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広島東洋カープ、25年ぶりの優勝!得意の「育成」は選手だけではなかった。
1991年の優勝以来、25年ぶりの優勝を遂げ、全国に赤ヘル旋風を起こした広島東洋カープ。1990年代から2000年代には、FA制度により主力選手が相次ぎ強豪球団に流出し、苦難の時代を過ごしました。しかし、ここ数年で若い世代を中心に生え抜きの選手が台頭し、「育てる」力で金銭的には圧倒的な差がある強豪チームを打ち負かし、優勝に輝いたカープ。
華々しい優勝の裏には、地方球団ながらも堅実に収益を積み重ねるコンテンツマーケティングがありました。今回の記事では、地方で不況にあえぐ個人店や企業の生き残りのヒントになるかもしれない、限られた資金で最大限の戦力を創りあげてきたカープの「経営」面に光を当てていきます。
12球団唯一の「市民球団」ながら40年にわたり黒字経営継続中
カープと言えば、日本のプロ野球12球団のうち唯一の「市民球団」として有名です。ジャイアンツであれば読売新聞、タイガースであれば阪神電車など、他の11球団には球団を経営するオーナー企業がついています。
オーナー企業は、球団の運営において、赤字分を補てんする費用は「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について」という国税庁の通達により、特別損失として企業の会計に合算できることになっています。つまり、球団のオーナー企業は、自社の広告宣伝というだけでなく、会計上の優遇も受けられるため、本気で球団経営を黒字化させなくてもよいのです。
そうした一方でオーナー企業のないカープは、球団経営を出せば出すだけただの「損」となってしまい、球場設備や選手の給料に割く費用の削減に直結してしまいます。非常にシビアな環境の中、初優勝を果たした1975年以来、公表されている2015年まで、40年にわたり黒字経営を続けているのです。
悲願の優勝を果たし、これからクライマックスシリーズを本拠地球場で開催するため、2016年度の黒字達成も間違いないでしょう。このような堅実な経営を続けながら、一方で選手の育成に成功し、今や強豪球団ともいえるカープ球団の経営に注目が集まるのも当然といえます。
ファンが、広島市民が、「育てる」球団
カープの魅力と言えば、ファン目線からいえば何と言っても「育成力」でしょう。若いころから見守ってきた選手が幾度もの困難を乗り越え、一流の選手として他の強豪球団と渡り合い、打ち負かすほどになるまで成長する姿を見るのは、なんとも言えない感動を味わうことができます。
実際に、カープの主力選手と言えば、助っ人外国人を除けば他はほとんどが生え抜きの選手。若いころを知っているからこそ、一人前になった今でも応援についつい力が入ってしまいます。
「育成」は選手だけに限らず「カープ」というチームそのものについても当てはまります。球団創設時には資金が集まらず、「たる募金」と言って、広島市中に置かれた樽に市民からの募金を募り、なんとか球団経営を継続してきました。また、現在の本拠地球場である「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島」建設の際にも、たる募金が実施され、1億円を超える資金を集めています。
あまり知られていませんが、マツダスタジアムの正式名称は、「広島市民球場」。以前の本拠地であった「広島市民球場」は旧市民球場、こちらは新市民球場とされています。名前にも地元密着が見て取れるのです。このように、市民に愛され、選手やチームが育っていく姿を見ることができるのが、他球団との大きな違いと言えるでしょう。
「ファンをリピーターに」結実したコンテンツマーケティング
今度は、経営面から「カープ」を見てみましょう。40年以上も黒字が続く唯一の球団であるカープ。一般に、プロスポーツは収入の多くを興行収入に頼っており、チームが弱ければ弱いほど観客動員の数字は縮小し、そのため選手に支払うことのできる給料も削減せざるを得ず、優秀な選手が流出してしまうという負のスパイラルに陥ってしまいます。
1990年代の中盤から2000年代までは、カープにもこの法則が当てはまりました。世間の注目がカープに集まりだしたのは、初のクライマックスシリーズの進出を果たした2013年ごろからですが、実はそれまで横ばいだった黒字額は前年の2012年から増加しているのです。これはなぜでしょうか。
それは、「ファンをリピーターに育てあげる」という球団のコンテンツマーケティングが成功したからに他なりません。人口の多い関東近郊に本拠地を構える球団とは違い、広島県民は280万人ほどで、球場のある広島市の昼間人口は100万人ほど。都心より少ない人口で着実に収益を上げていくには、ファンをリピートさせる施策が不可欠でした。
例えば、球場にその工夫が見られます。現在のマツダスタジアムは、2009年に開場。大人数でバーベキューを楽しみながら観戦できるシートや、寝そべって試合を見られる「寝ソベリア」など独創的な座席を設営し、何度来ても飽きない球場づくりがされています。座席以外にも、球場内には小さな子供が遊べるスペースや、数多くの清潔トイレが設営されていたりと、様々な工夫が凝らされています。
また、スピーディーなグッズ展開にも工夫があり、チームがサヨナラ勝ちをしたり、選手が記録を達成すると、最速で翌日には関連するグッズが発表され、どのグッズもすぐに完売してしまうほどの人気です。最近では、関東の「カープ女子」を新幹線一両をまるまる手配し広島まで招待し観戦してもらうツアーなども展開しており、型破りなサービス展開に今後も注目です。
地方の個人商店や中小企業にも生かせる手法
カープ球団のリピーターをがっちり掴み放さないようにする地元やファンに密着した取り組みは、これからますますプロ野球全体に広がっていくと考えられます。
一昔前までは、放映権の大きな収入が見込める国民的に人気のある球団の巨人戦を頼りにした球団経営が多かったプロ野球ですが、娯楽の多様化やテレビ離れが深刻化し、放映権収入だけでは経営が成り立ちにくくなっているのです。
特に交流戦以外巨人戦のほとんどないパ・リーグの球団では、北海道に移転して成功を収めている北海道日本ハムファイターズや、九州に密着し、九州出身の選手を中心に育成しながら豊富な資金力で優秀な選手を獲得し、バランスよく経営をしている福岡ソフトバンクホークスなど、カープと同様に地元やファンに密着した経営が展開されています。
また、こうした経営手法は、「早い」「安い」を売りに規模の経済性にモノを言わせて世界中に展開しているグローバル企業やチェーン企業に対する、地元の昔ながらの個人商店や中小企業が生き残るためのヒントにもなります。今後は、画一的で広汎的なサービスを展開するのではなく、ピンポイントに効果的にサービスを展開する経営方法に、注目が集まっていきそうです。
引用元:http://www.carp.co.jp/win16.html
おわり
今回は、25年ぶりに優勝を果たしたカープの経営面に注目をして紹介してきました。一時は長い低迷期を経験し「暗黒球団」と呼ばれながら悲願の優勝を達成した裏には、着実な経営を続け、一度つかんだファンを簡単には手放さない一貫したコンテンツマーケティングがあったようです。こうしたマーケティング手法は、人口減にあえぐ地方の経営者にとっても参考になりそうですね。