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ホーム > アキンド探訪  > 結婚式には、起業に必要な知識が全部詰まっている

 
「起業したいです。何から始めればいいですか?」と質問をいただくことがある。
 
私は起業経験こそあれポシャった人間なので立派なことは言えないが、少なくとも最初の1年を乗りきるために必要なことは、結婚式で全部学べた。極論だが起業したい人はもはや独身でも結婚式をすればいいくらいに思っている。なぜなら結婚式の準備をすればビジョンの共有、予算管理、リーダーシップの3点が余すところなく鍛えられるからだ。

「ビジョンの共有」をせねば夫婦喧嘩になる

結婚式準備は、式場見学から始まる。そう思っている人はすでに波乱含みだ。結婚式はまず、夫婦でひざを突き合わせて「どんなことをしたいか」ビジョンを話し合うところから始まる。キリスト・仏教・神前式のどれか。大人数を招くフォーマルな式か、こぢんまりとやりたいか。
 
普段「何でもいいよ~」と寛容な彼でも、意外と「え?結婚式って会社の人や親戚中呼ぶもんでしょ?」と、とんでもない前提をぶち込んでくる。お互い「それ、結婚式をするなら当たり前でしょ?」と思っている要素を言語化し、ビジョンをすり合わせる。これができないと、そもそも見学にすら行けない。
 
たとえば、私は結婚式を挙げるつもりすらなかった。自分のためにご足労願うのも申し訳ないし、なによりコスパが悪い。普段は効率厨の夫も絶対にそのつもりだと思って入籍の準備を進めていた。ところが夫の口から出てきたのは「え、世間的に結婚式はするもんでしょ」
 
「そういうことは早く言ってくれ!」と思ったが、ビジョンを共有しなかった私の落ち度である。
 
起業でも同じだ。なんとなく「いいじゃん」と集まった創業メンバーも、じっくり話し合うと全然違う夢を見ていたりする。最初にビジョンを一つにせねば起業は空中分解するだろう。経営ビジョンを共有できないグループはすぐに崩壊する。そして家庭は最小単位の経営チームだ。2人のビジョンを共有する結婚式は、まさに起業へうってつけのエクササイズなのである。

「予算管理」こそ結婚式の要

結婚式を挙げる上で最も喧嘩になりやすいのが予算だ。「たっぷりのブーケにお色直しは2回。ビデオ撮影もしたいな〜」なんて夢を詰め込むとあっという間に一千万円。引き出物を入れる紙袋が1つ500円の世界。予算管理なしに式が成り立たない。
 
新婚は引っ越しやハネムーンでただでさえ金がない。そしてゲストの満足度も気になる。「ドレスばっかり派手で食事はひどかったね」なんて語り草になりたい夫婦はいない。だから限られた予算でゲストにも楽しんでもらわねばいけない。自分のやりたいことを達成しながら客の満足度を最大化する―。まさにビジネスで肝となる考え方である。
 
私の結婚式では夫が夢を膨らませ、私が予算を緊縮する係だった。「オレンジのお花がいい」「いいドリンクを出したい」といった夢の呪文を唱えると、その都度十万単位でコストが増える。一方、みんなのウェディング調査でゲスト満足度が食事に影響されることを知り、食事予算を最大化するなど独りよがりにならない予算管理が求められる。
 
起業がすぐポシャる中には「創業者の夢だけいっぱい詰め込んで、客を置いてけぼりにしたサービスを出し、誰も使わず終わる」ものがある。どんな素晴らしいビジョンも、予算内で顧客満足度を上げられないなら意味がない。結婚式はそれを教えてくれる。
 
さらに結婚式では自分の両親、相手の両親など「最終決定権が自分にある」と思っているプレーヤーが大量に登場する。起業で言うところの株主だ。親族をどう説得して自分のビジョンへ近づけるかは、まさに起業家に求められるリーダーシップである。

「リーダーシップ」で予想外のトラブルを軟着陸させる

そして、結婚式がビジネスマネジメントを学ぶ上で素晴らしいのは、予想外のトラブルが必ず起きるという1点に尽きる。私の場合は、友人のドタキャンによりテーブルが1つ消滅した。結婚式では座席表を各テーブルに配るのが作法だから、配置を変えるなら座席表も印刷し直し。深夜、もう間に合わないと泣きそうになったが24時間運営の印刷会社へたどり着いた。
 
スタートアップでは「いきなりのトラブル」が笑えるほどやってくる。そのトラブルを乗り切るリーダーシップは素質や才能として語られがちだ。しかしリーダーシップは技術。小さな修羅場で訓練すればいくらでも育てられる。結婚式は小さな修羅場の宝庫として、起業家のリーダーシップを鍛えてくれるだろう。
 
かつて冠婚葬祭の業界で起業したことがある。そのときはイベントへブース出展し、業界内での知名度を上げようとした。在庫手配も予算管理も完璧だったが、まさかのスタッフ不足が前日に判明した。もともと1人いればよいだろうと思っていたが、営業周りで他社ブースを回る間は店番が別途必要なことをすっかり失念していたのだ。マヌケとしか言いようがない。
 
こういう失敗も結婚式なら「スピーチを依頼していた人がまさかのインフルエンザ」「手紙を読んでくれるはずの親友が彼と浮気していた」などの修羅場で身をもって教えてくれるだろう。(後者はできれば経験したくない)土壇場のリーダーシップは、プライベートの修羅場でこそ磨かれる。「あの時に比べれば、こんなの屁でもない」といえる胆力こそ、起業家の能力だから

結婚式のプランだけでもやってみる

起業家であれば、結婚式はぜひ挙げてほしい。彼女がいるなら籍は入れずとも結婚式だけでもぜひ。もし抵抗があるなら、100人単位のパーティ企画を1つ打つのが良いだろう。
 
ビジョンの擦り合わせ、予算管理、そしてリーダーシップの奪い合い……どれも肝がヒリヒリする経験だ。だが、ヒリヒリするのを快感だからこそ、スタートアップって楽しいんだろ?くらいに言える仲間ができることを、いち起業家として期待している。

 
 

この記事を書いた人

慶應義塾大学在学中に起業を2回経験。卒業後は外資系企業に勤め現在は独立。フリーのマーケターとして活動するほか、ブログ『トイアンナのぐだぐだ』(http://toianna.hatenablog.com/)をきっかけにライターとしても活動中。

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