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  創業期の英雄、起業のコア人材 皆さんの会社には「英雄」が存在するでしょうか。創業期の会社には、大抵の場合、英雄が存在すると思います。この人抜きにしてこの会社はない、ある個人の能力、あるいは人脈、そういうものが会社経営に圧倒的に寄与したという話はどこの会社にもあると思います。   創業期というのは大抵の場合、あらゆる業務が属人的です。当たり前ですね、最初から儲けのシステムが完全に出来上がっている会社なんてものはまずありません。プレイヤーの戦力こそが創業期の会社における強さそのものなのですから。その環境からは必然的に英雄が発生します。   創業時、あるいは創業後の中核メンバー集めの際、創業者であるあなたは間違いなく「儲けを生む人間」、あるいは「自分の能力的欠損を埋め合わせてくれる人間」という基準でメンバーを選んだと思います。少なくとも、合理的な(合理的であるということは必ずしも良い結果を生むわけではありませんが)創業者であればそうするでしょう。その結果、あなたの人選はドンピシャに当たった。あなたの選んだメンバーは八面六臂の大活躍を果たし、会社は大きく成長した。そういう美しいお話は結構あります。素晴らしいですよね、あなたも創業者として大変、鼻が高いでしょう。   しかし、美しくない話がここから始まります。会社が上々の収益を上げているとなると、当然規模を拡大したい、そういう話になります。しかし、規模の拡大を志向するとなると、業務の属人性を解除し、プレーヤーの能力に依らない収益システムを構築する必要が出てきます。英雄の異能で利益を上げる限界が来たから人を増やすという話になったわけですから。   業務のマニュアル化とノウハウの言語化とシェア、そういうことが必要になります。また、そろそろ創業以来ハチャメチャだった就労環境も整えなければならないでしょう。人を雇うということは、雇った人が会社に残ってくれる環境を作らなければならないということです。ハチャメチャに耐え、狂ったモチベーションで前進してきた創業メンバーの時代は終わり、会社というシステムを組み上げる時代がやってきます。   これを、僕は「創業期の終わり」と呼んでいます。業種や業態にもよりますが、従業員が2桁に到達するころには、嫌でもその辺は考えなければならないでしょう。創業期の終わりはとても悲しい季節です。これまで、個人の異能と裁量を丸投げした意思決定の速度で前進してきた会社を、ルールとシステムの中に落としこむ必要が出てくるのです。ワーカホリック達の楽園、永遠のような文化祭前日は終わりです。社員の数を増やすということはそういうことです。創業メンバーだけで回していた頃のようなハチャメチャは、規模が大きくなってくるとそうそう通らない。(たまにネジ通す会社もなくはないですが・・・)     ↓こちらもおすすめ↓ 「起業失敗の話。起業を志す皆さんに敗残者からお伝えしたいこと」     創業期の終わりに。英雄頼りの会社経営から抜け出す理由 もちろん、この段階で事業の拡大を止めるというのもありえなくはない選択肢です。実際、十分な利益をあげ、大きな成長余力を有しながら、それでも従業員の数や事業の規模を頑なに拡大しない経営者は存在します。彼らは正に勝利者です。自分の会社の最も居心地の良い大きさを見つけ、後はそれを守っていくフェーズに入った人たちです。規模を志向しなくとも十分な利益が取れて、かつ社内の人間や出資者がみな満足するだけ配分できる会社にのみ許される最高の贅沢です。   しかし、出資を受けて創業した人間がここで立ち止まるのは余程理解のある出資者に恵まれていない限り、難しいでしょう。また、社内の人間が「成長を止める」という判断を呑んでくれるとは限りません。「ふざけるな、ここが上限なら俺は辞めるぞ」そういうことになります。この段階で「英雄」たるプレイヤーに抜けられることは、即ち事業の破綻、そこまで悪くなくとも大きな収益の減少を意味することは言うまでもありません。   余談ですが、社員数人くらいだけど羽振りのいいあの社長、実はすごい人なんですよ。会社経営において「成長を止める」という判断は恐ろしく、難しいものです。まず、自分自身が止まれない、自分が止まれても出資者が許さない、出資者が許しても社内の人間が許さない、そういうことです。銀行も金を貸しに来ます、社長ならやれるという声がどんどんかかります。新規の出資希望者だって列を成します。それでも、それら全てを振り切ってその場所にとどまったのが、「小さい会社の儲かっている社長」です。社長自身がスタープレイヤーであり、同時に会社のオーナーである場合が多いですね。このようなゴールを目指すなら、是非その形を作りましょう。   しかし、多くの人は成長余力のある限り拡大を目指すことになると思います。仕方のないことです。創業の仕方によっては宿命付けられていると言っても過言ではないこともあるでしょう。出資者は利益を求めます、従業員は給与を求めます、そしてあなたは栄光を求めるでしょう。となれば創業期は終わるしかないのです。もっと儲けるためには、英雄の異能を会社の仕組みに落とし込んでいくしかない。英雄頼りの経営を抜け出さねばならない。拡大するしかない。そして、もちろんコンプライアンスと労働環境だって整えていかねばならない。 英雄の時代、輝かしき創業期 話をわかりやすくするためにラーメン屋のチェーン展開のお話をしましょう。   あなたは、1人のとてつもなくラーメン作りが上手い人間(仮にAとしましょう)を役員として迎え入れて、1軒目のお店を見事大繁盛させました。Aはとてつもなく職人気質で仕事に一切の妥協はなく、1日14時間鍋の前に立ち続け、会社に大きな利益をもたらしました。ラーメン屋は当たると大きいのです。お店の前に行列は絶えず、店舗運営以外の実務一切を担当していた社長のあなたは鼻高々です。最早あなた自身が店舗に出てホールや調理補助をやることもありません、人を雇えます。14時間働いた後に社長業をやる地獄からも開放されました。次から次へとメディアの取材も押しかけるでしょう。最初の挑戦は大成功でした。   さぁ、2号店だ。あなたは考えます。今度は資金にも余裕がある、銀行もノリノリで貸してくれた。物件情報も内装についても厨房器具も什器も勝手はすっかりわかっている。協力者もたくさんいる。2軒目の店舗は大抵の場合、1軒目より遥かに効率よく作れます。もちろん、ラーメンのレシピも明文化済みです、難解な火加減などもあなたはAに付きっ切りで習得しました。Aは純粋なる職人肌で指導が出来るタイプではないので、新人は2ヶ月ほどAの下で研修させた後、すぐ2軒目に投入しました。新人は二人とも経験者でしたし、レシピさえあれば何とかなるとあなたは判断したのです。   研修の後、Aは新人に対して「1日14時間ぐらい働く根性がない奴に勤まるのかよ・・・」などとグチグチと文句を言っていましたし、新人からは「Aは最悪だ、社長の指示をまるで守らない、無茶苦茶に働かされた」という声が上がりましたが、気にしていられません。「まぁまぁ、2号店に移れば大丈夫だよ、君たちが主役だ」などと宥めて進めるしかありません。なにしろ、2軒目の店舗は出来上がっているんですから。   2軒目も大成功でした。新人1号と2号はなかなかの働きぶりを見せ、1号店を上回る利益を叩き出しました。もちろん、1号店も相変わらず大繁盛です。あなたの下には大量の利益が転がり込んで来ました。ここで、リスクを取って二人同時に正社員を入れたのが英断だったことがわかります。新人2号を次の店舗に投入すれば、すぐに3号店が開店できるのです。そのようにして、あなたは気づけば5店舗のラーメン店を持つ一端の実業家になっていました。あなたの店舗展開能力は確かだったのです。新商品の開発などはAが引き続き担当しました、それらも次から次へとヒットしました。ラーメンを開発することに関して、Aは正に天才でした。ベースのスープにも度重なる改良を加え、お客様を飽きさせない多様な味を作り上げることが出来ました。   ここで問題が発生しました。マネジメントの手が足りないのです。飲食店というのは放っておけば利益を産む魔法の箱ではありません。所詮は人間が運営するお店です、監視を緩めればすぐに従業員はスープの煮込み時間を短縮し、掃除をサボります。最悪の場合売り上げを引っこ抜きます。スープを水増しし、麺の本数を少々いじればそんなことは簡単に出来ます。架空のアルバイトをでっちあげることさえあります。帳簿だって任せきるわけにはいきません、仕入れ先からリベートを抜いていないかもチェックする必要があります。マネジメントや業務オペレーションが上手く回ってない店舗にはあなた自身が乗り込んで指揮を執る必要もあるでしょう。あなたはついに限界に達しました。   そこで、あなたは管理職を一人雇うことを考えました。しかし、そこにAからの異議が上がりました。自分がいつまでも現場にいるのはおかしい、現場の人間を増やした上で自分に管理職を担当させろ、店舗運営のことなら自分が一番わかっている。何より、ラーメンを俺より上手に作れるわけでもなく、まして社長でもない、ぽっと出の人間に管理されるのは我慢ならない。Aはそう主張しました。あなたは呑むしかありませんでした。確かに、筋をいえばその通りなのです。Aは金だけで動く人間ではありません、仕事の充実感がなければ最悪退職してしまうことさえ考えられます。   結果としてあなたが2店舗の管理、Aが3店舗の管理を行うこととなりました。あなたも社長業が忙しくなっていたのです。新店舗の展開もやらなければなりません。まだまだ成長する気は満々です。逆にAは1号店の運営から解放され、十分な時間的余裕が確保されました。分業体制の始まりです。あなたは口を酸っぱくしてAに言いました、労働法規を守れ、コンプライアンスを守れと。あなたがラーメン作りの天才なのはわかっている、でもそれだけは頼みましたよ、と。もちろん、就業規則も作成して備え付けてあります。Aには遵守する、という旨の念書さえ取る徹底をしました。   こうして経営の第2フェーズが始まったのです。     ↓こちらもおすすめ↓ 「「労働者は強い」僕が体験した、創業期における従業員の話」     英雄の反乱、会社経営の失敗 嫌な予感はしました。そして、それはもちろん当たりました。数ヶ月とたたずAの管理する店舗から、離職者が出始めたのです。客足は落ちていません、むしろ増加しています。従業員に支払う給与だって、業界水準から見ればまずまず以上に設定しています。福利厚生だって飲食業界としては高い水準です。なのに、離職者は発生してしまいました。あなたは大慌てで退職者に話を聞きました、結果としては「Aの業務における要求水準が高すぎる」「Aにマネジメント能力がない」「Aが業務コンプライアンスや労働法規を一切無視している」ということが伝えられました。   いや、正確に言えばこれは完全な事実ではありません。Aに何があろうと付き従うという人間も出てきていました。Aは半ば意図的に従業員の精錬を行っている節さえ感じられました。何があろうと自分に付き従う、能力の高い人間だけを残す。そういう意図が感じ取れました。もっともAは論理的な人間ではないので、そのような意図が言語化されているかはわかりません。それしか仕事の仕方を知らなかったのかもしれない。実際、彼が修行してきた場所はそういう環境だったのでしょう。   しかし、これは看過できません。Aは退職した従業員の穴を自ら働き、また自らに付き従う従業員に働かせて埋め合わせてはいましたが、完全に違法操業です。あなたは次々と辞めていく従業員から発生する問題を何とかお金と説得で解決し、求人を打ち、それでもまた辞めるという地獄に疲れ果てました。   しかし、この会社の責任者はあなたです。あなたは去っていく従業員から受ける批判と罵倒に何一つ反論出来ません、裁判を起こされたら矢面に立つのはあなたですし、労基署に怒られるのもあなたです。このままの状態では店舗数を増やすことも出来ません。成長が止まってしまいます。出資者からは新規店舗はどうした、利益は上がっているんだろう、という矢の催促が突き刺さります。悪いのは全てあなたです。経営のコントロールを失った社長に弁解出来ることがたったひとつでもあるでしょうか?   Aとあなたは何度も何度も交渉を重ねました。我々は会社組織だ、法を守らねばならない。従業員は必ずしもあなたの満足のいく能力を持っているとは限らない、それでも育てなければ利益は出ないし事業拡大も出来ないのだ、と。実際、採用して僅か2ヶ月の研修を経た人材が十分に店舗を繁盛させているではないか、と。しかし、Aは納得する素振りを見せても行動には移しません。売り上げは落ちていませんが、利益率はじわりじわりと下がり続けていました。当たり前です、従業員が定着しなければ人件費と求人費用は果てしなく嵩むのです。従業員の配置転換やローテーションなども試してみました。しかし、結果は同じでした。   また、経営方針の食い違いも大きくなってきました。あなたは言います、業務を効率化しよう、そろそろセントラルキッチンを検討してもいいのではないか、あるいは具材の調理を外注しても良いのではないか。いくつかの会社には話をもう振ってある、味見をしてみてくれ、私の味覚では十分な品質であると感じられる。しかし、Aは拒否します。全て手作り、店内自製、そうでなければうまいラーメンなど作れないというのがAの信念です。実際、この言葉には説得力があります。このラーメンチェーンを推進させてきた原動力がまさにそれなのですから。   そして、あなたはついに決断しました。Aを現場に戻す、もちろんしっかりと支払っている役員報酬はそのままで、あるいは現場に戻ることさえしなくてもいい。商品開発と店舗を見て回って味見と監視するだけの立場でもかまわない、あなたはラーメン作りの天才ではあるけれどマネジメントの能力は無い。それを受け容れろ、経営判断としてあなたにマネジメント業務を続けさせることは出来ない。言うまでもなく、AとAに付き従う人間たちは納得しませんでした。このようにして、戦争が始まったのです。   あなたの管理する2店舗の掌握は問題ありません、しかしAの管理する3店舗の軸となる従業員は、既にA派としてあなたに反旗を翻していました。Aを解雇するのであれば、我々も退職する。彼らはそのようにあなたに宣言しました。せめて2店舗にしておけば・・・今更、後悔しても遅いのです。また、Aをメディア向けの顔としていたのも不味かった。あなたは社長業として黒子に徹していたのです。業界知名度は圧倒的にAが勝っている、Aは最早業界の風雲児として揺るがぬ評価を獲得している。Aが大量の人員を連れて離反するのは大いに可能なことですし、それは会社の信用を途方も無く貶めることでもありました。   さぁ、あなたならどうします? 会社経営の手綱を放さないために、みんなで幸せになるために このお話は僕の経験を大きく膨らませたフィクションですが、往々にしてある話です。こういった戦争を経ていない会社の方がむしろ少数ではないかと思うくらい、あちらこちらで起きていると聞きます。このお話はコンプラインスや労働法規の話と、創業期の英雄の反乱がまとめて描かれているので複数の論点が混ざっているのですが、これがまた実によく発生するワンセットなのです。残業を減らし、コンプライアンスを徹底させ、業務を最適化する際の最大の障壁は大抵の場合、現場の人間そのものです。   要素を単純化するために、Aの持ち株や出資者の影響などには部分的にしか触れませんでしたが、現実的には勘案すべき要素はまだまだ増えます。ごちゃごちゃに縺れた(もつれた)人間の紐は、実際にはもっともっと複雑になっていきます。しかし、つまるところ話はシンプルでもあります。社長であるあなたを越えかねない影響力を持つ人間が社内に出現してしまった、その結果、指揮系統が乱れ、挙句の果てに反乱まで発生してしまった。そういうことになります。   このようにして創業期の英雄と社長の対立は始まります。人間同士の利害と信念を賭けた対立が話し合いで解決することというのは、本当に稀です。そして、この問題を起こさないための土台作りや設定は、創業初期にしか出来ないことなのです。そして、異能を持つ人間を雇い、己の持たざる能力を補完するという「人を雇う」ことの最大の利点は、そのまま欠点でもあるのです。その欠点は往々にして創業期の終わりに顕現してきます。   「狡兎死して走狗烹らる」という諺(ことわざ)があります。ご存知とは思いますが、敵国を滅ぼしたら、どれほど功績のある忠臣も不要になって殺される、という意味合いの故事成語です。しかし、僕には犬を煮る側の気持ちが痛いほどわかります。もちろん、創業の英雄を煮殺すのは褒められた話ではありません。創業メンバーがいつまでも円満に、お互いの能力を認め合いながらやっていければそれは間違いなく最高です。しかし、そうはならないこともある、むしろそうならないことの方が多いということを創業者は覚えておく必要があると僕は思います。僕も覚えておくべきでした、心から後悔しています。   この話はちょっと見ただけで幾つもの失敗が見て取れると思います。あそこをああしていれば、こうしていれば、皆さんもすぐに思いつくでしょう。しかし、断言してもいい。創業と拡大の熱狂の中でそれを考え、備えられる人はそれほど多くはありません。まずは、いつまでもメンバーがお互いを認め合っていける仕組みづくりを、そしてそれが上手く運ばなかった時のこと、あなたの最もやりたくないプランについても十分に考えておくことを薦めます。起業する人間なんてのは往々にして夢見がちな理想の高い人間です、功績ある創業メンバーに自ら引導を、それも計画的に渡すなんてことは考えたくもないと思います。   しかし、それでも僕は考えておいた方がいいと思います。もちろん、僕が底抜けの無能であった可能性も大いにあります。むしろ、結果を見ればその通りでしょう。あなたはそんなこと考えなくても上手くいくのかもしれない、いや、むしろそんなこと考えない方が上手くいく可能性だってもちろんあります。しかし、この敗残者の無様なお話をちょっとだけ、頭の隅に残しておいていただければ僕も多少は救われます。人生は残念なことにまだまだ続くので、僕もまたやっていきます。   長い長い文章の読了ありがとうございました。     ...

  経営者の夢 経営者の夢というのはいつの時代、どんな場所でも大体明確です。「給料のいらない従業員」「無料の労働力」これに尽きます。「絶対に儲ける方法」について考えていくと、「まぁ人件費ゼロなら間違いなく儲かるよね」という結論が必ず出てくるわけです。   仕事というのは、お金を介した労働力、ないし労働成果の奪い合いゲームという色が大変強くあります。安い対価で高品質な労働力、あるいは労働成果を手に入れることが出来ればその時点で大体勝ちなのです。しかし、もちろん経営者の「タダの労働力が欲しい」という強い気持ちを実現させるわけにはいきません。そういうわけで労働者は保護されています。経営者があんまり気持ちを前に出しすぎると、「違法ですよね、それ」という話になるわけです。   社会に怒られます。社会が怒ると怖いので経営者は「この辺までは大丈夫な気がする」と思いながら進み、たまにガッツリ怒られます。あ、流石にあそこまでやると怒られるのか、みたいな知見が発生します。   しかし、一回起業してしまうと個人事業主であれ法人であれ、「この対価でこの働かせかたはダメ」みたいな保護を受けることは一切出来ません。「その仕事を受けたおまえが悪い」という世界観になり、誰一人同情してくれないのです。赤字の仕事を受けざるを得なかったことくらい誰だってありますよね。法に守られた労働者の世界観と違い、フリーランスや経営者の世界はより露骨な奪い合いです。当然ながら、「奪うテクニック」もどんどん洗練されていく。市場参加者同士の奪い合いが飽和したら、当然「新規参入者から毟ろう(むしろう)」という世界観になっていきます。「起業しよう」あるいは「独立しよう」と思い立ったこと自体が既に落とし穴、ということもあるわけです。今日はそんな話をしようと思います。   今日はわりと込み入った話になってるので「まとめ」はありません。結論だけ理解しているとその結論からズレたものが来た時、対応できないので、そんなのむしろ読まない方がいいと思います。 起業とは・・・誰もあなたを止めてくれない 別に皆さんを不必要にビビらせたいわけではないんですけど、起業というのは割と危ないです。というのもですね、「起業」とか「独立」みたいなキラッキラした単語をエサに人間を沼地に引きずりこんで骨までしゃぶる皆さんというのは結構存在しています。具体的な名前を出すと訴状が飛んで来て後頭部に刺さりそうなので具体的な話は避けますが、ネットワークビジネス系の皆さんも最近は「起業」とかそういう単語を使うみたいですね。ブログ飯界隈もわりとそういう匂いがしますが、僕の鼻が間違っているのかもしれません。わからん、なんもわからん。   雇用関係も持たない個人に商品を卸してノルマを課して売らせるという経営者の夢みたいな状態を作り出す皆さんは大変賢いと思います。契約社員ですらない、「非契約社員」みたいな状態で人間を使いますからね、彼らは・・・。   で、まぁこの話題は危険が危ないのでこの辺にしますが、例えば、「俺は起業するぞ」と心に決めて知人の経営者にアドバイスを乞いに行くとするじゃないですか。「やめとけ」と言ってくれる人って実際少ないんですよね。大体の人が「リスクはあるけどやりたいならやったらいい、応援するよ」って言ってくれると思います。逆に、顔を真っ赤にしてやめろと言ってくれる人がいたらその人は心からあなたを心配する良い人です。あなたにマトモなこと言ってくれる可能性が高いのはその人ですね、大事にしましょう。   というのもですね、まぁ起業なんて95%以上が失敗に終わるんですけど、それでも起業しようとする人間に「やめろ、失敗するぞ」って言ったら嫌われるんですよ。わざわざ嫌われたい人間もいないじゃないですか。そして、その人がなんかの間違いで成功しちゃった場合「俺の成功を信じなかったバカな経営者」としてあれしてしまうという可能性もある。   それに引き換え、とりあえず起業さえしてくれれば何らかの方法で利益を抜ける可能性も出てくるわけじゃないですか。正直なところ、起業相談された場合の答えなんか「やったらいい、出来るなら協力はするよ」しか無いんですね。それが一番損をしない選択肢なんです。正直なところ、起業家なんて日常的にガンガン破滅してるわけですし、特に思い入れもない新規創業の若者が一人や二人吹っ飛んだところで、どうということはありませんからね。ペットのヤマトヌマエビが死ぬ方が悲しいですね。それくらいで悲しんでいたらやっていけない。   あなたが「会社を辞めて起業する」と言い出した場合、周囲の人間はとりあえず反対すると思います。でも、それも一定ラインまででしょう。だって、起業のことがわかる人間なんて普通のサラリーマンとして暮らしていれば周囲にはそんなにいません。説得力のある反対をすることも経験がなければ難しいです。そして、起業のことがわかっている人間ほど良い笑顔で「やったら?」って言うと思います。僕だって破滅的な創業計画を見せられても仏像のような笑顔を浮かべて、「頑張れ」って言いますもん。どうせ止めても止まらねぇし。下手なこと言ったら怒り出すし。知らねーよ。そして、この哀れな若手起業家の姿は数年前の僕そのものでもあります。   「非契約社員」の作り方、マーケットのなまはげ 例えばこんなことを考えてみましょう。あなたはなんらかの事業をやっていて、最近人手が足りないなー、需要に供給が追いつかないなー、機会を損失しているなーと思っています。まぁ、これもまた具体的な話をすると色々危ないので、商品Aの製造販売をしているということにしましょう。商品Aの生産量を増やすには、設備投資をして従業員を増やすしか基本的にはありませんよね。   でもあなたは思います「自分で設備投資するのはリスクもあるし従業員を増やすのも怖いな」と。「なんとかリスクを限定的にした上であわよくばコストも抑え込めないかな」と。そこにフワっと現れたのが「起業したい!」という若者B君です。B君はあなたと同業の会社で従業員として働いているので仕事の知識も経験も持っています。ただし会社経営や起業の知識はほとんどありません。だからあなたに教えを請いに来たわけですね。   あなたは思います、「あれ、こいつに創業させれば早くね?」と。「資金つけてやって創業融資の引き方もコーチしてやって、人雇わせてガンガン仕事振ればいいよね、経営権も握れるし、ずっと利用出来るな、しかも創業資金以上に損が膨らむこともないし、従業員への責任もB君持ちになる」   これが王道的なデス起業パターンです。もちろん、子会社として下請けから創業するのが必ずしも悪いと言ってるわけじゃないですよ。こういうところから始まって羽ばたいていった会社だっていっぱいあります。ただ、こういう形で起業する以上、初期設定やその後の立ち回りを間違ったら「食われる」ということはわかりますよね。   実際、こういう形を目指して「起業したい若者はいねがぁ」と言いながら市場を歩いているなまはげは結構います。起業するのにはこういう妖怪と出会うのが一番早いと思います。迅速確実に創業出来ますね。その後のことはわかりませんけど。   また、「ド素人でもそこそこの能力があれば起業させて下請けとして稼動させられるようにする」ノウハウを持っている人というのも存在しまして、ここまで行くと冒頭で触れた「非契約社員」という単語が再びフラッシュバックしてきますね。「個人事業主として仕事を受けさせて便利に使う」というのは某大手飲食チェーンなどでも採用されていたソリューションですが、こちらの場合、創業する人間にオウンリスクで借金をさせることも可能になるので大変戦略の幅が広がります。借金の保証人に親兄弟をつけさせればパーフェクトですね。逃げられないから。「仕事を受注出来ることが確定している、発注する側からの目論見が提示される」という強みがあればお金も引っ張りやすいですし、資金計画も書けますからね。   昔出会った人間がこのようなことを言っていたのを僕は鮮烈に覚えています。以前のエントリでもちょっと触れた話ですが「高い能力を持った人間を一年社員として拘束しようと思ったら、俺みたいな零細企業経営者なら安くて600万はかかるわけよ。でも、『1000万円出してやるから起業しろ、仕事も回してやる」って言えばいい大学出て良い会社に勤めてた若者が向こうから来るんだよ、そりゃ良い話だよな、どんどん起業させてやる』とのことでした。   起業のチャンスが到来している皆さん、大丈夫ですか?皆さんの出資者はどういう目論見であなたに金を出そうとしていますか?本当にそれは「起業」ですか、あなたを「非契約社員」にする目論見ではないですか?   「創業資金をつけてやる」「仕事も回してやる」「何なら創業期のサポート人材も貸してやるぞ」「取引先も紹介してやる、俺の口利きなら良い条件で取引出来るぞ」「心配するな、全部段取りはやってやるから」そういう話の前で悩んでいる皆さん、多分このエントリ読んでる人の中にもいると思うんですけど、よーーーーーーーく考えた方がいいですね。   ただ、必ずしも「やめろ」って言ってるわけじゃないんですよ。資金がついてきて仕事が回ってくるというのは、やはりチャンスでもありますし、後はどのように人間と渡り合うかというだけの話になります。   あなたは元気な身体とやる気だけ持ってきてくれればOK!この起業パッケージプランに全部お任せ、みたいな話はわりとあります。そういう話に飛び乗る時は色々考えた方がいいですね。繰り返しますが「乗るな」って言ってるんじゃないですよ。罠の中に餌が吊るされているなら罠を作動させずにエサだけ引っこ抜くことを考えるのは当たり前です。   また、出資する側と起業する側に双方利があるという形態は皆が幸せになる理想形とも言えます。このバランスが著しく崩れていて、しかも止めることが出来ない状態にさえならなければいいわけですよ。それだけのことです。 捕食者としての起業家 ここまで、「起業家がやっていこうとした結果食われる」というお話をしてきましたが、このような捕食妖怪を逆に食ってしまう起業家というのも存在します。まぁ当たり前です、「嵌める方法」が洗練されていけばカウンターの手法も当然出てくる。これを読んでいる皆さんも、「そういう前提ならあれをあれすればああなるな」という考えが幾つか浮かんでいるんじゃないでしょうか。その発想はとても大事です。   「罠がある」という前提さえ踏まえていれば、人間は賢いのでそれなりに対策を思いつくことが出来ます。ところがね、「資金!誰か資金つけてくれ!」って走り回ってるときというのは、わりと人間は弱いんです。人間を嵌める技というのは、「そんなの見抜けねえよ」みたいな高度な技という場合はそんなに多くなく(たまにはそういうのもありますけど)判断力の低下した状態の人間を、冷静な判断力さえ有していれば見え見えの落とし穴に誘導するというのが基本です。多重債務者になると「お金借りない?面白い金利で」みたいな連絡がいっぱい来ますよね。そういうことです。   創業して儲けるということは、法に守られない奪い合いゲームの中で勝ちあがっていくということです。「奪う権利」が与えられる代わりに、労働法規などの「奪われない権利」が失われるわけですね。その中で初めての創業に挑む人というのは、圧倒的に一番弱い存在です。経験がない以上、頼れるものは想像力しかありません。   「やれば出来る」ことは必ず誰かがやるのが市場という世界です。存在を想定出来る悪魔は必ず存在します。というか、ごく普通の経営者であっても「あ、これ儲かるな」と思った瞬間に悪魔に化けます。とはいうものの、それはあくまでルールの中で許容された立ち回りであって、「悪」ではないんですよ。強いて何が悪いかといえば、そんな状況を作り上げてしまった方が悪いんです。自戒も多分に含めてですが。   起業というのは、往々にして「先行事例」みたいなものがあまり見つかりません。「出資者からいい条件で金を引いてなるべく株を渡さない方法」とか書いた本はありませんし、「子会社として創業して親会社から利益と経営イニシアチブをぶっこ抜く方法」について書かれた本も(多分)ないと思います。各自やっていくしかないわけですよ。「株の10%で1500万引けたぜ」という人もいれば、「60%渡さないと1銭も出てこない・・・」というパターンもあります。   一回やっていって派手に失敗すればこの辺はわりと身につくわけですが、皆さんもちろん「起業に失敗してドブの底に叩き落される」なんて経験はしたくありませんよね。ドブの底に落ちるタイプはまだよくて、「なんで俺はこんなことしちまったんだろう・・・」って思いながら働いてる人もいっぱいいると思います。「仕事?いつでも辞めていいよ。次の代取が会社コカしたらおまえの実家売られるけど」みたいな悪夢のピタゴラスイッチが発生することもたまにはあるんですよ。   そういうわけで、今日はそんなお話でした。僕はいつも皆さんの成功を心から祈ってます。やっていきましょう。     ...

  ニューアキンドセンター様で書かせていただくのも今回で3回目になりますが、1回目2回目と失敗談ばかりだったので、今回はちょっと失敗談ではないものを書かせていただきます。本日は「出資者」の話です。僕の起業で成功と呼べるのはここだけじゃないかと思うところもあり、本当に出資者には恵まれました。お陰でまだ生きています。   この辺の話は今まで以上に個別性が高く、100人の起業家がいれば100通りの創業資金調達方法があるとは思うのですが、とりあえず僕の経験からの話になります。僕の創業は何の実績もない人間が資産家を口説いて金を引っ張ったというだけの話ですが、周囲の創業事例を見るとわりとよくあるパターンのようです。何かのご参考になれば幸いです。 出資で起業するか自己資金で起業するか そもそもの話ですが、ベストは100%自己資金による起業です。出資者なしでやれるならそれがベストなんです。全て自己の裁量でやれますので、完全に自由な経営が可能になります。もちろん(誰にも株を渡さなかったとすれば)創業者利益も総取りになりますね。融資なども受けずに済むなら正にパーフェクトと言えるでしょう、返済も利払いもキツいしこれが一番いいですね。まぁ、世の中そんな都合の良い話はないんですけど。そんな金持ってて起業する意味があるかと言われたら微妙ですし・・・。   現実を言えば若手起業家が数百万~数千万の資金を完全な自己資金で用意するのはかなり難しいです。かなりの一流企業にお勤めのところからスタートでも、20代で真水の1000万を用意するのはそれなりにキツいですね。また創業融資などもある程度タネ銭がないと借りにくいです。出資金は返済義務のない資金ですので、そういう意味ではリスクが低いとも言えます。現実的なところを言うと、出資金と会社名義での借り入れを組み合わせて創業資金を作り出すのが一般的な段取りになるのではないでしょうか。出資100%なら返済義務がないので理想ですが、色々考えるとなかなかそうもいかないのが世の中の厳しいところで。   出資者の立場になって考えてみてください。それこそ「代表取締役が会社をブン投げて物理的に逃げた」という事態だってあり得るわけですよ。というかよくあるわけですよ。本当に社長というのはよく失踪する生物です。「おまえもリスクを負え、最後まで逃げない保証をつけろ」とは言いたくなるじゃないですか。(それでもわりと逃げるんですけど)創業融資は代表取締役が連帯保証人になるとちょっと金利が安くなったりしますので、この辺を負わされることが多いでしょうね。もっとシンプルに出資と融資を組み合わせてくる場合も多いと思います。   出資者と創業者の株式の配分に関しては、双方が納得するまで徹底的に話し合っておくべきです。少なくとも、「株式は100%出資者のもの」と主張する出資者の下で起業をするべきではありません。株式を一切持っていない創業者ですが、単なる定額働き放題プランですね。おまけに会社の借金の連帯保証人なんかになっていた場合逃げることすら出来ません。労働法規にも守られないのでほとんど奴隷です。まさかそんな条件で起業する人間がいるわけがないと思うじゃないですか。結論だけ言うとたまにいます。ここまで派手なアレじゃなくても序盤でこの辺が甘かったがために残酷なことになる事例はわりとありますね。   ある程度の自己資金を入れたり、会社の借り入れの連帯保証をしたり、あるいはプレイヤーとしての自分の必要性などを担保にして、納得できる割合の株式を創業者として獲得しておくことは最低限必要になります。この創業者として得られた株式ですが、将来的な創業者利益の担保であるとともに、自社内における今後の対人交渉、役員や従業員などに対してのとても強いカードでもあります。というか、代表取締役が切ることの出来るカードって本質的に金とこれしかないんですよ。   出資者はよく選ぶことを薦めます。極端な例ですが、出資を受けて創業してしばらくしたら、出資者が反社の人だったことがわかった、なんて事例ももちろんあります。きちんとビジネスプランに共感と理解があり、将来の夢と展望を共有できる、社会的に問題のない出資者を選びましょう。出資者の金の出所が不明なんてのは論外です。「気づいたら反社のフロント企業経営者だった」って話はですね、なくもないんですよ。経営が傾いたら彼らが寄ってくるのは有名な話ですが、創業からそもそも終わっていたパターンもあります。そして、しっかりと話し合った上で適切な配分で株式を受け取りましょう。何をもって適切とするかの根拠については、自分自身で考えるしかありませんけれど。   メイン出資者を選ぶチャンスは創業初期にしかありません。「出資者を選ぶのは自分だ」というつもりで出資者探しをするのがいいと思います。悪魔のような出資者ももちろん存在します。「良い大学出て良い会社に入った若者を俺のような人間がマトモに雇おうと思ったら安くて年600万はかかるが、起業という形で・・・」みたいなことをやっている人間は普通にいっぱいいます。(この話はそのうち細かくしたいと思います)   まとめ   ・出資者は選びましょう、間違っても反社から資金を得てはいけません   ・創業時の持ち株の比率は納得いくまで話し合ってください。議決権などの概念はよく勉強しましょう。初期メンバーや出資者の人数、事業の性質などによって最適解は変化します。   ・自己裁量で他者に譲渡可能な自分持ちの株式は、経営権や創業者利益の担保であるとともに今後極めて重要な交渉カードになります。迂闊に切らないようにしてください。   ・出資者に「食われる」ケースもそれなりにあることは頭の片隅に入れておいてください。 出資者の探し方 「お金を持っており、かつ事業に投資したい人」を探して、自分の事業計画をプレゼンするだけの簡単な作業です。僕は大学在学時代から果てしなく出資者を探し続けていたので、起業を具体的に考え始めた時には出資者の目処は大体ついていました。それで、「なんで僕に投資したんですか?」と出資者に尋ねようと思ったんですが、現在のザマでそれを尋ねるとかなり重苦しいことになってしまう気がしましたので、なんとなく予想してみることにします。そのうち風向きが良くなってきたら答え合わせをしましょう。   儲かりそう、と思わせる事業計画 これは基本かと思います。あくまで「儲かりそう」であって「儲かる」ではないのがポイントです。「絶対に儲かる事業計画」が仮に存在したとしても、出資者が「儲かりそうだな」と思ってくれなければ無意味なんですよね。僕は作図やパワポなんかはまるでダメですが、文章と喋りにはそこそこ自信がありましたので、これはそんなに苦労しませんでした。たぶん、これは狙う事業や個人のキャラクター性によってもやり方の正解が違うと思うので、とりあえず色んな人間に事業計画を話しまくって反応を見てみるといいと思います。(ただし、事業計画を丸パクって自分でやりそうな人間は避けましょう)それと、事業計画書は書きまくりましょう。就職活動のエントリーシートと一緒で、書けば書くほど、語れば語るほど洗練されていきますので。(実際の事業の成否とはたぶん無関係の技能ですが)   出資者のやりたいことと一致した事業計画 さりげなく非常に重要な気がします。これは地主系の皆さんであるとか、あるいは投資業で財を成した皆様にありがちなことですが、「実業をやりたいな」と考えている資産家の方はかなりの数います。でも、もちろん自分でやるのは面倒だしリスクも高い。しかし、出資する形で誰かにやらせて自分はオーナーになれば、出資した額面以上に損失が膨らむことはなく、事業に付随する各種リスクが降りかかることもない。ならやってみるか、そういう需要はこれだけ不景気の日本でもわりとあります。特に、飲食なんかは「やってみたいけど、自分でやるのは食中毒とか怖いし絶対嫌」という需要がわかりやすくありますね。「フレンチで修行したけど創業はオーナーの意向でハンバーガー屋」みたいな話もわりとある。そういうわけで、これは「事業の成功」という観点からは正しいとは言いにくいですが、「出資者に合わせて事業計画書を書く」もナシではないです。少なくともある程度合わせる柔軟性はあった方がいいですね。   出資者が「あいつに金を託した」と胸を張れる何かを持つ ぶっちゃけたところですが、資産家である出資者から見て子飼いの起業家はちょっと値の張るペットみたいなものです。ワンワーン。 僕は、起業における主役は(出資を得ての起業の場合)起業家ではなく出資者・投資家だと思っているんですが、主役の皆様が気持ちよく「俺の下で会社やってる奴なんだよ」と紹介出来るだけの何かを持っておくと、必ず役に立つと思います。そういう意味で、「経歴なんか起業するなら役に立たない」という話はあんまり説得力がないと感じています。また、経歴というのは必ずしもキラキラしたエリート路線ばかりとは限らず、「地べた這い回って来たぜ」みたいな現場アピールするラッパーみたいな経歴もそれはそれで強みになります。持ち味を生かしましょう、人生はいつだってそうするしかない。   直接的に出資者の役に立つ能力 出資者は事業に金を出すわけですが、出資者と起業家の関係は実際もうちょっと密接だったりしますので、直接的に出資者様のお役に立てる特殊技能があったりするとかなり出資を得やすくなります。ほら、なんだかんだ人間の懐に滑り込むのには「具体的に役に立つ」って一番早いじゃないですか。僕のメイン出資者は地主様ですが「あなたの周囲で発生するめんどくさい仕事やスジの悪いあれは全部やります、やらせてください」「やります」「やります」などのプッシュが効果を発揮しました。人間、気合いを入れればわりと色んなことが出来ますので気合いだと思います。とりあえず「出来る」「やらせろ」と言ってみる姿勢です。多少色んな人にタダ働きさせられがちになるのは経費と思って諦めましょう。   人間的共感 出資者との間にある種の共通する価値観や共鳴する理念があることがとても大事だとは思います。結局カネを出す出さないの最後の一線ってそこになってくることが多いと思うんですよ。まぁ、出資を得るためにはある意味自分を偽ってでもこれを出資者との間で作り出さなければならないこともあるでしょう。でも、理想を言えば自然な形で出資者との間に人間的共感が発生しているのが一番良いですよね。僕がこうして大失敗しても未だに僕の出資者は僕に良くしてくれています。これは、やっぱり人間的に共感出来る部分があるということが大きく、そういうところが確保出来ていると理想だと思います。それだけに何とか恩は返したいですね・・・。頑張ります。次は上手くやります。   まぁ、こんなところかなぁと思います。とにかく色んなところを駈けずり回って、お金を出してくれそうな人に会ったらゴリゴリプレゼンをする。いつ、いかなるタイミングでも、口から事業計画が(それも可能であれば出資者ごとの特性に合わせてある程度カスタマイズされたものが)溢れ出るくらいまで高めて人生を送ることが重要なのではないでしょうか。僕のそう長くはない人生でも、これで複数の出資者候補は確保出来たので、多分やればできるのではないかと思います。こないだも「1億貸そうか?」という話がインターネットから転がって来ましたし。(どうなるかわかりませんが、今度一回お会いしますかという話になりました)   「事業に投資したい資産家がいる場所ってどこだよ」というお話ですが、流石にそれは自力で見つけてください。どっかにはいるんだから必死で探せばそのうち見つかるかもしれないですよ。流石に僕の金脈を他人に渡すことは出来かねます。僕だっていつかはもう一戦やるんですから。気合い入れて探しましょう。うまいこと見つかったら僕にも紹介してください。俺のものはやらないがおまえのものはくれ。   「起業して成功する」ことはともかく、「出資を得て起業する」というところまでは、「とにかく俺は起業をするし、儲けるし、あんたを儲けさせるし、事業プランももちろんある、俺の話を聞け」と叫び続けて人生を送ればどこかのタイミングで打席に立つチャンスが巡ってくるものなのではないかな、と思います。あとは、なるべくチャンスのありそうなところに移動していく嗅覚みたいなものも必要かもしれませんけれど。まぁ、それは各自与えられた条件の中で頑張るしかないところだと思います。こないだも「株式の10%で1500万出資受けたよ。未経験の業種で初創業だったけど」って人類と遭遇して「マジかよ」ってなったので意外とチャンスはあるんだと思います。やっていきましょう。   まとめ   ・事業計画書を書きまくる、いついかなる時でも事業計画を話せるくらいまで練る。   ・出資者の希望や性質に合わせて事業計画を書くのもあり。   ・出資者にとって金を出す理由になるだけの経歴や肩書きがあると良し。   ・直接的に出資者の役に立てる技能があると懐に潜り込みやすい。   ・人間的共感が発生していると理想的。   ・やっていきましょう。     ...

  労働者は強い。創業期人材のジレンマ。 従業員は会社に利益をもたらしてくれるとても重要な存在です。人間一人にこなせる業務の量が有限である以上、業務を拡大しようと思ったら従業員を雇うというのは有力な選択肢になってきます。会社経営というのは、つまるところ従業員に給料を払って、支払った額以上の利益を出すことですからね。従業員は利益の源泉そのものです。   その一方で、従業員のことを「労働力を販売しに来る取引先」として考えると、あまり良質な取引先とは言えません。極論をすればですが、「その日に欠勤されたら会社に大損害が出る」という日であっても、体調が悪いと従業員が主張すれば出社させることは不可能です。また、一応、法的には一定期間を経た後でないと退職できないというルールは無くもないですが、本人が「就労不可能である」と宣言すれば、会社に引きずり出すなんてことは一切出来ません。そして実体験ベースで言いますが、わりとバックレます。(これに関しては別に訴訟起こしてもいいんですけど、割に合わない)   創業期も半ばに差し掛かり、従業員が増え始めるとこれまで創業メンバーだけで回していた頃とは全く別種のトラブルが頻発するようになると思います。また、「人を使う」ということの難度の高さに直面せざるを得なくなります。実際ここで、「人的規模の拡大は志向しない」という方向に舵を切る経営者も少なくないです。まぁ、僕の事業はどうしても拡大するとなれば従業員を増やすしかない業種でしたので、前回のエントリに引き続いて、こちらも失敗の話になります。   労働者の権利は強いです。そして、恐ろしいことに労働者は支払いを待ってくれません。大抵の取引先は電話して事情を話してお願いすれば支払いを多少待ってくれたり(まぁ、今後は都度、現金払いでお願いしますみたいなことになることもあるけど)するものですが、従業員にはそういうことは一切通じません。遅配なんか出した日には、従業員との信頼関係は完全に終わりだと思っていいでしょう。あの状況まで追い込まれた時の従業員は最悪の債権者です。金融機関の取立てよりずっと恐ろしいですよ。また、給料を止めたまま従業員に仕事をさせるというのはね・・・。本当に何が起きるかわからない世界に突入します。   なにより恐ろしいのは、従業員に対しては「一定期間に一定量の労務を提供する、労務の提供が契約通り成されなければ違約金を支払う」というような、通常の商取引では当たり前の観念が一切通じないことです。労働者は(まぁ厳密に言えば1ヶ月程度のあれはあるけど)いつでも会社を辞められるのです。社員数人規模で事業を回している時にこれがどれほど恐ろしいことかは少し考えてみればわかると思います。   しかし、創業直後の会社に「辞めてもいい人間」なんてものを置いておく余裕があるかといえば、あるわけがありません。経営効率の面だけで言えば、全ての従業員が代わりの利かない存在であることが理想です。しかし、言うまでもなくそれは「どこが崩れても総崩れ」という状態に他なりません。更に、「自分が抜けるとこの会社は大変なことになるだろうな」ということに気づいた従業員は際限のない要求を始めます。   そういうことをしない人間を雇えばいいという話かもしれませんが、これはとても残念なことだと思うんですけど、毎日が乱戦状態で業務マニュアルなど存在すらしない創業初期に、「会社の弱みにつけこんで金を抜こうとする」程度の知恵の働かない人間では、なかなか戦力になりえないのです。状況を読み、雇用主と報酬の交渉をする。これはプレイヤーとしての優秀さの表れそのものですし、労働者としては当たり前の権利です。これが出来ない人間が優秀なわけがない。これが創業期人材のジレンマという概念です。(今考えました) 起業家と労働者の利害は一致しない そもそも、株を持っていない従業員にとって「未来の成功」なんてのは絵に描いたモチでしかないんです。今月払われる給与、それが従業員にとって世界の全てです。特に、創業したばかりの会社に株も貰えない状態で入社するような人間にとっては。創業したての零細企業なんて、3年後には存在してない可能性の方が高いわけですからね。未来の展望なんて、客観的に見たらクソほどの価値もないわけですよ。このクソほどの価値もないものをいかにキラッキラさせるかが経営者の腕とさえ言える。   創業期の会社における経営者と労働者の利害は、根本的に一致しないのです。もちろん、「従業員としての待遇を維持したまま株をよこせ!」と主張する人間も出てくるでしょう。(まぁ、経営者だって「株はやらないけど役員にならない?」って言いますしね、これはお互い様です)   従業員を雇って会社を回すということは、能力の低い使えない従業員と、能力はあるが当然要求も苛烈な従業員との終わりなき戦いです。要求されるがままに金を払っていたら倒産しますし、与えられる株の数は当然有限です。(まぁ総量を増やすことも出来なくないけど、他の株のホルダーがブチギレると思う)   かといって、有能な従業員に逃げられても大変なことになります。そして従業員に重要なポジションを任せられなければ利益はなかなか出ないですし、経営者が全く休めないということになります。その一方で重要なポジションを掌握されたら相手に交渉力が発生してしまう。「従業員が徒党を組んで全く同じ業種の別会社を立ち上げた」みたいな話だってよくあることです。取引先もノウハウも顧客も全部ゴッソリ持って他社に移られた、なんて話は最早聞き飽きたレベルですね。僕もやられました。   これはもう、模範解答の無い終わりなき戦いです。例えば、従業員Aに「辞められたくなければ俺の給与を上げろ」と脅かされたとします。仕方なくあなたは従業員Aの給与を上げました。そりゃもう従業員B、C、Dが出てきますよね。出資者(株主)も怒るかもしれませんね。他の役員たちも口々に不満を言うでしょう。そりゃね。人間、他人の給料には本当に敏感ですからね。まぁ、Aに口止めをするなどの措置はなくもないですけど、小さな規模の会社でバレずにそれをやれるかというとね…。   また、従業員は大抵の場合「自分の業務」を「自分だけがこの業務に精通している」という状態に持って行きたがります。業務ブラックボックス一丁あがりです。(これは労働者の振る舞いとしては大変正しい戦略なので、労働者の皆さんは積極的にやりましょう。僕もそうしています)「あなたの仕事を全部この人に伝授してください」という指示を出して、素直に仕事を教える従業員ですが、体感的には「存在しないんじゃね?」と思うレベルです。このようにして「新人潰し」や「課長も逆らえない現場のババア」などの概念が発生します。まぁ、でも、これもやっぱり労働者の処世術としては正しいというしかないですよね。 従業員が憎い 正直なところ、会社の規模を一定以上に拡大した後、信じられないほど従業員に対して冷酷になる経営者ですが、「気持ちはわかる」としか言いようがありません。僕だって従業員が怖くて出社拒否したい日が何度もありました。従業員を「仲間」とか「味方」とかそういう認識をするのは、余程運と人徳に恵まれた経営者以外は不可能だと思います。「タチの悪い取引先」くらいが穏当な表現で、「敵」と表現する経営者にも会ったことがあります。   彼は「自社の従業員の大半が大嫌いだし、もう少し会社のスケールを上げて収益を仕組み化したら古参の人間は全て排除する」とベロベロに酔っ払って語っていました。彼が転ばずに走りぬけたら、立派なブラック企業経営者になるんだと思います。そんな彼の会社の求人広告には「アットホームな職場」と書かれていました。確かにそういう家庭もありますね…。   何故か、わりと多くの人が「経営者は労働者より強い」と思っています。でも、創業期の会社に関してはこれは完全に嘘です。余裕で労働者の方が強いです。だって、経営者の切れるカードってせいぜい「減給」と「解雇」くらいしかないんですよ。創業したての零細企業をクビになるのが怖い人間なんてそんなにいないですよ。(たまにはいますが、そういう人間が優秀な人材である可能性は低いでしょう)   例えば、従業員10人のそこそこ儲かってる零細企業があるとしますが、ある日突然5人が辞表を出したら大惨事ですよ。普通に倒産まであります。実際、「従業員が全員辞めた」みたいな話は経営者界隈で結構聞きます。「従業員が逃げたけど、仕事止めたら違約金が・・・」って僕に電話かけてきた社長もいました。すいません社長、ちょっとブログとツイッターが忙しくてお力になれませんでした。まぁ、今の僕には動員できる人間もいないし事業もコケて顔も効かなくなったのでどの道お力にはなれなかったと思いますけど。   僕も現在は給料を頂戴する身の上ですが、改めて労働者は最高です。何せ、会社にどれだけ損害与えてもよっぽどコンプラ的なアレでなければ訴えられることもないし、最大のリスクが「クビになる」ですよ。こんなのノープレッシャーもいいところじゃないですか。ここ数年、毎月給料日は本当に憂鬱だったのですが、貰う側になると本当に楽しいものですね。最高です。そりゃ「労働者が憎い、従業員が憎い」って気持ちにもなるよなぁと改めて思いました。   そういうわけで、僕自身も創業期にある企業がどのように人材を確保しマネジメントすればいいのかについてはあまり明確な答えを持っていません。「創業者のカリスマ」とか「マインドコントロール」とか「やりがいを与え、夢を見せる」とか「零細企業でもクビになりたくないレベルの人材でなんとか利益を上げる方法を考える」とかそういう方向性なのかなぁと思います。   よく、自社の未来の展望を熱く語って社員をウォー!させてるイケてる新興企業の社長がいますが、あれ本当にすごい能力で、株も分けてもらってない社員に会社の未来の展望なんてさして関係ないし、そんなんどうでもいいから今月の給料上げろって話じゃないですか。普通に考えて。ハチャメチャに上手くいったところで、どうせ一番先に利益取るのは株主で次は経営者、従業員なんて最後におこぼれを貰う程度でしょう。そりゃ経営に食い込むレベルまで登りつめてた人は美味しいかもしれないけど。   事業拡大が上手くいったところで末端従業員の平均給料なんかそんなに上がらないです。事業拡大とともに利益率がアホほど上昇するならともかく、総売り上げから人件費に配分出来る割合なんて事業規模が拡大してもそんな変化しないんですから。事業規模がデカくなったらその分人件費も増えるわけで。しかも拡大期の採用なんてムチャクチャなんだからロスもでかくなる。まぁ、出世して給料を上げるチャンスは増えるかもしれないけど。   創業期の会社には、人間に夢を見せて非合理的な努力をさせるある種の能力が必要になるということなんですかね…。僕はどうしてもそういうのが得意ではないので、未だによくわかりません。でも、そういうことが出来る社長が勝ってますね、やっぱり。   で、起業を志す皆さんどんな感じでやっていこうと思いますか?従業員を雇って上手いことやるイメージはできましたか?「有能だけど安く働く忠誠心溢れる労働者が欲しい」って思いましたよね。でもね、それを100人単位で調達出来るならあっという間に億万長者なんですよ・・・。僕も次の事業のためにここは非常に考えているところなんですが、あまり倫理的でない手段しか思いつきません。コンプライアンスはとても大事です。社会に怒られます。やっていきましょう。    ...

  僕は起業に失敗しました。   はじめまして。借金玉と申します。   僕は26歳で起業しました。業種は飲食と輸入貿易です。 ざっくりいいますと、「イケてる商品を輸入して、その商品を軸にした飲食店を多店舗展開しながら卸売りもするぜ、原価も下がって儲かるぜ!」みたいな事業でした。集めた出資金は4000万円程度。そこに会社名義での借り入れを2000万ほど行いました。(もちろん会社の連帯保証人は僕です)最初はそこそこ上手くいきましたが、従業員が10人ほどまで膨らんだところで悪い意味でのビッグバンが起こり、結果として現在、僕は31歳の無一文です。辛うじて破産は回避できましたが、何一つ手には残りませんでした。そういうわけで、ニューアキンドセンター様で文章を書かせていただくことになりました。よろしくお願いいたします。   さて、起業の失敗というのはわりと個別性が高く、失敗の原因は会社や経営者、業種あるいは社会情勢などによりけりといえると思いますが、それでも大体「これで失敗する」という典型パターンはあります。典型パターンだけでも無数にあるんですが、これから起業を志す方に最初にお伝えしたいのは「人」の話です。それも、創業初期における人の話です。僕が最も失敗したところと言えると思います。会社の基本はやはり「人」です。人が働いて利益を生み出すという基本構造はどのような会社でもまず変わりません。   これは起業に失敗した人間の書いている文章ですので、「どうやったら起業に成功するか」という需要には応えられません。そんなの知ってたら自分でもう一回起業しています。しかし、どうやったら起業に失敗するかに関しては、あまり詳しくなりたくはなかったのですが詳しくなってしまいました。そんな文章です。起業を志す皆様の何かの役に立てば幸いです。 人間は裏切りますし、裏切りが発生するのは全て代表取締役の責任です これから起業をする皆さんになんとなくでもいいので覚えておいて欲しいなぁと思うことがあります。表題の通りなのですが、人間は必ず裏切るということです。ピンと来ない人もいるとは思いますが、少なくともそう考えておいて損はありません。もし起業をされたら、いずれ嫌というほどわかると思います。   どういう形で起業するかによって状況は多少変化するでしょうが、なんにせよこれから先あなたが起業をするならば、出資者(株主)、役員、従業員といった社内の人間と必ず渡り合っていくことになります。 もしあなたが代表取締役であるなら、これらの登場人物の利害が相反しないように調整することが最大の仕事になるでしょう。構成員全員の見ている物が違う組織が生き残っていくことはほとんど不可能です。それぞれの思惑があることは百も承知の上で、全員が一つの目標に向かって能力をフルに出していける環境を作れなければ、事業の成功などままなりません。   もし、その中で離反者や裏切り者が出たのであれば、それは代表取締役のあなたが悪いのです。裏切った方が得な環境を作ってしまった時点で、あなたにはなんの弁解の余地もありません。それは全てあなたの責任です。その覚悟を決めてください。これを受け入れ、「裏切りようのない」組織を形成する努力をしましょう。   それは、実は創業初期にしか出来ないことなのです。創業初期は大抵の場合、代表取締役も、役員も、出資者も(存在するとすれば)従業員も、熱に浮かされています。将来この中から致命的な裏切り者が出るなんて全く考えることはないでしょう。重要な職責を担う人間が突然離反した時のことなんて想像もしないでしょう。未来には希望しか見えないと思います。僕もそうでした。でも、とても残念なことなのですが、確実といっても過言ではない確率で裏切り者は出ます。自分の会社を見ても、他人の会社を見てもやはりそういうものなのだな、と思います。   創業初期にきちんと人間の利害関係を調整し、一つの目標に向かって進める組織を作ることが何より大切です。裏切られるのは裏切られた方が悪い、騙されるのは騙された方が悪い。そう腹を括って、具体的な対策を講じた上で創業出来るかどうかで、会社の生存率は大きく変化すると思います。       まとめ ・人間は裏切ります。   ・裏切られるのは代表取締役の責任です。   ・裏切られた方が悪いです。騙された方が悪いです。   ・創業初期にしっかりと、全てのプレイヤーが会社を裏切ることの出来ないシステムを作り上げましょう。 創業メンバーの選び方とザイルの結び方 僕は「気の合う仲間と楽しく起業」をどちらかといえば否定する立場です。もちろん、これから長く仕事を一緒にしていく仲間ですから、気があうに越したことはもちろんないんですが。それは気の合う仲間と不倶戴天の敵になるリスクを受け入れた上でのことだと思います。僕が今「必ず報復する」と心に誓っている人間も、かつてはとても気の合う仲間でした。そういうものに耐えられないと思うのであれば、一人で起業されることを薦めます。(まぁ、とはいってもその後、従業員を雇ったら似たような事態は普通に起こるんですけど)   しかし、もちろん複数人で起業をするメリットもあります。それぞれ違う能力を相互に補い合うことが出来るからです。実際、僕は営業や企画が強いですが事務作業がまるでダメですので、役員には事務作業が非常に得意な人間を入れました。   会社経営や事業運営に付随する非常に煩雑な事務作業を、大まかな指示だけで全て自分で調べて実行出来る人間を採用できたのは私にとって、とても幸運なことで、彼がいてくれたおかげで私は自分の得意ジャンルの仕事に専念することが可能でした。いつかまた彼と一緒に仕事をしたいと心から思っています。(彼はもう僕と仕事はしたくないだろうけれど…)これは余談ですが、創業期は「誰もその仕事をやったこともなければやり方も知らない」状態が日常です。自分で調べて実行して成功させる能力の無い人間は創業メンバーには向きません。   また、創業する業種によっては商材の専門知識を持った人間を迎え入れる必要に迫られる場合もあると思います。例えば「プログラムは書けないけどITで起業したい」ということもありえるでしょう。(オススメはしないけどありえないことでもないとは思う)その場合、プログラマーを雇わなければ話にならないですね。   経営の面白いところは、人間を雇えば自分では出来ないことがどんどん出来るようになることです。可能性が自分の限界を超えて大きく広がっていくのはとても楽しいですね。市場にはあらゆる能力や経験を持ったプレイヤーが存在しています。基本的には金さえ払えば大抵の能力や経験を手に入れることが出来るでしょう。もちろんそこに落とし穴があります。自分に出来ないことを他人に業務としてやらせるということは、当該プレイヤーに抜けられたらその仕事が誰にもこなせなくなるということです。このパターンで終わる事業はいっぱいあります。創業初期の業務内容なんて、ほとんど100%が属人的なものですから。   例えば3人で創業する場合ですがその3人は全員が「誰1人抜けても事業が成り立たない強力なスキルを持った3人」だと思います。そうじゃなきゃ、わざわざ組む意味がないですからね。それはつまり、1人抜けたら最悪の場合、会社が潰れるということです。これを防ぐ手立は必ず打っておく必要があります。(逆に、初期メンバーの中に必要不可欠と言える能力のない人間が混ざっていた場合ですが、確実に後から揉め事になります。「あいつはいらない」と誰かが言い出します。避けましょう)   創業メンバーの中で代表取締役1人が自社の株式を保有している場合などはわりと良い手があります。他のメンバーに自分の持っている株式の一部を譲渡する代わりに、特殊な条項のついた借用書を切らせるのです。要するに、n年問題なく働いて結果を出したらこの株式購入のための借金はチャラ、ただし途中で離反したり会社に対して背信行為を働いたりした場合は全額ただちに返済、みたいなやつです。詳しいことは弁護士に相談してください。ちょっとお金はかかりますが、かなり強力です。なるべく理不尽な額をつけておきましょう。(おまえがこの会社を裏切る気はないだろうから金額なんて単なる数字だろ?それくらいの覚悟みせろよ)   この書類にサインをさせておくだけで、少なくとも規定年月の間、裏切りや離反がやりにくくなりますし、背信行為を働いた場合の懲罰も可能になります。また、法的拘束力は微妙ですが、「話し合いの末持ち株を返却した上で退職という形になった場合は、同業他社への転職をn年禁じる」などの条項を入れておいても損はないでしょう。   創業メンバー全員が出資をした場合などについては、なるべくリスクを応分に分散させて逃げられなくする方法もあります。具体的に言えば、銀行融資などを引く際の連帯保証人に全員を連座させれば、そうそう逃げることは出来ません。(ただ、この場合、指揮系統が不明瞭になる欠点がありますが…)他にも様々なやり方が考えられると思います。起業の形態に合わせて頭を絞りましょう。   先ほどの、株式購入のための貸借契約を結ぶということは、とりもなおさず「例え創業メンバーの親が大病を患って介護が必要な状態になっても、創業メンバーには常に会社を優先させる」ということです。「親の介護で戦列を離れる」という人間が出た時は、「では契約通り満額を支払え、支払いがなければ裁判もきっちり起こす」と告げる腹が必要です。どれほど強力な契約も、それを履行する人間の意志なしには成り立たないからですからね。一回それをやったら「あなたとの契約は反故に出来る」と全ての人間が認識します。そうなったらお終いです。   逆に言えば、親や身内が死にかけたくらいで戦列を離れるような代表取締役は話にならないということでもあります。なにせ、登場人物全員の人生がかかっているのが会社ですから。その辺は強く認識しておく必要があります。親の死に目に会いたいならサラリーマンやるのがいいと思います。期待値だってそっちの方がずっと高い。もちろんね、仕事の合間に親御さんの面倒を見る余裕があればそうすればいいんですけど、残念ながら創業初期にその余裕があるかというとね…。   この手の提案をすると「それは嫌だ」と主張する人間ももちろんいると思います。「自分は能力と労働力を提供するのみでリスクはとりたくない」というタイプです。そういう人間は、あくまで「従業員」あるいは持ち株なしの「役員」としての参画に留めるのがベストでしょう。更に言うと、そういう人間を「抜けられたら絶対に困る」というポジションにつけてはいけません。労働法にうるさいことを言われない役員辺りにしとくのがいいと思います。逃げることが可能な人間は、長期的には必ず逃げます。人間同士の無根拠な信頼関係なんて、一切信じるに足りません。   創業初期は、とにかくフリーライドしようとする人間が山ほど寄ってきます。あなたの創業プランが優秀であればあるほど、妙に使えそうな人間がよってきたりもします。しかし、フリーライダーは風向きが良く高い給料が出る内は元気に働きますが、会社が窮地に陥ったときあっという間に逃げ出します。他社からもっと良い条件を出された時もあっさり逃げます、それも持てる物は全部持ってです。信頼できるのは、リスクを背負った人間だけです。僕はこれを「ザイルを結ぶ」と表現しています。誰かが落ちたら皆で引き上げる、どうしてもだめなら皆で落ちて死ぬ。その覚悟が決まっていない人間を経営の中核に入れては、絶対にいけません。   創業を共にするということは、最悪のときは一緒に死ぬ覚悟を持つということです。創業メンバーは、「事業に欠かせない能力を持ち」「リスクを取る覚悟がある」人間を旨に選びましょう。この二つがそろわない限り、「絶対に必要な人間」として仲間に迎えるのは不可能です。そして、それを踏まえた上での創業メンバー選びが「気の合う仲間」であったなら、それは本当に幸福なことだと思います。まぁ、非常に難しいとは思いますが。   人間を「信頼する」というのは、十分に外形的要因を整えた上でのみ成立する概念だと強く認識しましょう。リスクを負わない人間を信頼しては絶対にいけません。というよりは、信頼出来る人間なんてこの世には1人もいません、信頼するに足る状況にある人間が存在するだけです。あと、契約書にサインする意味のわかってないバカというのも稀に存在して、そういう人間は契約とか結んでもあまり意味がないので絶対経営に入れてはダメです。話が通じない上に落としどころなどという概念もないので、一回揉めたら行き着くところまで行くしかなくなります。(そういう人間がわりとある種の仕事が出来たりするのが世界の怖いところです)       まとめ ・複数人で創業するメリットはあるが、デメリットも多い。   ・リスクを差し出せない人間は経営の中核メンバー足り得ない。   ・複数人で起業をする際は、コアメンバー全員がきちんとザイルを結ぶこと。   ・一度結んだ契約は一切の情を排して履行する覚悟を持つこと、またその厳しさを己にも課すこと。   ・バカは不可。 多くの問題は創業初期に起きている 僕は26歳で起業して今年32歳になりますが、改めてこの数年間を振り返ると、多くの問題の根源は創業初期にあったと感じています。もちろん、僕が抱えていた問題はこのエントリに書かれた程度のものではなく、もっと大量の問題があって、それにふさわしい結果に至ったわけですが。   正直なところ、後悔は尽きません。あの時、ああしていればがどこまでも積みあがります。資金は初めての起業としては望外なほどあった、創業期に集まった人間の能力だって決して低くはなかった。むしろ、僕が発起した会社を考えると望外な能力を持ったメンバーが集まったと思います。でも、たくさんの問題があった。しかし、創業初期にその問題に気づくことは出来ませんでした。根底には、やはり人間に対する理解の甘さがあったと思います。   本当のことを言うと、もっと自分の失敗を具体的かつ赤裸々に書いた方が面白いテキストになるんだろうなぁとは思うのですが、まだ傷が癒えきっておらず吐き気、眩暈、動悸、震えなどの症状が発生したため、この程度の画素数で書かせていただきました。まぁ、勘の良い方なら、大体どこで失敗したかわかりますよね…。人間って、3人集まったらもう戦争するんですよ・・・。あれほど熱く未来を語り合って創業した仲間たちでもね…。   初めての起業はとにかく忙しいと思います。雑務だけでも大量に発生しますし、大体のことが初体験でしょうから、精神肉体両面での負荷も非常に高い。その上、一度事業が動き出してしまえば1日だって無駄には出来ません。人件費がかかってますからね。事務所を借りてれば賃料もかかります。一日無駄にすれば、その分だけ命より尊い資本金が目減りしていくわけです。   しかし、その上で焦らないで欲しいと思います。きちんと会社の仕組みを作り、これから発展させていくことを想定した揺るがぬ土台をきちんと組むことの方がずっと大事です。創業初期に発生していた問題は、往々にしてしばらくは表面化しません。それは、会社が成長していく過程の中で徐々に現れて来ます。そして、そうなってしまってからでは、大きなリスクを伴う抜本改革を行うか、対症療法を繰り返して誤魔化していくかの選択しか取れなくなります。本当に、僕みたいなことにはならないで欲しいです。まぁ、とにかくね、創業時は一回、弁護士に相談に行った方がいいですよ。腕が良くてノウハウ豊富で、タチが悪いアイディアがポンポン出てくるタイプの。   会社経営ですが、想像し得る悪いことは大体全部起きますし、想像もしなかった悪いことも大量に起きます。信頼していた役員が金庫と口座の現金を全部持って失踪、なんてこともこの界隈では大変よくある話です。それに近いことは弊社でも普通に起きました。 それでも尚、起業を志す皆さん、頑張ってください。心から応援しています。僕ももうちょっとこっちを頑張ったら、また追いかけるつもりです。やっていきましょう。     ...