【佐賀一哲が語る中国 越境EC】Japan to China ~大陸の熱気を感じながら~

ニアセ寄稿

 
 
急降下するJAL879便の窓を横目でぼんやり眺めていると、雲が割れ、灰色の滑走路が迫ってきた。
 
 
 
 
飛行機の旋回に合わせて自然と身体が窓側に寄り、さっきよりも強く風景を眺める。
 
 
 
 
「そうか、5年ぶりの上海なんだな」
 
 
 
 
ふとそれを意識した瞬間、奥に閉じ込められていた5年前の記憶に強く光が差し込み、鮮やかに像を浮かび上がらせる。
 

 
どぎついネオン輝く超高層ビルの下に立ち並ぶ石畳の住宅区
 
 
 
 
客のいない店で夜中にトランプをする女性たち
 
 
 
 
ユースホステルで中国語の挨拶を教えてくれた大学生
 
 
 
 
もう二度と会うことはない、すれ違う人の波…
 
 
 
 
記憶というのは不思議なものだ。何年間も思い出すことがなかった景色や感情が、何か1つトリガーに触れると次から次へと、まるでつい昨日起こったことのように思い出されてくる。
 
 
 
 
飛行機が着陸して完全に停止し、かすかな音楽とともにシートベルト着用サインが消えるまで、私はずっと5年前の上海の都市の中を歩いていた。
 
 
 
 
浦東空港のゲートを出た瞬間、むせ返るような熱気に思わず後ずさりをした。
 
 
 
 
タクシー乗り場で列をつくる人々を横目に、ライドシェアサービス”Uber”を開く。
 

 
 
日本では決して表示されない車のマークが私の周りに複数あらわれ、何となしにゴキブリを思わせる動きをしてこちらに向かってくる。
 
 
 
 
「街に着いたらすぐにご飯を食べて、打ち合わせだな」
 
 
 
 
Uberで呼んだ大型車に荷物を預け、後部座席に乗り込むとすぐに意識が混濁し、浅い眠りに落ちた。
 
 
 
 
上海の街
「南京東路」。5年前も歩いた観光客の行き交う大通り。
 
 
 
 
立ち並ぶショップや建物が小ぎれいに整備され、心なしか以前よりも道が広くなったかのように感じる。
 
 
 
 
怪しげな雰囲気を感じさせる一筆書きのような看板が減り、ゴシック体のロゴが目に入ってくる。
 
 
 
 
Apple Storeや高級ブランド店のすっきりしたデザインが、街に落ち着きと秩序を与えている。
 
 
 
 
一瞥しただけで詐欺と分かる「日本人ですか?」と声をかけてくる2人組の女性を尻目に、アパレルショップ、雑貨店、ドラッグストア、レストランを手当たり次第に覗いていく。
 
 
 
 
中国向けの「越境EC」に携わってくるとイヤでも聞こえてくる「子供服」「美容」「健康食品」「ユニクロ」…聞きかじっただけの知識が見事なまでにそのまま眼前の風景に映し出されている。
 
 
 
 
アパレルショップのフロアには「子供服」が日本よりも遥かに大きく陣取っており、すぐ傍にはディズニーゾーンが構えられている。道行く人も、男女問わずディズニーキャラクターの服やアクセサリーを身に着けていて、その浸透度に軽いショックを受ける。
 
 
 
 
「『子供×ディズニー』は中国では鉄板なのかもな」
 
 
 
 
と、非常に浅はかな仮定を立てつつ、左手に見えた「Häagen-Dazs」の看板に一瞬思考が分断される。
 
 
 
 
これは日本や韓国も同じかもしれないが、「美容」「健康食品」のテナントが本当に多い。せいぜいヒアルロン酸の化粧水くらいしかつけない私にはその細かな違いはよく分からないが、「美しくありたい」という女性の願望は世界共通なようである。
 
 
 
 
中には日本語のパッケージ(日本製…?)の商品を店頭にずらりと並べたショップもあり、日本人からすると逆にうさん臭く感じたりもするが、女性たちはあれこれ言葉を交わしながら手に取り、真剣に美容液を選んでいる。
 

 
ただ、中国の女性は化粧が全体的に薄い(というか、していない?)。「ケア」には高い関心があるが、「飾る」という意識は日本人よりも低いのかもしれない。
 
 
 
 
「肌につけるモノ、口に入れるモノ、子供が使うモノ」
 
 
 
 
という中国越境ECのキーワードはこれから1年は健在だろう。
 
 
 
 
2,3年後にそれが「日本製」と紐づいているかどうかは不明だが…
 
 
 
 
とりあえず実際に何か購入をしてみようとユニクロに入り、ベリーショートの靴下を2~3足選び、値札を見るとふいに胸がザワついた。
 
 
 
 
…ん?なんだか高くないか??
 
 
 
 
1足30元くらいするのである。1元=15円とすると、大体450円くらい。
 
 
 
 
日本だと「3足で1,000円」みたいな感覚だったハズなので、これは高い。手に取った靴下を一旦戻し、「日本製」を謳う別のショップに入り直す。
 
 
 
 
靴下一足…10元。
 
 
 
 
これで決まり。
 
 
 
 
そして適当に3足くらい選び、レジで並んでいるとまた何となく違和感が…
 
 
 
 
誰も現金を使わない。カードすら使わない。
 
 
 
 
スマホで「ピッ」。なのだ。
 
 
 
 
順番が来て100元札を出した私に、店員は怪訝そうな目を向けて明らかに手馴れていない仕草でお釣りを用意してくれる。
 
 
 
 
ぎこちなく微笑みながら「謝謝(シエシエ)」と伝え、レジから離れようとした瞬間、目の端に「微信支付」という文字が飛び込んできた。
 
 
 
 
これが、私と「ウェイシン」との出会いであった。
 
 
 
 
つづく
 
 

 
 

 
 

Hamee株式会社 プラットフォーム事業部ECパートナー部 グローバルセリング開発責任者の佐賀です。越境ECに詳しいです。ハロプロの実力派アイドルユニットJuice=Juice(ジュースジュース)(リンク:http://goo.gl/Cv0npS)にもめちゃめちゃ詳しいです。

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