ファッションEC販売、スタイリング、ファッションコーディネートのサービスを運営しているUNCLACK株式会社の三田村妙子社長にお話を伺いました。
起業する前のお話から創業時のお話、ファッションEC事業を軌道に乗せるまでの苦労を語っていただきました。
GMOメイクショップでの経験が起業のきっかけ
-創業のきっかけは何でしたか?
三田村社長:いま自分の会社でファッションを軸にした事業を手がけ、ECを運営していて、かれこれ15年くらいECの業界に携わっています。
学生時代にECのアルバイトを始めたのがきっかけで、この業界に興味を持ちました。当時は楽天、ビッダーズと並んでキュリオシティという日本国内では老舗のECモールがありまして、そちらのECモールの出店を斡旋する営業の仕事をしていたのです。
私はその後大学を中退しているのですが、仕事が面白くなり、その後もずっとECの仕事を行っていました。あるとき、GMOグループ代表の熊谷さんの書籍で、GMOのことに興味を持ち、この会社で働きたいと思い、面接を受けにいったのですが、当時の面接官が私にぴったりな会社があるとして紹介されたのが、GMOメイクショップでした。
-それで、GMOメイクショップに入社してキャリアを積んでいったのですね。
三田村社長:はい。その当時、グループ参画直前で場所も渋谷のセルリアンタワーではなく、秋葉原のマンションの一室でした。会社の立ち上げに関われたことは非常に自分にとってプラスになったと思います。そして、1年後にセルリアンタワーに場所を移してGMOメイクショップの成長とともに、私も計9年間ずっとEC業界で働いてきました。
-なるほど、何か起業のきっかけはあったのですか。
三田村社長:そうですね。GMOメイクショップが100名くらいの体制になって、成長も著しく好調だったのですが、会社で培ったマーケティングやPRの経験を、今度は自分の力でもっと試してみたいと思うようになりました。そうした話を社長に相談したところ、やってみるべきだと後押ししてくださり、UNCLACK株式会社の立ち上げを決心しました。
ファッションECの事業にこだわる理由
-UNCLACKでは立ち上げ当初、どのような事業を展開していたのですか?
三田村社長:GMOメイクショップでの経験を生かして、最初はEC業界を中心とした広報の仕事を考えていました。ただ、どうしてもやりたいことがあり、それがファッションの仕事でした。会社員時代のころから、ファッションが大好きで、オフィスに着ていく服もワンピースをわざわざ海外のサイトで購入していました。
特にイギリスのワンピースはエレガントなラインが多く、もっと仕事で着ていけるような、スタイリッシュでかつ、エレガントなワンピースを日本でも広められないかなと思っていたのです。
-それでファッションEC事業を立ち上げたのですね。
三田村社長:はい、最初は趣味で始めたブログに関しても、海外のおしゃれなモデルさんのフォトショットや、日本にはないシンプルでスタイリッシュなアイテムを中心に、自分好きなブランドの服や、スタイリング、コーディネートを載せていきました。
徐々に読者からスタイリングの相談やどこのブランドですか?と反響がくるようになり、これが今も運営している「UNCLACK」のファッションコーディネートマガジンの原型になりました。そして、Facebookページも立ち上げると、さらに問い合わせが来るようになったので、オンラインスタイリングサービスやファッションECを事業として行うようにしたのです。
ファッションECにかける情熱
-ファッションブランドさんとも提携しているのですか。
三田村社長:スタイリングサービスの場合、提携ブランドの商品を扱うのではなく、例えばスタイリングの一環であるブランドを購入する際は買い付け手数料としていただくということですね。
実はブログ立ち上げ時から自分のコーディネートで使った海外ブランドリストが100件程度ありました。できればぜひ自社のECサイトで扱いたいと思い、メールで1社ずつ連絡してみたのですが、私が好きなイギリスのファッション通販サイトに載っているようなブランドは実績や信頼がある会社でないと扱ってくれないということがわかりました。
しかし、どうしてもイギリスのワンピースのようなエレガントなデザインのワンピースを扱いたかったので、そのブランドが生産拠点にしていそうなアジアの工場元をネットで探して、コンタクトを取ってみました。
その後、ぜひ扱ってほしいという返事がきたので、その工場からODM(※1)受注し、ノーブランドとしてUNCLACKのサイトに掲載するようになりました。また、スタイリングの延長で、オンライン倉庫的な商品の置き場所が必要だったのでコーディネートショップという自社で運営するサイトを作り、20,000点ほどアイテムを掲載できるまでになりました。
(※1)
ODMとは、Original Design Manufacturingの略語で、委託者のブランドで製品を設計・生産することをいいます。生産コスト削減のために製品またはその部品を他の国内企業や海外企業などに委託して、販売に必要な最小限の数量の製品供給を受けることにより、委託者である企業は大きなメリットを享受できます。
引用元:JETRO_OEM生産とODM生産の違い
-すごい行動力ですね。ただ、疑問に思ったのですが、エレガントなワンピースは日本で売れるのでしょうか?
三田村社長:そうですね。ブランドものを仕入れているのではないため、高すぎず安すぎない価格にこだわって提供し、10,000円前後のワンピース、ドレスを中心に売れています。購買層も20~30代の女性で、会社員の方や外資系企業で勤めている方、日本在住の外国の方がよく買っていただいています。
どうしても日本のファッションだとゆるふわ・かわいい系になるので、アジア圏以外の国の方にとってはオフィスに来ていける服やあまり高くない、でもおしゃれでエッジの効いたデザインのドレスを買う場所がない、というところで、UNCLACKは評価いただいていると思います。プロモーションについてはFacebookで毎日スタイリングやコーディネート例を掲載し、購入にもつながっています。幸いサイトを運営していくにつれて、リピートして服を購入してくださる方もいます。
-なるほど。ここまでくるのに苦労はなかったのですか?
三田村社長:それは立ち上げ当初は大変でした。本当に初期のころは赤字続きで、なんとか状況を改善させようと受注をお願いする工場を変えてバリエーションを増やしたり、梱包方法からプロモーション方法など色々工夫しました。
また、いまでこそFacebookが盛り上がりましたが、立ち上げ当初は、いいね!数は増えるものの購買にはなかなか至らなかったです。ただ運用していくうちに、好まれるコーデの傾向がわかってきて、自分たちが着てもらいたいと思っている推しコーデなど、コーディネートを毎日更新して新鮮さを出していきました。不思議なのですが、マーケティング分析はもちろん基本であって、それに加えて、”売りたい”が前面に出し過ぎていない、オリジナリティな提案があるほうが購買に繋がっているようにも思えます。
-工夫を重ねた結果、次第に結果が出始めたのですね?
三田村社長:はい。ある基点を境に適切な顧客分析が出来てきたので、リピーターも増えていきました。また、ドレスのほつれが見当たる部分も、工場へ品質向上について相談したり、もっとこういうデザインはできないかと逆に提案したりもしていました。その方がお客様のためになると思っていたので、躊躇なく行っていましたね。
今後の目標と起業を目指す方へのメッセージ
-最後に今後のビジョンと起業したい方へのメッセージをお願いします。
三田村社長:私がファッションの事業をやり続けている理由に、オフィスでも気軽にビビットなカラーで着ていけるワンピースを広めたいというの想いがあります。最近では、それに加え、他のファッションブランドのように売れ線(モノトーンなど保守的なデザイン)に走るのではなく、あえて違うテイストや着こなし方を提案していけるようになりたいと思っています。
オンラインスタイリングサービスを行っている以上、お客様のスタイリングを考えるのも仕事ですし、もっとコーディネートに幅が広がるバリエーションも増やしたいと思っています。そのため、今後は自分自身のデザインでファッションブランドを立ち上げようと思っています。
起業に関しては、最初はどうしてもリスクを考えてしまうかもしれませんが、好きなことで始めたのであればとにかく続けることですよね。むしろ自分とって好きなことであれば真っ直ぐ続くと思います。またビジョンを明確にして取り組むのも大事な要素だと思います。
編集後記
ずっとEC業界にいてキャリアは備わっているものの、いざリスクをとってまで安定した会社を辞め、起業の道を歩むのはそれなりの決心が必要だと思います。三田村社長は、もっと裁量ある仕事をしたいという仕事熱心な一面もありますが、それは自分の好きなファッションをもっと仕事として昇華させ、世の中にアプローチしたいという思いから、いままでやってこれたのだと感じました。
「好きこそものの上手なれ」ともいいますが、好きを極めることで、自分の可能性が広がる、そんな生き様を見せてもらったような気がします。
取材協力:UNCLACK株式会社
URL:https://www.unclack.com/
事業内容:アパレル企画・制作、PRプランニング、ファッションコーディネートマガジン「UNCLACK」運営、ECサイト運営