メール接客のプロが語る「CX(顧客体験)」の重要性
2019年3月19日、ネクストエンジンユーザー向けに開催された「顧客対応品質アップに繋げる効率化とは」セミナー。
前回はHameeの「断捨離」についての話でした。続いては、株式会社ラクス カスタマーサービス・クラウド事業部の西山和人さんが登壇。
株式会社ラクスは、中小企業向けクラウドサービスを提供する会社です。特にメールシステム「メールディーラー」は5,000社を超える企業が導入するシステムです。
そんなラクスに入社以来、メール共有管理システム「メールディーラー」やWebチャットツール「チャットディーラー」の拡販業務を担当してきた西山さん。たくさんの企業のメール接客を見てきたようで、まさにメール接客のプロ!
メール接客術の伝授に入る前に、大前提としてこれからのECサイト運営では「CS(顧客満足)からCX(顧客体験)へ」の転換が重要だと言います。どういうこと!?
商品やサービスを購入後、アンケートで「あなたはこの商品(サービス)にどのくらい満足していますか?」と聞かれるやつ、よくありますよね。たいていは「1:満足していない」~「5:非常に満足」という5段階評価で回答します。
しかし、西山さんによるとこのアンケートで「5:非常に満足」と回答した際、その「非常に満足」には「合理的な満足」と「感情的な満足」の2種類があると言います。
【合理的満足】
機能や性能が期待通り、価格が安い、他の商品より優れていると感じ満足している状態
【感情的満足】
このサービスに愛着がある、このサービス以外考えられない、ユーザーであることを誇りに思っている状態
同じ「非常に満足」でもだいぶ違う意味合いを持つんですね。もしかすると「合理的満足」の方は、もっと優れた商品があったら乗り換えられてしまいそうです。 実際、「合理的満足」と「感情的満足」それぞれを実感した顧客ではその後の売上に差が出るそうです。
「感情的満足」をお客様に与える「CX(顧客体験)」
「感情的満足」をお客様に得て頂くことこそが「CX(顧客体験)」。そのためには、製品の性能やサービスだけでなく利用購買プロセス全体でいかに満足感を感じて頂くかが大切なんですね。
それでは、実際に「感情的満足」をお客様に得て頂き、「CX(顧客体験)」を高めるためにどうすればいいのか。西山さんによるとポイントは2つ。
まずは一貫性を保つこと。
一貫した購入体験は安心感につながります。「メールがそっけなかった」「梱包が雑だった。前はこんなことなかったのに……」といったネガティブな体験は購入体験全体の印象を押し下げてしまいますよね。
そして、期待値を超えること。
自分の過去の経験から考えてもイメージしやすいと思いますが、なにごとも満足度が高まるのは期待値を上回ったときです。そのため、当たり前のことを当たり前にやるだけでは期待値は上回ることはありません。
たとえば問い合わせのメールに対する返信が想像していたよりも早いとか、期待していた以上のサービスが合ったとか、そのお客様だけへの特別なメッセージが添えられているといったことでも期待値を超えたと感じることができます。
明日から使えるメール接客術
「CX(顧客体験)」について学んだところで、いよいよメール接客術に入ります。 今回は西山さんがECサイトでのお客様へのメール対応において「好印象を与える」対応品質のポイントを2つ伝授してくれました。
回答の的確さ
まずは「回答の的確さ」です。お客様から問い合わせがある時は、お客様は何かを求めて連絡をしてきています。そのため、そのお客様が求めている回答が明確に伝わることが「CX(顧客体験)」を高めるためには重要です。そのために以下の3つのポイントに留意してメールを作成しましょう。
結論ファースト
たとえば、このように言われたらあなたはどうしますか?
「大きな丸をひとつ描いてください。次に、小さな丸を3つ描いてください。」
……どのような絵に仕上がりましたか?実は、この指示の意図が「ボウリングの球を書いてほしかった」だったとします。あなたの絵はボウリングの球になっていますか? 全然違う絵が完成した人もいたはずです。
もし全員にボウリングの球を書いてほしかったのであれば、事前に「これからボウリングの球を描きます」と言っておけば、多くの人が間違えないのではないでしょうか。
メールの対応も同じです。 冒頭で要約を書いてから詳細を書く、結論を述べてから理由を書くなど書き方を工夫することで、グッとお客様に伝わりやすく、双方に誤解のないメール文になるはずです。
一文を短く
まずは以下のメールを読んでみてください。
あいにく、XLサイズはご用意がないのですが、本ブランドは国内他ブランドに比べ、全体的にサイズが大きめに作られておりますため、大きめのサイズをお求めであっても、比較的ご満足いただいているケースが多いため、ぜひとも返品無料の当ショップでご試着いただけますと幸い……
読みにくい!と感じた方も多いはず。「てか途中で読むのやめた」って方も多いのでは。
それでは以下はいかがでしょうか。
あいにく、XLサイズはご用意がございません。
ですが、本ブランドは国内他ブランドに比べ全体的にサイズが大きめに作られております。
そのため、大きめのサイズをお求めであってもご満足いただけるかと存じます。ぜひとも……
同じ文章なのに読みやすさが全然違います!全部読んでくれたのではないでしょうか。
ポイントは改行ですね!
1つのパラグラフで点(、)はひとつ(多くてもふたつ)だと読みやすい!と言われています。
お客様の真意を読み取る
お客様のお問い合わせ内容には、時に真意が隠されていることがあります。
たとえば、「XLの服はありますか」というお問い合わせがあった場合、お客様は「XLの服があるかどうか知りたい」のではなく、「自分にあったサイズの服が欲しい」ということのはずです。
真意に気づいていないと、「当店にはXLの服はありません」で対応は終了してしまいます。
しかし、その真意に気づいていれば、「当店にはXLの服はありませんが、当ブランドのサイズは大きめな作りとなっていますよ」とこちらから提案をすることもできますよね。それだけでお客様の受け取る印象は大きく変わってくるはずです。
回答の丁寧さ
続いて、「丁寧さ」です。お客様にメールで好印象を与えられることといえば、敬語や感情表現、クレーム対応などいろいろありますが、何が大切なポイントなのでしょうか。
パワーライティング
「パワーライティング」とは、否定的な表現を肯定的に言い換えるテクニックです。以下の例文を見てみましょう。
本人以外のご利用はお断りいたします
→本人のみご利用いただけます
その商品はご利用頂けません
→その商品のラッピングはできかねます
4月1日以降はご利用いただけなくなります
→3月31日までご利用いただけます
など、「~できない」→「~ならできる」と表現することで受け手の印象も大きく変わりますよね。
代替案の提示
どうしても、「できない」とお断りしないといけない……! そんな時もあるはず。
そういった時は、ただお断りするのではなく、 代替案を提示しましょう。
「XLサイズはご用意がないのですが、当ブランドのサイズは大き目な作りとなっていますので(……どのくらいのサイズ感の服をご希望なのかヒアリング)
ただ「できない」と言うのではなく、少しでもお客様の要望に応えようとしていることが伝われば、きっとお客様の印象もグッとよくなりますよ。
まとめとセミナー参加者の声
さて、「一見さん」を「常連」に変えるメール接客術を見てまいりましたが、どれも今日からすぐに取り入れることができそうですね!ぜひあなたのショップでも取り入れられそうなものがあれば導入してみてはいかがでしょうか?
また、セミナーでは記事には書ききれなかった重要ポイントもたくさんありました。機会があればぜひ参加してみてください!
最後に、セミナー参加者にお話を聞いてみました。
楽天・Amazonなど4つのECサイトにて和風だしやブイヨンなどを販売しています。それまで4店舗すべての受注処理をすべて手作業でやっていたのですが、一昨年の12月にネクストエンジンを導入し物流もアウトソースしてからはすごく楽になりました。そのおかげもあって売上は3倍にも増えました。
今日のセミナーはネクストエンジンのいろいろな使い方や情報を知りたいと思い参加しました。メールでのお客様対応にも悩むことも多かったので、勉強になりました。4つのECサイトそれぞれのメール対応もモールごとに毎回見に行かなければならず困っていたので、メールディーラーも検討してみたいですね。
あとは、会社内の見学ツアーがよかったです。Hameeが最初年商4000万くらいからスタートしたということで、今の私どもと同じくらいなんですけど、いつかこんな社員が楽しめる自社ビルを建てたいな、といい刺激になりました。