーと言われるような人達が何万人もフォロワーを持ってるからね。インフルエンサーがSNSシェアやブログなどで商品を紹介すると、日本にいるバイヤーが一斉に商品を買う現象が起きている。1人で50万円ずつ買って、中国のネットで売れちゃう。そういう時代に入って来たから、あんまり日本にだけ目を向けていてもダメ。すごい難しいスピードのある時代に入ってきたなと感じているんです。
 
時代的なこともあるかと思うけど、そんな時代だからこそ、CA4LAはお店を大切にしたいと思っています。

吉澤利男が考える「商売」とは

 
ーー最後に、吉澤社長が考える商売とはなんですか?
 
自分がお世話になっている人にちゃんと対価を支払って、従業員にもキチンと給料とボーナスを支払っていく。自分の周りを全部味方にしないと、難しいよね。相手先を喜ばせないと。
 
日本のアパレルは金払いよくすればいいんだよ。1週間で支払うサイクルだったらみんな頑張るよ。お金を払うこと。それしかないよ。従業員にキチンと期日に給料を払って、ボーナスを出す。景気が悪くなって売れなくなった時、銀行がお金貸してくれなくなったら、できなくなるでしょ。どんな時でもそれをいかに作って払うかというのが、経営者の力だから。

取材協力:CA4LA / 有限会社ウィーブトシ
代表取締役社長 / 吉澤利男
1946年生まれ。1989年に東京・上野のアメ横に小さな帽子店[Weave Toshi]を開業。当初は帽子の輸入を中心にしていたが、97年にオリジナルハットも製造するCA4LAを立ち上げて現在に至る。

 
 


photographer:吉住 拓哉

 
 

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