【前編】「もう一つのワールドカップ」に挑むサッカー日本代表がある。~西監督インタビュー~

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「もう一つのワールドカップ」ってなんだ?とにかく取材だ。

こんにちは。世界一動画を愛する男、吉住です。先日、またニアセの新センター長つかD氏より「知的障がい者の人たちのサッカー日本代表の合宿を取材してきてくれ」と言われたので、行ってきました。
 
知的障がい者サッカーの世界大会は「もう一つのワールドカップ」として、4年に一回、W杯と同じ年に行われます。前回大会はブラジルで開催され、初のベスト4。今回の開催地はロシア、ではなくてスウェーデンで、チームとしては史上初の決勝進出を狙っているとのこと。
 
お邪魔するのは宿舎。栃木県さくら市にある「樽分」という民宿。宇都宮駅でレンタカーを借りて、30分ほどのドライブです。到着すると、広報の斎藤さんと日本代表監督が出迎えてくれました。
 
日本代表監督のお名前は西 眞一さん。出身地は鹿児島県で、1973年生まれの45歳。普段は鹿児島県姶良市の市職員をされています。
 
実はこの西監督、知る人ぞ知る九州サッカー界のレジェンド。九州サッカーリーグでアマチュア選手として13シーズン活動し、現役を退くまでになんと通算266ゴールを決めているとのこと。
 
これは日本サッカー公式戦同一リーグ最多の得点のとして未だに破られていないスゴイ記録。地元鹿児島では「キング」と呼ばれて愛されているとのこと。
 

▲九州のレジェンド、西眞一監督

西監督プロフィール

【競技歴】

1995年〜2007年

ヴォルカ鹿児島(九州リーグ)※現在の鹿児島ユナイテッドFC

2013年〜2014年

日本スポーツマスターズ大会 優勝(日本一)

 
【指導歴】

2008年

ヴォルカ鹿児島 コーチ

2009年〜2014年

鹿児島県マスターズ(O-35)選抜監督 ※日本一2回

2010年~

鹿児島県知的障がい者サッカー選抜チーム 監督(現:総監督)

2012年~2014年

九州知的障がい者サッカー選抜チーム 監督

2014年~2015年

知的障がい者サッカー日本代表 コーチ

2015年~現在

知的障がい者サッカー日本代表 監督

インタビュー開始

西監督、今日はよろしくお願いします。

 

よろしくお願いします。今日はどうやってここまで来たんですか?

 

宇都宮駅からレンタカーで来ました。思ったより遠くて。

 

宇都宮からだと遠かったでしょう。最寄りの氏家駅まで電車で来ると、意外と早いですよ。

 

それは知らなかったなあ。この「樽分」という民宿はよく合宿で利用されるんですか?

 

はい。凄く色々融通をきかせてくれたり、親切にしてくれるので、よく利用させて頂いています。

 

インタビュー開始。「知的障がい者サッカー」と普通のサッカーの違いは?

早速ですが、「知的障がい者サッカー」は、普通のサッカーとどう違うんですか?

 

違わないです。

 

え?

 

ルールなどは全部一緒です。「知的障がい者の人たちがサッカーをしている」ということです。

 

特別ルールなどは無いんですね。

 

無いです。小さい大会とかは特別ルールがあったりはしますけど、基本的には普通のサッカーですね。

 

そうなの…?

西監督と「知的障がい者サッカー」

西さんが「知的障がい者サッカー」と関わるようになった経緯を教えてください。

 

地元の鹿児島で障がいを持っている人たちのサッカーチームを作るというので、それに参加したのが最初ですね。

 
その後、九州のトレセンがあるって知って、そこに選手を連れて行きました。ちょうど2010年のFIFAワールドカップの南アフリカ大会の頃です。そこに、前の監督の小澤さんっていう方が指導に来られていたのでお会いする機会があって、それからちょこちょこ関東のほうにも行くようになったと。

 

最初まずはローカルでやってたものが、だんだん広がっていって、今に至るということですね。

 

そうですね。

 

知的障がい者サッカーの監督として

西監督は健常者のチームでのコーチ・監督業のご経験もありますが、知的障がい者サッカーを指導する上でギャップはありませんでしたか?

 

特にないです。

 

え? 何か困ったこととか…

 

無いですね。最初は「どんなサッカーなのかな」っていうのは、よく知らずに来たというのが正直なところです。でも、実際来てみて、「自分がやってきたサッカーと何も変わらないな」っていうのは、直ぐ分かりました。
 
自分の知識や経験を目の前の選手に伝えることが大切と思いましたし、自然に入っていけましたね。

 

「全然違うスポーツだな」とか「こりゃ厳しいな」ってことは…

 

無かったですね。もちろん、健常者と全く同じようにはいかない部分もありますが、そこと向き合うことで指導者としては深みが増したと感じています。「選手に伝える」「どうやったら伝わるのか」という事については、指導していく中で自分なりの整理ができたと思います。

 

「健常者と同じようにいかない部分」というのは、具体的にはどのあたりですか?

 

例えば「局面でパッと判断することが苦手」ということはありますね。サッカーって判断するスポーツなので、それをどうやって補完するか。

 
目が見える、耳が聞こえる、いくつも情報がある中で、最善のプレーを選ぶ必要がある。選択肢がいくつもあると、彼らは混乱してしまう。そこで、僕ら指導者はプレーモデル、「こういうプレーをこういう状況ではやっていこうね」っていうのを示していくのが務めです。
 
彼らはその知識・情報を入れる。声に出してしゃべる、仲間同士でコミュニケーションをとる。「判断する」っていう能力の部分を、少しでも補完できるようにやっていく
 
なかなか言葉で言うと難しいんですけど、「材料を絞って彼らにプレーさせていく」ってのが、このサッカーだと思います。

 

なるほど。やりがいがありそうですね。指導者としては腕の見せ所というか。

 

そうですね。ただ、それはあくまでトレーニングの話で、実際に試合を見てみれば、全く普通のサッカーと変わりませんよ。それぐらい彼らは集中してやれてると思います。

 

(ほんとかな…)

 

(監督、ほんとですか?)

監督をやっていて、嬉しかったこと

監督として関わってこられて、特に嬉しかったエピソードはありますか?

 

選手の成長を感じられると、嬉しいですね。谷口という、僕と同じ鹿児島の選手なのですが、前回の2014年に初めて選ばれてチームに参加したんです。その当時は東京の選手が多くて、地方から一人ポッと行ったから、なかなかコミュニケーションが取れなくて、本来の力を発揮できずに帰って行く。
 
合宿に来ては、力を発揮できずにへこんで帰って行ってっていうのをずっと繰り返して。
 
そんな中でブラジル大会を経験して、知らない人たちのグループに入ってサッカーして、ましてや世界相手に戦って、大会が終わった頃には凄く目にも自信が満ち溢れて、言葉も一つ一つはっきりと話をするようになりました
 
それで4年後、代表に入りましたけど、今やチームの中心としてリーダーシップとりながらやってます。それは、その経験があったからこそなのかなと。
 
逃げそうにもなりましたけど、それをわれわれが逃がせなかった。彼らは「きつい」と思ったらやめちゃう所がある。そうじゃないぞっていうのを、スタッフ間で議論しながら彼を引っ張ってきたんですけど、よかったなと。

それは彼の今後の人生にとっても大きな成功体験となったでしょうね。

「もう一つのワールドカップ」のライバル国は? そして、実際に練習を見てみると…

8月に行われる「もう一つのワールドカップ」。後編ではライバル国や戦術について伺いました。
 
上位進出のカギを握るのは、2018FIFAワールドカップのロシア大会で日本代表も苦しんだあの国!
 
そして、「全く普通のサッカーと変わりませんよ」という西さんの言葉を確かめるべく、実際に練習も見学させてもらいました。果たして…
 
後編を公開しました!

 

Tシャツを買ってください!

4年に1度のFIFAサッカーワールドカップの1か月後の8月、知的障がい者サッカーの最高峰、INASサッカー世界選手権(通称:もうひとつのワールドカップ)がスウェーデンで開催されます。
 
「もうひとつのW杯」は日本国内で7千人を超える知的障がいのあるサッカー選手にとっては夢であり、代表選手にとっては最大の目標となる大会です。
 
しかし、代表合宿によるチーム強化、そしてスウェーデンへの選手・スタッフの派遣には非常に大きな費用が掛かります。
 
現状は費用が大幅に不足し、選手にも大きな自己負担を強いる状況です。
 
スウェーデン遠征時の選手負担を少しでも軽くするため「日本代表公式応援Tシャツ」の販売を開始いたしました。
是非、皆様のお力添えをいただき、「もうひとつのW杯」へ代表選手団の派遣にご協力いただきますようお願い申し上げます。

 
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