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アキンド探訪

  会社に行きたくない。そういう感情は従業員の特権ではありません。もう嫌だ、職場に行きたくない、従業員に会いたくない。そういう状況に陥る社長というのは結構いっぱいいて、僕の周囲にもいました。もちろん末期の僕もそうでした。   状況が悪くなると、本当に会社というのは行きたくないものです。せめて上司がいれば上司のせいにできるのに、そんな気持ちになったことは正直に言ってあります。   ここで、「とにかく従業員が全部悪い」という考え方を採用し、精神を守るライフハックを敢行する社長もわりといます。あなたも見たことがあるのではないでしょうか。これはこれで結構有益なライフハックではあるのです。「従業員が成果を出さない」時、「従業員が俺を嫌う」時、本当に悪いのは誰かというお話になれば「経営者である」という結論が出ることは揺らぎません、この点から全力で目を逸らせる人はこのハックを採用されてもいいと思います。   しかし、そこからは目を逸らせない。つまるところ会社で何が起きようと、責任は自分にあると認める人ほど、出社拒否に陥りやすいと思います。従業員から飛んでくる言葉にも律儀に応対してしまうでしょうし、精神的な負荷も大きくなる。俺が一番エラいんだ、という立場から怒鳴り散らして全てを解決するハックを選べない皆さんにこの文章を贈ります。 別に会社の人間関係は良好じゃなくていい 会社は何をするところか、といえば仕事をするところです。その目的は会社としては利益を出すことですし、従業員としては給与を受け取ることです。円満な人間関係や楽しいリクリエーションをやるところではありません。つまるところ、会社として上手く回っていればそれでいい、という強力な割り切りは早期に身に着けておいて損はありません。   従業員というのは、もちろん人によりますが様々なことを要求してきます。「皆が楽しい職場にしろ」と言ってみたり、あるいは「個人の領域に介入しないで仕事だけさせろ」と言ってきたりもします。実際、会社内がまるで部活みたいな雰囲気に包まれていることを好む従業員というのも案外存在します。研修合宿大好きなブラック企業を支えているのはこういう従業員でしょう。アットホームな職場が好きな人は多いです。(僕は大嫌いですが・・・。)   あなたが、「人間関係はまるでダメだが会社の事業は上手くいっている」という状況にあるなら、それは極めつけの幸運です。その状況で事業が回るに越したことはないからです。考えても見てください、高度にくみ上げられた利害関係ではなく人間的な連帯に基づいたチームワークで回っている会社って、信用できませんよ。そんなもん、崩れるときには跡形もなくグッチャグチャになるのは皆さんだって見てきたでしょう。   「従業員と上手くやれていない」と愚痴る社長は結構います。しかし、「従業員と上手くやれている」という状況は、投下した資本に見合った利益が出ているということ以外ではありません。最高のチームワークと良好な人間関係があっても、利益が出ていなければそれまでなのです。つまるところ、悩みどころはそこではないということです。「従業員同士がモメ始めた」みたいな場合は別ですが、社長と従業員の間の人間的な関係が上手くいっていないにもかかわらず、事業はちゃんと回っている。これは理想に近いです。そのままいきましょう。ストレスを感じる理由はありません。   経営者は従業員に際限なく要求をするものだということは周知の事実ですが、従業員もそれが出来る状況であれば経営者に際限なく要求する存在であるということはあまり知られていません。これの発生を早期に抑止することはとても重要です。そういう意味で、ここはもう早めにザクっと割り切って「そのストレスは感じるだけムダ」と思い切った方がいいです。   わかりますよ、仲間と楽しく仕事。したいですよね。でも、残念ながら経営者と従業員というのは仕組み上、まず「仲間」にはなれないことが運命付けられています。そこは早めに諦めといた方がいいと思います。たまに、経営者の置かれた状況を理解し「仲間」としての振る舞いが出来る従業員もいますが、それは恐ろしく有能か、あるいは危険因子です。気をつけて接しましょう。 社長は出勤しなくてもいい こんな社長がいます。昼はゴルフ、夜は酒。いい車に乗って社交三昧。そんな人です。彼は従業員からは「ハゲダヌキ」と呼ばれ、大変に嫌われています。たまにやる仕事は職場に出向いて、極めて低確率で誰かを賞賛するか、あるいは極めて高い確率で誰かを罵倒するかです。見事な太鼓腹、貧しい毛髪、高級なスーツ、常に従業員を見下す言い回し、黒塗りの車など「嫌われる金持ち」の要素の集合体みたいな人です。   しかし、彼の会社は儲かっています。僕は彼の会社と取引があったので、彼の職場についていったことがあるのですが、従業員が公然と社長の愚痴を述べるほどに社長は嫌われていました。   僕はこの人に強い関心を持ちました。「何でこの人これで儲かるんだ」と。そういうわけで、僕はこういう人に「僕はあなたすごいと思うんです」みたいな敬意を見せてお酒を奢ってもらうのが特技ですので、一杯奢ってもらった結果飛び出してきたのが、前の章で書いたような内容でした。   「社長は現場に出なくていい」「社長が嫌われて会社がまとまるならそれがベスト」など、彼の経営哲学はここでは到底語りきれないのですが、社長いわくかつては現場に出ていて、決断とともに退いたそうです。ある意味で、会社で一番の「悪」は常に社長なのです。彼を「悪」として会社はまとまっている。そして、社長は社長で資金繰りや人脈構築、あるいは現場から距離をとった経営判断などに専念している。なるほどなぁ、と思いました。   僕自身も、「嫌われ者」になる判断が出来ればもっと違う結果があったのかもしれません。この社長の経営規模は数十人の従業員を抱えるサイズですが、5人従業員がいたらこの形は作れると思います。「良い人間」「従業員に愛される人間」が「良い社長」とは限りません。社長とは結果的に利益を出してればそれでいいのです。「会社に出勤しない」すら肯定され得るのです、そしてそれが利をもたらすこともあるということは覚えておいて損はありません。   会社に出たくないが毎日出て、失望とともに帰宅している社員数人規模以上の会社の経営者様は、もし状況が許すなら「極力会社に出ない」という選択肢とそこに向かう道のりを検討してみてください。もしかして、それ、「従業員と上手くやる」よりずっと現実的だったりしませんか? 苦境における会社の人間関係ストレスは感じるだけ無駄 さて、最後のケースです。事業は上手くいっていない、その状況下で会社に発生するネガティブな人間関係が社長の巨大なストレスになっているパターンです。この場合、「一緒に頑張ろうぜ!」「俺はもっと頑張るからおまえも頑張ってくれ!」などのアピールをしたくなるでしょうが、これをやると健康を損なうどころか最悪のケースになりかねません。   人間というのは、落ち目の人間がどれだけ頑張っていてもそうそう認めてくれないものです。そして、経営者とは実にしばしば極めてカジュアルに、最悪のケースに向かっていく生物です。(そういう習性なんでしょうね・・・。)   稀に「社長は身を削って頑張っているからついていったよ」みたいなケースもありますが、社長は死ぬほど頑張っていたけど従業員には一切認められていないというケースはもっとあります。これはもうしょうがない。あなただって、結果を出さない下請けが「頑張って」いても契約切るでしょう。   従業員と経営者は契約関係にあるのですから、そこはそうなのです。将来的に給与が上がる見込みもなく、会社の存続すら危ういというときに「社長が頑張っているから」でついてきてくれる有能な人材はあまりいません。   では、そんな時どうするか。とにかく事業を回す、あるいは立て直すことに専念しましょう。「人間関係がよくなれば事業はよくなる」はおそらくですが、幻想です。因果が逆です。事業が悪いから人間関係も悪くなっているのです。   事業が好調に推移しているなら、この文章でここまで書いてきた「人間関係を放棄しても仕事は回す」が選べますから。そこを目指してなんとかやっていきましょう。「苦境の会社を立て直す方法」は僕にはわかりませんが、「苦境において会社の人間関係を良好化する方法」はもっとわかりません。それが出来るなら、それ専業にした方が儲かるのでは。   従業員に「辞める」という決断をさせない程度の距離をとり、仕事をさせるということに意識を集中しましょう。そこにあるのは契約関係です。人間関係ではないのです。「俺がいると仕事が上手くいかない」はあり得ることです。それを認めて退くのも、経営判断としてはアリです。また、従業員に業務命令を下すのに従業員の同意などは特段必要とされないということも覚えておいて損はありません。「やれ」でいいのです。   ただ、ここで「昔の社長はもっと話を聞いてくれた」みたいな感情が従業員に発生すると事態はもっと悪くなります。だったら、最初から独断専行のワンマン社長をやっていた方がよかったという話にもなります。最初から「意見は聞くが決断は経営者の仕事」という意思を経営に透徹しておいた方がよっぽど楽なのです。   そして、これは経験から来るものですが、危機対応において「チームワーク」や「民主制」は毒です。あれは判断が遅すぎるし、複数の意見の中間を取った平均的なものになりやすい。そこは腹をくくって「俺の命令を聞け」でいいのです。   「やれ」「決断するのは俺だ」「おまえの仕事は経営ではない」の発声練習をしましょう。これが意外とスルっと出てきません。現場から上がってきた声を踏み潰せなくては社長など務まるわけがないのです。危機に於いて人間関係ストレスを感じるのは完全に無駄です。   そこで苦しみを感じていたから僕は無能だった、本当にそう感じています。ただ、これはあくまで「現場の声をシャットダウンする」という意味ではありません。情報は取る必要があります。しかし、経営判断は全て経営者が握っているという前提を絶対にぶらさないことが重要です。これがブレると最悪反乱まであります。(ありました。ありました。)   「従業員と和気藹々とお互いを尊重しながら楽しく仕事」これが理想であるのは間違いありません。しかし、それは儲かってからでいいのです。それまでは、従業員は単なる駒でいいのです。また、従業員もイザというときに「駒」以上の働きをさせられることなど御免蒙るのです。僕だってイヤです、だったらもっと給料と裁量くれよという話です。 会社で人間関係を上手くやることは不要ではないか このお話は「出社拒否したくなったときに出社できる状況を作るノウハウ」は一つも含まれていません。しかし、「出社しない」は究極的にアリで、「人間関係を上手くやる」そういったものは、そもそも不要ではないかという提案です。   人間関係ではなく、適切に指示を飛ばすマシーンであればいいのです。従業員が動き、利益が出ればそれでいいのです。そこに向かっていくという意思を持てば、「人間関係で悩む」ことは少なくとも減ると思います。   人間と人間が上手くやっていくのはとても難しいことです。本当にそれは難しい。しかし、考えてみてください。「人間関係が良好である」というのは、会社が上手く回ることの必須条件では全くありません。蛇蝎のごとく嫌われる社長だって、儲かっていれば正しいのです。   結果に向かう過程を、目的に対する手段を選ぶ余地が大きいというのが数少ない経営者の特権です。何でもアリです。「人間関係に悩むのなんかやめちまえ」、「会社経営に悩め」というのは、結果的に救いになるのではないでしょうか。   わかりますよ。みんなに好かれたいです。みんなに愛されたいです。チヤホヤされたいです。   でも、それは「儲ける」ための手段に過ぎません。僕はこの部分を本当に見誤っていました。もちろん、その前提を踏まえたうえで「家族や友人のような関係を社員と構築する」という選択肢もあると思います。しかし、この前提は揺らがない。そこにあるのは人間関係ではなく、契約関係ですし労使関係です。そこを忘れないのが、従業員に会いたくない日の特効薬だと思います。   余談ですが、この考え方を透徹した場合、社員同士が敵対を始めるなどした場合もあっさり結論が出ます。「利益になる方を尊重し、利益にならない方を切る」という絶対の判断基準がありますから。良い人間である前に良い経営者であろう、そういう考え方は、救いになりえると思います。良い人間であることはあなたの仕事ではありません。そこは放棄していいんです。負荷に押しつぶされないよう、やっていきましょう。     ...

  今回はオウンドメディアの現役運営者、これからオウンドメディアを運営しようとされている企業、担当者に向けた記事です。   「オウンドメディアの運営を始めてみたけどアクセス数が伸びない」「そもそも何から取り組み、オウンドメディアというものをどのように捉え、コンテンツをどう更新していけば良いかわからない」そう悩んでらっしゃる方、数多くいらっしゃると思います。   私自身も、メディア運営に関して何の知識もなく2015年1月に「街角のクリエイティブ」を立ち上げ2年半、試行錯誤を繰り返してきました。アクセス数が伸びずに悩んだこと、しばらくマネタイズがうまくいかず苦しかったことなど、困難も多々ありましたが、ようやくライターや編集担当者のおかげで、100万PVを超えるメディアに成長させることができ、運営に支障のない収益を生み出すこともできています。   そこで、自身の2年半を振り返り、備忘録という意味合いも兼ねてオウンドメディアを運営する上で気をつけるべき5つのことをまとめてみたいと思います。 1. どうやってマネタイズするのか? 「いきなりお金の話か」と思われるかもしれませんが、オウンドメディアで一番重要なことは何といっても「続けること」です。   大きな企業で取り組まれているなら、採算が取れていないと社内の風当たりが強くなりサイト閉鎖なんてこともあるでしょうし、小さい会社や個人で運営されている方もメディア単体で儲かっていなければ別の収益源を見つけなくてはならず、コンテンツの更新がおざなりになってしまう可能性が出てきます。つまり、立ち上げようとしているメディアでどのようにお金を稼いでいくかは、最も重要で、できれば最初に考えておきたいことと言えます。   「著名なライターをアサインすればページビューが伸びる」「SEOを意識した記事を量産すればページビューが伸びる」とページビューのアップに目線が行きがちですが、ページビュー以上に重要なのが「マネタイズ」です。   アドセンスや様々なSSP(サプライサイドプラットフォーム)を導入し、ページビューを上げていくというオーソドックスなやり方もあれば、バナー広告を入れず記事広告だけでマネタイズする。検索で流入したユーザー向けにアフィリエイト広告を設置する。一部または全部のコンテンツを有料にして講読料でマネタイズする、など様々なマネタイズの仕方がありますが、何より大切なのは最初に決めておくこと。最初に決めておくことで、マネタイズ法に合ったサイト制作が可能になり、収益も上げやすくなります。 2. どのようなコンテンツを提供できるサイトなのか? 1とも連動する話ですが、記事広告でのマネタイズも、アフィリエイト広告を貼ってのマネタイズも、「そのサイトにはどういう情報が載っているのか」ということを明確にすることが大きな強みになります。   広告主にとって「そのメディアはどういった属性の人が見ているのか」が一番気になるところなので、日頃からターゲットを絞りその層から支持を得られる記事をアップし続けることで、記事広告出稿のハードルを下げ、検索流入を増やすことができます。美容であれば美容、恋愛であれば恋愛という柱を見失わずにコンテンツを作っていくことで結果、アクセス数アップとマネタイズにつながるのです。 3. 丁寧な記事作りを心がけているか? Web上の記事はクラウドワークスで外注したり、社内のスタッフで作ればコストを抑えることが可能です。しかし、世の中にあまたある記事の中で読んでもらうのは一筋縄ではいきません。   手っ取り早く文字数を稼いだ記事を載せるのではなく、取材や「やってみた」等きちんと足を使って記事を書く。記事のサムネイル画像もオリジナルにこだわる。誤字脱字等、校正もきちんと行ってクオリティ管理をすることが結果メディアの成長につながります。 4. 過去の記事のメンテナンスはできているか? オウンドメディアを運営していて忘れがちなのが、過去記事のメンテナンスです。検索流入が多い過去記事をメンテナンスすることは労力も少なく、安定したアクセス数を稼いでくれるので必ずやっておきたいこと。Google Analytics等を利用しアクセス数の多い記事から、画像のリンク切れ、終了したイベント等の告知等が入っていないか、追記できるポイントがないかをチェック、加筆修正します。アクセス数の多い記事をメンテナンスし検索順位を落とさないことが、効率の良いメディア運営の絶対条件です。 5. SNSでの発信内容を吟味できているか Twitterやfacebook等のソーシャルメディアを単なる告知メディアと捉えてしまい、アップした記事の紹介のみを投稿するのはもったいないことです。ソーシャルメディアオリジナルのコンテンツを作成して、そこでしか読めないコンテンツを作ることで「フォローする理由」を強め、より多くのフォロワーを獲得することができます。結果オウンドメディアの記事にもアクセス数が集まるという相乗効果を生むことができます。 まとめ 以上、私が2年半のメディア運営歴から学んだ「オウンドメディアを運営する上で気をつけるべき5つのこと」でした。今回は基本的なことを羅列しましたが、また機会があれば突っ込んだものをまとめたいと思います。   皆様のメディア運営がうまくいくことを祈って、この記事を締めたいと思います。     ...

  人間は争います。全ての人間が分かり合えるなんてことは、到底ありえません。だからこそ、僕は「ニューアキンドセンター」で書かせていただいた文章で「争いが起こらない仕組みづくり」を繰り返し述べて来ました。   基本的に、社内戦争が一度起きてしまった場合事態は致命的です。人間同士の「お金」と「意地」と「生活」と「信念」をかけた争いが、話し合いで円満に解決するなんてことはほとんどありません。   裏切り者の出ない組織を作ろう、離反や対立が起こらない利害関係の調節を行おう。これは前提です。しかし、それを必死で行った上でも時に「戦争」は起きてしまうだろうと僕は思います。このままでは会社が割れる。あるいは事業が継続できなくなる、それだけの回復不能な対立が社内に生まれてしまった。そういう時にどうすればいいかということを、僕の失敗経験から考えていこうと思います。   尚、創業時における持ち株のバランスで事態がグチャグチャになるケース、例えば50%ずつの持ち株二人で創業した、あるいは複数人が出資し、誰も株式の過半数を有していない、みたいな状況についてはこの話では触れません。それは創業するときに当たり前に考えておくべきことです。   ここでは、「原理的には問題のある人間を解任・解雇をすることは可能だが、経営上の問題でその解決策が選べない」という場合について話をさせてもらおうと思います。対立の具体例については、こちらのエントリも是非ご参照していただければと思います。   >> 英雄頼りの「会社経営」から抜け出す理由。兎を獲ったら犬を煮る話。 ...

  若い世代を中心にシェアハウスの利用が一般化しています。家を複数人でシェアするスタイルは、数年前まで「そういうの好きな人いるよね」程度の認識でしたが、現在は暮らしの1つの選択肢として選ばれています。   投資として利回りがいいことも注目されてシェアハウス運営者は増える一方。ひつじ不動産、東京シェアハウスなどシェアハウス専門サイトもたくさんあります。急速に競争が激しくなり、撤退する業者もあらわれはじめるシェアハウス業界。   そのなかで順調に規模を拡大しているのが「絆家シェアハウス」です。2017年7月現在、6軒のシェアハウスを運営し、平均稼働率は脅威の90%(※オープン後、半年以上のハウスを対象)。東京と大阪で合計約100名の住人が暮らしています。今年中にさらに2軒増える予定だとか。これだけの数のシェアハウスを社長夫婦と社員1人の3人で運営されています。 上記写真は取材に伺った東武練馬駅の絆家シェアハウス。4階建て18室で35名住んでいます。絆家シェアハウスを運営する「株式会社絆人」平岡夫妻に、「シェアハウスを円満運営するコツ」「住人を寄せつけるポイント」を伺った参りました。 入居期間は業界平均2倍!「居心地のいいコミュニティー」を作るポイント ▲絆家シェアハウスを運営する平岡夫妻   ――ずいぶん大きなシェアハウスですね。何人住んでるんですか?   いま、住人は35人です。私たちも夫婦でここに住んでます。もともと貴金属工場だったので大きいんですよ。「みんなでつくるシェアハウス」ってプロジェクトを立ち上げて、みんなでどんな内装にするか考えて、部屋割って、お風呂入れて、DIYで椅子や机を作ったりしました。   ――35人!学校の1クラス分ですね。どんな方が住んでるのでしょうか   ここのシェアハウスの男女比は6割男性、4割女性。カップルも私たち以外に2組住んでます。年齢は下が19歳から上は30代半ばぐらいですね。ほとんどが会社員ですが、フリーランスで仕事してる人が3人いるかな。   社会人になって数年経ち、仕事が落ち着いて会社と家の往復に退屈になってきて、あたらしい刺激が欲しいなと入居してくる方が多いですよ。あとは地方から都内に上京してくるタイミングですね。一人暮らしだと、礼金、敷金、仲介手数料と、また家具を新しく一通り揃えると引越し初期費用が40円-50万円と高くなってしまうので、今まで引越しに踏み切れない人が多かったと思います。   シェアハウスだと、礼金、敷金もなく、家具が最初からすべて揃っているので、引越しがしやすくなったと思います。人と住むことにそれほど高いハードルを感じない人なら、シェアハウスはひとつの選択肢になりますね。   ――平均でどれぐらいの期間住まれるんですか?   シェアハウス業界全体の平均だと半年から1年ぐらいと言われてるんですが、私たちの場合は1年~2年ぐらいですね。引越しする理由としては、転職して勤務地が変わるとか、結婚するとか、ドミトリーに住んでたけど1人部屋に暮らしたいとか、そういうタイミングが多いですね。   ――業界平均の2倍長く住まれるんですね。なにか理由があるんですか?   居心地のいいコミュニティーが付加価値ですね。シェアハウスに暮らすことで、誰とどういう関係を作れるのかがポイントです。シェアハウスって敷金礼金がないので、ハード面で選ばれると近くにもっと条件の良いところができると簡単に移られちゃうんですね。家具も備えつけを使う方がほとんどですから引っ越しも楽ですし、入りやすくて出やすい構造。 でも、居心地いいコミュニティーがあればよそに移らないんです。私たちのシェアハウスでは、住民の歓迎会からはじまり、誕生日会などのイベントや、ごはん会など、住民の交流が密にあります。 ▲住民たちのLINEグループ。頻繁にやりとりされている。   ――なにか交流を促す仕組みがあるんでしょうか?   いきなり「みんなで話して」と言っても何を話していいか分かりませんよね。新しく入った住人も、既存の住人の仲が良いからこそ「私、入れるかな……」と不安になってしまいます。だから、「料理が好きだから住んでみたい」「イベントがあるから住んでみたい」と別のファクターが必要なんですね。きっかけがあると入りやすいです。   ――別のファクターですか   たとえば高田馬場に「masobiシェアハウス」というシェアハウスがあるんですね。masobiは学びと遊びをくっつけた造語なんですが。このシェアハウスでは月に3~4回、資格をもってる人をお呼びして料理教室やヨガ、コーヒー教室をリビングで開催しています。そうすると「料理教室があるから」と自然とリビングに集まりやすくなります。こういう教室って「わざわざ出かけるのが面倒くさい」「知らない人がいるからしんどい」となかなか長く続かないものですけど、シェアハウスでやれば気の知れた住人同士なので安心して続けられるんですね。 ▲広い屋上を使ってバーベキューパーティーや流しそうめんをすることも   ――なるほど。共通のコンテンツを体験すれば、自然と会話も生まれますね   コミュニティー作りが目的なので、そういった学びの教室もその道で教えるプロを呼ぶというよりも、居心地の良い雰囲気を作ることが上手な人当たりの良い講師をお呼びすることが多いですね。   コンセプトシェアハウスと言っても、あまりにニッチにしすぎると事業として成り立たなくなってしまいます。たとえば「麻雀シェアハウス」とか「人狼シェアハウス」を作って何十人と埋まるかどうか。趣味として一緒にやりたい人と、一緒に暮らしたい人はまた違ったりもするので、その辺りのバランス感覚が必要ですね。   増えてきてるコンセプトとしては、起業家シェアハウス、英会話シェアハウスなどがあります。これは広告を打つべきマーケットがはっきりしてるからです。起業家シェアハウスならビジネス系のセミナー、英会話シェアハウスなら英会話教室・日本語学校など、ターゲットがどこにいるか明確なものは事業として成り立ちやすいですね。   中には、ニッチなコンセプトで鉄道好きのシェアハウスや、サーファーシェアハウスなどもありますが、趣味の延長線上でシェアハウスをされたい人にはそういうのもありだと思います。 ゴージャスな設備がないなら、コミュニティーで差別化する   ――大阪では旅好きのためのシェアハウスを運営されてますよね   はい、「旅するシェアハウス」という名前で運営しています。大阪には知り合いが1人もいなかったので、「旅」というコンセプトを明確にして、旅のイベントや旅好きが集まるバーなどに出向いていってコミュニティーを作っていきました。   ――そんな草の根的で地道な活動をされてるんですね   自分も旅に興味があるからこそ出来ることですね。「旅好きが集まるシェアハウスをはじめました」と話して、外国人観光客にフリーガイドツアーやってる人たちや国際交流イベントの主催者たちとコラボ企画を月何回もやっていきました。そうやって旅好きに存在を認知してもらう。8割のシェアハウスは特にコンセプトがないので、こうしたテーマがあるとシェアハウスにそこまで興味のなかった人のアンテナにもひっかかってもらいやすいです。   旅するシェアハウスは大阪の北のほう摂津市にあるし、駅からも決して近くはありません。大阪の中心地ですらそんなに家賃は高くないですから立地やハードの部分だけでは差別化が図れません。住みながらいろんな外国人と触れ合えたり、普段は仕事でなかなか旅に出られない人が、日常生活の中で旅を感じられる生活の魅力を伝える。そういったハード面以外のソフト面の付加価値をどう付け加えられるかが大切です。   ――差別化のために重要なのは分かりますけど、コミュニティー作りに本当にすごい手間をかけてるんですね   好きじゃないとできないかもしれませんね。私の場合、コミュニティー作りがライフワークなのでそれを負担とは感じませんが、このソフト面をビジネスライクに効率だけで考えようとすると難しいと思います。   シェアハウスは今2極化しています。 1つは100人前後の大型のシェアハウスで、設備も豪華なもの。ヨガスタジオ、映画施設まであってホテルのようなゴージャスな暮らしができます。ハードの部分を充実させたいという人にとって魅力的なシェアハウスです。結果、住んでる人数も多いので気の合う人も見つかりやすい。   もう1つは居心地の 良い住民との関係性にフォーカスをして、コミュニティがしっかりしているところ。そのために、コンセプトを明確にしているシェアハウスです。英語が学べる、旅が好き、起業家と切磋琢磨できる関係性があるなど「こういう人と住みたい」で選ぶシェアハウスです。   私たちは後者に入ります。   逆に、大型シェアハウスでもなく、コンセプトもあいまいな中間層は難しくなってきています。たとえば、2~3年前に従来の不動産業者が利回りの良さに目をつけてシェアハウス業界への参入が一気に増えました。キッチンなど水回りが1つにまとめられるので工事費が浮きますし、1K物件なら同じキャパで、15人しか住めなくてもシェアハウスなら30人住ませることができる。   でも、私たちはシェアハウスは不動産業というよりサービス業に近いと思っています。シェアハウスは、1Kマンションの集客方法と運営方法とはまったく違うからです。   結局は、満室時の利回りだけで考えても、居心地の良い住民コミュニティーが作れていないと長く続きません。「隣の部屋がうるさい」「だれだれさんが嫌」など、住民同士の関係性ができていれば起こりにくいクレームが多くなり手間がかかり、結果人件費が増えてしまいます。   一見、表面上の利回りは良いように見えますけど、実はすごく手間がかかります。ソフト面での差別化もできず、結局は価格競争になって家賃を下げざるを得ない。そうすると収益性が下がる。「こんなことなら普通の1K住宅にしたほうが良かった」と撤退するところも多いようです。 事業としてやるなら一軒家のシェアハウスはおすすめしません ▲お菓子教室を開催したさいの写真   ――コンセプトを立てる以外に運営のポイントはありますか?   コミュニティのあるシェアハウスを作ろうと思うなら、住人の人数をある程度多くするのがポイントかもしれません。人数が少ないと、コミュニティができにくいか、できるまでに時間がかかります。シェアハウスは20代から30代前半の社会人が多いので、どうしても仕事の終わる時間にばらつきがあります。たとえば一軒家5〜6人の規模だと生活リズムの違いで普段顔合わせなかったり、コミュニティーが出来にくいようです。   現在、私たちは15人以上の規模のシェアハウスでないと新しく手をつけていません。人数が多いといろんなタイプの人がいて、コミュニティとしてのバランスが取れるので、大人数の方がコミュニティも早く育っていきます。15人程いると自然とリーダーシップをとれる人が住民から出てきますし、その中で特に気の合う小さなグループがいくつかできて自然とコミュニケーションが生まれます。   また、ある程度の規模だとこちらの運営費から定期的に外部から清掃業者が入ってもらえるので、ともすればトラブルのもとになるような掃除問題も未然に防ぎやすくなります。   ――人数が多い方がコミュニティが自然と育ちやすいということですね   あとは、内見時にどういう考え方のシェアハウスなのかはっきり説明してミスマッチを少なくするのもすごく重要ですね。住んでいるのは背景が違う人たちばかりだから、内見のときに「絆家シェアハウスでは、コミュニケーションを重視してるシェアハウスです。考え方の違い、価値観の違いを受け入れることを楽しめるかどうかが大切。それができないと絆家には合わないかもしれません。あまり交流を求めないなら、1人暮らしみたいにプライベートをより重視するシェアハウスもたくさんありますからそのほうがいいかもしれません」とはっきり説明します。   シェアハウスのコンセプトを理解せず、好き勝手にやる人が1人でもいると居心地の良いコミュニティは壊れてしまうこともあります。内見時に面談というわけではないですが1時間くらい「シェアハウスにどんな暮らしを求めているか」「どういう人が苦手と感じるか」「チームやグループではどんなポジションが居心地が良いか」といった話題を雑談を交えてします。   そうすると、自然とミスマッチなく、お互いにとって不幸なシェア生活を送る必要がなくなります。「安いからシェアハウスに住みたい」というだけの方にで、こちらが難しいと判断した場合は、審査の末こちらからお断りすることもあります。   安さや立地だけで判断して入居希望される方は、すれちがっても挨拶がなかったり、誰かがリビングを使ってたら煩わしい人間関係を避けて部屋から出てこなかったり、コミュニティーが生まれませんので。今のシェアハウス住民の居心地の良さを守る上でも大切にする部分の判断基準は大切にしています。 シェアハウスごとに1人リーダーを任命する   ――どういう人に住んでもらうか。そこからコミュニティー作りはじまってるわけですね   そうですね。人はとても大切なポイントです。現在5つのシェアハウスを運営していますが、それぞれのハウスには母親的な存在の住人ハウスマネージャーがいます。   ――ハウスマネージャーの役割はどんなことでしょうか   新しく来た人を受け入れてみんなに紹介したり、ごはん会を設定したりと、いたら安心できる存在ですね。母性を感じるタイプの女性が多くて「この人のためなら何かしたいな」と自然と思わせるような人徳のある人にマネージャーをお願いしています。   月一回私たちとハウスマネージャーでミーティングをして、現状の課題をシェアして解決案を出し合ったり、こういうイベントやろうと決めたり。決まったことはハウスマネージャーを介して各ハウスに伝えてもらいます。   私たちもすべてのハウスに住めるわけではありません。やっぱり実際に住んでて、良くしたいと思ってる人にやってもらったほうがいいコミュニティーができるなと思い、できるだけ住民の中からお願いしています。   みんなでワイワイやるイベントや学び場などはシェアハウスの一番楽しい部分ですから、ハウスマネージャーにリードしてもらえたら嬉しいと思っています。 逆に言いづらいような部分は私たちから住民に伝えるようにしています。 まとめ ・入りやすくて出やすいシェアハウス業界では居心地のいいコミュニティーをいかに作るかが安定した運営に繋がる。 ・交流をうながすために料理教室やヨガ教室を開催。共通のコンテンツで会話のきっかけを作る。 ・ホテルみたいなゴージャス設備がないなら、ソフト面で差別化する ・活発なコミュニティを育てるにはある程度の住居人数が必要 ・シェアハウスごとに母親的なハウスマネージャーがいることが大切 「シェアハウス運営は不動産業というよりサービス業」とおっしゃっていた真意が見えてきました。     ...

  世の中には色々な商売があり、悩みもまたそれぞれだと思いますが、シンプルに「客が来ない」という悩みはありますよね。これが例えば、仕事を自分で動いて取りに行けるような業種なら「営業しよう・・・」ということにもなるのですが、店舗を構えて待ちをベースにしているとそれもなかなか出来ません。特に飲食店などは、創業当初など客足も全く安定せず、地獄のような多忙と更なる地獄のような暇さを同時に味わうことになりがちです。   こういう時に何をすればいいのかについて、僕にはわかりません。しかし、何をしてはいけないのかについては大体分かった気がします。今回は飲食店をベースに考えますのでそちらの話が多いですが、他の業種にも通底するお話だと思います。何せ、僕がこの間までもがいていた地獄のお話ですので、鮮度はバッチリです。 うまくいかない時、従業員に発破をかける 僕も飲食業の個人店でアルバイトをしていたことは結構あります。基本的に接客業には向かない人間なのですが、料理にも酒にも興味があったのでカウンターにも厨房にもそれなりに立って来ました。その中で、個人経営店のオーナーがやることの中でも最悪と感じたのがこちらになります。   客が来ないとアルバイトは暇を持て余します。それを見てイライラする気持ちは痛いほどにわかります。しかし、「仕事が無いなら探せ!」程度ならまだしも、「現状打破のアイディアの一つも出さねえのかテメーは、友人の一人にでも電話入れて呼べよ!」と怒られた時には、「ああ、これはもう末期的だなぁ・・・」という気持ちになりました。   「とりあえず従業員を絞り上げる」は実のところを言うと、経営者の選択肢としてはそれなりに有力です。現場の空気が緩んでいて生産性が上がっていない時などは、とりあえずこれをやってみるのは一つの手でしょう。一般的にこういうことを公言すると怒られますが、最後の一滴まで胡麻から油を搾るのは大事な仕事です。   しかし、「そもそも客が来ない」時にとりあえず従業員を怒鳴りつけるのは本当に意味のない行動です。それでも、飲食店に限らず経営が上手くいっていない経営者は大体これをやってしまいます。   僕は「部下は大体僕より有能」という状態で経営をしていたので、あまり機会に恵まれませんでしたが。きっと状況が揃えば僕だってやってしまったんだと思います。それくらいありふれた話です。そして、これが発動したお店が長く生き残るのを僕は見たことがありません。   「現状打破のアイディアを出せ」みたいな抽象的な指示を理解して自ら行動してくれる部下がいるとしたら、それは本当に得難い宝です。しかし、一般的な従業員がこういうものだとは思わない方が良いと思います。ましてや、「客が来ない」という状況下で高圧的に出された指示を実行する従業員なんてまずいません。   客が来ない、日々経営が悪化していく状況下で、すさまじいストレスを感じていることはわかります。しかし、そのストレスを従業員にぶつけても事態は悪化しかしません。それだけ暇なのにその従業員を雇っているということは、業務継続に最低限必要な人員なんですよね。その方に逃げられたら、また求人費用と教育費用がかかるだけです。   とにかく、「従業員に無駄なストレスをかけない」を徹底した方が良いでしょう。というのも、業務が暇ということは部下とあなたは気詰まりな時間をどうしても長く共有することになってしまいます。創業期の不安定な時期に人員的不安定という更なる悩みの種を呼び込むのは本当に避けましょう。これは、本当に意識していないと出来ないことだと思います。あのストレスの中で正気でいるのは本当に難しい。 うまくいかない時、別の儲け話を探す お金に困っていると突然降ってくるタイプの儲け話というものは存在します。といいますか、本業が上手く回らず他の儲け話を探している人間についてちょっと想像してみてください。「これより嵌め込みやすいカモはいない」って誰でも思いますよね。これは必ずしも詐欺とは限りません。合法的な範囲で致命的な結果をもたらす取引なんてゴマンとあります。そして、商売が上手く回っていないと認知されるということは、この手の皆さんにターゲットとして認識されるということです。   商売を始めてみるとわかりますが、商売人同士の間では常になんとも形容しがたい儲け話が流通しています。それは、ちょっと見には非常に魅力的なものだったり、あるいは本当に大ネタだったりします。酒場でふと拾ったネタからガッチリ儲けが出た経験だって結構な割合の人にはあると思います。僕もあります。   しかし、商売が左前になってくると、この回ってくる話のリスク度合いが一気に跳ね上がります。まぁ、そりゃそうですよね。絶好調の人間を口説こうと思ったらそれなりにオイシイ話をしなければなりませんが、進退窮まっている人に持っていく話をそれほど厳選する必要もありません。ちなみにこの先には「話すら来なくなる」「来る話は大体法に触れる」というフェーズもありますが、まぁこの話はいいですよね・・・。   商売人の性質として、一つの事業がヤバくなるとそれを立て直すより「なんか別のことをやるか」という方向に行きがちです。往々にして、赤字を吐き出している事業を整理しないまま他のことをやろうとする人が多いです。実際このパターンでホームランを打つ人も意外といるので、否定しにくいところはあるんですが。それでも、強運と実力を併せ持った一つまみの人以外は、傷口を致命的に広げることになります。   「ツキがないときは何をやってもダメ」は、商売に関しては純粋に構造的な真理だと思います。上手くいっていない人間に上手い話は来ないのです。しかも、上手くいっていない人間は判断力も鈍っています。逆転ホームランを打つしかないと目が血走った人間が正常な判断を下せるでしょうか。   しかし、この話には更に辛いオチがあります。負け勝負を取り返そうと思ったら、どこかで恐怖を振り切って勝負に出るしかない、それも劣悪な選択肢の中から往く道を選ぶしかない。これもまた真理です。このとき、どういう判断を下すかは個人個人が人生を賭けて勝負するところなので、何も言えません。良い旅を祈ります。 うまくいかない時、めんどくさい人間になる 商売が上手くいっていない人間には二種類います。 異常に人前に出てくるか、人前にほとんど出てこなくなるかのどちらかです。ちなみに、僕は後者でした。だってねぇ・・・。ちなみに、このいずれも非常にダメだと思います。   理想論を言えば、どれほど商売が上手くいっても驕らず、上手くいっていなくても卑屈にならない。これが理想です。こんなの誰だってわかりますよね、そりゃそうでしょう。驕るのは論外ですし、卑屈になり過ぎればその分足元を見られるだけです。ハッタリも効かなくなります。   実際のところ、自分が完全にコケてから皆様に挨拶に行くなどしてわかったのですが、商売人は案外やさしいです。「商売が上手くいかない」みたいな苦悩を彼らは大体わかってくれます。コケて初めて「俺も2回コカしたよ」みたいな話をしてくれた経営者がたくさんいました。   だから、変に突っ張る必要も逆に卑屈になる必要もあまりなかったんですね。自分の手持ち資金や腕力を正確に把握し、ちょっとだけ大きく見せようとする。これだけで十分だったはずです。「仕事が来ないなら人脈増やすぞウォォー!!!!」みたいなテンションで夜の街を漂流する経営者は多いです。しかし、これは正直なところ「上手く行ってる人が多忙な時間を割いてやる」なら効果的だと思いますが、酒場で「コミュニケーション!」と叫んでいるおっさんは、あまり相手にしたくないですよね。特に儲かっていない人の場合は・・・。みんな敵を作りたくないのでにこやかに接してはくれますが・・・。   飲食界隈でも「客が来ないなら飲みに行け」という格言があり、これを実行されている方もちょいちょいお見受けしましたが、正直言って3回来てくれた辺りで義務的に「そろそろ行かなければダメか・・・」という心理が発生する程度です。プラスにはなりません。「オススメの店」としてお客様を紹介するにしても、自分の商売のカンバンを賭けてご紹介出来るお店に限ります。お客様にお店を紹介するのは結構怖いのです、「いや・・・好みではなかったかな・・・」と言われてしまうのは厳しいですからね。   もちろん、お客様を融通しあって商売を回しているような界隈もあります。そういう場合は例外です。この辺の政治性を勘案せずに社交をしても、コスト負けするのは多分間違いないと思います。人間、物事が上手く運ばないと必ず何らかの方向でめんどくさい人間になってしまうものだと思います。これは本当に仕方がないことですが、なるべく避けるのが一番です。本当に辛いことになります。   ここまで書いていて吐き気がしてきました。前回とも引き続きのエントリですが、辛いときは本当に辛い。しかし、経営者である以上、「俺の辛さを理解しろ」と叫んでもあまり得をすることはありません。なるべく控えていきたいものですね。   お勧めの息抜き媒体はインターネットです。商売が上手くいっていない商売人の話には結構需要があります。愚痴が言える有り難さがある。そして、仕事から離れた話も出来ます。映画や本などお金のかからない趣味も有効です。延々悩み続けるのは美徳ではありません、かなり難しい注文だとは思いますが、仕事以外の時間も確保するようにした方がいいです。   「24時間仕事のことを考え続けろ」みたいなアドバイスをする人もいますが、あれは超人向けです。上手くいっているときは一日24時間でも30時間でも仕事のことを考え続けられますが(だって楽しいし)、辛い時にそれをやっても自分を追い詰めるだけです。そもそもそんなに考えることなんて無いでしょう?賽を投げたら目が出るまで待つしかない、そんなもんですよね。   とにかく、無駄に苦しんでも良いことはありません。誰にも愚痴れないその辛さは本当にわかります。人生、あれより辛いことはそんなにありません。しかし適宜、気持ちを緩められるところは緩めて、死なないようにやっていきましょう。     ...

  連日30℃を超える熱い夏。 せめて足元だけでも涼しく過ごしたいものですよね。 そこでオススメのトレンドアイテムが「便所サンダル」です。   いま、ひそかに便所サンダルが盛り上がっているのです。便所サンダル、略して便サン。愛好者たちが履いて出かけるのは便所だけではありません。町にくり出し、デートに出かけ、どこにだって便サンを履いていきます。マキシマムザホルモン マキシマムザ亮君さん、ゴールデンボンバー鬼龍院翔さんらの著名人も便サンの愛好者として知られています。   今回はお話しを伺ったのは便所サンダル専門通販サイト「ベンサン.JP」の飯田正勝店長。倉庫を兼ねたオフィスは天井までうず高く便サンが積まれています。当初はご自宅でやられていたそうですが、流通規模が広まってきて、便サンの段ボールで部屋が埋めつくされ、日常生活に支障をきたしてきたので、オフィスを持つようになったとか。 ▲便所サンダル専門通販サイト「ベンサン.JP」   実店舗は持たず通販サイトだけでの販売ですが、2016年は年間19,000足もの便所サンダルを売っています。世界一便所サンダルを売る男・飯田さんに、ニッチ商品をネットで販売するポイントをお聞きしました。 便所サンダル専門通販サイトをはじめたきっかけ   ――便所サンダル専門通販サイトをなぜはじめたんですか?   もともとは便サンじゃなくてギョサンの通販サイトをやってたんです。   ――え?ギョサン?   漁業従事者用サンダル。略してギョサンです。 沖縄の友だちが「こっちではみんなギョサン履いてるのに本土で観たことない」って言うんですね。滑りづらいサンダルなのでサーファーや釣り人が好んで履いてるんです。   たしかに当時は誰も履いてなかったし、通販サイトもなかった。「おもしろそう、売れるんじゃない」と浅草の靴問屋街を歩いて2~3軒めぐって、40足買ってきたんです。そこからサイトを自力で作って、友人と2人で「ぎょさんネット」を立ち上げました。友人が店長で、僕はバックヤード業務担当でした。   ――すぐに売れたんですか?   それなりに売れました。 売り上げを購入資金にあてて3か月ぐるぐる回したらひと夏で200万円くらいまで増やせました。2年目も同じくらいですね。ギョサンはビーサンみたいな物なので、当時は夏しか売れませんでした。   ギョサンがブレイクしたのは2011年冬ごろで、嵐の大野くんがとあるテレビ番組で毎回毎回ギョサンを履いてたんです。冬の2月だっていうのに「ギョサン 大野」みたいな検索ワードで調べられまくってて、1日20~30PVだったアクセスが数千PVまでいきました。   ――順調だったのに、なぜ便サンに鞍替えしたんでしょうか   ギョサンってカラーバリエーションが結構あって色々集めるのも楽しかったんですけど、雪が振るとさすがに冷たい。でも「便サンなら靴下履けるし、雪の日でもいけるんじゃね」って思ったんです。   あと、ギョサンは型が2~3種類なんだけど、便サンは型が多い上に廃盤品などのレア物がたくさんあるんです。片っ端から集めてやろうと思ってホームセンターとか巡っても日本製の便サンはなかなか集まらなくて。どこにでも売ってそうなのに、現行品でさえどこにも売ってないんです。   となると、もう問屋に数十個単位で発注しないと手に入らない。根がコレクター気質なもんですから「じゃあ、大量仕入れして売っちゃったほうがいいや」と趣味と実益をかねて便サンを売りはじめたわけです。 ▲取材時も飯田店長はレアな便サンを履いていました   ――1つ手に入れるために何十個も注文しなきゃいけないなら売っちゃえと。   そんなことを考えてるときに、ギョサンや便サンのメーカー・丸中工業所に打ち合わせに行ったら「実はギョサンより便サンのほうが数は出てるんだよね」と言われまして、「それなら本格的にやってみよう!」と決意したわけです。   で、2011年に便サン絡みのドメインをバーッって10個以上取りました。取ったはいいけどそのまま放置して1年経っちゃって更新時期になりまして。更新料だけ払って何もしないのはもったいないので2012年にベンサン.JPを作って、ギョサンから便サンへ移ったわけです。いまは店長をやってた友人が一人で「ぎょさんネット」を運営してます。   ――はじめてみたら、どんな手応えでしたか?   便サンはどっちかっていうと業務利用が多いんじゃないかと思ってたんですよ。病院や介護施設、工場、厨房といったところが買うだろうと。丈夫で長持ちするのでマニアやコレクターじゃない限り、何度も買う物じゃないと思ってたんです。   でも、実際やってみると日本産の便サンを渇望してた人たちがたくさんいたんです。「前は近所で買えたのに、今はどこも売ってない!」と困ってた層がいた。最初はニシベケミカルの「VIC No.510ダンヒル」という種類の茶色と、丸中工業所の「PEARL...

  商売を始めるには、多くの場合何かを仕入れなければいけません。また、商売をする以上何かを売らなければいけません。そこには当然「交渉」というフェーズが発生します。しかし、創業したばかりの人間にとってこれは鬼門です。あなたの商品は、実績ある会社の商品より安く買い叩こうとされますし、あなたに何かを売る人間は高い値段で売りつけようとします。これは当たり前のことです、誰だってそうするでしょう。   良いものを安く買う、あるいは自分の商品をなるべく高く売る。これは商売の極意です。つまるところ、これさえ出来れば儲かります。しかし、商売を始めればすぐに突き当たるでしょう。それが恐ろしく難しいことであると。 商売という土俵は平等ではありません。圧倒的に先行者が有利です。当然ながら、後発組には無い信用と実績という積み上げがあります。大抵の場合、先行者は資金量も後発であるあなたより上でしょう。これを覆すのは並大抵のことではありません。   そういうわけで、代表取締役という輝かしい肩書を刷り込んだ名刺を持って交渉に行くのは本当に苦行です。誰もが欲しがる商品を商っているところほど、門前払いです。売りに行く時も同様です。そんな時に使える僅かな武器について書こうと思います。 交渉術1. 名刺一つで交渉は動く、強い肩書きのデメリット 非常に基本的なビジネスハックですが、あなたが社長であっても「肩書きの無い名刺」を持っておくことを薦めます。これは、社員に名刺を持たせる時にも言えます。会社を登記して、少人数で勝負している時はつい「代表取締役」とか「営業本部長」とかそういうピカピカの肩書きをつけたくなりますが、多くの場合デメリットしかありません。   まず、会社の規模を見透かされます。代表取締役自ら営業や買い付けに出向いてくる会社が大きな会社である可能性は少ないですよね、しかも20代のガキんちょだったりしたら尚更です。50代なら「トップ自ら出向いて来てくれた」という評価を得られることもあるでしょうが、若者は絶望的です。   そして、零細企業の「代表取締役」という肩書きは一切の信用をもたらしません。「フリーター」や「無職」と同義だと思っていいです。あれで騙せるのはド素人だけです。(逆に言えば、異常に肩書きをプッシュした名刺は素人を騙そうとしている可能性がありますよね。思い当たるフシ、ないですか?「ハイパーウルトラメガ超弩級課長補佐」みたいな肩書きを好む業界について)   また、商談の相手が遥かに年上で、肩書きが「係長」だった時なんかはどうでしょう。「若いのにご立派ですねェ」という侮蔑を含んだあの皮肉は本当に心に突き刺さりました。おそらく、年齢に見合わない肩書きはある種の人間の攻撃性を喚起するのでしょう。しかも、立派な肩書きがあるだけ「手加減しなくていい、若いけれどこいつは責任ある立場であり強者だ」みたいな心理的ストッパー外しの効果もあると思います。「若き経営者」の存在自体が不愉快だ、という人もたくさんいます。   もう一つ、非常に現実的な意味合いがあります。肩書きが強ければ強いほど、交渉の場において即断即決を求められるということです。「代取のおまえより強い決裁権持った奴はいないだろう」という話です。何の肩書きもない名刺なら「会社に戻って検討します」が使えても、代表取締役がその手を打つのは非常に難しい。こちらが買う立場ならまだなんとかなりますが、営業に出向いて値引きを差し込まれた時なんかは本当に辛い。「社長さんなんだからここで決めてよ、ねェ社長さん」。   「この価格では上の許可が出なくて・・・。私はこの価格で決めたいと主張したのですが・・・」のような、交渉のポジション取りもありますよね。「私はあなたが正しいと思っているけれど、会社の人間がそれをわかってくれない。だから僕と一緒にゴールを目指しませんか、一緒に頭の悪い弊社の上層部を説得しましょう」みたいな形の交渉術はサラリーマンの基本ですよね。上司を悪者にしておけば丸く収まることはたくさんある。会社のトップとしての名刺を出してしまったらこの手も使えません。肩書きさえ出していなければ「会社に持ち帰って検討します」は嘘にはならないのです。   もちろん、逆に「代表取締役」として飛び出して行く事がベストのフェーズもあります。   例えば、部下が失態を犯した時はたった二人の会社であっても代表取締役として謝罪すれば効果が大きくなることが見込めますよね。この場合、部下の肩書きはヒラがベストです。肩書きのギャップがあればあるほど、社長の下げた頭が高く売れます。あるいは、経営者同士の社交の場に出て行くときは、トップの名刺を持つ必要があります。部下を送り込む時も強い肩書きをつけてやった方がいいですね。「私には決裁権があります」という意味合いですから。決裁権のない、話の遠い相手とわざわざ社交したがる経営者はいません。   この選択肢を選べるだけでかなりマシです。そのCEOとか刷り込まれたピカピカの名刺、本当にその交渉の場にふさわしいですか?それは検討してみる価値があることです。敵は歴戦の商人です、あなたよりキャリアは上です。肩書きでビビってくれる相手ではありません。何も考えず「代表取締役」や「CEO」みたいな名刺を使っている方は、一考の価値があると思います。「実は社長です」ということになっても怒る人はそんなにいません。   交渉術というと、「喋り」とか「立ち居振る舞い」みたいなものがまず想像されると思いますが、僕はこういった「立場」の工夫の方が遥かに即効性を持つと感じました。試してみて損はありません。 交渉術2. 「信用」を融通してもらう 「信用がある人間は交渉を有利に進められる」これは間違いなく真理だと思います。逆に言えば、信用がない人間は交渉においてとことん不利です。   しかし、創業したばかりの何の実績もない人間でも使える可能性のある強力な信用獲得の手段があります。信用のある人間に「口利き」や「紹介」をしてもらうことです。これはどんな場合でも非常に有効です。営業に出向く時、商品を買い付けに行く時はもとより、士業の先生などに依頼を出す時、あるいは銀行のような巨大な組織が相手であっても「紹介」は強烈に機能します。値段も対応も驚くほど変化するでしょう。   例外もありますが、経営者は大抵、人間関係をとても大事にします。飲み歩きが主な仕事という社長も多いでしょう。これは非常に合理的なことで、「信用」は貸し借り出来るのです。経営者は、コミュニティの中で人を紹介したりされたり、口を利いたり利いてもらったりして、「信用」を融通しあっているのです。それはまるで見えない通貨のようなものです。これを融通していただけるのは、涙が出るほどありがたいことです。   もちろん、実績ある人間に「口利き」や「紹介」をしてもらうのは簡単なことではありません。ヘタな人間を紹介すれば、紹介した側も「信用」を失うからです。しかし、「口利き」をしてやって、コストをかけず大きな貸しを作っておきたい」という心理もまた存在します。「感謝されて損はない」「貸しは作れる時に作っておけ」そういうことです。「信用」を貸してくれる人は探せば意外と存在します。力のある人間に「信用」を貸しつけるのは難しいですが、創業ホヤホヤのルーキーなら小さなコストで大きな貸しを作れる可能性がある。そういうことです。   創業する時は、自分がテコに出来る「信用」を貸してくれる人間をどれだけ確保できるかが非常に重要になります。場合によっては、出資を得ることよりも重要かもしれません。それはとりもなおさず、実績のない人間の信用度を測る方法がほとんどそれ一つしかないからです。資本金の額、会社のホームページのデキ、あるいはオフィスの豪華さ、社長の着ているスーツ、乗っている車、これらがいかに信用できないものであるかは経営をしていればすぐわかってきます。(ただし、これは信頼の担保にならないという意味でマイナス評価にならないという意味ではありません。会社ホームページがショボく、オフィスがアパートで、安物のスーツを着ていれば当然信頼は得にくくなります。ここにどれくらいコストを投下するかも悩みどころです)   1人の信用を得ることが出来れば、その人に口を利いていただいて、3人の信用を得ることが出来るかもしれません。3人の信用は、10人の信用につながっていくでしょう。 交渉は「信用」がモノを言う、そして表玄関をノックするよりは、裏口から迎え入れてもらった方が良い。もちろん、全くの無策で情熱と気合いだけを武器に正面玄関から飛び込まなければならないことも多くあるでしょうが、他人の信用を融通していただいて、裏口を開けることも常に狙っていくことをお勧めいたします。信用は魔法の鍵になりえます。   ただし、この他人から借りた信用には一つ欠点があります。どんな界隈にも人間関係があり、対立があり、利害関係があるということです。ある人から口利きをしてもらったが最後、ある種の陣営に取り込まれたと認識される。そんなことだってあり得ます。   また、利害関係が一致しない人間に対して、他人が「信用」を貸し付けてくれることはまずありません。その辺りを見通す努力を怠らないことを本当にお勧めいたします。どんな利害関係が自分の所属する界隈にあるのかですら、そう簡単には見通せません。   「信用を得る」これは究極的な交渉術です。意識して損は本当にありません。 交渉術3....

  2017年5月、米グーグル傘下の人工知能(AI)開発ベンチャー「ディープマインド」(英国)の囲碁ソフト「アルファ碁」が世界トップ棋士・柯潔氏に3戦全勝したことで話題になりました。囲碁、その知名度に反して、ルールを知っていたり実際に打ったことがある人はそれほど多くありません。   そんな囲碁のプレイヤーを広げる活動をしている会社があります。その名も「IGOホールディングス株式会社」。なんともスケールの大きな社名です。誰でも参加できる囲碁イベントや囲碁の上達プログラムなど、囲碁にまつわる取り組みをしています。   2017年6月にはクラウドファウンディングプロジェクトを立ちあげて目標額を達成しました。募った資金で「囲碁打てます」と書かれたステッカーを作り、囲碁が打てる人を可視化しようと試みています。   今回はIGOホールディングスの井桁健太代表に、世にも珍しい囲碁ビジネスの今についてお話しをお伺いしました。 事業戦略その1. 「3ヶ月で囲碁初段プロジェクト」。成長意欲が高いビジネスマンがメインターゲット   ――IGOホールディングスはいつ立ちあげたんでしょうか   2015年5月15日設立なので今年で3期目です。ちょうど囲碁年(2015年)のGO囲碁(5月15日)の日に、囲碁仲間4人で立ちあげました。   ――いまもその4名でやってらっしゃるんですか   喧嘩別れではないですが、現在は私1人です。もともと私は食品メーカーの営業を1年8か月やってまして。趣味で囲碁イベントを主催してました。そのうちに「これを本業にしてみたいな」と思うようになってメーカーを辞め、イベント時など一緒に動いてたメンバー達と会社を作りました。   特に起業するつもりがあったわけじゃなかったんですが動けば動くほど「あなたたち4人はどういう関係なんですか?」とメンバーの関係を聞かれるようになりまして。囲碁という共通点はありましたがやってることはバラバラだったので、外から見たときに分かりやすいよう箱を作ろうと会社にしました。   ――どんなメンバーがいたんでしょうか   例えば、プロ育成の子供向け教室をやってるメンバーがいました。彼の場合は「人生を決めようとする子どもたちとその覚悟を受け止める自分がいる一方、ビギナーの方を相手にする自分もいて、その両立が難しい」と会社を抜けました。いまも、なにか一緒にできることがあれば手を組もうという関係です。   IGOホールディングスは業界の高齢化もなんとかしたいとも思っているので、どうしても現役で働かれている方が多くなり、ゼロから始める人に向けての働きかけが多いんです。ビギナーの方と対局したり、振り返りをする際にはまず良かったところを伝えます。悪かった手は「悪かった」と言わず言葉を変えて「改善すべきところ」として伝えています。   ――現在、IGOホールディングスはどのような事業をされてるんでしょうか   個人のお客さまへのレッスンが収益の柱です。特に「三か月で囲碁初段プロジェクト」ですね。ビジネスマンは仕事で忙しいですから、短期間に集中して取り組んで上達をしようというものです。囲碁は一度覚えれば一生楽しめますので、そういうスタイルの方が向いていると思っています。(現在は第六棋生を募集中)BtoBはこれからです。囲碁を企業研修に入れられないかなと考えています。   ――3か月で初段。普通なら初段取るのにどれぐらいかかるんですか?   1年半~2年かかるのが一般的ですね。囲碁初段をとる難しさは、マラソンでいえばサブ4(フルマラソンを4時間以内で走ること)と同じくらいです。初段プロジェクトではプロジェクトメンバーとして10名募集して、3か月フルコミットで挑戦します。認定大会という公式の大会がありまして、初段を目指す人同士で対局して4戦中2勝すれば初段です。これまで50人参加して10人が初段になりました。   少しでも囲碁を知ってる方をプロジェクトの対象にすれば、もう少し合格率が上がると思うんですが、本気で「やってやるぜ!」と奮起する人ってそれまでまったく囲碁に触れたことのない人が多いんですよ。   ――まったく囲碁やってない人のほうが多いんですか。初段プロジェクトって178,000円しますよね。まったく囲碁をやったことがなくて、その金額払うのはどんな層なんでしょう?   成長意欲が高い人が申し込んでくれます。30~40代のビジネスマンが多いですね。男女比率は半々ぐらいです。単なる囲碁教室なら他の教室でもいいわけで、それでは差別化になりません。囲碁教室側からすれば長く通ってもらえば長く通ってもらうだけいいわけですから、普通は「3か月で初段」みたいに期限を決めないんです。そこを我々はあえて決めてしまう。   プロジェクトの金額は囲碁教室の相場からすれば少し高めですが、ビジネスマンにとっては時間への投資でもあります。「こういうプロジェクトなんだよ」と明確で高いゴールを説明すると、成長意欲が高い人が「よっしゃ、とってやるぜ」と本腰を入れていただけるわけです。そういう方々にとって初段プロジェクトは非日常で学びもありますし、知的な出会いもあります。   ――成長意欲の高い人が新しい思考ツールを手にいれるための囲碁ってわけですね   そういう方たちは囲碁を打つことだけを目的にしてないんですよ。例えば以前、朝7時からスタバでやる朝囲碁を開催してたんですが、お越しになる方々と接していくうちに「早起き」に価値を見出してるんだとわかりました。   ――ああ、囲碁を動機に早起きできること自体が商品価値だと   そうですね。会社のビジョンとしても「知的な出会い」を掲げています。年齢・性別・言語・国籍・人種・身体能力の6つのコミュニケーションの壁を超えた出会いですね。囲碁に興味を持ってやって来る時点で気が合う。参加者にフィルターがかります。そういう人たちとの出会いも価値だと考えてます。 事業戦略その2....

  みなさん日々、仕事上の様々なことで頭を悩ませていらっしゃるかと思います。そしてその多くが「考えるべき課題の答えが見つからない」ということではないでしょうか。私も企画の仕事をはじめて14年経ちますが、1年目より結論を導くスピードが速くなったかと聞かれたら、そんなことは全くなく、今でも同じように頭を悩ませています。   しかし、一方で。この14年間でスランプに陥った時の対処法、脱出法のようなものは14年の中で開発してきました。   その中でも最も使えるのが「視点の変え方、作り方」です。   そこで今日は、どんな職種でも使える「視点の変え方、作り方」についてお話したいと思います。 視点を意図的に変えると「考える」は爆発的に進む ビジネスのアイデアを生む時、担当する商品やサービスのアイデアを生む時、また表現のアイデアを生む時にうまく進まないのは大抵「視点が限定的」であるためです。つまり、視点を増やすことができればそれら作業は驚くほどスムーズに進められることができます。   以下に私が使っている具体的な「視点の増やし方」をご紹介しますので、ご自身のお仕事に取り入れてみて下さい。   1. 他者になりきる   これはまさに「視点を変える」方法です。意図的に他者になりきることにより「別の目」で課題にアプローチします。「どうやってなりきるの?」という方には「ものまね」をお勧めしています。まずは自分の身近な人から。その人が課題を直面した時に言いそうなこと、思いそうなことを想像してみるのです。そして、その視点のまま課題にアプローチしてアイデアを出して下さい。   少し慣れてきたら人間以外にも挑戦してみましょう。課題そのものに視点を設け、考えている自分を見たらどう思うか、何と言うか。考えあぐねている自分を、飼っている犬がみたらどう思うか。たまたま通りかかった宇宙人がこの状況をみたら何と言うか、を想像し、書き出してみるのです。   この方法の良い所は、他者になりきった数だけ視点が生まれるということです。自分の目でしか見えていないことも、意図的に他者の目で見ることで思わぬ発見があります。   2. 「らしくない」形容詞をくっつける   これも視点を作ったり、変えたりする上でとても有効な方法です。課題に絶対合わなそうな「らしくない」形容詞を強引につけることで新しい視点を生むというやり方。   ジェームス・W・ヤング氏が著書『アイデアのつくり方』で言っている「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである」という考え方がありますが、まさにこれを使って視点を生むのです。   例えば「今までにない本屋を考えてみよう」という課題があった時、「かわいい本屋」「怖い本屋」「硬い本屋」などと列挙していきます。「かわいい本屋」はJKをターゲットとした本屋のアイデアにつながるでしょうし、「怖い本屋」はお化け屋敷と本屋を融合したイベント施設のアイデアにつながります。どれもあくまで「一次アイデア」ですので過去事例との照らし合わせ、深堀り、フィジビリティの検証などは必要ですが、ブレストのテーブルにはのせられるはずです。   一方、「話題になる採用方法を考えろ」という課題があった時、「早い採用」「長い採用」「やさしい採用」などと列挙していきます。自分を写メで撮っただけで就活が終わる「1ショット採用」、大学4年間をかけてじっくり採用活動を行う「ダラダラ採用」、圧迫面接とは程遠い「接待面接」など、少し考えだだけでも色々なアイデアが生まれます。   「らしくない」をくっつけることで自分の脳が活性化され、視点を容易に増やすことができるのです。   3. 再定義する   最後にご紹介するのはこの記事(コピーライターが教える。ビジネスで使える「強い言葉」の作り方)でも触れた「再定義」を使った視点の作り方、増やし方です。課題を一度要素に分解し直し、分解した要素を独立させたり、どれかを強めたりすることで視点を作り出します。   例えば「本」を「トイレで読むもの」と再定義すれば「100冊の本が読める有料個室トイレ」というアイデアを生むことができますし、「インテリに見えるもの」と再定義すれば「洋書100冊付き本棚」という商品のアイデアを生むことができます。課題の近くにあるターゲットの潜在ニーズも意識しながら考えるとより精度の高いアイデアが生まれます。   「再定義」という方法は、少し違った角度から光を当て直して視点を作るというイメージですので、前の2つとは若干ニュアンスは異なりますが、確実に脳の切り替えを行ってくれます。 まとめ 以上、「ビジネスで使える視点の変え方、作り方」をお伝えしました。上記でご紹介したのは私の方法論ですので、どんどんご自身で開発したものを増やしていくと良いと思います。いずれにせよ、意図的に、強制的に視点を変えるテクニックを持つことで、企画スランプ、思考スランプから早く抜け出せたり、スランプに陥らずに済んだりします。   仕事を円滑に進めるテクニックの一つとして、活用されてみてはいかがでしょうか。     ...

  僕は26歳から会社を経営しております。現在も一応、法人は残っているので、今年で6年目になるわけです。色々なことがありました。事業が5年続くというのは、実のところを言いますとかなりレアケースです。ちょっと調べてみたら、5年続く会社は15%くらいみたいですね。でも、実を言うとこのデータ怪しいと思います。というのも、僕だって現在も法人は生きているんですよ。事業がもう動いていないだけで。このデータ上、僕は「生存」にカウントされていると思います。   もちろん、法人は維持費がかかりますから休眠や解散を選ぶ人も多いと思いますが、様々な便宜の問題で事業が終わっても存続させることが多々あります。大量に赤字積んであったりもするし、リベンジを志す人もいるでしょう。僕もそのケースです。たまに「借金玉社長」って呼ばれると「勘弁してください」という気持ちになります。まぁ、そんなわけで企業生存率は5年で15%より大分低い、というのはほぼ間違いないと思います。しかも、これ「法人」での起業に限っての数字ですからね、なんだかんだお金のかかる法人登記をせず、個人事業で起業するケースだって多々あります。そちらの生存率も、まぁ高くはないでしょう。   同期に起業した若手連中は、もう連絡がつく人間がほとんどいません。自分の成功を1ミリも疑わなかった皆さんが、どんどん消えていきました。しかも原因は「事業の失敗」ばかりではないんですね。突発的に悲惨な出来事が起きる会社が大変多かった。そういうわけで、悲惨な事態に遭遇した企業経営者のケースを僕が知る限り書いてみようと思います。 持ち逃げ 会社を経営している皆さんにとってはあるあるだと思いますが、本当に多いですよね・・・。僕の周囲でも数件発生しました。そのまま即死した会社もありました。創業期の会社のお金の管理というのは、往々にして杜撰です。しかしこれ、つまるところ仕方ないことでもあるんですよ。というのも、プレイヤーに決裁権限を与えず都度確認を取るということは、イコールで社長の業務負担が増えるということです。「信用するしかない」という悲しい現実があります。プレイヤー社長の会社なんかでは、「社長が会社のカネについて全く把握できていない」なんてこともよくあります。でも、それはそれで合理的はあるんです。カネの面倒はカネの面倒を見るのが得意な人間がやればいいわけで。   ある日突然、口座の金がスっと消えます。また、諸事情(大抵ろくな事情ではない)から現金を金庫なんかに突っ込んでいた場合もスッと消えます。同時に人間が消えます。起きた時点で全損を覚悟しましょう。回収はほぼ不可能です。また、刑事事件にもなかなかしにくかったりします。まぁ、想像はつきますよね。口約束で全てが進展しがちな創業期の会社におけるお金の権利なんて、大抵がグチャグチャです。果てしなく裁判で争うことになるでしょう。言った言わないあいつが悪い、俺は被害者だ、想像出来る限り最悪のことが全部起きます。   「金を盗まれたんだ」と主張しても支払い日は待ってくれませんし、従業員は給料の遅配を許してはくれません。そして、盗んだ人間を処罰するにもお金がかかります。刑事事件にするということはつまるところ、相手の弁済能力を下げる結果にすらなります。民事で泥沼の戦いをしても、得をするのは弁護士だけです。現金の持ち逃げカマす奴に賠償に充てられる資産なんてあるわけもない。そして、これは「やられた!」という社長あるあるなんですが、「俺にも後ろ暗いところが自分にもあるから公式に裁けない・・・」というあれが大変にありがちです。詳細とか語らなくていいですよね。コンプライアンスは最終的に自分の身を守るためにあるということです。   創業直後の会社は大体コンプライアンスなんてガン無視しています。「何それ?食えるの?」みたいな話だと思います。それはそれである意味仕方ないのですが、いざ大問題が起きた時に大変なことになります。風向きがいいときはナアナアでやっていけた相手も、いざ大問題が起きると容赦なく殴りかかって来ます。   創業当初から、「とにかく身綺麗にする」ということは心がけた方がいいでしょう。会社の経営者というのはやろうと思えば様々なあまり順法的ではない小細工が出来ます。しかし、その小細工に他人を利用していた場合、そこには回避不能のリスクが出てくるということはとにかく認識しましょう。本当に生死を分けます。「表沙汰にしたら俺も社会に怒られてしまう・・・」みたいなパターンは本当に辛いと思いますが、自業自得と言う他ありません。   「あれをこうすればばめっちゃ良い感じじゃん。問題はバレたら怒られることくらいで」みたいな発想、経営なんかしているとどんどん出てくると思います。コンプライアンスと100回唱えて悪魔を振り払いましょう。部下が金を持ち逃げしたのに怒ることすら出来ない。そういう羽目になった社長、いっぱいいます。 横領 これもまた実にあるあるです。例えば飲食店経営で他人を雇ってお店を任せた場合これを完璧に防ぐ方法は無いと言っていいと思います。ラーメン10杯分の原料で11杯作って、1杯分の売り上げをポケットに入れればいいだけのことですからね。経営者が現場に精通していない場合なんて、やろうと思ったらナンボでもやり放題だと思います。「誰かを雇って、あるいは出資して飲食店をやろう」というタイプの人はこの点について考えておくことが大事です。   横領は実際のところ思った以上に簡単です、特に創業初期の会社にコアメンバーとして入っているのならば、やろうと思ってやれない環境の方が珍しいでしょう。つまるところ、横領などの不正が不可能な状況を作るコストが高すぎてやれないという話にもなります。100万の横領を防ぐためには300万かかってしまう、そういうことはよくありますよね。   また、横領に関しては社長自体がやることもよくあります。出資者が会社のお金の流れに明るくない場合なんて完全にやりたい放題ですよね。誰が住んでいるのかよくわからない社宅、出社してこないアルバイト、何をしているのか誰にもわからない役員、御社にも存在するのでは?色々書類を眺めていると人類の悪さが見えてくることはよくあります。出資を考えている皆さん、この点はとにかくよく見ておいた方がいいですよ。   また、横領というのは往々にして会社が好調の時に起こります。毎月赤字を垂れ流しているような状態なら流石にお金のよくわからない動きがあれば気づきますが、ガンガン利益が流れ込んで来ている時にそれに気づくのはとても難しい。事業自体は好調なのにこのような事態が社内で発生し、そのまま空中分解してしまった会社もありました。最終的には刃物などが登場し警察が介入したと聞きますが、本当に不幸でしたね・・・。   ちなみに、横領に関しても「表沙汰にしたら俺も怒られるから表沙汰に出来ない・・・」という話がよくあります。横領ブチかまして退職して、元気一杯次の横領が出来る会社を探しに行く人類は存在しますよ。 社員が全員辞めた 「社員が全員辞めてしまった」というお話、聞いたら笑っちゃいますよね。僕も起業する前は「どんだけアホならそんなこと起きるんだよ」って思っていました。しかしですね、創業初期の会社では普通に起きます。想像してみてください。わりと儲かっている社員5人の会社、そこから5人の社員をまとめて引っこ抜いたら、すぐに儲けが出る会社がやれたりするわけですよ。そりゃ引っこ抜きますよ。   創業初期の会社というのは人材の奪い合いです。市場に「すぐに利益を出してくれる人材」なんてそんなに転がっていません。転がっていてもとても値段は高い。社長さんたち「他社の有能なあいつ欲しいなぁ・・・」と思ってコナかけたこと絶対ありますよね。正直に言うと、僕もあります。自社の人間に他社からコナかけられたらブチギレてましたけど、コナかけたことはある。しょうがないじゃない、経営者だもの。   有能な社員を囲っているが経営者への不満が蓄積している会社、というのはたまにあります。また、社員は有能なのにも関わらず経営方針がイマイチで利益が出ていない(社員に十分な給与を払えていない)会社なんてのもあります。そりゃ奪い取りに行きますよね。有能な人間というのは現金が落ちているようなものです。拾わない手はない。   有能な人間を雇うのは難しいですが、有能な人間を雇い続けることはもっと難しい。更に、有能な人間は当然ながら「俺が経営する側に回ればいいじゃん」という発想にも至ります。具体的に言うと、「社員全員引き連れて退職して全く同じ事業内容の会社興せばいいじゃない」というのは大変正しいのです。「この会社に最も必要ない人間は社長ですよね」というお話です。俺が興した会社から俺が追放された、そういう悲しい物語は本当にいっぱいある。   また、創業初期の会社というのは当然ながらメンバーにガンガン裁量を振ります。会社にシステムがないんだからそれしかありません。そういう場所では人間がどんどん成長します(さもなければどんどんリタイアします)。当たり前ですよね、仕事しているわけですから。他人がほどよく育てた果実をベストなタイミングで収穫するの、やりたいに決まっていますよね。しかも、大手から引き抜くブランド人材と違って給与も安く抑えられますし。これらの構造的圧力を上手いこと捌くことが出来なければ、「コアメンバーが全員退職した」なんて事態は、むしろ起こって当たり前です。 どうしましょう? ちなみに、これらのケースは「事業が上手くいって収益が上がっていたとしても尚起きる」問題です。こういう問題以前に「そもそも事業が上手くいかない」という話があります。これから創業を考えている皆さん、是非とも徹底的に考え抜いておいた方がいいと思います。考え抜いて考え抜いた末に「対策はない、問題が起きた時に困ろう」という決意に辿り着くとしても。心の準備だけでもあれば大分マシです。   これらの問題の発生を防ぐことはもちろんできます。やり方はいっぱいありますよね、持ち逃げや横領を防ぐ方法はありますし、社員の退職や引き抜きを防ぐ方法だってないわけではない。では、これらを有限の資源の中でやっていくにはどうしたらいいのか?というお話です。へこんだアルミ缶を元に戻すような話です。あっちを叩けばこっちが出っ張る。完璧を目指して頑張った結果、見事社長が過労死という話もあります。   話にオチがなくて恐縮ですが、この話の一番大きい教訓はコンプライアンスだと思います。コンプライアンスを守らない者はコンプライアンスに守られません。「俺は上手くやるから大丈夫」という人もいるでしょうし、それはもう止めませんが、そこまで思えない人はとにかく身綺麗にしておくことが身を守る上で最も重要だ、という点を覚えておいて欲しいと思います。   そして、連絡が完全につかなくなってしまった皆さん、僕はとても寂しいです。いつかまた、どこかで酒でも飲み交わしましょう。僕はまた頑張ります。やっていきましょう。     ...

  「ブラック企業が嫌いだ」といって反対する人は少ないだろう。定時よりフレックスの方が楽だし、有給休暇はたくさん欲しい。早く帰りたいし、給料は高い方がいい。もちろん私だってそう思ってきた。これまで個人事業主になるのも含めれば2回転職してきたが、いずれも、よりホワイトな労働環境を目指しての行動だった。   現在は1日平均8時間勤務、休暇は自己判断、年収はそこそこ。概ね満足している。しかし将来は子供もほしい、となれば多少背伸びをしてでも仕事を頑張りたい。   そうなると一番手っ取り早いのは、人を雇ってメールの返信や請求書作成などの事務をお願いすることだ。私は執筆業をしているので、原稿に向かう時間が増えれば収入が増える。無理に原稿料の単価を上げるよりも現実的だろう。   そこで初めて「ブラック企業の仕組みがどれほど雇う側から見ると魅力的か」と危うい知見を得てしまった。今日はその話をしたい。 零細企業が与えられる便益は「やりがい」くらいしかない そもそも個人事業主レベルの売上というのは、どこまで行っても零細企業並みである。年10億稼ぐ企業はごまんとあるが、年10億稼ぐライターなんて聞いたことない。新書で100万部売れたって、印税は6千万円くらい。毎年ミリオンセラー出しても企業にはかなわないのだ。ましてや私のような駆け出しライターをや。   というわけでアシスタントに出せる年収はあまりない。これが漫画家なら「先生のテクニックを盗んでいつかは自分もデビュー」なんて夢もあるが、ライターのアシスタントが文章を実際に執筆する例は少ない。せいぜい精度の高い資料の読み込みができるようになるくらいだろう。となると、私のような零細雇用主はやりがいをムリヤリ作るくらいしか応募者を集める術がない。   となると、応募項目はこんな風になってしまう。 「デビューから2年で独立! 次のヒットメーカーになれる職場」 「最速成長を実感できる」 「世界のどこでも働ける人材、なってみたくありませんか?」   なんと抽象的でブラックなフレーズだろう。こんなの、自分のアシスタント応募で書きたくない。たとえ本当に採用された方がやりがいを感じてくれるにしたって、嫌だ。 そうしないと零細企業には人が来ない現実 ところが相談した人材紹介会社の方は、こうおっしゃるのだ。   「でもね、怪しいやりがいでも書かないと零細企業に来てくれる人なんていないんですよ。ホワイト環境で働きたい人なら、誰でも福利厚生がしっかりした大手で高年収狙いますから。そうじゃない時点で応募者にも何かあるんですよ。 たとえば『やりがい』という名のもとに搾取されるのが好きという人は一定数いるんです。搾取されたい人はホワイト企業へ就職させても『やりがいが無い』って言ってすぐ辞めちゃって、結局、激務ブラックを選ぶ。採用者が嫌でも、零細企業でちゃんと働いてくれる人が欲しければブラックな文言を入れなきゃいけないんです」   だったら正規雇用は諦めて、派遣さんを雇おうか。けれど調べていくうちに、もっと嫌な事実と直面してしまった。正規雇用の方が人件費は安い。ある程度優秀な派遣社員なら、時給1,200円は払わないと成り立たない。それより退職金ナシの正社員の方が、よほど安いのだ。   調べるうち「正社員はクビにできないと言われるが、会社を廃業させてしまえばそのまま解雇できる。その後、別会社を立ち上げればよい」という恐ろしい文言まで見かけてしまった。正社員は安定しているなんてウソだ。経営者が「そこそこ優秀な人材を限られた予算で雇いたい」なら、やりがい搾取するのが一番合理的なのである。 下のさらに下を行く雇用の存在 さらに、社会的にマイナスとなる事情を1つでも抱えている人間は搾取の対象にされやすい。たとえば前科がある人、精神疾患で経歴にブランクがある人、知的障がいを抱える人。該当する方は「最低賃金でも貰えるだけマシと思え」的な扱いを受けることもある。   前科といっても過失によるものかもしれない。薬さえ飲めば通常勤務できるかもしれない。知性が必要な労働なんて全労働の何割だよ? そんな鬱積を雇用市場は「純粋なんだね」の一言で飲み込んでいく。   実際、統合失調症で今も闘う方から「これでも雇用があるだけマシ。じゃあ障がい者へも最低時給を適用しろって言ったらどうなると思いますか。クビになるだけです、私たち。それよりは少しでもお金をもらってる今がいい」と言われてしまった。その通りだ。だが中には「時給200円」で働かされるケースもあり(https://lmedia.jp/2015/09/01/67140/)、経済的虐待と言わざるを得ない。……言わざるを得ないが、零細雇用主にとってこれ以上合理的な選択肢があるだろうか。悪くなることは、なんと楽なことか。 実利を与えるのが、せめてもの善意 「じゃあ、零細の雇用主がこの絶望的だけど合理的な雇用環境でできることって何があるんだろうか」   という問いが、この数か月私の脳裏をぐるぐると回っていた。   結論としては2つ。   まずは賃金をできる限り上げることだ。ベンチャー創業期など、厳しい時期はあるだろう。しかし新興企業は助成金や補助金も多いため、雇用で補助金をもらいやすい。それを元手に給与を増やすことはできる。   次に「実になるやりがい」、すなわち将来のカネになるスキルを与えることだ。たとえば執筆が仕事の私なら、就業時間内の研修で実際の執筆方法を教えればよい。本当にライターとして育成し、独立できるシステムができればうちを踏み台にして羽ばたいていける。「こんなところ早く卒業して、別のところで立身出世しなさいよ」というのが、零細雇用主にできる最大のサポートだろう。   一方であまりに権限を与えすぎると、今度は会社を丸ごと乗っ取られたり資金を持ち逃げされたりするかもしれない。世界を率いるビジョナリー・カンパニーだって会社をわざと僻地に作って社外の交流を断絶させたり、会社を讃える歌を作って信仰心を高めたりしているのだ。零細だってそれくらいしなければ裏切者が出る。合理的な範囲で経営するなら、性善説ではやっていけない。   そんな風にして、今日も零細の雇用は回っている。     ...

  早いものでもう7月、すっかり夏である。   夏といえば怪談・ホラー。 今回紹介するのは『謎解き型ホラーゲーム』という一風変わったお化け屋敷「シカバネ」である。怖いものが苦手なのでお化け屋敷をさけてきた人生だが、これはまったく新しいエンターテイメントだと実感できた。  ...

  学生時代の、思い出のお店があるだろうか?僕にとって、「みよし」という京都のラーメン屋がそれにあたる。今からそのラーメン屋の話をしたい。何の宣伝も、何のオチもない。     高校3年生まで神奈川県で過ごし、大学生になる時に京都に来た。わざわざ関東から京都の大学を受験した理由は言うまでもなく「一人暮らしがしたいから」であり、加えて「関西弁の女子にモテまくってブイブイいわせたいから」である。   実家を離れ京都に向かう途中のことを、鮮明に覚えている。期待と不安に胸を膨らませて、という表現があるがまさに文字通りのそれだった。関西に住むのは人生で初めて。   阪神タイガースのユニホームを着たゴリゴリの関西弁の男達が自慢のタコ焼きを振りかざしながら「ナンデヤネンっっt!」と叫びながらとんでもなく鋭いツッコミをいれてくる。   ヒョウ柄の衣装に身を包んだゴリゴリの関西弁のオバハン達がヒョウ柄のカバンから取り出したヒョウ柄のアメちゃんをマシンガンの如く乱射し「カメヘンっ、カメヘンっっっっt!!カメハメハっっぁっっっtああああゔぁあwぽえkp〜!!!」と絶叫している。   そんなスラム街を想像し、興奮しつつ身構えていた。   標準語は、嫌われてしまうかもしれない。     蓋を開けてみると関西の人達はオープンで暖かく、標準語の男性も直ぐに輪に入れてもらえた。タコ焼きを振りかざす魔人もアメちゃんをブッ放つ狂人もいない。会話のテンポが多少違うだけだ。   まだ桜の残る大学生活の始まりの頃、「京都はとにかくラーメンがウマいんだ」と言われて大学の先輩に連れて来られたラーメン屋。それが「みよし」である。   まず当時の僕が何に衝撃を覚えたかと言うと、京都はラーメンが美味い、という説明の元、満を持して連れて来られたラーメン屋が、「長浜ラーメン」だったこと。京都の一押し料理が、博多ラーメンだった。え?京都ラーメンじゃないの?   「いや、京都と言えばラーメンが最高なんだが、“京都ラーメン”なんてものは、ない。京都のラーメンは全て輸入品だ。でも京都のラーメンは最高。だから大丈夫だ。最高だから大丈夫。」そんな、よく分からない雑な説明を受けたのを覚えている。輸入品って何だ。   店の床は油っぽくて、お世辞にも清潔とはいえない。店主の小柄な金髪のオバちゃんが印象的だった。そして「みよし」のラーメンは死ぬほどウマかった。   ウマい。あれ。恐ろしい程ウマいぞ。余りにウマかったので、それが京都じゃなくて博多のラーメンだとか何だとか、そんなことは一瞬でどうでも良くなった。ウマ過ぎる。   どこ発祥のラーメンだとか何だとか、そんなつまらないことに拘っていた数分前の自分を撲殺したい。輸入品って何だ、って何だ。最高。一気食い。替玉。そんな感じで見知らぬ土地での生活は始まった。     昼に友達と「みよし」を食ってから学校に行き、授業を切り上げて酒を飲み始める。金がなくなっては親に仕送りをせがみ、その仕送りで「みよし」を食う。金が二進も三進もいかなくなると渋々バイトを始めるが、当日になるとバイトに行くのがダルいと項垂れる。   皆で勉強しようぜと学校で集まっては勉強などせずにダラダラし、とりあえず「みよし」を食う。単位が足りないと嘆き、そして足りない単位を忘れるために飲み会へ。   飲んだ後はベロベロで「みよし」を食ってから帰って爆睡し、次の日の授業は寝ブッチする。寝ブッチしてやることがないので、とりあえず「みよし」を食う。   その生活はと言えば、まさにどこにでもいる典型的な阿呆な大学生のそれである。一つ他の学生との違いがあるとすれば、「みよし」を食い過ぎているところくらいだ。「みよし」を、ラーメンを食べる回数が、異次元過ぎる。     あれ?さすがにラーメンばかり食い過ぎているんじゃないか?ラーメンばかり食べて、栄養が偏ってるんじゃないか?   ある日、突如として自らの健康面が不安になってきた自分は、野菜を摂取するために思い詰めた表情で再び「みよし」へと歩みを進めた。   食べ慣れたラーメンの上に、普段とは比べ物にならいほどの「ネギ」と想像を絶する量の「高菜」を乗せ、それをムシャムシャと食べる。むふふふふ。これだけネギと高菜を食べれば、野菜に関しては一切問題ないだろう。ラーメン健康法。これが当時の私の理論だ。   ネギと高菜を増やせば大丈夫。この、ラーメンの上に乗っている具材だけで自らの栄養バランスを軒並みコントロールしようとする強引な姿勢は、ベロを出しながらハァハァする活動だけで身体全体の体温を軒並みコントロールしようとする「犬」に通ずるところがあるだろう。ん?   例えが独特過ぎてよく分からない。     歌手のGacktは炭水化物をほとんど食べないが、年に一度だけ特別に炭水化物を摂取する時がある、それは「みよし」のラーメンを食べる時だ。こんな噂があった。   店の人に聞いてみると、実際にGacktが時々来るらしい。あの美食家のGacktも認めたラーメン屋。Gacktが時々来るラーメン屋。「みよし」を知らない人に「みよし」の説明をする時には、度々、Gacktの名前が出て来た。   みよしとGacktの関係性は、噂で広まるほどに誇張されていき、「Gacktが定期的に来るラーメン屋」になったかと思えば「Gacktが毎週のように来るラーメン屋」と語る人間まで現れた。   このまま噂が捻れていくと、いつか「みよし」は「Gacktが毎日いるラーメン屋」になり、やがて「Gacktの立ち上げたラーメン屋」になり、いつしか「Gacktの実家」になるだろう。そしてやがて「Gacktの認めたケーキ屋さん」になり、最終的に「CHAGEとASKAが出会った喫茶店」になる。間違いない。噂とはそういうもんだ。ああ恐ろしい。   ちなみに相当回数「みよし」を食べたが、残念ながらGacktは一度も見た事がない。     平和な時間が、ダラダラと流れた。標準語だったその男性もいつからか立派なエセ関西弁を使いこなすようになっていた。関西にかぶれたのである。気付けば、大学4年生になっていた。   毎日、授業がダルい、バイトがダルい、単位が足りない、と言いながら皆で飲み、ダベり、遊び、ただ漫然と時間を過ごしてきただけ。特に何も学んでいないし、何も成し遂げていない。そんな非生産的な大学生活は、悪くなかった。いや、控えめに言っても最高だった。たくさん友達が出来た。   社会人を目前にして、京都を離れて関東に戻るのが寂しくなった。京都最期の日は、「みよし」を食べようと決めていた。   関西の思い出は常に「みよし」と共にあった。最終日は友達が送別会を開いてくれる予定になっていたので、その飲み会の後に来るよと、「みよし」のオバちゃんに伝えておいた。     迎えた最終日、送別会で盛大に酒を飲んだ自分は、見事に潰れてしまった。飲み会の後に「みよし」に行くはずが、居酒屋で眠ってしまったらしい。   飲み会は夜通し続き、朝方に目覚めた。起きた瞬間、「みよし」に行きそびれたことに気付いた。営業時間を過ぎている。   せめて謝りたい、まだ誰かいるかもしれないと思い半泣きの千鳥足で「みよし」に向かった。店に着くと、バイト全員を帰したオバちゃんが、一人で店を開けて、自分のことを待っていた。   ずいぶん遅かったじゃないの、待ちくたびれたわよ。ネギと高菜が鬼のように乗った、いつもの健康そうなラーメンが出てきた。オバちゃんは、お金はいらないと言った。東京に行っても頑張りなさいと言った。涙が出た。   オンオンと泣きながらラーメンをすすり、自分の鼻水をスープにドバドバと垂らしてはそれをグイグイと飲むベロベロの青年は、そうとう気持ち悪かっただろうと思う。オンオン、ドバドバ、グイグイ、ベロベロ。   有難う有難うと言い、嗚咽を洩らしながら替玉まで食べ切った。スープが五臓六腑に染み渡って、それが至高の満足感をもたらした。大学生活が終わった。     それから随分と時間が流れ、先日、実に7年ぶりに「みよし」に行った。京都の最終日に食べて以来。   店に入ると、当時と変わらず小柄なオバちゃんがラーメンを作っていた。「みよし」に通っていたのは二十歳前後。   もうアラサーになった自分にはさすがに気付かないだろうと思いラーメンをシレっと注文すると、ネギと高菜が恐ろしいほど乗った、いかにも健康そうなラーメンがシレっと出てきた。「ずいぶん久しぶりじゃないの」。ああ、あの頃のままだ。   昔を思い出しながら、ラーメンをすすると、懐かしい味がする。「オバちゃん、俺の最終日に店を開けてくれていたのは、本当に感動したよ」   遠い目をしながらとうとうと思い出話に浸り始めた私に対して、オバちゃんは間髪入れず、「え?そんなことあったっけ?」と言った。辺り一面に、不穏な空気が流れた。え?なに?あの感動のエピソードを…覚えてないの!?!?   自分の中で美しい思い出となっているそれが相手と共有出来なかった時のシュールさは、物凄い。てっきり相手にとっても美しい思い出になっていると思い込んでいた。「勘違い野郎」である。   感動的なエピソードであるという自負からトンでもなくドヤ顔で語っていた自分は、何とも言えない恥ずかしさを覚えた。どうも自分の中で記憶が美化され過ぎたみたいだ。あれ?おかしいな。こんな筈じゃなかった。あれ?まあ、いいや。もう今さら、何でも良いや。   ラーメンが、相変わらずクソほどウマかった。細い麺が汁に絡んで、タマらない。スープが胃に染み渡って仕方が無い。京都のラーメンは最高だ。一気食いして、替玉を頼んだ。京都のラーメンは最高。       京都のラーメンは、最高だ。       ...

  起業は実際のところ、ほとんど何でもありです。資金調達、メンバー集め、経営方針、株の分配、事業内容・・・実にたくさんの要素が存在しますし、全く同じ形の起業なんてものは2つとしてありえないと言っていいでしょう。そもそも株式会社以外の会社形態だって存在するわけですし。人間がそれぞれ全く違うように、会社のあるべき姿もケースバイケースです。これこそが正しいというやり方は間違いなく存在しません。成功すればそれが正しいやり方なのです。   しかし、僕が自分の経験から最も重視するのは、創業期における社長のポジションです。実際、社長の業務というのは実に様々です。「ほとんど何もしない」という社長さえ存在します。このお話はどれが正しい、というような結論を出す話ではありません。実際のところ、起業をするときに自分の経営者としてのあり方を選べるなんてことは稀です。自分の持っている強みを生かして起業するしかないのですから。   しかし、その際のメリットデメリットについては考えておく必要があると思います。僕の知る限り、あるいは思いつく限りお伝えさせていただきます。業種を分類せず一般化して語っているのでその辺は多少雑ですが、雰囲気は掴めると思います。 創業者① スタープレイヤー社長 収益を生み出す基幹となる異能を社長自身が有しているパターンです。例えば、腕の良いプログラマであるとか料理人であるとか、誰にも真似出来ない商品開発が出来る、みたいな場合もあるでしょう。逆に「売る」方に特化した営業モンスターなんて場合もあるかもしれません。営業請負会社なんてのもありますし。   このパターンのメリットはまず、創業期における業務遂行の手堅さです。それこそ、部下の誰が辞めようが会社の一番の強みは社長自身が握っているわけですから、失いようがありません。いざとなれば、社長が3人分働けば急場は凌げてしまいます。そして、この手の社長は3人分くらい平気で働く人が多いです。序盤戦は圧倒的に有利でしょう。「俺がいれば大丈夫」という状態です。使えない人間には容赦なく解雇を宣告できます。最悪、部下が全員辞めてもなんとかやっていけることさえあります。   そして、もうひとつのメリットですが、このタイプの社長は現場で実際に業務を行う従業員の人心掌握に強みを発揮することが多いのです。というのも、専門技術の世界というのは、往々にして実力と実績がモノを言うタテ社会です。圧倒的に優れた能力を持った人間がトップに立っていれば、現場で働く人間の信任は極めて得やすいと言えます。実務的な異能には往々にしてカリスマとリーダーシップもついてきます。故に、経営が難所にさしかかっても人がついてくることが多いです。   しかし、もちろん弱点もあります。プレイヤーとして圧倒的な実力を発揮しながら、同時に会社経営と事業拡大をこなすというのは、ちょっと事業が膨らんで来てしまえば常人にはまず不可能です。また、経営者の仕事は第一に会社の意思決定、即ち決断です。これは、実に大きなエネルギーを要する業務です。あの巨大な心理的負荷を抱えながら異能を必要とする業務をこなせる人は、ほとんど人間ではないと思います。(まぁ、人間ではない人がゴロゴロしているのが市場ではあるのですけれど)なんにせよ、金繰りや経営判断などの会社の基幹となる部分を他人に委ねざるを得ないというのはかなりのリスクです。   しかし、経営パートに社長が関与すればするほどプレイヤーとしての出力は低下するジレンマが発生します。このタイプの社長はとにかく金を横領されがち、あるいは気づいたら財務が愉快な状態になっていることが多いという印象があります。   そして、スタープレイヤー社長の率いる会社の一番の困難は、拡大の難しさです。事業が大きくなれば、社長の異能ひとつで拡大出来る限界に必ず直面します。しかし、2番手3番手を張れるプレイヤーの育成は楽ではありませんし、個人の異能によらない収益の仕組みを作り上げることも難しい。   そして「プレイヤーとしての異能」だけを武器にした社長にとって、自分を上回る、あるいは代替し得る異能を持った人間の出現は社内における求心力の低下を即座に意味します。経営パートは他人に握られているわけですし、これは実に恐ろしいです。かつての英雄、今はお飾り社長。あると思います。会社なんて設立せず、フリーランスでやればよかった。そんな話も聞きましたね・・・。     スタープレイヤー社長の仕事まとめ     メリット ・創業期における業務遂行の手堅さ、人員の欠損への対応力の高さ ・小さく始めてある程度の大きさまで持っていくのは本当に強い ・プレイヤーとしての異能をテコにしたカリスマとリーダーシップ ・経営が難所にさしかかっても結構人がついてくるかもしれない   デメリット ・経営パートまで手が回らないので人を雇って任せるしかない ・社長が経営パートに関与すればするほど、プレイヤーとしての出力が落ちる ・社長の持つ異能のノウハウ化や共有が難しく、社長の出力の限界が成長の天井になりやすい ・業務拡大が上手くいったとしても、結果トップとしての求心力を失いかねない ・横領や会社を私物化されがちで、やはり社長が経営をちゃんと見ないのは怖い 創業者② 経営特化型社長 スタープレイヤー社長の対極となるタイプの社長です。このタイプは1にも2にも、まず資金をかき集める異能がなければ話は始まりません。有能な人材を見つけ、事業計画を書き、資金を調達する。それが経営特化型社長のやり方です。当然ながら、創業可能な事業の範囲が広いというメリットがあります。それこそ、いい人材や出資者を見つけたらその状況を軸に事業計画を書く、なんていうフリーダムな動きも可能になります。   経営特化型社長は現場にはあまり出ないことが多いでしょう。当たり前ですね、プレイヤーとしての能力を持ってないのですから。その代わり、経営判断は自分一人でガチガチに握ることが必須です。現場技能を持っていない以上、経営能力だけが存在意義となります。経営判断はトップの聖域にしておかなければ話にならない、そして、その正しさを常に示し続けて人を引っ張るしかありません。   また、事業拡大に強いことが多いです。そもそも人を雇って事業を行うのがベースですので、上手く事業が回ればどんどん人を雇って拡大していけるでしょう。そもそも「他人の力で儲ける」がベースですから。現場に出ない分、事業拡大に力を注ぐ余裕があります。事業が一定以上のサイズ感に成長すれば、コアメンバーが抜けた際のリスクも反比例して小さくなります。そうなれば、経営能力と資金調達能力の高さが存分に生かせるはずです。バシバシ人を切っては雇うタイプの経営をやる人もいますね。   デメリットも明確です。創業期に事業のコアとなるメンバーに逃げられたらその場で終わりです。自分の力で急場を凌ぐことさえ出来ません。メンバー3人で会社を回している時に1人が抜けてゲームオーバー、そういう話はよくあります。結局、「自力で稼げない」というのは恐ろしく大きい弱点なのです。   創業のテコとなるコアメンバーだけは、そうそう兌換が効かないので、序盤戦はとにかく脆い。小さく始めて大きく育てるは会社経営のひとつの理想ですが、経営特化型社長には鬼門です。ある程度の規模感で、誰が抜けても大丈夫な形で起業・・・出来たら苦労はないですね。   また、現場の統率やリーダーシップに弱みがある場合が多いです。前述の通り、現場で技能を発揮する従業員は、現場における職能の高さこそが最も重要だと考えている場合が多いのです。平たく言えば、「俺と同じ仕事が出来ない奴の命令なんて聞けるかよ」みたいなあれが発生しやすい。「事業計画の策定が得意」とか「資金を調達出来る」みたいな能力では、現場の敬意はそうそう勝ち取れません。文化が違います。故に資金枯渇など、経営の難所には弱いことが多いです。このタイプの社長はとにかく反乱を起こされがち、あるいは従業員に離反を起こされがち、という印象です。     経営特化型社長の仕事まとめ     メリット ・獲得した人材、あるいは出資者の意向に合わせて事業をデザインできる柔軟さ ・経営とコアメンバーのマネジメントに全力を傾注可能 ・事業拡大に強み ・経営や資金の状況を常に注視する余裕がある ・経営判断に十分な心理的リソースを割ける   デメリット ・小さく創業した場合、序盤戦が圧倒的に弱い。人が欠けても求人を出すことしか出来ず、自らプレイヤーとして動くことが出来ない ・現場実務に通じていないが故のリーダーシップの弱さ ・実務能力のある部下がいなければ本当に何も出来ない ・反乱起こされがち ・お金の切れ目が縁の切れ目になりがち 創業者③ 中間型社長 基本的には経営を担当するが、現場業務もそれなりにこなせる社長です。なんだかんだ、経営特化型社長も多少は現場業務が出来ないと面倒も多いので、経営特化型社長から始まって中間型社長に移行していく場合も多いでしょう。中には、資金調達と総務経理担当から参加して、業務の合間に死ぬ気で勉強した結果トッププレイヤーも兼任するようになったという猛者にも会ったことがあります。これはとあるIT企業の役員の方なんですが、すごい話だと思いましたね、多分、部下に果てしなくナメられるなどの辛い経験があったんだろうと思います。   このタイプは上手くやればバランスがいい反面、強みにも乏しいという問題があります。プレイヤーとしての業務に力を注げば経営がおろそかになりますし、経営に力を注げばプレイヤーとしての業務が疎かになります。その中間でバランスを取り続ける、という選択です。人間1人に処理可能な業務量は所詮有限なので、両方をうまいことやろうとした結果どっちもダメだったということも往々にしてあります。   僕自身もこのタイプでしたが・・・まぁ、楽ではないです。いっそ経営特化型に振り切った方が結果は良かったかもしれないと思うこともあります。まぁ、創業初期は人もいないし無駄金も一切使えないので、社長が現場業務をやらざるを得ないことも多いでしょうし、出来るとか出来ないじゃねえんだ、人がいねえんだから社長がやるんだよ。そういう世界観もあります。   少人数で会社を回している場合、どうしても体調不良などで現場の担当者が出られないことは避けがたくありますし、いざとなったら現場もやれるに越したことはもちろんないですよね。コアメンバーが抜け落ちても、次のプレイヤーが稼動し始めるまで自分が現場を守りきるという判断も出来なくはありません。もちろん、パフォーマンスはその業務に特化した人間に比べて大きく劣るでしょうが、出来ないよりはよっぽどマシです。   飲食の場合は「シェフがバックレた」なんてのは大変によくあるお話です。僕のかつて経営していたお店のすぐそばにあった店舗は、開店直前にシェフが「やっぱやめた」と言い出したそうで、1日たりともお店を営業しないまま風に消えていきました。あんまり詳しく書くとあれなんですが、専門性の高い料理店だったので代わりのシェフも確保できなかったんでしょうね、あるいは代わりのシェフを探す気力もないほどにオーナーが絶望してしまったのかもしれません。ピカピカの内装と厨房設備の居抜きを売っていくらか回収出来たんでしょうか。開店前、道に立ってサービス件を配っていたオーナーと思しき初老の男性のことを、今でも時々思い出します。もちろん、僕に他人に同情する資格なんて一切ないんですけど。     中間型社長の仕事まとめ     メリット ・突発的な人員不足やプレイヤーの離脱に多少は対応できなくもないかもしれない ・現場を知ってはいるのでそれなりに現場とも仲良くやれるかも   デメリット ・全てが中途半端、上手くバランスが取れなければスタープレイヤー社長、経営特化型社長の欠点を併せ持つ結果に ・結局、業務量が狂ったことになりがち ・現場でのパフォーマンスが低いと、どんどん部下に舐められる ・経営判断や経営実務のしんどさを理解してくれる部下はそんなにいない ・給与明細作って給料払って、帳簿処理して出資者に報告して、資金計画作って、現場が揉めたら間に入って求人出して、経営数値を分析して、店舗回って状況を見て、従業員からヒアリングして人事評価を行いつつ、プレイヤーとして店舗にも出る・・・ ・あ、そう予約モリモリなのにバイトがバックレ・・・うん30分で行く ・アウアウアー あなたはどのタイプで会社を起業しますか? 実際、起業を志す人は「何の特化技能もない、野心しかない」という人も多く、そういう人でも成功するときは成功しちゃうのが起業でもあります。プログラミングの一切出来ないIT企業の社長だって結構存在すると聞きますし、フライパンを振れない、トレンチの持ち方すら知らない飲食店経営者なんてもっといっぱいいるでしょう。飲食業界人どころか一般の方でも大体知ってる「俺の」チェーンを展開する坂本社長は、元はブックオフコーポレーションの創業者で、いきなり飲食業界に飛び込んで来た人です。   もちろん、坂本社長は創業時の資金量が一般的な起業家とは比べ物にならないほど多かったであろうことは想像に難くありませんが、それでも突然異業種に飛び込んで成功する起業家なんてザラにいます。バイト経験すらない全くの未経験からそれなりに参入障壁のある不動産業に飛び込んで儲けている猛者だっています。専門技能や知識、あるいは経験を有した人でなければ起業出来ないなんてことは全くありません。その一方、専門技能や知識経験を持った人が強いこともまた事実です。   起業にルールはほとんどありません。セオリーだってそう多くはありません。むしろ、セオリーに従って成功できるならみんな成功しているはずです。しかし、自分が起業した後の経営のあり方をリアルに想像出来るかどうかは、成功率に大いに影響するのではないかと思います。   僕は、創業の時にこんなことは一切考えず勢いだけで突っ込みましたので、実に多くのしなくてもいい苦労や失敗をしました。後知恵になりますが、多くの困難は回避可能だったと思います。実際、この文章を読んで「ではどうしたらいいか」については皆さんもかなり思い浮かんだのではないでしょうか。   初めての起業に挑む方は、本当に何もかもわからないと思います。しかし、断片的なものでもいいので情報を集めて、想像力を働かせることはとても大事だと思います。もう少し多くの想像力を働かせることが出来れば、そして起こりうる事態に対しての備えを作っておけば、僕にも違った未来があったかもしれないと未だに思います。後悔は尽きません、おそらく一生この感情はついて回るんだと思います。   どうか、皆様悔いの無い起業を、そしてあなたの成功を心からお祈りします。やっていきましょう。     ...

  「安い、早い、うまい」が売りのファストフード業界も単純な安売り戦略でなく、高級路線に走ったり、増税を理由にじわじわ値上げを行ったりしている。   そんな中、たったの200円でカレーライスを提供するカレー屋さんがある。店の名前は「原価率研究所」だ。   200円カレーと原価率研究所。 この2つのワードだけで、ただのカレー屋でないことは明らかだ。安売りだけでない、何か特別なビジョンがあるに違いないと感じ、経営哲学や戦略を取材してきた。 原価率研究所という名のカレー屋 原価率研究所は新潟県を中心に直営店2店舗・FC7店舗を構えるチェーン店だ。都内には竹ノ塚店と梅屋敷店の2店舗がある。取材で伺ったのは竹ノ塚店。駅から8分ほど歩いた通り沿いにある。 看板には「今回のテーマは『カレーライス』」と書かれている。 どこかしら突き放したような表現だ。間違いなく普通のカレー屋ではない。 「カレーライス」と「200円」ののぼりがはためく。 メニューはいたってシンプル。 カレーライス200円とチーズカレー300円、それにテイクアウト用の鍋カレー(ルーのみ)150円だけだ。辛さの設定やトッピングもなければ、ライス大盛りすらメニューにない。 ▲カレー200円(右) チーズカレー300円(左)   カレーとチーズカレー。 店内・テイクアウトともに、容器は使い捨てのプラスチック製を使用している。 洗う手間を省いて人件費を浮かせるためだ。 ...