今回取材に伺ったのは、どんな業種でも関わらないことはない「物流業界」において革新的なサービスを提供している株式会社オープンロジの伊藤秀嗣社長です。
普段の日常で着ている服や食べているものなど、ほとんどのものが物流がなければ成り立たない。それほど重宝される業界ならではの古い体質に目を付け、ITのテクノロジーを生かしたサービスは一体どんなものなのかをお話を伺いました。
「オープンロジ」物流業界での起業
-まずは事業内容や起業に至った経緯を教えてください。
伊藤氏-まず事業内容についてですが、物流業務を発注したい事業主と、物流業務を請け負う倉庫などの物流企業を結ぶプラットフォームを提供しています。
昨今、ネット通販、いわゆるEC(Eコマース)の成長率は顕著でして、それに応じて手間のかかる物流業務を代行するクラウドサービスをtoBやtoC向けとして使っていただいています。物流業務を発注したい事業主というのは様々いらっしゃって、企業のEC事業者はもろろんのこと、Stores.jpやBASEなどのEコマースサイトを簡単に構築できるサービスが流行っているので、個人、中小事業主の方まで幅広く使われています。
-すごいですね。どうしても会社組織でやられているので、BtoBが中心かと思っていました。
伊藤氏-色々な方にご利用いただいて嬉しい限りなんですが今の時代、誰でもネット通販のショップを立ち上げられるというのが一番の理由でしょう。昔に比べてECでモノを買うことに抵抗がなくなっているので、売り上げが上がれば上がるほど、物流業務が増えてくるのは必然です。そのため、もっと仕事の効率化を図るためにお問い合わせをいただくことが多いです。
-なるほど、起業する以前からこのような構想はあったのですか?
伊藤氏-実は前職の経験がものすごく生かされているなと感じます。もともと出版系の富士山マガジンサービス社にて顧客対応の仕事をしていました。創業メンバーとして働かせていただいていたので、裁量ある仕事を任されていました。「雑誌のオンライン書店」をコンセプトに、定期購読やバックナンバーに特化したサービスを展開していたので、毎日クライアントからの発注指示で出荷作業に追われていました。
さらにクライアントが増えればそれだけ、発注や在庫スペースが増え迅速かつ正確に対応することは難しくなりました。担当者が不在だと、うまく引き継ぎがとれていなく誤って違う号を出荷してしまったり、在庫ありとの確認をしたはずなのに、商品が在庫切れだったりとトラブルが増えていったのです。
-では結構、前職時代では苦労や失敗を経験していらっしゃったのですね?
伊藤氏-はい。中心企業の9割がマルチタスクで動いているので、細かい在庫管理やピッキング作業まで手が行き届いていないのが問題だと感じました。もっとスムーズにトラブルなく物流をこなせないか、そう考えたときに今のオープンロジを起業するもとになった仕組みを考えたのです。
クライアント企業側にあらかじめ受注する見込みのある雑誌を富士山マガジンサービスと提携した倉庫に送ってもらい、発注があったら全て倉庫内で在庫管理や発送までのタスクを受け持ってもらう仕込みを作ったのです。こうすることで、配送にかかる価格コストや出荷作業にかかる時間コストを削減することができ、トラブルも減りました。
-なるほど。そこで今度は自分で起業してやってみようと。
伊藤氏-はい。少なくとも出版業界のみならず、他の業界でもこの物流の課題はあるだろうと思い、起業に至りました。もしこのビジネスモデルが先にやられていたら、起業はしていなかったでしょうね。
「オープンロジ」の戦略とは
-では次に最近のオープンロジの動向についてお伺いできればと思います。
伊藤氏-はい。具体的な成長率やユーザー数に関しては非公開なのですが、去年の7月に比べて、右肩上がりにユーザ数が伸びています
-着実にユーザー数を増やしていますね。何かユーザー獲得の広告はされているのですか。
伊藤氏-実は全くやっていません。既存ユーザーの紹介だったりと口コミでユーザー数を伸ばしている状況です。ユーザー満足度を常に意識しているのでようやく結果が伴ってきたのかなと。
-まさに理想形に近いですね。EC管理システムのネクストエンジンと提携したのも大きかったのでしょうか。
伊藤氏-はい。ユーザーのうち7割は自分たちで物流業務をされている方からの利用です。オープンロジを使って下さる方の大部分が、これまで既存の物流会社さんに相手にされなかった中小規模の荷主さんで、当社を利用することで、ローコストで物流業務の負荷を軽減できることに魅力を感じていると思っています。
また、北海道や沖縄にいる幅広い事業者からも利用があり、とくにこれまで北海道や沖縄などの遠方で出荷作業を行い配送していた場合、関東近郊へのお届けになると、どうしても3〜4日かかってしまうのですが、我々のサービスを利用すると関東近郊の倉庫を利用できるため、関東近郊のお届けが翌日で配達完了になるのです。
当社を利用するユーザーの中には海外の事業者もいらっしゃいまして、インドに現地法人を設立し、現地で仕入れたアパレル商品を当社の国内の提携先倉庫に納品し、インドから当社サービスを通じて出荷をされている事業者もいらっしゃいます。その事業者の方は日本でファッションECを行っていらっしゃいます。もう国をまたいで、インターネットに接続する環境があれば、入庫、在庫、出庫、配送までトータルの物流業務をどこでもできる時代になってきています。
そしてネクストエンジンと組んだ最大のメリットは業務の省力化が実現できる部分ですね。弊社が考える「物流」とは、宅配便の「配送」とは違い、「入庫」→「保管」→「出荷」→「返品」と一連の倉庫内で行う業務を「物流」と考えています。ここの部分で、商品マスタ、在庫数、受注と出荷、出荷結果など、EC事業者側と倉庫側の情報を逐一やり取りをするといった無駄な作業をオープンロジとネクストエンジンが連携することで解消できました。
この中間業務の運用に、何十万円といった費用が毎月かかるといった場合もあり、ネクストエンジンとのAPI連携によりそれら負担がなくなるという業務効率化および費用削減メリットが大きいですね。
-では、まさにシナジー効果を生む提携だったわけですね?
伊藤氏-はい。最近ですと、費用メリットを感じていただいた事業者からの問い合わせが非常に多くなってきています。ネクストエンジンを既に取り入れている事業者も、オープンロジとの独自システムを利用したい、という声をいただいているのでそういった層にもアプローチができていますね。
「オープンロジ」のサービスを海外ユーザーに使ってもらいたい-
-では、次に越境ECについて色々お伺いしたいと思いますが、越境ECに参入するきっかけはありますか?
伊藤氏-越境ECは、やはり可能性はすごくあると感じています。SNSを通して世界中の情報がリアルタイムで共有される世の中になったので、物流においてもどんどん国を越えての取引がよりしやすくなるのではないかと思っています。
我々はまだ多言語対応はしていないのですが、言語・決済などの面では低コストで誰でも簡単に越境ECに取り組めるようになってきてるので、あとはオープンロジのサービスを海外のユーザーにも使ってもらえるように仕組みを作ることを今後の目標にしていますね。
-EMS(海外スピード便)や海外FBAなど他社のサービスについてはどうですか?
伊藤氏-EMSについては関税がかからない分、コストは割安になりますが、民間のDHLやUPS、 FedEXなどは関税がかかるのでその分割高になります。ただ一方で、EMSはよく局留めになってしまうことがあり、受取人がいちいち郵便局に取りに行かなくてはならないこともあります。民間の物流会社だと、追跡番号が発番されるため、配送先まで届いたかの情報を確認することができます。
どちらも一長一短かなと思いますね。また、海外FBAについては今後、海外の納品代行も視野に入れています。海外の倉庫企業との連携により、常にワンストップで配送できる仕組みを作っていきたいと考えております。
-では、今後は海外に本格的に進出していくということでしょうか。
加藤氏-進出というか、今国内でやっていることを越境ECの中心である中国や韓国などの現地ネットワークを作り、もっと越境ECが誰でも簡単に取り組める仕組みを作りたいですね。また海外の人が日本に商品を販売したい「逆越境EC」のニーズも汲み取りと思っています。我々のミッションである「物流をもっと簡単シンプルに」を世界中どこにいても実現できる、そんな世界を創っていけたらと思います。
編集後記
ニーズあるところにビジネスあり、と思うほど従来の物流業界の課題をテクノロジーを駆使しより使いやすいように業界の慣習を変えていく。これこそがスタートアップならではの醍醐味だなと強く感じました。
これからECに携わる事業者がさらに増える中で、オープンロジのクラウドサービスを取り入れることで物流業務を一任し、マーケティングなどの他の業務に集中できるのは人的リソースをより有効活用できるのではないでしょうか。ぜひ気になった方はチェックしてみてくださいね。
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