「いきなりステーキ」をこよなく愛する男、多田哲朗
初めまして。5月からニアセ編集部に加わった吉住と申します。ニアセの新センター長であるつかDさんから突然「とにかくおかしな知人がいるから取材してくれ」と依頼されました。
どうやらその方は全国255店舗のうち、なんと213店舗でステーキを食べてきた『いきなりステーキマニア』とのこと(いずれも5月24日時点)。食べた総肉量は「119,482g」。食べすぎ。
早速多田さんに連絡をしてみると、「まだ訪れたことが無い店舗に食べにいく」と、スト2のリュウみたいなことを言い出したので、同行させて頂くことに。
待ち合わせはJR東海道線の鴨宮駅。駅から出てきたのは、チリチリヘアーで恰幅の良い中年男性。
名前は「多田哲朗」。年齢は36歳。慶應大学在学中は鉄道研究会に所属。その後出版社に就職し、教科書の編集者として活躍しているらしい。
▲溢れ出る育ちの良さ
訪れたのは「いきなりステーキ 小田原前川支店」。多田さんにとって214店目となるそう。
店の前にある株式会社ペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長の看板を撮影するのがルーチン。無事撮影を終えたら、いよいよ入店。
▲いざ入店
席に座ると、まずはビールを注文。美味しそうに一口飲むと、ステーキの注文にカウンターへ向かう。今日食べるのは「ミドルリブ300グラム」。そして謎の呪文が飛び出した。
「チェンブロで。」
何それ。
困惑する私に
「【チェンジブロッコリー】の略です。付け合わせのコーンをブロッコリーにチェンジするんですよ。私ほどになると1日に3店舗。多い時は5店舗ほどハシゴステーキをするので、糖質が多く、お腹に溜まりやすいコーンはご法度。その点ブロッコリーはお腹に溜まりません。私は別にダイエットをしているわけではないですが、中性脂肪の分解を助けるとも言われています。一石二鳥という寸法なのですよ。」
と、自信満々言い放つ多田さん。ちょっとカッコよく見えてきた。チェンブロ、今度使ってみよう。
▲別にダイエットをしているわけではない多田さん
席に戻ると、今度はおもむろにカバンからマジックペンを取り出す多田さん。そして紙ナプキンに何やら書き出した。何をしているのだろうか。
「訪問日時、店舗名、注文したステーキ、何店舗目かを紙ナプキンに書いて記録して集めているのです。」
▲手慣れた様子で紙ナプキンに書き込む多田さん
結構アナログなやり方だ。
多田さんが集めているのはこれだけではない。なんと、お店がオープンする時に配るチラシも集めているのだ。「なんでこんなものを?」と聞いても、「特に理由はありません」。
…コレクションというのはそういうものなのかもしれない。
▲多田さんのコレクションの数々。開店チラシも大事なコレクションだ
いよいよ「いきなりステーキマニア」多田哲朗インタビュー
いよいよステーキが運ばれてきた。とてもおいしそう。店員さんが肉の焼き具合などを丁寧に説明してくれる。
▲親切な店員さん
▲この日注文したのは「ミドルリブ300g」
多田哲朗と「いきなりステーキ」の出会い
食べながらで結構です。多田さんと「いきなりステーキ」の出会いを教えてください。
3年くらい前に、会社の近くに「いきなりステーキ」ができて、最寄り駅でチラシを配ってたんです。それを見たら「今なら肉マイレージカードが無料」って書いてあって、それを見て行ったのが最初ですね。
全国の「いきなりステーキ」を回ろうと思ったきっかけはなぜですか?
まだ3年前くらいだとまだ店舗数が少なくて、「これなら全部回れる」と思ったのが理由です。当時100店舗も無かったから。
あと、その頃、平日に家族が僕を残して旅行に行っちゃうことが多くて。そうすると会社が終わっても夜ヒマだし、家にご飯も無いから、「じゃあ今日は3店舗くらい回るか」って。
前向きさの中に悲しみがチラつくエピソードですね。
それにしても、一度に何店舗も回るのがすごい。全店制覇を達成するためには、1日1店舗なんてヌルい事は言っていられないわけですね。
仕事をしていると、「行ける日に1店舗」では全然間に合いません。僕が全店舗制覇を達成したときは177店舗。今だともっと大変ですよ。
年間200店オープンさせるって社長が言ってるから。
▲「社長が言ってるから」と、おすまし顔
家族はなんて言ってるの?
そんなに肉ばっかり食べて、家族から何にも言われないんですか?
特に言われないですね。最初の方に「全部回る!」って言ったら反対されたかもしれないけど、最初は家族に秘密でこっそり回ってたので。
「これは全店達成できる!」っていう確信を得てからカミングアウトしたから。むしろ応援してくれてますよ。
ご家族と一緒にお店に行くこともあるんですか?
ありますよ。妻もプラチナカードを持ってるし、子供もゴールドカードを持ってる。僕はもちろんダイヤモンドカード。
▲カードを見せびらかす多田さん。お子さんも「150gくらいならペロリ」らしい
食べたお肉の量を記録できる、「肉マイレージカード」ですね。
記録上位者はインターネット上で閲覧できるのですが、多田さんでも大体220位くらい(6月14日現在)ですね。すごい人が沢山いるんだなあ。(肉マイル総合ランキング)
「物を集めて回る」ということ
全店舗制覇を始めるにあたって、普通の人間だと100店舗でも尻込みすると思うのですが、多田さんがすんなり一歩を踏み出せたのはなぜでしょう。
「何かを集めて回る」という事が自然と自分の生活の一部になっているんです。
子供の頃から電車のスタンプラリーが大好きだったので。これは性格だと思います。いきなりステーキの前にもカフェのレシートや、電車の切符を集めていました。
多田さんのコレクションを見ると、一般的に価値がある物ではなく、自分の体験や記憶を補強する物を集めているように感じます。「物」と「体験」、どちらが重要なのでしょうか。
両方ですね。片方では物足りません。自分の体験と、それを証明してくれる物がセットになっていることに魅力を感じます。逆に言うと、体験とセットになっていれば、それは「価値ある物」になるということです。世間一般的に価値があるかどうかは関係ありません。たまに限定PASMOを買ったりはしますけど(笑)。
なるほど。その考え方で何かを集めてみると、楽しいかもしれませんね。
そして後編に続く
つぶらな瞳にチリチリヘアー。時おり見せる少女のような「おすましフェイス」。もはや虜です。
いきなりステーキ巡りをする上で、多田さんが執着している「あるルール」とは?
そして明かされる、悲しみの「スタバ事件」。