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  会社に行きたくない。そういう感情は従業員の特権ではありません。もう嫌だ、職場に行きたくない、従業員に会いたくない。そういう状況に陥る社長というのは結構いっぱいいて、僕の周囲にもいました。もちろん末期の僕もそうでした。   状況が悪くなると、本当に会社というのは行きたくないものです。せめて上司がいれば上司のせいにできるのに、そんな気持ちになったことは正直に言ってあります。   ここで、「とにかく従業員が全部悪い」という考え方を採用し、精神を守るライフハックを敢行する社長もわりといます。あなたも見たことがあるのではないでしょうか。これはこれで結構有益なライフハックではあるのです。「従業員が成果を出さない」時、「従業員が俺を嫌う」時、本当に悪いのは誰かというお話になれば「経営者である」という結論が出ることは揺らぎません、この点から全力で目を逸らせる人はこのハックを採用されてもいいと思います。   しかし、そこからは目を逸らせない。つまるところ会社で何が起きようと、責任は自分にあると認める人ほど、出社拒否に陥りやすいと思います。従業員から飛んでくる言葉にも律儀に応対してしまうでしょうし、精神的な負荷も大きくなる。俺が一番エラいんだ、という立場から怒鳴り散らして全てを解決するハックを選べない皆さんにこの文章を贈ります。 別に会社の人間関係は良好じゃなくていい 会社は何をするところか、といえば仕事をするところです。その目的は会社としては利益を出すことですし、従業員としては給与を受け取ることです。円満な人間関係や楽しいリクリエーションをやるところではありません。つまるところ、会社として上手く回っていればそれでいい、という強力な割り切りは早期に身に着けておいて損はありません。   従業員というのは、もちろん人によりますが様々なことを要求してきます。「皆が楽しい職場にしろ」と言ってみたり、あるいは「個人の領域に介入しないで仕事だけさせろ」と言ってきたりもします。実際、会社内がまるで部活みたいな雰囲気に包まれていることを好む従業員というのも案外存在します。研修合宿大好きなブラック企業を支えているのはこういう従業員でしょう。アットホームな職場が好きな人は多いです。(僕は大嫌いですが・・・。)   あなたが、「人間関係はまるでダメだが会社の事業は上手くいっている」という状況にあるなら、それは極めつけの幸運です。その状況で事業が回るに越したことはないからです。考えても見てください、高度にくみ上げられた利害関係ではなく人間的な連帯に基づいたチームワークで回っている会社って、信用できませんよ。そんなもん、崩れるときには跡形もなくグッチャグチャになるのは皆さんだって見てきたでしょう。   「従業員と上手くやれていない」と愚痴る社長は結構います。しかし、「従業員と上手くやれている」という状況は、投下した資本に見合った利益が出ているということ以外ではありません。最高のチームワークと良好な人間関係があっても、利益が出ていなければそれまでなのです。つまるところ、悩みどころはそこではないということです。「従業員同士がモメ始めた」みたいな場合は別ですが、社長と従業員の間の人間的な関係が上手くいっていないにもかかわらず、事業はちゃんと回っている。これは理想に近いです。そのままいきましょう。ストレスを感じる理由はありません。   経営者は従業員に際限なく要求をするものだということは周知の事実ですが、従業員もそれが出来る状況であれば経営者に際限なく要求する存在であるということはあまり知られていません。これの発生を早期に抑止することはとても重要です。そういう意味で、ここはもう早めにザクっと割り切って「そのストレスは感じるだけムダ」と思い切った方がいいです。   わかりますよ、仲間と楽しく仕事。したいですよね。でも、残念ながら経営者と従業員というのは仕組み上、まず「仲間」にはなれないことが運命付けられています。そこは早めに諦めといた方がいいと思います。たまに、経営者の置かれた状況を理解し「仲間」としての振る舞いが出来る従業員もいますが、それは恐ろしく有能か、あるいは危険因子です。気をつけて接しましょう。 社長は出勤しなくてもいい こんな社長がいます。昼はゴルフ、夜は酒。いい車に乗って社交三昧。そんな人です。彼は従業員からは「ハゲダヌキ」と呼ばれ、大変に嫌われています。たまにやる仕事は職場に出向いて、極めて低確率で誰かを賞賛するか、あるいは極めて高い確率で誰かを罵倒するかです。見事な太鼓腹、貧しい毛髪、高級なスーツ、常に従業員を見下す言い回し、黒塗りの車など「嫌われる金持ち」の要素の集合体みたいな人です。   しかし、彼の会社は儲かっています。僕は彼の会社と取引があったので、彼の職場についていったことがあるのですが、従業員が公然と社長の愚痴を述べるほどに社長は嫌われていました。   僕はこの人に強い関心を持ちました。「何でこの人これで儲かるんだ」と。そういうわけで、僕はこういう人に「僕はあなたすごいと思うんです」みたいな敬意を見せてお酒を奢ってもらうのが特技ですので、一杯奢ってもらった結果飛び出してきたのが、前の章で書いたような内容でした。   「社長は現場に出なくていい」「社長が嫌われて会社がまとまるならそれがベスト」など、彼の経営哲学はここでは到底語りきれないのですが、社長いわくかつては現場に出ていて、決断とともに退いたそうです。ある意味で、会社で一番の「悪」は常に社長なのです。彼を「悪」として会社はまとまっている。そして、社長は社長で資金繰りや人脈構築、あるいは現場から距離をとった経営判断などに専念している。なるほどなぁ、と思いました。   僕自身も、「嫌われ者」になる判断が出来ればもっと違う結果があったのかもしれません。この社長の経営規模は数十人の従業員を抱えるサイズですが、5人従業員がいたらこの形は作れると思います。「良い人間」「従業員に愛される人間」が「良い社長」とは限りません。社長とは結果的に利益を出してればそれでいいのです。「会社に出勤しない」すら肯定され得るのです、そしてそれが利をもたらすこともあるということは覚えておいて損はありません。   会社に出たくないが毎日出て、失望とともに帰宅している社員数人規模以上の会社の経営者様は、もし状況が許すなら「極力会社に出ない」という選択肢とそこに向かう道のりを検討してみてください。もしかして、それ、「従業員と上手くやる」よりずっと現実的だったりしませんか? 苦境における会社の人間関係ストレスは感じるだけ無駄 さて、最後のケースです。事業は上手くいっていない、その状況下で会社に発生するネガティブな人間関係が社長の巨大なストレスになっているパターンです。この場合、「一緒に頑張ろうぜ!」「俺はもっと頑張るからおまえも頑張ってくれ!」などのアピールをしたくなるでしょうが、これをやると健康を損なうどころか最悪のケースになりかねません。   人間というのは、落ち目の人間がどれだけ頑張っていてもそうそう認めてくれないものです。そして、経営者とは実にしばしば極めてカジュアルに、最悪のケースに向かっていく生物です。(そういう習性なんでしょうね・・・。)   稀に「社長は身を削って頑張っているからついていったよ」みたいなケースもありますが、社長は死ぬほど頑張っていたけど従業員には一切認められていないというケースはもっとあります。これはもうしょうがない。あなただって、結果を出さない下請けが「頑張って」いても契約切るでしょう。   従業員と経営者は契約関係にあるのですから、そこはそうなのです。将来的に給与が上がる見込みもなく、会社の存続すら危ういというときに「社長が頑張っているから」でついてきてくれる有能な人材はあまりいません。   では、そんな時どうするか。とにかく事業を回す、あるいは立て直すことに専念しましょう。「人間関係がよくなれば事業はよくなる」はおそらくですが、幻想です。因果が逆です。事業が悪いから人間関係も悪くなっているのです。   事業が好調に推移しているなら、この文章でここまで書いてきた「人間関係を放棄しても仕事は回す」が選べますから。そこを目指してなんとかやっていきましょう。「苦境の会社を立て直す方法」は僕にはわかりませんが、「苦境において会社の人間関係を良好化する方法」はもっとわかりません。それが出来るなら、それ専業にした方が儲かるのでは。   従業員に「辞める」という決断をさせない程度の距離をとり、仕事をさせるということに意識を集中しましょう。そこにあるのは契約関係です。人間関係ではないのです。「俺がいると仕事が上手くいかない」はあり得ることです。それを認めて退くのも、経営判断としてはアリです。また、従業員に業務命令を下すのに従業員の同意などは特段必要とされないということも覚えておいて損はありません。「やれ」でいいのです。   ただ、ここで「昔の社長はもっと話を聞いてくれた」みたいな感情が従業員に発生すると事態はもっと悪くなります。だったら、最初から独断専行のワンマン社長をやっていた方がよかったという話にもなります。最初から「意見は聞くが決断は経営者の仕事」という意思を経営に透徹しておいた方がよっぽど楽なのです。   そして、これは経験から来るものですが、危機対応において「チームワーク」や「民主制」は毒です。あれは判断が遅すぎるし、複数の意見の中間を取った平均的なものになりやすい。そこは腹をくくって「俺の命令を聞け」でいいのです。   「やれ」「決断するのは俺だ」「おまえの仕事は経営ではない」の発声練習をしましょう。これが意外とスルっと出てきません。現場から上がってきた声を踏み潰せなくては社長など務まるわけがないのです。危機に於いて人間関係ストレスを感じるのは完全に無駄です。   そこで苦しみを感じていたから僕は無能だった、本当にそう感じています。ただ、これはあくまで「現場の声をシャットダウンする」という意味ではありません。情報は取る必要があります。しかし、経営判断は全て経営者が握っているという前提を絶対にぶらさないことが重要です。これがブレると最悪反乱まであります。(ありました。ありました。)   「従業員と和気藹々とお互いを尊重しながら楽しく仕事」これが理想であるのは間違いありません。しかし、それは儲かってからでいいのです。それまでは、従業員は単なる駒でいいのです。また、従業員もイザというときに「駒」以上の働きをさせられることなど御免蒙るのです。僕だってイヤです、だったらもっと給料と裁量くれよという話です。 会社で人間関係を上手くやることは不要ではないか このお話は「出社拒否したくなったときに出社できる状況を作るノウハウ」は一つも含まれていません。しかし、「出社しない」は究極的にアリで、「人間関係を上手くやる」そういったものは、そもそも不要ではないかという提案です。   人間関係ではなく、適切に指示を飛ばすマシーンであればいいのです。従業員が動き、利益が出ればそれでいいのです。そこに向かっていくという意思を持てば、「人間関係で悩む」ことは少なくとも減ると思います。   人間と人間が上手くやっていくのはとても難しいことです。本当にそれは難しい。しかし、考えてみてください。「人間関係が良好である」というのは、会社が上手く回ることの必須条件では全くありません。蛇蝎のごとく嫌われる社長だって、儲かっていれば正しいのです。   結果に向かう過程を、目的に対する手段を選ぶ余地が大きいというのが数少ない経営者の特権です。何でもアリです。「人間関係に悩むのなんかやめちまえ」、「会社経営に悩め」というのは、結果的に救いになるのではないでしょうか。   わかりますよ。みんなに好かれたいです。みんなに愛されたいです。チヤホヤされたいです。   でも、それは「儲ける」ための手段に過ぎません。僕はこの部分を本当に見誤っていました。もちろん、その前提を踏まえたうえで「家族や友人のような関係を社員と構築する」という選択肢もあると思います。しかし、この前提は揺らがない。そこにあるのは人間関係ではなく、契約関係ですし労使関係です。そこを忘れないのが、従業員に会いたくない日の特効薬だと思います。   余談ですが、この考え方を透徹した場合、社員同士が敵対を始めるなどした場合もあっさり結論が出ます。「利益になる方を尊重し、利益にならない方を切る」という絶対の判断基準がありますから。良い人間である前に良い経営者であろう、そういう考え方は、救いになりえると思います。良い人間であることはあなたの仕事ではありません。そこは放棄していいんです。負荷に押しつぶされないよう、やっていきましょう。     ...

  人間は争います。全ての人間が分かり合えるなんてことは、到底ありえません。だからこそ、僕は「ニューアキンドセンター」で書かせていただいた文章で「争いが起こらない仕組みづくり」を繰り返し述べて来ました。   基本的に、社内戦争が一度起きてしまった場合事態は致命的です。人間同士の「お金」と「意地」と「生活」と「信念」をかけた争いが、話し合いで円満に解決するなんてことはほとんどありません。   裏切り者の出ない組織を作ろう、離反や対立が起こらない利害関係の調節を行おう。これは前提です。しかし、それを必死で行った上でも時に「戦争」は起きてしまうだろうと僕は思います。このままでは会社が割れる。あるいは事業が継続できなくなる、それだけの回復不能な対立が社内に生まれてしまった。そういう時にどうすればいいかということを、僕の失敗経験から考えていこうと思います。   尚、創業時における持ち株のバランスで事態がグチャグチャになるケース、例えば50%ずつの持ち株二人で創業した、あるいは複数人が出資し、誰も株式の過半数を有していない、みたいな状況についてはこの話では触れません。それは創業するときに当たり前に考えておくべきことです。   ここでは、「原理的には問題のある人間を解任・解雇をすることは可能だが、経営上の問題でその解決策が選べない」という場合について話をさせてもらおうと思います。対立の具体例については、こちらのエントリも是非ご参照していただければと思います。   >> 英雄頼りの「会社経営」から抜け出す理由。兎を獲ったら犬を煮る話。 ...

  世の中には色々な商売があり、悩みもまたそれぞれだと思いますが、シンプルに「客が来ない」という悩みはありますよね。これが例えば、仕事を自分で動いて取りに行けるような業種なら「営業しよう・・・」ということにもなるのですが、店舗を構えて待ちをベースにしているとそれもなかなか出来ません。特に飲食店などは、創業当初など客足も全く安定せず、地獄のような多忙と更なる地獄のような暇さを同時に味わうことになりがちです。   こういう時に何をすればいいのかについて、僕にはわかりません。しかし、何をしてはいけないのかについては大体分かった気がします。今回は飲食店をベースに考えますのでそちらの話が多いですが、他の業種にも通底するお話だと思います。何せ、僕がこの間までもがいていた地獄のお話ですので、鮮度はバッチリです。 うまくいかない時、従業員に発破をかける 僕も飲食業の個人店でアルバイトをしていたことは結構あります。基本的に接客業には向かない人間なのですが、料理にも酒にも興味があったのでカウンターにも厨房にもそれなりに立って来ました。その中で、個人経営店のオーナーがやることの中でも最悪と感じたのがこちらになります。   客が来ないとアルバイトは暇を持て余します。それを見てイライラする気持ちは痛いほどにわかります。しかし、「仕事が無いなら探せ!」程度ならまだしも、「現状打破のアイディアの一つも出さねえのかテメーは、友人の一人にでも電話入れて呼べよ!」と怒られた時には、「ああ、これはもう末期的だなぁ・・・」という気持ちになりました。   「とりあえず従業員を絞り上げる」は実のところを言うと、経営者の選択肢としてはそれなりに有力です。現場の空気が緩んでいて生産性が上がっていない時などは、とりあえずこれをやってみるのは一つの手でしょう。一般的にこういうことを公言すると怒られますが、最後の一滴まで胡麻から油を搾るのは大事な仕事です。   しかし、「そもそも客が来ない」時にとりあえず従業員を怒鳴りつけるのは本当に意味のない行動です。それでも、飲食店に限らず経営が上手くいっていない経営者は大体これをやってしまいます。   僕は「部下は大体僕より有能」という状態で経営をしていたので、あまり機会に恵まれませんでしたが。きっと状況が揃えば僕だってやってしまったんだと思います。それくらいありふれた話です。そして、これが発動したお店が長く生き残るのを僕は見たことがありません。   「現状打破のアイディアを出せ」みたいな抽象的な指示を理解して自ら行動してくれる部下がいるとしたら、それは本当に得難い宝です。しかし、一般的な従業員がこういうものだとは思わない方が良いと思います。ましてや、「客が来ない」という状況下で高圧的に出された指示を実行する従業員なんてまずいません。   客が来ない、日々経営が悪化していく状況下で、すさまじいストレスを感じていることはわかります。しかし、そのストレスを従業員にぶつけても事態は悪化しかしません。それだけ暇なのにその従業員を雇っているということは、業務継続に最低限必要な人員なんですよね。その方に逃げられたら、また求人費用と教育費用がかかるだけです。   とにかく、「従業員に無駄なストレスをかけない」を徹底した方が良いでしょう。というのも、業務が暇ということは部下とあなたは気詰まりな時間をどうしても長く共有することになってしまいます。創業期の不安定な時期に人員的不安定という更なる悩みの種を呼び込むのは本当に避けましょう。これは、本当に意識していないと出来ないことだと思います。あのストレスの中で正気でいるのは本当に難しい。 うまくいかない時、別の儲け話を探す お金に困っていると突然降ってくるタイプの儲け話というものは存在します。といいますか、本業が上手く回らず他の儲け話を探している人間についてちょっと想像してみてください。「これより嵌め込みやすいカモはいない」って誰でも思いますよね。これは必ずしも詐欺とは限りません。合法的な範囲で致命的な結果をもたらす取引なんてゴマンとあります。そして、商売が上手く回っていないと認知されるということは、この手の皆さんにターゲットとして認識されるということです。   商売を始めてみるとわかりますが、商売人同士の間では常になんとも形容しがたい儲け話が流通しています。それは、ちょっと見には非常に魅力的なものだったり、あるいは本当に大ネタだったりします。酒場でふと拾ったネタからガッチリ儲けが出た経験だって結構な割合の人にはあると思います。僕もあります。   しかし、商売が左前になってくると、この回ってくる話のリスク度合いが一気に跳ね上がります。まぁ、そりゃそうですよね。絶好調の人間を口説こうと思ったらそれなりにオイシイ話をしなければなりませんが、進退窮まっている人に持っていく話をそれほど厳選する必要もありません。ちなみにこの先には「話すら来なくなる」「来る話は大体法に触れる」というフェーズもありますが、まぁこの話はいいですよね・・・。   商売人の性質として、一つの事業がヤバくなるとそれを立て直すより「なんか別のことをやるか」という方向に行きがちです。往々にして、赤字を吐き出している事業を整理しないまま他のことをやろうとする人が多いです。実際このパターンでホームランを打つ人も意外といるので、否定しにくいところはあるんですが。それでも、強運と実力を併せ持った一つまみの人以外は、傷口を致命的に広げることになります。   「ツキがないときは何をやってもダメ」は、商売に関しては純粋に構造的な真理だと思います。上手くいっていない人間に上手い話は来ないのです。しかも、上手くいっていない人間は判断力も鈍っています。逆転ホームランを打つしかないと目が血走った人間が正常な判断を下せるでしょうか。   しかし、この話には更に辛いオチがあります。負け勝負を取り返そうと思ったら、どこかで恐怖を振り切って勝負に出るしかない、それも劣悪な選択肢の中から往く道を選ぶしかない。これもまた真理です。このとき、どういう判断を下すかは個人個人が人生を賭けて勝負するところなので、何も言えません。良い旅を祈ります。 うまくいかない時、めんどくさい人間になる 商売が上手くいっていない人間には二種類います。 異常に人前に出てくるか、人前にほとんど出てこなくなるかのどちらかです。ちなみに、僕は後者でした。だってねぇ・・・。ちなみに、このいずれも非常にダメだと思います。   理想論を言えば、どれほど商売が上手くいっても驕らず、上手くいっていなくても卑屈にならない。これが理想です。こんなの誰だってわかりますよね、そりゃそうでしょう。驕るのは論外ですし、卑屈になり過ぎればその分足元を見られるだけです。ハッタリも効かなくなります。   実際のところ、自分が完全にコケてから皆様に挨拶に行くなどしてわかったのですが、商売人は案外やさしいです。「商売が上手くいかない」みたいな苦悩を彼らは大体わかってくれます。コケて初めて「俺も2回コカしたよ」みたいな話をしてくれた経営者がたくさんいました。   だから、変に突っ張る必要も逆に卑屈になる必要もあまりなかったんですね。自分の手持ち資金や腕力を正確に把握し、ちょっとだけ大きく見せようとする。これだけで十分だったはずです。「仕事が来ないなら人脈増やすぞウォォー!!!!」みたいなテンションで夜の街を漂流する経営者は多いです。しかし、これは正直なところ「上手く行ってる人が多忙な時間を割いてやる」なら効果的だと思いますが、酒場で「コミュニケーション!」と叫んでいるおっさんは、あまり相手にしたくないですよね。特に儲かっていない人の場合は・・・。みんな敵を作りたくないのでにこやかに接してはくれますが・・・。   飲食界隈でも「客が来ないなら飲みに行け」という格言があり、これを実行されている方もちょいちょいお見受けしましたが、正直言って3回来てくれた辺りで義務的に「そろそろ行かなければダメか・・・」という心理が発生する程度です。プラスにはなりません。「オススメの店」としてお客様を紹介するにしても、自分の商売のカンバンを賭けてご紹介出来るお店に限ります。お客様にお店を紹介するのは結構怖いのです、「いや・・・好みではなかったかな・・・」と言われてしまうのは厳しいですからね。   もちろん、お客様を融通しあって商売を回しているような界隈もあります。そういう場合は例外です。この辺の政治性を勘案せずに社交をしても、コスト負けするのは多分間違いないと思います。人間、物事が上手く運ばないと必ず何らかの方向でめんどくさい人間になってしまうものだと思います。これは本当に仕方がないことですが、なるべく避けるのが一番です。本当に辛いことになります。   ここまで書いていて吐き気がしてきました。前回とも引き続きのエントリですが、辛いときは本当に辛い。しかし、経営者である以上、「俺の辛さを理解しろ」と叫んでもあまり得をすることはありません。なるべく控えていきたいものですね。   お勧めの息抜き媒体はインターネットです。商売が上手くいっていない商売人の話には結構需要があります。愚痴が言える有り難さがある。そして、仕事から離れた話も出来ます。映画や本などお金のかからない趣味も有効です。延々悩み続けるのは美徳ではありません、かなり難しい注文だとは思いますが、仕事以外の時間も確保するようにした方がいいです。   「24時間仕事のことを考え続けろ」みたいなアドバイスをする人もいますが、あれは超人向けです。上手くいっているときは一日24時間でも30時間でも仕事のことを考え続けられますが(だって楽しいし)、辛い時にそれをやっても自分を追い詰めるだけです。そもそもそんなに考えることなんて無いでしょう?賽を投げたら目が出るまで待つしかない、そんなもんですよね。   とにかく、無駄に苦しんでも良いことはありません。誰にも愚痴れないその辛さは本当にわかります。人生、あれより辛いことはそんなにありません。しかし適宜、気持ちを緩められるところは緩めて、死なないようにやっていきましょう。     ...

  商売を始めるには、多くの場合何かを仕入れなければいけません。また、商売をする以上何かを売らなければいけません。そこには当然「交渉」というフェーズが発生します。しかし、創業したばかりの人間にとってこれは鬼門です。あなたの商品は、実績ある会社の商品より安く買い叩こうとされますし、あなたに何かを売る人間は高い値段で売りつけようとします。これは当たり前のことです、誰だってそうするでしょう。   良いものを安く買う、あるいは自分の商品をなるべく高く売る。これは商売の極意です。つまるところ、これさえ出来れば儲かります。しかし、商売を始めればすぐに突き当たるでしょう。それが恐ろしく難しいことであると。 商売という土俵は平等ではありません。圧倒的に先行者が有利です。当然ながら、後発組には無い信用と実績という積み上げがあります。大抵の場合、先行者は資金量も後発であるあなたより上でしょう。これを覆すのは並大抵のことではありません。   そういうわけで、代表取締役という輝かしい肩書を刷り込んだ名刺を持って交渉に行くのは本当に苦行です。誰もが欲しがる商品を商っているところほど、門前払いです。売りに行く時も同様です。そんな時に使える僅かな武器について書こうと思います。 交渉術1. 名刺一つで交渉は動く、強い肩書きのデメリット 非常に基本的なビジネスハックですが、あなたが社長であっても「肩書きの無い名刺」を持っておくことを薦めます。これは、社員に名刺を持たせる時にも言えます。会社を登記して、少人数で勝負している時はつい「代表取締役」とか「営業本部長」とかそういうピカピカの肩書きをつけたくなりますが、多くの場合デメリットしかありません。   まず、会社の規模を見透かされます。代表取締役自ら営業や買い付けに出向いてくる会社が大きな会社である可能性は少ないですよね、しかも20代のガキんちょだったりしたら尚更です。50代なら「トップ自ら出向いて来てくれた」という評価を得られることもあるでしょうが、若者は絶望的です。   そして、零細企業の「代表取締役」という肩書きは一切の信用をもたらしません。「フリーター」や「無職」と同義だと思っていいです。あれで騙せるのはド素人だけです。(逆に言えば、異常に肩書きをプッシュした名刺は素人を騙そうとしている可能性がありますよね。思い当たるフシ、ないですか?「ハイパーウルトラメガ超弩級課長補佐」みたいな肩書きを好む業界について)   また、商談の相手が遥かに年上で、肩書きが「係長」だった時なんかはどうでしょう。「若いのにご立派ですねェ」という侮蔑を含んだあの皮肉は本当に心に突き刺さりました。おそらく、年齢に見合わない肩書きはある種の人間の攻撃性を喚起するのでしょう。しかも、立派な肩書きがあるだけ「手加減しなくていい、若いけれどこいつは責任ある立場であり強者だ」みたいな心理的ストッパー外しの効果もあると思います。「若き経営者」の存在自体が不愉快だ、という人もたくさんいます。   もう一つ、非常に現実的な意味合いがあります。肩書きが強ければ強いほど、交渉の場において即断即決を求められるということです。「代取のおまえより強い決裁権持った奴はいないだろう」という話です。何の肩書きもない名刺なら「会社に戻って検討します」が使えても、代表取締役がその手を打つのは非常に難しい。こちらが買う立場ならまだなんとかなりますが、営業に出向いて値引きを差し込まれた時なんかは本当に辛い。「社長さんなんだからここで決めてよ、ねェ社長さん」。   「この価格では上の許可が出なくて・・・。私はこの価格で決めたいと主張したのですが・・・」のような、交渉のポジション取りもありますよね。「私はあなたが正しいと思っているけれど、会社の人間がそれをわかってくれない。だから僕と一緒にゴールを目指しませんか、一緒に頭の悪い弊社の上層部を説得しましょう」みたいな形の交渉術はサラリーマンの基本ですよね。上司を悪者にしておけば丸く収まることはたくさんある。会社のトップとしての名刺を出してしまったらこの手も使えません。肩書きさえ出していなければ「会社に持ち帰って検討します」は嘘にはならないのです。   もちろん、逆に「代表取締役」として飛び出して行く事がベストのフェーズもあります。   例えば、部下が失態を犯した時はたった二人の会社であっても代表取締役として謝罪すれば効果が大きくなることが見込めますよね。この場合、部下の肩書きはヒラがベストです。肩書きのギャップがあればあるほど、社長の下げた頭が高く売れます。あるいは、経営者同士の社交の場に出て行くときは、トップの名刺を持つ必要があります。部下を送り込む時も強い肩書きをつけてやった方がいいですね。「私には決裁権があります」という意味合いですから。決裁権のない、話の遠い相手とわざわざ社交したがる経営者はいません。   この選択肢を選べるだけでかなりマシです。そのCEOとか刷り込まれたピカピカの名刺、本当にその交渉の場にふさわしいですか?それは検討してみる価値があることです。敵は歴戦の商人です、あなたよりキャリアは上です。肩書きでビビってくれる相手ではありません。何も考えず「代表取締役」や「CEO」みたいな名刺を使っている方は、一考の価値があると思います。「実は社長です」ということになっても怒る人はそんなにいません。   交渉術というと、「喋り」とか「立ち居振る舞い」みたいなものがまず想像されると思いますが、僕はこういった「立場」の工夫の方が遥かに即効性を持つと感じました。試してみて損はありません。 交渉術2. 「信用」を融通してもらう 「信用がある人間は交渉を有利に進められる」これは間違いなく真理だと思います。逆に言えば、信用がない人間は交渉においてとことん不利です。   しかし、創業したばかりの何の実績もない人間でも使える可能性のある強力な信用獲得の手段があります。信用のある人間に「口利き」や「紹介」をしてもらうことです。これはどんな場合でも非常に有効です。営業に出向く時、商品を買い付けに行く時はもとより、士業の先生などに依頼を出す時、あるいは銀行のような巨大な組織が相手であっても「紹介」は強烈に機能します。値段も対応も驚くほど変化するでしょう。   例外もありますが、経営者は大抵、人間関係をとても大事にします。飲み歩きが主な仕事という社長も多いでしょう。これは非常に合理的なことで、「信用」は貸し借り出来るのです。経営者は、コミュニティの中で人を紹介したりされたり、口を利いたり利いてもらったりして、「信用」を融通しあっているのです。それはまるで見えない通貨のようなものです。これを融通していただけるのは、涙が出るほどありがたいことです。   もちろん、実績ある人間に「口利き」や「紹介」をしてもらうのは簡単なことではありません。ヘタな人間を紹介すれば、紹介した側も「信用」を失うからです。しかし、「口利き」をしてやって、コストをかけず大きな貸しを作っておきたい」という心理もまた存在します。「感謝されて損はない」「貸しは作れる時に作っておけ」そういうことです。「信用」を貸してくれる人は探せば意外と存在します。力のある人間に「信用」を貸しつけるのは難しいですが、創業ホヤホヤのルーキーなら小さなコストで大きな貸しを作れる可能性がある。そういうことです。   創業する時は、自分がテコに出来る「信用」を貸してくれる人間をどれだけ確保できるかが非常に重要になります。場合によっては、出資を得ることよりも重要かもしれません。それはとりもなおさず、実績のない人間の信用度を測る方法がほとんどそれ一つしかないからです。資本金の額、会社のホームページのデキ、あるいはオフィスの豪華さ、社長の着ているスーツ、乗っている車、これらがいかに信用できないものであるかは経営をしていればすぐわかってきます。(ただし、これは信頼の担保にならないという意味でマイナス評価にならないという意味ではありません。会社ホームページがショボく、オフィスがアパートで、安物のスーツを着ていれば当然信頼は得にくくなります。ここにどれくらいコストを投下するかも悩みどころです)   1人の信用を得ることが出来れば、その人に口を利いていただいて、3人の信用を得ることが出来るかもしれません。3人の信用は、10人の信用につながっていくでしょう。 交渉は「信用」がモノを言う、そして表玄関をノックするよりは、裏口から迎え入れてもらった方が良い。もちろん、全くの無策で情熱と気合いだけを武器に正面玄関から飛び込まなければならないことも多くあるでしょうが、他人の信用を融通していただいて、裏口を開けることも常に狙っていくことをお勧めいたします。信用は魔法の鍵になりえます。   ただし、この他人から借りた信用には一つ欠点があります。どんな界隈にも人間関係があり、対立があり、利害関係があるということです。ある人から口利きをしてもらったが最後、ある種の陣営に取り込まれたと認識される。そんなことだってあり得ます。   また、利害関係が一致しない人間に対して、他人が「信用」を貸し付けてくれることはまずありません。その辺りを見通す努力を怠らないことを本当にお勧めいたします。どんな利害関係が自分の所属する界隈にあるのかですら、そう簡単には見通せません。   「信用を得る」これは究極的な交渉術です。意識して損は本当にありません。 交渉術3....

  僕は26歳から会社を経営しております。現在も一応、法人は残っているので、今年で6年目になるわけです。色々なことがありました。事業が5年続くというのは、実のところを言いますとかなりレアケースです。ちょっと調べてみたら、5年続く会社は15%くらいみたいですね。でも、実を言うとこのデータ怪しいと思います。というのも、僕だって現在も法人は生きているんですよ。事業がもう動いていないだけで。このデータ上、僕は「生存」にカウントされていると思います。   もちろん、法人は維持費がかかりますから休眠や解散を選ぶ人も多いと思いますが、様々な便宜の問題で事業が終わっても存続させることが多々あります。大量に赤字積んであったりもするし、リベンジを志す人もいるでしょう。僕もそのケースです。たまに「借金玉社長」って呼ばれると「勘弁してください」という気持ちになります。まぁ、そんなわけで企業生存率は5年で15%より大分低い、というのはほぼ間違いないと思います。しかも、これ「法人」での起業に限っての数字ですからね、なんだかんだお金のかかる法人登記をせず、個人事業で起業するケースだって多々あります。そちらの生存率も、まぁ高くはないでしょう。   同期に起業した若手連中は、もう連絡がつく人間がほとんどいません。自分の成功を1ミリも疑わなかった皆さんが、どんどん消えていきました。しかも原因は「事業の失敗」ばかりではないんですね。突発的に悲惨な出来事が起きる会社が大変多かった。そういうわけで、悲惨な事態に遭遇した企業経営者のケースを僕が知る限り書いてみようと思います。 持ち逃げ 会社を経営している皆さんにとってはあるあるだと思いますが、本当に多いですよね・・・。僕の周囲でも数件発生しました。そのまま即死した会社もありました。創業期の会社のお金の管理というのは、往々にして杜撰です。しかしこれ、つまるところ仕方ないことでもあるんですよ。というのも、プレイヤーに決裁権限を与えず都度確認を取るということは、イコールで社長の業務負担が増えるということです。「信用するしかない」という悲しい現実があります。プレイヤー社長の会社なんかでは、「社長が会社のカネについて全く把握できていない」なんてこともよくあります。でも、それはそれで合理的はあるんです。カネの面倒はカネの面倒を見るのが得意な人間がやればいいわけで。   ある日突然、口座の金がスっと消えます。また、諸事情(大抵ろくな事情ではない)から現金を金庫なんかに突っ込んでいた場合もスッと消えます。同時に人間が消えます。起きた時点で全損を覚悟しましょう。回収はほぼ不可能です。また、刑事事件にもなかなかしにくかったりします。まぁ、想像はつきますよね。口約束で全てが進展しがちな創業期の会社におけるお金の権利なんて、大抵がグチャグチャです。果てしなく裁判で争うことになるでしょう。言った言わないあいつが悪い、俺は被害者だ、想像出来る限り最悪のことが全部起きます。   「金を盗まれたんだ」と主張しても支払い日は待ってくれませんし、従業員は給料の遅配を許してはくれません。そして、盗んだ人間を処罰するにもお金がかかります。刑事事件にするということはつまるところ、相手の弁済能力を下げる結果にすらなります。民事で泥沼の戦いをしても、得をするのは弁護士だけです。現金の持ち逃げカマす奴に賠償に充てられる資産なんてあるわけもない。そして、これは「やられた!」という社長あるあるなんですが、「俺にも後ろ暗いところが自分にもあるから公式に裁けない・・・」というあれが大変にありがちです。詳細とか語らなくていいですよね。コンプライアンスは最終的に自分の身を守るためにあるということです。   創業直後の会社は大体コンプライアンスなんてガン無視しています。「何それ?食えるの?」みたいな話だと思います。それはそれである意味仕方ないのですが、いざ大問題が起きた時に大変なことになります。風向きがいいときはナアナアでやっていけた相手も、いざ大問題が起きると容赦なく殴りかかって来ます。   創業当初から、「とにかく身綺麗にする」ということは心がけた方がいいでしょう。会社の経営者というのはやろうと思えば様々なあまり順法的ではない小細工が出来ます。しかし、その小細工に他人を利用していた場合、そこには回避不能のリスクが出てくるということはとにかく認識しましょう。本当に生死を分けます。「表沙汰にしたら俺も社会に怒られてしまう・・・」みたいなパターンは本当に辛いと思いますが、自業自得と言う他ありません。   「あれをこうすればばめっちゃ良い感じじゃん。問題はバレたら怒られることくらいで」みたいな発想、経営なんかしているとどんどん出てくると思います。コンプライアンスと100回唱えて悪魔を振り払いましょう。部下が金を持ち逃げしたのに怒ることすら出来ない。そういう羽目になった社長、いっぱいいます。 横領 これもまた実にあるあるです。例えば飲食店経営で他人を雇ってお店を任せた場合これを完璧に防ぐ方法は無いと言っていいと思います。ラーメン10杯分の原料で11杯作って、1杯分の売り上げをポケットに入れればいいだけのことですからね。経営者が現場に精通していない場合なんて、やろうと思ったらナンボでもやり放題だと思います。「誰かを雇って、あるいは出資して飲食店をやろう」というタイプの人はこの点について考えておくことが大事です。   横領は実際のところ思った以上に簡単です、特に創業初期の会社にコアメンバーとして入っているのならば、やろうと思ってやれない環境の方が珍しいでしょう。つまるところ、横領などの不正が不可能な状況を作るコストが高すぎてやれないという話にもなります。100万の横領を防ぐためには300万かかってしまう、そういうことはよくありますよね。   また、横領に関しては社長自体がやることもよくあります。出資者が会社のお金の流れに明るくない場合なんて完全にやりたい放題ですよね。誰が住んでいるのかよくわからない社宅、出社してこないアルバイト、何をしているのか誰にもわからない役員、御社にも存在するのでは?色々書類を眺めていると人類の悪さが見えてくることはよくあります。出資を考えている皆さん、この点はとにかくよく見ておいた方がいいですよ。   また、横領というのは往々にして会社が好調の時に起こります。毎月赤字を垂れ流しているような状態なら流石にお金のよくわからない動きがあれば気づきますが、ガンガン利益が流れ込んで来ている時にそれに気づくのはとても難しい。事業自体は好調なのにこのような事態が社内で発生し、そのまま空中分解してしまった会社もありました。最終的には刃物などが登場し警察が介入したと聞きますが、本当に不幸でしたね・・・。   ちなみに、横領に関しても「表沙汰にしたら俺も怒られるから表沙汰に出来ない・・・」という話がよくあります。横領ブチかまして退職して、元気一杯次の横領が出来る会社を探しに行く人類は存在しますよ。 社員が全員辞めた 「社員が全員辞めてしまった」というお話、聞いたら笑っちゃいますよね。僕も起業する前は「どんだけアホならそんなこと起きるんだよ」って思っていました。しかしですね、創業初期の会社では普通に起きます。想像してみてください。わりと儲かっている社員5人の会社、そこから5人の社員をまとめて引っこ抜いたら、すぐに儲けが出る会社がやれたりするわけですよ。そりゃ引っこ抜きますよ。   創業初期の会社というのは人材の奪い合いです。市場に「すぐに利益を出してくれる人材」なんてそんなに転がっていません。転がっていてもとても値段は高い。社長さんたち「他社の有能なあいつ欲しいなぁ・・・」と思ってコナかけたこと絶対ありますよね。正直に言うと、僕もあります。自社の人間に他社からコナかけられたらブチギレてましたけど、コナかけたことはある。しょうがないじゃない、経営者だもの。   有能な社員を囲っているが経営者への不満が蓄積している会社、というのはたまにあります。また、社員は有能なのにも関わらず経営方針がイマイチで利益が出ていない(社員に十分な給与を払えていない)会社なんてのもあります。そりゃ奪い取りに行きますよね。有能な人間というのは現金が落ちているようなものです。拾わない手はない。   有能な人間を雇うのは難しいですが、有能な人間を雇い続けることはもっと難しい。更に、有能な人間は当然ながら「俺が経営する側に回ればいいじゃん」という発想にも至ります。具体的に言うと、「社員全員引き連れて退職して全く同じ事業内容の会社興せばいいじゃない」というのは大変正しいのです。「この会社に最も必要ない人間は社長ですよね」というお話です。俺が興した会社から俺が追放された、そういう悲しい物語は本当にいっぱいある。   また、創業初期の会社というのは当然ながらメンバーにガンガン裁量を振ります。会社にシステムがないんだからそれしかありません。そういう場所では人間がどんどん成長します(さもなければどんどんリタイアします)。当たり前ですよね、仕事しているわけですから。他人がほどよく育てた果実をベストなタイミングで収穫するの、やりたいに決まっていますよね。しかも、大手から引き抜くブランド人材と違って給与も安く抑えられますし。これらの構造的圧力を上手いこと捌くことが出来なければ、「コアメンバーが全員退職した」なんて事態は、むしろ起こって当たり前です。 どうしましょう? ちなみに、これらのケースは「事業が上手くいって収益が上がっていたとしても尚起きる」問題です。こういう問題以前に「そもそも事業が上手くいかない」という話があります。これから創業を考えている皆さん、是非とも徹底的に考え抜いておいた方がいいと思います。考え抜いて考え抜いた末に「対策はない、問題が起きた時に困ろう」という決意に辿り着くとしても。心の準備だけでもあれば大分マシです。   これらの問題の発生を防ぐことはもちろんできます。やり方はいっぱいありますよね、持ち逃げや横領を防ぐ方法はありますし、社員の退職や引き抜きを防ぐ方法だってないわけではない。では、これらを有限の資源の中でやっていくにはどうしたらいいのか?というお話です。へこんだアルミ缶を元に戻すような話です。あっちを叩けばこっちが出っ張る。完璧を目指して頑張った結果、見事社長が過労死という話もあります。   話にオチがなくて恐縮ですが、この話の一番大きい教訓はコンプライアンスだと思います。コンプライアンスを守らない者はコンプライアンスに守られません。「俺は上手くやるから大丈夫」という人もいるでしょうし、それはもう止めませんが、そこまで思えない人はとにかく身綺麗にしておくことが身を守る上で最も重要だ、という点を覚えておいて欲しいと思います。   そして、連絡が完全につかなくなってしまった皆さん、僕はとても寂しいです。いつかまた、どこかで酒でも飲み交わしましょう。僕はまた頑張ります。やっていきましょう。     ...

  起業は実際のところ、ほとんど何でもありです。資金調達、メンバー集め、経営方針、株の分配、事業内容・・・実にたくさんの要素が存在しますし、全く同じ形の起業なんてものは2つとしてありえないと言っていいでしょう。そもそも株式会社以外の会社形態だって存在するわけですし。人間がそれぞれ全く違うように、会社のあるべき姿もケースバイケースです。これこそが正しいというやり方は間違いなく存在しません。成功すればそれが正しいやり方なのです。   しかし、僕が自分の経験から最も重視するのは、創業期における社長のポジションです。実際、社長の業務というのは実に様々です。「ほとんど何もしない」という社長さえ存在します。このお話はどれが正しい、というような結論を出す話ではありません。実際のところ、起業をするときに自分の経営者としてのあり方を選べるなんてことは稀です。自分の持っている強みを生かして起業するしかないのですから。   しかし、その際のメリットデメリットについては考えておく必要があると思います。僕の知る限り、あるいは思いつく限りお伝えさせていただきます。業種を分類せず一般化して語っているのでその辺は多少雑ですが、雰囲気は掴めると思います。 創業者① スタープレイヤー社長 収益を生み出す基幹となる異能を社長自身が有しているパターンです。例えば、腕の良いプログラマであるとか料理人であるとか、誰にも真似出来ない商品開発が出来る、みたいな場合もあるでしょう。逆に「売る」方に特化した営業モンスターなんて場合もあるかもしれません。営業請負会社なんてのもありますし。   このパターンのメリットはまず、創業期における業務遂行の手堅さです。それこそ、部下の誰が辞めようが会社の一番の強みは社長自身が握っているわけですから、失いようがありません。いざとなれば、社長が3人分働けば急場は凌げてしまいます。そして、この手の社長は3人分くらい平気で働く人が多いです。序盤戦は圧倒的に有利でしょう。「俺がいれば大丈夫」という状態です。使えない人間には容赦なく解雇を宣告できます。最悪、部下が全員辞めてもなんとかやっていけることさえあります。   そして、もうひとつのメリットですが、このタイプの社長は現場で実際に業務を行う従業員の人心掌握に強みを発揮することが多いのです。というのも、専門技術の世界というのは、往々にして実力と実績がモノを言うタテ社会です。圧倒的に優れた能力を持った人間がトップに立っていれば、現場で働く人間の信任は極めて得やすいと言えます。実務的な異能には往々にしてカリスマとリーダーシップもついてきます。故に、経営が難所にさしかかっても人がついてくることが多いです。   しかし、もちろん弱点もあります。プレイヤーとして圧倒的な実力を発揮しながら、同時に会社経営と事業拡大をこなすというのは、ちょっと事業が膨らんで来てしまえば常人にはまず不可能です。また、経営者の仕事は第一に会社の意思決定、即ち決断です。これは、実に大きなエネルギーを要する業務です。あの巨大な心理的負荷を抱えながら異能を必要とする業務をこなせる人は、ほとんど人間ではないと思います。(まぁ、人間ではない人がゴロゴロしているのが市場ではあるのですけれど)なんにせよ、金繰りや経営判断などの会社の基幹となる部分を他人に委ねざるを得ないというのはかなりのリスクです。   しかし、経営パートに社長が関与すればするほどプレイヤーとしての出力は低下するジレンマが発生します。このタイプの社長はとにかく金を横領されがち、あるいは気づいたら財務が愉快な状態になっていることが多いという印象があります。   そして、スタープレイヤー社長の率いる会社の一番の困難は、拡大の難しさです。事業が大きくなれば、社長の異能ひとつで拡大出来る限界に必ず直面します。しかし、2番手3番手を張れるプレイヤーの育成は楽ではありませんし、個人の異能によらない収益の仕組みを作り上げることも難しい。   そして「プレイヤーとしての異能」だけを武器にした社長にとって、自分を上回る、あるいは代替し得る異能を持った人間の出現は社内における求心力の低下を即座に意味します。経営パートは他人に握られているわけですし、これは実に恐ろしいです。かつての英雄、今はお飾り社長。あると思います。会社なんて設立せず、フリーランスでやればよかった。そんな話も聞きましたね・・・。     スタープレイヤー社長の仕事まとめ     メリット ・創業期における業務遂行の手堅さ、人員の欠損への対応力の高さ ・小さく始めてある程度の大きさまで持っていくのは本当に強い ・プレイヤーとしての異能をテコにしたカリスマとリーダーシップ ・経営が難所にさしかかっても結構人がついてくるかもしれない   デメリット ・経営パートまで手が回らないので人を雇って任せるしかない ・社長が経営パートに関与すればするほど、プレイヤーとしての出力が落ちる ・社長の持つ異能のノウハウ化や共有が難しく、社長の出力の限界が成長の天井になりやすい ・業務拡大が上手くいったとしても、結果トップとしての求心力を失いかねない ・横領や会社を私物化されがちで、やはり社長が経営をちゃんと見ないのは怖い 創業者② 経営特化型社長 スタープレイヤー社長の対極となるタイプの社長です。このタイプは1にも2にも、まず資金をかき集める異能がなければ話は始まりません。有能な人材を見つけ、事業計画を書き、資金を調達する。それが経営特化型社長のやり方です。当然ながら、創業可能な事業の範囲が広いというメリットがあります。それこそ、いい人材や出資者を見つけたらその状況を軸に事業計画を書く、なんていうフリーダムな動きも可能になります。   経営特化型社長は現場にはあまり出ないことが多いでしょう。当たり前ですね、プレイヤーとしての能力を持ってないのですから。その代わり、経営判断は自分一人でガチガチに握ることが必須です。現場技能を持っていない以上、経営能力だけが存在意義となります。経営判断はトップの聖域にしておかなければ話にならない、そして、その正しさを常に示し続けて人を引っ張るしかありません。   また、事業拡大に強いことが多いです。そもそも人を雇って事業を行うのがベースですので、上手く事業が回ればどんどん人を雇って拡大していけるでしょう。そもそも「他人の力で儲ける」がベースですから。現場に出ない分、事業拡大に力を注ぐ余裕があります。事業が一定以上のサイズ感に成長すれば、コアメンバーが抜けた際のリスクも反比例して小さくなります。そうなれば、経営能力と資金調達能力の高さが存分に生かせるはずです。バシバシ人を切っては雇うタイプの経営をやる人もいますね。   デメリットも明確です。創業期に事業のコアとなるメンバーに逃げられたらその場で終わりです。自分の力で急場を凌ぐことさえ出来ません。メンバー3人で会社を回している時に1人が抜けてゲームオーバー、そういう話はよくあります。結局、「自力で稼げない」というのは恐ろしく大きい弱点なのです。   創業のテコとなるコアメンバーだけは、そうそう兌換が効かないので、序盤戦はとにかく脆い。小さく始めて大きく育てるは会社経営のひとつの理想ですが、経営特化型社長には鬼門です。ある程度の規模感で、誰が抜けても大丈夫な形で起業・・・出来たら苦労はないですね。   また、現場の統率やリーダーシップに弱みがある場合が多いです。前述の通り、現場で技能を発揮する従業員は、現場における職能の高さこそが最も重要だと考えている場合が多いのです。平たく言えば、「俺と同じ仕事が出来ない奴の命令なんて聞けるかよ」みたいなあれが発生しやすい。「事業計画の策定が得意」とか「資金を調達出来る」みたいな能力では、現場の敬意はそうそう勝ち取れません。文化が違います。故に資金枯渇など、経営の難所には弱いことが多いです。このタイプの社長はとにかく反乱を起こされがち、あるいは従業員に離反を起こされがち、という印象です。     経営特化型社長の仕事まとめ     メリット ・獲得した人材、あるいは出資者の意向に合わせて事業をデザインできる柔軟さ ・経営とコアメンバーのマネジメントに全力を傾注可能 ・事業拡大に強み ・経営や資金の状況を常に注視する余裕がある ・経営判断に十分な心理的リソースを割ける   デメリット ・小さく創業した場合、序盤戦が圧倒的に弱い。人が欠けても求人を出すことしか出来ず、自らプレイヤーとして動くことが出来ない ・現場実務に通じていないが故のリーダーシップの弱さ ・実務能力のある部下がいなければ本当に何も出来ない ・反乱起こされがち ・お金の切れ目が縁の切れ目になりがち 創業者③ 中間型社長 基本的には経営を担当するが、現場業務もそれなりにこなせる社長です。なんだかんだ、経営特化型社長も多少は現場業務が出来ないと面倒も多いので、経営特化型社長から始まって中間型社長に移行していく場合も多いでしょう。中には、資金調達と総務経理担当から参加して、業務の合間に死ぬ気で勉強した結果トッププレイヤーも兼任するようになったという猛者にも会ったことがあります。これはとあるIT企業の役員の方なんですが、すごい話だと思いましたね、多分、部下に果てしなくナメられるなどの辛い経験があったんだろうと思います。   このタイプは上手くやればバランスがいい反面、強みにも乏しいという問題があります。プレイヤーとしての業務に力を注げば経営がおろそかになりますし、経営に力を注げばプレイヤーとしての業務が疎かになります。その中間でバランスを取り続ける、という選択です。人間1人に処理可能な業務量は所詮有限なので、両方をうまいことやろうとした結果どっちもダメだったということも往々にしてあります。   僕自身もこのタイプでしたが・・・まぁ、楽ではないです。いっそ経営特化型に振り切った方が結果は良かったかもしれないと思うこともあります。まぁ、創業初期は人もいないし無駄金も一切使えないので、社長が現場業務をやらざるを得ないことも多いでしょうし、出来るとか出来ないじゃねえんだ、人がいねえんだから社長がやるんだよ。そういう世界観もあります。   少人数で会社を回している場合、どうしても体調不良などで現場の担当者が出られないことは避けがたくありますし、いざとなったら現場もやれるに越したことはもちろんないですよね。コアメンバーが抜け落ちても、次のプレイヤーが稼動し始めるまで自分が現場を守りきるという判断も出来なくはありません。もちろん、パフォーマンスはその業務に特化した人間に比べて大きく劣るでしょうが、出来ないよりはよっぽどマシです。   飲食の場合は「シェフがバックレた」なんてのは大変によくあるお話です。僕のかつて経営していたお店のすぐそばにあった店舗は、開店直前にシェフが「やっぱやめた」と言い出したそうで、1日たりともお店を営業しないまま風に消えていきました。あんまり詳しく書くとあれなんですが、専門性の高い料理店だったので代わりのシェフも確保できなかったんでしょうね、あるいは代わりのシェフを探す気力もないほどにオーナーが絶望してしまったのかもしれません。ピカピカの内装と厨房設備の居抜きを売っていくらか回収出来たんでしょうか。開店前、道に立ってサービス件を配っていたオーナーと思しき初老の男性のことを、今でも時々思い出します。もちろん、僕に他人に同情する資格なんて一切ないんですけど。     中間型社長の仕事まとめ     メリット ・突発的な人員不足やプレイヤーの離脱に多少は対応できなくもないかもしれない ・現場を知ってはいるのでそれなりに現場とも仲良くやれるかも   デメリット ・全てが中途半端、上手くバランスが取れなければスタープレイヤー社長、経営特化型社長の欠点を併せ持つ結果に ・結局、業務量が狂ったことになりがち ・現場でのパフォーマンスが低いと、どんどん部下に舐められる ・経営判断や経営実務のしんどさを理解してくれる部下はそんなにいない ・給与明細作って給料払って、帳簿処理して出資者に報告して、資金計画作って、現場が揉めたら間に入って求人出して、経営数値を分析して、店舗回って状況を見て、従業員からヒアリングして人事評価を行いつつ、プレイヤーとして店舗にも出る・・・ ・あ、そう予約モリモリなのにバイトがバックレ・・・うん30分で行く ・アウアウアー あなたはどのタイプで会社を起業しますか? 実際、起業を志す人は「何の特化技能もない、野心しかない」という人も多く、そういう人でも成功するときは成功しちゃうのが起業でもあります。プログラミングの一切出来ないIT企業の社長だって結構存在すると聞きますし、フライパンを振れない、トレンチの持ち方すら知らない飲食店経営者なんてもっといっぱいいるでしょう。飲食業界人どころか一般の方でも大体知ってる「俺の」チェーンを展開する坂本社長は、元はブックオフコーポレーションの創業者で、いきなり飲食業界に飛び込んで来た人です。   もちろん、坂本社長は創業時の資金量が一般的な起業家とは比べ物にならないほど多かったであろうことは想像に難くありませんが、それでも突然異業種に飛び込んで成功する起業家なんてザラにいます。バイト経験すらない全くの未経験からそれなりに参入障壁のある不動産業に飛び込んで儲けている猛者だっています。専門技能や知識、あるいは経験を有した人でなければ起業出来ないなんてことは全くありません。その一方、専門技能や知識経験を持った人が強いこともまた事実です。   起業にルールはほとんどありません。セオリーだってそう多くはありません。むしろ、セオリーに従って成功できるならみんな成功しているはずです。しかし、自分が起業した後の経営のあり方をリアルに想像出来るかどうかは、成功率に大いに影響するのではないかと思います。   僕は、創業の時にこんなことは一切考えず勢いだけで突っ込みましたので、実に多くのしなくてもいい苦労や失敗をしました。後知恵になりますが、多くの困難は回避可能だったと思います。実際、この文章を読んで「ではどうしたらいいか」については皆さんもかなり思い浮かんだのではないでしょうか。   初めての起業に挑む方は、本当に何もかもわからないと思います。しかし、断片的なものでもいいので情報を集めて、想像力を働かせることはとても大事だと思います。もう少し多くの想像力を働かせることが出来れば、そして起こりうる事態に対しての備えを作っておけば、僕にも違った未来があったかもしれないと未だに思います。後悔は尽きません、おそらく一生この感情はついて回るんだと思います。   どうか、皆様悔いの無い起業を、そしてあなたの成功を心からお祈りします。やっていきましょう。     ...

  創業期の英雄、起業のコア人材 皆さんの会社には「英雄」が存在するでしょうか。創業期の会社には、大抵の場合、英雄が存在すると思います。この人抜きにしてこの会社はない、ある個人の能力、あるいは人脈、そういうものが会社経営に圧倒的に寄与したという話はどこの会社にもあると思います。   創業期というのは大抵の場合、あらゆる業務が属人的です。当たり前ですね、最初から儲けのシステムが完全に出来上がっている会社なんてものはまずありません。プレイヤーの戦力こそが創業期の会社における強さそのものなのですから。その環境からは必然的に英雄が発生します。   創業時、あるいは創業後の中核メンバー集めの際、創業者であるあなたは間違いなく「儲けを生む人間」、あるいは「自分の能力的欠損を埋め合わせてくれる人間」という基準でメンバーを選んだと思います。少なくとも、合理的な(合理的であるということは必ずしも良い結果を生むわけではありませんが)創業者であればそうするでしょう。その結果、あなたの人選はドンピシャに当たった。あなたの選んだメンバーは八面六臂の大活躍を果たし、会社は大きく成長した。そういう美しいお話は結構あります。素晴らしいですよね、あなたも創業者として大変、鼻が高いでしょう。   しかし、美しくない話がここから始まります。会社が上々の収益を上げているとなると、当然規模を拡大したい、そういう話になります。しかし、規模の拡大を志向するとなると、業務の属人性を解除し、プレーヤーの能力に依らない収益システムを構築する必要が出てきます。英雄の異能で利益を上げる限界が来たから人を増やすという話になったわけですから。   業務のマニュアル化とノウハウの言語化とシェア、そういうことが必要になります。また、そろそろ創業以来ハチャメチャだった就労環境も整えなければならないでしょう。人を雇うということは、雇った人が会社に残ってくれる環境を作らなければならないということです。ハチャメチャに耐え、狂ったモチベーションで前進してきた創業メンバーの時代は終わり、会社というシステムを組み上げる時代がやってきます。   これを、僕は「創業期の終わり」と呼んでいます。業種や業態にもよりますが、従業員が2桁に到達するころには、嫌でもその辺は考えなければならないでしょう。創業期の終わりはとても悲しい季節です。これまで、個人の異能と裁量を丸投げした意思決定の速度で前進してきた会社を、ルールとシステムの中に落としこむ必要が出てくるのです。ワーカホリック達の楽園、永遠のような文化祭前日は終わりです。社員の数を増やすということはそういうことです。創業メンバーだけで回していた頃のようなハチャメチャは、規模が大きくなってくるとそうそう通らない。(たまにネジ通す会社もなくはないですが・・・)     ↓こちらもおすすめ↓ 「起業失敗の話。起業を志す皆さんに敗残者からお伝えしたいこと」     創業期の終わりに。英雄頼りの会社経営から抜け出す理由 もちろん、この段階で事業の拡大を止めるというのもありえなくはない選択肢です。実際、十分な利益をあげ、大きな成長余力を有しながら、それでも従業員の数や事業の規模を頑なに拡大しない経営者は存在します。彼らは正に勝利者です。自分の会社の最も居心地の良い大きさを見つけ、後はそれを守っていくフェーズに入った人たちです。規模を志向しなくとも十分な利益が取れて、かつ社内の人間や出資者がみな満足するだけ配分できる会社にのみ許される最高の贅沢です。   しかし、出資を受けて創業した人間がここで立ち止まるのは余程理解のある出資者に恵まれていない限り、難しいでしょう。また、社内の人間が「成長を止める」という判断を呑んでくれるとは限りません。「ふざけるな、ここが上限なら俺は辞めるぞ」そういうことになります。この段階で「英雄」たるプレイヤーに抜けられることは、即ち事業の破綻、そこまで悪くなくとも大きな収益の減少を意味することは言うまでもありません。   余談ですが、社員数人くらいだけど羽振りのいいあの社長、実はすごい人なんですよ。会社経営において「成長を止める」という判断は恐ろしく、難しいものです。まず、自分自身が止まれない、自分が止まれても出資者が許さない、出資者が許しても社内の人間が許さない、そういうことです。銀行も金を貸しに来ます、社長ならやれるという声がどんどんかかります。新規の出資希望者だって列を成します。それでも、それら全てを振り切ってその場所にとどまったのが、「小さい会社の儲かっている社長」です。社長自身がスタープレイヤーであり、同時に会社のオーナーである場合が多いですね。このようなゴールを目指すなら、是非その形を作りましょう。   しかし、多くの人は成長余力のある限り拡大を目指すことになると思います。仕方のないことです。創業の仕方によっては宿命付けられていると言っても過言ではないこともあるでしょう。出資者は利益を求めます、従業員は給与を求めます、そしてあなたは栄光を求めるでしょう。となれば創業期は終わるしかないのです。もっと儲けるためには、英雄の異能を会社の仕組みに落とし込んでいくしかない。英雄頼りの経営を抜け出さねばならない。拡大するしかない。そして、もちろんコンプライアンスと労働環境だって整えていかねばならない。 英雄の時代、輝かしき創業期 話をわかりやすくするためにラーメン屋のチェーン展開のお話をしましょう。   あなたは、1人のとてつもなくラーメン作りが上手い人間(仮にAとしましょう)を役員として迎え入れて、1軒目のお店を見事大繁盛させました。Aはとてつもなく職人気質で仕事に一切の妥協はなく、1日14時間鍋の前に立ち続け、会社に大きな利益をもたらしました。ラーメン屋は当たると大きいのです。お店の前に行列は絶えず、店舗運営以外の実務一切を担当していた社長のあなたは鼻高々です。最早あなた自身が店舗に出てホールや調理補助をやることもありません、人を雇えます。14時間働いた後に社長業をやる地獄からも開放されました。次から次へとメディアの取材も押しかけるでしょう。最初の挑戦は大成功でした。   さぁ、2号店だ。あなたは考えます。今度は資金にも余裕がある、銀行もノリノリで貸してくれた。物件情報も内装についても厨房器具も什器も勝手はすっかりわかっている。協力者もたくさんいる。2軒目の店舗は大抵の場合、1軒目より遥かに効率よく作れます。もちろん、ラーメンのレシピも明文化済みです、難解な火加減などもあなたはAに付きっ切りで習得しました。Aは純粋なる職人肌で指導が出来るタイプではないので、新人は2ヶ月ほどAの下で研修させた後、すぐ2軒目に投入しました。新人は二人とも経験者でしたし、レシピさえあれば何とかなるとあなたは判断したのです。   研修の後、Aは新人に対して「1日14時間ぐらい働く根性がない奴に勤まるのかよ・・・」などとグチグチと文句を言っていましたし、新人からは「Aは最悪だ、社長の指示をまるで守らない、無茶苦茶に働かされた」という声が上がりましたが、気にしていられません。「まぁまぁ、2号店に移れば大丈夫だよ、君たちが主役だ」などと宥めて進めるしかありません。なにしろ、2軒目の店舗は出来上がっているんですから。   2軒目も大成功でした。新人1号と2号はなかなかの働きぶりを見せ、1号店を上回る利益を叩き出しました。もちろん、1号店も相変わらず大繁盛です。あなたの下には大量の利益が転がり込んで来ました。ここで、リスクを取って二人同時に正社員を入れたのが英断だったことがわかります。新人2号を次の店舗に投入すれば、すぐに3号店が開店できるのです。そのようにして、あなたは気づけば5店舗のラーメン店を持つ一端の実業家になっていました。あなたの店舗展開能力は確かだったのです。新商品の開発などはAが引き続き担当しました、それらも次から次へとヒットしました。ラーメンを開発することに関して、Aは正に天才でした。ベースのスープにも度重なる改良を加え、お客様を飽きさせない多様な味を作り上げることが出来ました。   ここで問題が発生しました。マネジメントの手が足りないのです。飲食店というのは放っておけば利益を産む魔法の箱ではありません。所詮は人間が運営するお店です、監視を緩めればすぐに従業員はスープの煮込み時間を短縮し、掃除をサボります。最悪の場合売り上げを引っこ抜きます。スープを水増しし、麺の本数を少々いじればそんなことは簡単に出来ます。架空のアルバイトをでっちあげることさえあります。帳簿だって任せきるわけにはいきません、仕入れ先からリベートを抜いていないかもチェックする必要があります。マネジメントや業務オペレーションが上手く回ってない店舗にはあなた自身が乗り込んで指揮を執る必要もあるでしょう。あなたはついに限界に達しました。   そこで、あなたは管理職を一人雇うことを考えました。しかし、そこにAからの異議が上がりました。自分がいつまでも現場にいるのはおかしい、現場の人間を増やした上で自分に管理職を担当させろ、店舗運営のことなら自分が一番わかっている。何より、ラーメンを俺より上手に作れるわけでもなく、まして社長でもない、ぽっと出の人間に管理されるのは我慢ならない。Aはそう主張しました。あなたは呑むしかありませんでした。確かに、筋をいえばその通りなのです。Aは金だけで動く人間ではありません、仕事の充実感がなければ最悪退職してしまうことさえ考えられます。   結果としてあなたが2店舗の管理、Aが3店舗の管理を行うこととなりました。あなたも社長業が忙しくなっていたのです。新店舗の展開もやらなければなりません。まだまだ成長する気は満々です。逆にAは1号店の運営から解放され、十分な時間的余裕が確保されました。分業体制の始まりです。あなたは口を酸っぱくしてAに言いました、労働法規を守れ、コンプライアンスを守れと。あなたがラーメン作りの天才なのはわかっている、でもそれだけは頼みましたよ、と。もちろん、就業規則も作成して備え付けてあります。Aには遵守する、という旨の念書さえ取る徹底をしました。   こうして経営の第2フェーズが始まったのです。     ↓こちらもおすすめ↓ 「「労働者は強い」僕が体験した、創業期における従業員の話」     英雄の反乱、会社経営の失敗 嫌な予感はしました。そして、それはもちろん当たりました。数ヶ月とたたずAの管理する店舗から、離職者が出始めたのです。客足は落ちていません、むしろ増加しています。従業員に支払う給与だって、業界水準から見ればまずまず以上に設定しています。福利厚生だって飲食業界としては高い水準です。なのに、離職者は発生してしまいました。あなたは大慌てで退職者に話を聞きました、結果としては「Aの業務における要求水準が高すぎる」「Aにマネジメント能力がない」「Aが業務コンプライアンスや労働法規を一切無視している」ということが伝えられました。   いや、正確に言えばこれは完全な事実ではありません。Aに何があろうと付き従うという人間も出てきていました。Aは半ば意図的に従業員の精錬を行っている節さえ感じられました。何があろうと自分に付き従う、能力の高い人間だけを残す。そういう意図が感じ取れました。もっともAは論理的な人間ではないので、そのような意図が言語化されているかはわかりません。それしか仕事の仕方を知らなかったのかもしれない。実際、彼が修行してきた場所はそういう環境だったのでしょう。   しかし、これは看過できません。Aは退職した従業員の穴を自ら働き、また自らに付き従う従業員に働かせて埋め合わせてはいましたが、完全に違法操業です。あなたは次々と辞めていく従業員から発生する問題を何とかお金と説得で解決し、求人を打ち、それでもまた辞めるという地獄に疲れ果てました。   しかし、この会社の責任者はあなたです。あなたは去っていく従業員から受ける批判と罵倒に何一つ反論出来ません、裁判を起こされたら矢面に立つのはあなたですし、労基署に怒られるのもあなたです。このままの状態では店舗数を増やすことも出来ません。成長が止まってしまいます。出資者からは新規店舗はどうした、利益は上がっているんだろう、という矢の催促が突き刺さります。悪いのは全てあなたです。経営のコントロールを失った社長に弁解出来ることがたったひとつでもあるでしょうか?   Aとあなたは何度も何度も交渉を重ねました。我々は会社組織だ、法を守らねばならない。従業員は必ずしもあなたの満足のいく能力を持っているとは限らない、それでも育てなければ利益は出ないし事業拡大も出来ないのだ、と。実際、採用して僅か2ヶ月の研修を経た人材が十分に店舗を繁盛させているではないか、と。しかし、Aは納得する素振りを見せても行動には移しません。売り上げは落ちていませんが、利益率はじわりじわりと下がり続けていました。当たり前です、従業員が定着しなければ人件費と求人費用は果てしなく嵩むのです。従業員の配置転換やローテーションなども試してみました。しかし、結果は同じでした。   また、経営方針の食い違いも大きくなってきました。あなたは言います、業務を効率化しよう、そろそろセントラルキッチンを検討してもいいのではないか、あるいは具材の調理を外注しても良いのではないか。いくつかの会社には話をもう振ってある、味見をしてみてくれ、私の味覚では十分な品質であると感じられる。しかし、Aは拒否します。全て手作り、店内自製、そうでなければうまいラーメンなど作れないというのがAの信念です。実際、この言葉には説得力があります。このラーメンチェーンを推進させてきた原動力がまさにそれなのですから。   そして、あなたはついに決断しました。Aを現場に戻す、もちろんしっかりと支払っている役員報酬はそのままで、あるいは現場に戻ることさえしなくてもいい。商品開発と店舗を見て回って味見と監視するだけの立場でもかまわない、あなたはラーメン作りの天才ではあるけれどマネジメントの能力は無い。それを受け容れろ、経営判断としてあなたにマネジメント業務を続けさせることは出来ない。言うまでもなく、AとAに付き従う人間たちは納得しませんでした。このようにして、戦争が始まったのです。   あなたの管理する2店舗の掌握は問題ありません、しかしAの管理する3店舗の軸となる従業員は、既にA派としてあなたに反旗を翻していました。Aを解雇するのであれば、我々も退職する。彼らはそのようにあなたに宣言しました。せめて2店舗にしておけば・・・今更、後悔しても遅いのです。また、Aをメディア向けの顔としていたのも不味かった。あなたは社長業として黒子に徹していたのです。業界知名度は圧倒的にAが勝っている、Aは最早業界の風雲児として揺るがぬ評価を獲得している。Aが大量の人員を連れて離反するのは大いに可能なことですし、それは会社の信用を途方も無く貶めることでもありました。   さぁ、あなたならどうします? 会社経営の手綱を放さないために、みんなで幸せになるために このお話は僕の経験を大きく膨らませたフィクションですが、往々にしてある話です。こういった戦争を経ていない会社の方がむしろ少数ではないかと思うくらい、あちらこちらで起きていると聞きます。このお話はコンプラインスや労働法規の話と、創業期の英雄の反乱がまとめて描かれているので複数の論点が混ざっているのですが、これがまた実によく発生するワンセットなのです。残業を減らし、コンプライアンスを徹底させ、業務を最適化する際の最大の障壁は大抵の場合、現場の人間そのものです。   要素を単純化するために、Aの持ち株や出資者の影響などには部分的にしか触れませんでしたが、現実的には勘案すべき要素はまだまだ増えます。ごちゃごちゃに縺れた(もつれた)人間の紐は、実際にはもっともっと複雑になっていきます。しかし、つまるところ話はシンプルでもあります。社長であるあなたを越えかねない影響力を持つ人間が社内に出現してしまった、その結果、指揮系統が乱れ、挙句の果てに反乱まで発生してしまった。そういうことになります。   このようにして創業期の英雄と社長の対立は始まります。人間同士の利害と信念を賭けた対立が話し合いで解決することというのは、本当に稀です。そして、この問題を起こさないための土台作りや設定は、創業初期にしか出来ないことなのです。そして、異能を持つ人間を雇い、己の持たざる能力を補完するという「人を雇う」ことの最大の利点は、そのまま欠点でもあるのです。その欠点は往々にして創業期の終わりに顕現してきます。   「狡兎死して走狗烹らる」という諺(ことわざ)があります。ご存知とは思いますが、敵国を滅ぼしたら、どれほど功績のある忠臣も不要になって殺される、という意味合いの故事成語です。しかし、僕には犬を煮る側の気持ちが痛いほどわかります。もちろん、創業の英雄を煮殺すのは褒められた話ではありません。創業メンバーがいつまでも円満に、お互いの能力を認め合いながらやっていければそれは間違いなく最高です。しかし、そうはならないこともある、むしろそうならないことの方が多いということを創業者は覚えておく必要があると僕は思います。僕も覚えておくべきでした、心から後悔しています。   この話はちょっと見ただけで幾つもの失敗が見て取れると思います。あそこをああしていれば、こうしていれば、皆さんもすぐに思いつくでしょう。しかし、断言してもいい。創業と拡大の熱狂の中でそれを考え、備えられる人はそれほど多くはありません。まずは、いつまでもメンバーがお互いを認め合っていける仕組みづくりを、そしてそれが上手く運ばなかった時のこと、あなたの最もやりたくないプランについても十分に考えておくことを薦めます。起業する人間なんてのは往々にして夢見がちな理想の高い人間です、功績ある創業メンバーに自ら引導を、それも計画的に渡すなんてことは考えたくもないと思います。   しかし、それでも僕は考えておいた方がいいと思います。もちろん、僕が底抜けの無能であった可能性も大いにあります。むしろ、結果を見ればその通りでしょう。あなたはそんなこと考えなくても上手くいくのかもしれない、いや、むしろそんなこと考えない方が上手くいく可能性だってもちろんあります。しかし、この敗残者の無様なお話をちょっとだけ、頭の隅に残しておいていただければ僕も多少は救われます。人生は残念なことにまだまだ続くので、僕もまたやっていきます。   長い長い文章の読了ありがとうございました。     ...

  経営者の夢 経営者の夢というのはいつの時代、どんな場所でも大体明確です。「給料のいらない従業員」「無料の労働力」これに尽きます。「絶対に儲ける方法」について考えていくと、「まぁ人件費ゼロなら間違いなく儲かるよね」という結論が必ず出てくるわけです。   仕事というのは、お金を介した労働力、ないし労働成果の奪い合いゲームという色が大変強くあります。安い対価で高品質な労働力、あるいは労働成果を手に入れることが出来ればその時点で大体勝ちなのです。しかし、もちろん経営者の「タダの労働力が欲しい」という強い気持ちを実現させるわけにはいきません。そういうわけで労働者は保護されています。経営者があんまり気持ちを前に出しすぎると、「違法ですよね、それ」という話になるわけです。   社会に怒られます。社会が怒ると怖いので経営者は「この辺までは大丈夫な気がする」と思いながら進み、たまにガッツリ怒られます。あ、流石にあそこまでやると怒られるのか、みたいな知見が発生します。   しかし、一回起業してしまうと個人事業主であれ法人であれ、「この対価でこの働かせかたはダメ」みたいな保護を受けることは一切出来ません。「その仕事を受けたおまえが悪い」という世界観になり、誰一人同情してくれないのです。赤字の仕事を受けざるを得なかったことくらい誰だってありますよね。法に守られた労働者の世界観と違い、フリーランスや経営者の世界はより露骨な奪い合いです。当然ながら、「奪うテクニック」もどんどん洗練されていく。市場参加者同士の奪い合いが飽和したら、当然「新規参入者から毟ろう(むしろう)」という世界観になっていきます。「起業しよう」あるいは「独立しよう」と思い立ったこと自体が既に落とし穴、ということもあるわけです。今日はそんな話をしようと思います。   今日はわりと込み入った話になってるので「まとめ」はありません。結論だけ理解しているとその結論からズレたものが来た時、対応できないので、そんなのむしろ読まない方がいいと思います。 起業とは・・・誰もあなたを止めてくれない 別に皆さんを不必要にビビらせたいわけではないんですけど、起業というのは割と危ないです。というのもですね、「起業」とか「独立」みたいなキラッキラした単語をエサに人間を沼地に引きずりこんで骨までしゃぶる皆さんというのは結構存在しています。具体的な名前を出すと訴状が飛んで来て後頭部に刺さりそうなので具体的な話は避けますが、ネットワークビジネス系の皆さんも最近は「起業」とかそういう単語を使うみたいですね。ブログ飯界隈もわりとそういう匂いがしますが、僕の鼻が間違っているのかもしれません。わからん、なんもわからん。   雇用関係も持たない個人に商品を卸してノルマを課して売らせるという経営者の夢みたいな状態を作り出す皆さんは大変賢いと思います。契約社員ですらない、「非契約社員」みたいな状態で人間を使いますからね、彼らは・・・。   で、まぁこの話題は危険が危ないのでこの辺にしますが、例えば、「俺は起業するぞ」と心に決めて知人の経営者にアドバイスを乞いに行くとするじゃないですか。「やめとけ」と言ってくれる人って実際少ないんですよね。大体の人が「リスクはあるけどやりたいならやったらいい、応援するよ」って言ってくれると思います。逆に、顔を真っ赤にしてやめろと言ってくれる人がいたらその人は心からあなたを心配する良い人です。あなたにマトモなこと言ってくれる可能性が高いのはその人ですね、大事にしましょう。   というのもですね、まぁ起業なんて95%以上が失敗に終わるんですけど、それでも起業しようとする人間に「やめろ、失敗するぞ」って言ったら嫌われるんですよ。わざわざ嫌われたい人間もいないじゃないですか。そして、その人がなんかの間違いで成功しちゃった場合「俺の成功を信じなかったバカな経営者」としてあれしてしまうという可能性もある。   それに引き換え、とりあえず起業さえしてくれれば何らかの方法で利益を抜ける可能性も出てくるわけじゃないですか。正直なところ、起業相談された場合の答えなんか「やったらいい、出来るなら協力はするよ」しか無いんですね。それが一番損をしない選択肢なんです。正直なところ、起業家なんて日常的にガンガン破滅してるわけですし、特に思い入れもない新規創業の若者が一人や二人吹っ飛んだところで、どうということはありませんからね。ペットのヤマトヌマエビが死ぬ方が悲しいですね。それくらいで悲しんでいたらやっていけない。   あなたが「会社を辞めて起業する」と言い出した場合、周囲の人間はとりあえず反対すると思います。でも、それも一定ラインまででしょう。だって、起業のことがわかる人間なんて普通のサラリーマンとして暮らしていれば周囲にはそんなにいません。説得力のある反対をすることも経験がなければ難しいです。そして、起業のことがわかっている人間ほど良い笑顔で「やったら?」って言うと思います。僕だって破滅的な創業計画を見せられても仏像のような笑顔を浮かべて、「頑張れ」って言いますもん。どうせ止めても止まらねぇし。下手なこと言ったら怒り出すし。知らねーよ。そして、この哀れな若手起業家の姿は数年前の僕そのものでもあります。   「非契約社員」の作り方、マーケットのなまはげ 例えばこんなことを考えてみましょう。あなたはなんらかの事業をやっていて、最近人手が足りないなー、需要に供給が追いつかないなー、機会を損失しているなーと思っています。まぁ、これもまた具体的な話をすると色々危ないので、商品Aの製造販売をしているということにしましょう。商品Aの生産量を増やすには、設備投資をして従業員を増やすしか基本的にはありませんよね。   でもあなたは思います「自分で設備投資するのはリスクもあるし従業員を増やすのも怖いな」と。「なんとかリスクを限定的にした上であわよくばコストも抑え込めないかな」と。そこにフワっと現れたのが「起業したい!」という若者B君です。B君はあなたと同業の会社で従業員として働いているので仕事の知識も経験も持っています。ただし会社経営や起業の知識はほとんどありません。だからあなたに教えを請いに来たわけですね。   あなたは思います、「あれ、こいつに創業させれば早くね?」と。「資金つけてやって創業融資の引き方もコーチしてやって、人雇わせてガンガン仕事振ればいいよね、経営権も握れるし、ずっと利用出来るな、しかも創業資金以上に損が膨らむこともないし、従業員への責任もB君持ちになる」   これが王道的なデス起業パターンです。もちろん、子会社として下請けから創業するのが必ずしも悪いと言ってるわけじゃないですよ。こういうところから始まって羽ばたいていった会社だっていっぱいあります。ただ、こういう形で起業する以上、初期設定やその後の立ち回りを間違ったら「食われる」ということはわかりますよね。   実際、こういう形を目指して「起業したい若者はいねがぁ」と言いながら市場を歩いているなまはげは結構います。起業するのにはこういう妖怪と出会うのが一番早いと思います。迅速確実に創業出来ますね。その後のことはわかりませんけど。   また、「ド素人でもそこそこの能力があれば起業させて下請けとして稼動させられるようにする」ノウハウを持っている人というのも存在しまして、ここまで行くと冒頭で触れた「非契約社員」という単語が再びフラッシュバックしてきますね。「個人事業主として仕事を受けさせて便利に使う」というのは某大手飲食チェーンなどでも採用されていたソリューションですが、こちらの場合、創業する人間にオウンリスクで借金をさせることも可能になるので大変戦略の幅が広がります。借金の保証人に親兄弟をつけさせればパーフェクトですね。逃げられないから。「仕事を受注出来ることが確定している、発注する側からの目論見が提示される」という強みがあればお金も引っ張りやすいですし、資金計画も書けますからね。   昔出会った人間がこのようなことを言っていたのを僕は鮮烈に覚えています。以前のエントリでもちょっと触れた話ですが「高い能力を持った人間を一年社員として拘束しようと思ったら、俺みたいな零細企業経営者なら安くて600万はかかるわけよ。でも、『1000万円出してやるから起業しろ、仕事も回してやる」って言えばいい大学出て良い会社に勤めてた若者が向こうから来るんだよ、そりゃ良い話だよな、どんどん起業させてやる』とのことでした。   起業のチャンスが到来している皆さん、大丈夫ですか?皆さんの出資者はどういう目論見であなたに金を出そうとしていますか?本当にそれは「起業」ですか、あなたを「非契約社員」にする目論見ではないですか?   「創業資金をつけてやる」「仕事も回してやる」「何なら創業期のサポート人材も貸してやるぞ」「取引先も紹介してやる、俺の口利きなら良い条件で取引出来るぞ」「心配するな、全部段取りはやってやるから」そういう話の前で悩んでいる皆さん、多分このエントリ読んでる人の中にもいると思うんですけど、よーーーーーーーく考えた方がいいですね。   ただ、必ずしも「やめろ」って言ってるわけじゃないんですよ。資金がついてきて仕事が回ってくるというのは、やはりチャンスでもありますし、後はどのように人間と渡り合うかというだけの話になります。   あなたは元気な身体とやる気だけ持ってきてくれればOK!この起業パッケージプランに全部お任せ、みたいな話はわりとあります。そういう話に飛び乗る時は色々考えた方がいいですね。繰り返しますが「乗るな」って言ってるんじゃないですよ。罠の中に餌が吊るされているなら罠を作動させずにエサだけ引っこ抜くことを考えるのは当たり前です。   また、出資する側と起業する側に双方利があるという形態は皆が幸せになる理想形とも言えます。このバランスが著しく崩れていて、しかも止めることが出来ない状態にさえならなければいいわけですよ。それだけのことです。 捕食者としての起業家 ここまで、「起業家がやっていこうとした結果食われる」というお話をしてきましたが、このような捕食妖怪を逆に食ってしまう起業家というのも存在します。まぁ当たり前です、「嵌める方法」が洗練されていけばカウンターの手法も当然出てくる。これを読んでいる皆さんも、「そういう前提ならあれをあれすればああなるな」という考えが幾つか浮かんでいるんじゃないでしょうか。その発想はとても大事です。   「罠がある」という前提さえ踏まえていれば、人間は賢いのでそれなりに対策を思いつくことが出来ます。ところがね、「資金!誰か資金つけてくれ!」って走り回ってるときというのは、わりと人間は弱いんです。人間を嵌める技というのは、「そんなの見抜けねえよ」みたいな高度な技という場合はそんなに多くなく(たまにはそういうのもありますけど)判断力の低下した状態の人間を、冷静な判断力さえ有していれば見え見えの落とし穴に誘導するというのが基本です。多重債務者になると「お金借りない?面白い金利で」みたいな連絡がいっぱい来ますよね。そういうことです。   創業して儲けるということは、法に守られない奪い合いゲームの中で勝ちあがっていくということです。「奪う権利」が与えられる代わりに、労働法規などの「奪われない権利」が失われるわけですね。その中で初めての創業に挑む人というのは、圧倒的に一番弱い存在です。経験がない以上、頼れるものは想像力しかありません。   「やれば出来る」ことは必ず誰かがやるのが市場という世界です。存在を想定出来る悪魔は必ず存在します。というか、ごく普通の経営者であっても「あ、これ儲かるな」と思った瞬間に悪魔に化けます。とはいうものの、それはあくまでルールの中で許容された立ち回りであって、「悪」ではないんですよ。強いて何が悪いかといえば、そんな状況を作り上げてしまった方が悪いんです。自戒も多分に含めてですが。   起業というのは、往々にして「先行事例」みたいなものがあまり見つかりません。「出資者からいい条件で金を引いてなるべく株を渡さない方法」とか書いた本はありませんし、「子会社として創業して親会社から利益と経営イニシアチブをぶっこ抜く方法」について書かれた本も(多分)ないと思います。各自やっていくしかないわけですよ。「株の10%で1500万引けたぜ」という人もいれば、「60%渡さないと1銭も出てこない・・・」というパターンもあります。   一回やっていって派手に失敗すればこの辺はわりと身につくわけですが、皆さんもちろん「起業に失敗してドブの底に叩き落される」なんて経験はしたくありませんよね。ドブの底に落ちるタイプはまだよくて、「なんで俺はこんなことしちまったんだろう・・・」って思いながら働いてる人もいっぱいいると思います。「仕事?いつでも辞めていいよ。次の代取が会社コカしたらおまえの実家売られるけど」みたいな悪夢のピタゴラスイッチが発生することもたまにはあるんですよ。   そういうわけで、今日はそんなお話でした。僕はいつも皆さんの成功を心から祈ってます。やっていきましょう。     ...

  ニューアキンドセンター様で書かせていただくのも今回で3回目になりますが、1回目2回目と失敗談ばかりだったので、今回はちょっと失敗談ではないものを書かせていただきます。本日は「出資者」の話です。僕の起業で成功と呼べるのはここだけじゃないかと思うところもあり、本当に出資者には恵まれました。お陰でまだ生きています。   この辺の話は今まで以上に個別性が高く、100人の起業家がいれば100通りの創業資金調達方法があるとは思うのですが、とりあえず僕の経験からの話になります。僕の創業は何の実績もない人間が資産家を口説いて金を引っ張ったというだけの話ですが、周囲の創業事例を見るとわりとよくあるパターンのようです。何かのご参考になれば幸いです。 出資で起業するか自己資金で起業するか そもそもの話ですが、ベストは100%自己資金による起業です。出資者なしでやれるならそれがベストなんです。全て自己の裁量でやれますので、完全に自由な経営が可能になります。もちろん(誰にも株を渡さなかったとすれば)創業者利益も総取りになりますね。融資なども受けずに済むなら正にパーフェクトと言えるでしょう、返済も利払いもキツいしこれが一番いいですね。まぁ、世の中そんな都合の良い話はないんですけど。そんな金持ってて起業する意味があるかと言われたら微妙ですし・・・。   現実を言えば若手起業家が数百万~数千万の資金を完全な自己資金で用意するのはかなり難しいです。かなりの一流企業にお勤めのところからスタートでも、20代で真水の1000万を用意するのはそれなりにキツいですね。また創業融資などもある程度タネ銭がないと借りにくいです。出資金は返済義務のない資金ですので、そういう意味ではリスクが低いとも言えます。現実的なところを言うと、出資金と会社名義での借り入れを組み合わせて創業資金を作り出すのが一般的な段取りになるのではないでしょうか。出資100%なら返済義務がないので理想ですが、色々考えるとなかなかそうもいかないのが世の中の厳しいところで。   出資者の立場になって考えてみてください。それこそ「代表取締役が会社をブン投げて物理的に逃げた」という事態だってあり得るわけですよ。というかよくあるわけですよ。本当に社長というのはよく失踪する生物です。「おまえもリスクを負え、最後まで逃げない保証をつけろ」とは言いたくなるじゃないですか。(それでもわりと逃げるんですけど)創業融資は代表取締役が連帯保証人になるとちょっと金利が安くなったりしますので、この辺を負わされることが多いでしょうね。もっとシンプルに出資と融資を組み合わせてくる場合も多いと思います。   出資者と創業者の株式の配分に関しては、双方が納得するまで徹底的に話し合っておくべきです。少なくとも、「株式は100%出資者のもの」と主張する出資者の下で起業をするべきではありません。株式を一切持っていない創業者ですが、単なる定額働き放題プランですね。おまけに会社の借金の連帯保証人なんかになっていた場合逃げることすら出来ません。労働法規にも守られないのでほとんど奴隷です。まさかそんな条件で起業する人間がいるわけがないと思うじゃないですか。結論だけ言うとたまにいます。ここまで派手なアレじゃなくても序盤でこの辺が甘かったがために残酷なことになる事例はわりとありますね。   ある程度の自己資金を入れたり、会社の借り入れの連帯保証をしたり、あるいはプレイヤーとしての自分の必要性などを担保にして、納得できる割合の株式を創業者として獲得しておくことは最低限必要になります。この創業者として得られた株式ですが、将来的な創業者利益の担保であるとともに、自社内における今後の対人交渉、役員や従業員などに対してのとても強いカードでもあります。というか、代表取締役が切ることの出来るカードって本質的に金とこれしかないんですよ。   出資者はよく選ぶことを薦めます。極端な例ですが、出資を受けて創業してしばらくしたら、出資者が反社の人だったことがわかった、なんて事例ももちろんあります。きちんとビジネスプランに共感と理解があり、将来の夢と展望を共有できる、社会的に問題のない出資者を選びましょう。出資者の金の出所が不明なんてのは論外です。「気づいたら反社のフロント企業経営者だった」って話はですね、なくもないんですよ。経営が傾いたら彼らが寄ってくるのは有名な話ですが、創業からそもそも終わっていたパターンもあります。そして、しっかりと話し合った上で適切な配分で株式を受け取りましょう。何をもって適切とするかの根拠については、自分自身で考えるしかありませんけれど。   メイン出資者を選ぶチャンスは創業初期にしかありません。「出資者を選ぶのは自分だ」というつもりで出資者探しをするのがいいと思います。悪魔のような出資者ももちろん存在します。「良い大学出て良い会社に入った若者を俺のような人間がマトモに雇おうと思ったら安くて年600万はかかるが、起業という形で・・・」みたいなことをやっている人間は普通にいっぱいいます。(この話はそのうち細かくしたいと思います)   まとめ   ・出資者は選びましょう、間違っても反社から資金を得てはいけません   ・創業時の持ち株の比率は納得いくまで話し合ってください。議決権などの概念はよく勉強しましょう。初期メンバーや出資者の人数、事業の性質などによって最適解は変化します。   ・自己裁量で他者に譲渡可能な自分持ちの株式は、経営権や創業者利益の担保であるとともに今後極めて重要な交渉カードになります。迂闊に切らないようにしてください。   ・出資者に「食われる」ケースもそれなりにあることは頭の片隅に入れておいてください。 出資者の探し方 「お金を持っており、かつ事業に投資したい人」を探して、自分の事業計画をプレゼンするだけの簡単な作業です。僕は大学在学時代から果てしなく出資者を探し続けていたので、起業を具体的に考え始めた時には出資者の目処は大体ついていました。それで、「なんで僕に投資したんですか?」と出資者に尋ねようと思ったんですが、現在のザマでそれを尋ねるとかなり重苦しいことになってしまう気がしましたので、なんとなく予想してみることにします。そのうち風向きが良くなってきたら答え合わせをしましょう。   儲かりそう、と思わせる事業計画 これは基本かと思います。あくまで「儲かりそう」であって「儲かる」ではないのがポイントです。「絶対に儲かる事業計画」が仮に存在したとしても、出資者が「儲かりそうだな」と思ってくれなければ無意味なんですよね。僕は作図やパワポなんかはまるでダメですが、文章と喋りにはそこそこ自信がありましたので、これはそんなに苦労しませんでした。たぶん、これは狙う事業や個人のキャラクター性によってもやり方の正解が違うと思うので、とりあえず色んな人間に事業計画を話しまくって反応を見てみるといいと思います。(ただし、事業計画を丸パクって自分でやりそうな人間は避けましょう)それと、事業計画書は書きまくりましょう。就職活動のエントリーシートと一緒で、書けば書くほど、語れば語るほど洗練されていきますので。(実際の事業の成否とはたぶん無関係の技能ですが)   出資者のやりたいことと一致した事業計画 さりげなく非常に重要な気がします。これは地主系の皆さんであるとか、あるいは投資業で財を成した皆様にありがちなことですが、「実業をやりたいな」と考えている資産家の方はかなりの数います。でも、もちろん自分でやるのは面倒だしリスクも高い。しかし、出資する形で誰かにやらせて自分はオーナーになれば、出資した額面以上に損失が膨らむことはなく、事業に付随する各種リスクが降りかかることもない。ならやってみるか、そういう需要はこれだけ不景気の日本でもわりとあります。特に、飲食なんかは「やってみたいけど、自分でやるのは食中毒とか怖いし絶対嫌」という需要がわかりやすくありますね。「フレンチで修行したけど創業はオーナーの意向でハンバーガー屋」みたいな話もわりとある。そういうわけで、これは「事業の成功」という観点からは正しいとは言いにくいですが、「出資者に合わせて事業計画書を書く」もナシではないです。少なくともある程度合わせる柔軟性はあった方がいいですね。   出資者が「あいつに金を託した」と胸を張れる何かを持つ ぶっちゃけたところですが、資産家である出資者から見て子飼いの起業家はちょっと値の張るペットみたいなものです。ワンワーン。 僕は、起業における主役は(出資を得ての起業の場合)起業家ではなく出資者・投資家だと思っているんですが、主役の皆様が気持ちよく「俺の下で会社やってる奴なんだよ」と紹介出来るだけの何かを持っておくと、必ず役に立つと思います。そういう意味で、「経歴なんか起業するなら役に立たない」という話はあんまり説得力がないと感じています。また、経歴というのは必ずしもキラキラしたエリート路線ばかりとは限らず、「地べた這い回って来たぜ」みたいな現場アピールするラッパーみたいな経歴もそれはそれで強みになります。持ち味を生かしましょう、人生はいつだってそうするしかない。   直接的に出資者の役に立つ能力 出資者は事業に金を出すわけですが、出資者と起業家の関係は実際もうちょっと密接だったりしますので、直接的に出資者様のお役に立てる特殊技能があったりするとかなり出資を得やすくなります。ほら、なんだかんだ人間の懐に滑り込むのには「具体的に役に立つ」って一番早いじゃないですか。僕のメイン出資者は地主様ですが「あなたの周囲で発生するめんどくさい仕事やスジの悪いあれは全部やります、やらせてください」「やります」「やります」などのプッシュが効果を発揮しました。人間、気合いを入れればわりと色んなことが出来ますので気合いだと思います。とりあえず「出来る」「やらせろ」と言ってみる姿勢です。多少色んな人にタダ働きさせられがちになるのは経費と思って諦めましょう。   人間的共感 出資者との間にある種の共通する価値観や共鳴する理念があることがとても大事だとは思います。結局カネを出す出さないの最後の一線ってそこになってくることが多いと思うんですよ。まぁ、出資を得るためにはある意味自分を偽ってでもこれを出資者との間で作り出さなければならないこともあるでしょう。でも、理想を言えば自然な形で出資者との間に人間的共感が発生しているのが一番良いですよね。僕がこうして大失敗しても未だに僕の出資者は僕に良くしてくれています。これは、やっぱり人間的に共感出来る部分があるということが大きく、そういうところが確保出来ていると理想だと思います。それだけに何とか恩は返したいですね・・・。頑張ります。次は上手くやります。   まぁ、こんなところかなぁと思います。とにかく色んなところを駈けずり回って、お金を出してくれそうな人に会ったらゴリゴリプレゼンをする。いつ、いかなるタイミングでも、口から事業計画が(それも可能であれば出資者ごとの特性に合わせてある程度カスタマイズされたものが)溢れ出るくらいまで高めて人生を送ることが重要なのではないでしょうか。僕のそう長くはない人生でも、これで複数の出資者候補は確保出来たので、多分やればできるのではないかと思います。こないだも「1億貸そうか?」という話がインターネットから転がって来ましたし。(どうなるかわかりませんが、今度一回お会いしますかという話になりました)   「事業に投資したい資産家がいる場所ってどこだよ」というお話ですが、流石にそれは自力で見つけてください。どっかにはいるんだから必死で探せばそのうち見つかるかもしれないですよ。流石に僕の金脈を他人に渡すことは出来かねます。僕だっていつかはもう一戦やるんですから。気合い入れて探しましょう。うまいこと見つかったら僕にも紹介してください。俺のものはやらないがおまえのものはくれ。   「起業して成功する」ことはともかく、「出資を得て起業する」というところまでは、「とにかく俺は起業をするし、儲けるし、あんたを儲けさせるし、事業プランももちろんある、俺の話を聞け」と叫び続けて人生を送ればどこかのタイミングで打席に立つチャンスが巡ってくるものなのではないかな、と思います。あとは、なるべくチャンスのありそうなところに移動していく嗅覚みたいなものも必要かもしれませんけれど。まぁ、それは各自与えられた条件の中で頑張るしかないところだと思います。こないだも「株式の10%で1500万出資受けたよ。未経験の業種で初創業だったけど」って人類と遭遇して「マジかよ」ってなったので意外とチャンスはあるんだと思います。やっていきましょう。   まとめ   ・事業計画書を書きまくる、いついかなる時でも事業計画を話せるくらいまで練る。   ・出資者の希望や性質に合わせて事業計画を書くのもあり。   ・出資者にとって金を出す理由になるだけの経歴や肩書きがあると良し。   ・直接的に出資者の役に立てる技能があると懐に潜り込みやすい。   ・人間的共感が発生していると理想的。   ・やっていきましょう。     ...

  労働者は強い。創業期人材のジレンマ。 従業員は会社に利益をもたらしてくれるとても重要な存在です。人間一人にこなせる業務の量が有限である以上、業務を拡大しようと思ったら従業員を雇うというのは有力な選択肢になってきます。会社経営というのは、つまるところ従業員に給料を払って、支払った額以上の利益を出すことですからね。従業員は利益の源泉そのものです。   その一方で、従業員のことを「労働力を販売しに来る取引先」として考えると、あまり良質な取引先とは言えません。極論をすればですが、「その日に欠勤されたら会社に大損害が出る」という日であっても、体調が悪いと従業員が主張すれば出社させることは不可能です。また、一応、法的には一定期間を経た後でないと退職できないというルールは無くもないですが、本人が「就労不可能である」と宣言すれば、会社に引きずり出すなんてことは一切出来ません。そして実体験ベースで言いますが、わりとバックレます。(これに関しては別に訴訟起こしてもいいんですけど、割に合わない)   創業期も半ばに差し掛かり、従業員が増え始めるとこれまで創業メンバーだけで回していた頃とは全く別種のトラブルが頻発するようになると思います。また、「人を使う」ということの難度の高さに直面せざるを得なくなります。実際ここで、「人的規模の拡大は志向しない」という方向に舵を切る経営者も少なくないです。まぁ、僕の事業はどうしても拡大するとなれば従業員を増やすしかない業種でしたので、前回のエントリに引き続いて、こちらも失敗の話になります。   労働者の権利は強いです。そして、恐ろしいことに労働者は支払いを待ってくれません。大抵の取引先は電話して事情を話してお願いすれば支払いを多少待ってくれたり(まぁ、今後は都度、現金払いでお願いしますみたいなことになることもあるけど)するものですが、従業員にはそういうことは一切通じません。遅配なんか出した日には、従業員との信頼関係は完全に終わりだと思っていいでしょう。あの状況まで追い込まれた時の従業員は最悪の債権者です。金融機関の取立てよりずっと恐ろしいですよ。また、給料を止めたまま従業員に仕事をさせるというのはね・・・。本当に何が起きるかわからない世界に突入します。   なにより恐ろしいのは、従業員に対しては「一定期間に一定量の労務を提供する、労務の提供が契約通り成されなければ違約金を支払う」というような、通常の商取引では当たり前の観念が一切通じないことです。労働者は(まぁ厳密に言えば1ヶ月程度のあれはあるけど)いつでも会社を辞められるのです。社員数人規模で事業を回している時にこれがどれほど恐ろしいことかは少し考えてみればわかると思います。   しかし、創業直後の会社に「辞めてもいい人間」なんてものを置いておく余裕があるかといえば、あるわけがありません。経営効率の面だけで言えば、全ての従業員が代わりの利かない存在であることが理想です。しかし、言うまでもなくそれは「どこが崩れても総崩れ」という状態に他なりません。更に、「自分が抜けるとこの会社は大変なことになるだろうな」ということに気づいた従業員は際限のない要求を始めます。   そういうことをしない人間を雇えばいいという話かもしれませんが、これはとても残念なことだと思うんですけど、毎日が乱戦状態で業務マニュアルなど存在すらしない創業初期に、「会社の弱みにつけこんで金を抜こうとする」程度の知恵の働かない人間では、なかなか戦力になりえないのです。状況を読み、雇用主と報酬の交渉をする。これはプレイヤーとしての優秀さの表れそのものですし、労働者としては当たり前の権利です。これが出来ない人間が優秀なわけがない。これが創業期人材のジレンマという概念です。(今考えました) 起業家と労働者の利害は一致しない そもそも、株を持っていない従業員にとって「未来の成功」なんてのは絵に描いたモチでしかないんです。今月払われる給与、それが従業員にとって世界の全てです。特に、創業したばかりの会社に株も貰えない状態で入社するような人間にとっては。創業したての零細企業なんて、3年後には存在してない可能性の方が高いわけですからね。未来の展望なんて、客観的に見たらクソほどの価値もないわけですよ。このクソほどの価値もないものをいかにキラッキラさせるかが経営者の腕とさえ言える。   創業期の会社における経営者と労働者の利害は、根本的に一致しないのです。もちろん、「従業員としての待遇を維持したまま株をよこせ!」と主張する人間も出てくるでしょう。(まぁ、経営者だって「株はやらないけど役員にならない?」って言いますしね、これはお互い様です)   従業員を雇って会社を回すということは、能力の低い使えない従業員と、能力はあるが当然要求も苛烈な従業員との終わりなき戦いです。要求されるがままに金を払っていたら倒産しますし、与えられる株の数は当然有限です。(まぁ総量を増やすことも出来なくないけど、他の株のホルダーがブチギレると思う)   かといって、有能な従業員に逃げられても大変なことになります。そして従業員に重要なポジションを任せられなければ利益はなかなか出ないですし、経営者が全く休めないということになります。その一方で重要なポジションを掌握されたら相手に交渉力が発生してしまう。「従業員が徒党を組んで全く同じ業種の別会社を立ち上げた」みたいな話だってよくあることです。取引先もノウハウも顧客も全部ゴッソリ持って他社に移られた、なんて話は最早聞き飽きたレベルですね。僕もやられました。   これはもう、模範解答の無い終わりなき戦いです。例えば、従業員Aに「辞められたくなければ俺の給与を上げろ」と脅かされたとします。仕方なくあなたは従業員Aの給与を上げました。そりゃもう従業員B、C、Dが出てきますよね。出資者(株主)も怒るかもしれませんね。他の役員たちも口々に不満を言うでしょう。そりゃね。人間、他人の給料には本当に敏感ですからね。まぁ、Aに口止めをするなどの措置はなくもないですけど、小さな規模の会社でバレずにそれをやれるかというとね…。   また、従業員は大抵の場合「自分の業務」を「自分だけがこの業務に精通している」という状態に持って行きたがります。業務ブラックボックス一丁あがりです。(これは労働者の振る舞いとしては大変正しい戦略なので、労働者の皆さんは積極的にやりましょう。僕もそうしています)「あなたの仕事を全部この人に伝授してください」という指示を出して、素直に仕事を教える従業員ですが、体感的には「存在しないんじゃね?」と思うレベルです。このようにして「新人潰し」や「課長も逆らえない現場のババア」などの概念が発生します。まぁ、でも、これもやっぱり労働者の処世術としては正しいというしかないですよね。 従業員が憎い 正直なところ、会社の規模を一定以上に拡大した後、信じられないほど従業員に対して冷酷になる経営者ですが、「気持ちはわかる」としか言いようがありません。僕だって従業員が怖くて出社拒否したい日が何度もありました。従業員を「仲間」とか「味方」とかそういう認識をするのは、余程運と人徳に恵まれた経営者以外は不可能だと思います。「タチの悪い取引先」くらいが穏当な表現で、「敵」と表現する経営者にも会ったことがあります。   彼は「自社の従業員の大半が大嫌いだし、もう少し会社のスケールを上げて収益を仕組み化したら古参の人間は全て排除する」とベロベロに酔っ払って語っていました。彼が転ばずに走りぬけたら、立派なブラック企業経営者になるんだと思います。そんな彼の会社の求人広告には「アットホームな職場」と書かれていました。確かにそういう家庭もありますね…。   何故か、わりと多くの人が「経営者は労働者より強い」と思っています。でも、創業期の会社に関してはこれは完全に嘘です。余裕で労働者の方が強いです。だって、経営者の切れるカードってせいぜい「減給」と「解雇」くらいしかないんですよ。創業したての零細企業をクビになるのが怖い人間なんてそんなにいないですよ。(たまにはいますが、そういう人間が優秀な人材である可能性は低いでしょう)   例えば、従業員10人のそこそこ儲かってる零細企業があるとしますが、ある日突然5人が辞表を出したら大惨事ですよ。普通に倒産まであります。実際、「従業員が全員辞めた」みたいな話は経営者界隈で結構聞きます。「従業員が逃げたけど、仕事止めたら違約金が・・・」って僕に電話かけてきた社長もいました。すいません社長、ちょっとブログとツイッターが忙しくてお力になれませんでした。まぁ、今の僕には動員できる人間もいないし事業もコケて顔も効かなくなったのでどの道お力にはなれなかったと思いますけど。   僕も現在は給料を頂戴する身の上ですが、改めて労働者は最高です。何せ、会社にどれだけ損害与えてもよっぽどコンプラ的なアレでなければ訴えられることもないし、最大のリスクが「クビになる」ですよ。こんなのノープレッシャーもいいところじゃないですか。ここ数年、毎月給料日は本当に憂鬱だったのですが、貰う側になると本当に楽しいものですね。最高です。そりゃ「労働者が憎い、従業員が憎い」って気持ちにもなるよなぁと改めて思いました。   そういうわけで、僕自身も創業期にある企業がどのように人材を確保しマネジメントすればいいのかについてはあまり明確な答えを持っていません。「創業者のカリスマ」とか「マインドコントロール」とか「やりがいを与え、夢を見せる」とか「零細企業でもクビになりたくないレベルの人材でなんとか利益を上げる方法を考える」とかそういう方向性なのかなぁと思います。   よく、自社の未来の展望を熱く語って社員をウォー!させてるイケてる新興企業の社長がいますが、あれ本当にすごい能力で、株も分けてもらってない社員に会社の未来の展望なんてさして関係ないし、そんなんどうでもいいから今月の給料上げろって話じゃないですか。普通に考えて。ハチャメチャに上手くいったところで、どうせ一番先に利益取るのは株主で次は経営者、従業員なんて最後におこぼれを貰う程度でしょう。そりゃ経営に食い込むレベルまで登りつめてた人は美味しいかもしれないけど。   事業拡大が上手くいったところで末端従業員の平均給料なんかそんなに上がらないです。事業拡大とともに利益率がアホほど上昇するならともかく、総売り上げから人件費に配分出来る割合なんて事業規模が拡大してもそんな変化しないんですから。事業規模がデカくなったらその分人件費も増えるわけで。しかも拡大期の採用なんてムチャクチャなんだからロスもでかくなる。まぁ、出世して給料を上げるチャンスは増えるかもしれないけど。   創業期の会社には、人間に夢を見せて非合理的な努力をさせるある種の能力が必要になるということなんですかね…。僕はどうしてもそういうのが得意ではないので、未だによくわかりません。でも、そういうことが出来る社長が勝ってますね、やっぱり。   で、起業を志す皆さんどんな感じでやっていこうと思いますか?従業員を雇って上手いことやるイメージはできましたか?「有能だけど安く働く忠誠心溢れる労働者が欲しい」って思いましたよね。でもね、それを100人単位で調達出来るならあっという間に億万長者なんですよ・・・。僕も次の事業のためにここは非常に考えているところなんですが、あまり倫理的でない手段しか思いつきません。コンプライアンスはとても大事です。社会に怒られます。やっていきましょう。    ...

  僕は起業に失敗しました。   はじめまして。借金玉と申します。   僕は26歳で起業しました。業種は飲食と輸入貿易です。 ざっくりいいますと、「イケてる商品を輸入して、その商品を軸にした飲食店を多店舗展開しながら卸売りもするぜ、原価も下がって儲かるぜ!」みたいな事業でした。集めた出資金は4000万円程度。そこに会社名義での借り入れを2000万ほど行いました。(もちろん会社の連帯保証人は僕です)最初はそこそこ上手くいきましたが、従業員が10人ほどまで膨らんだところで悪い意味でのビッグバンが起こり、結果として現在、僕は31歳の無一文です。辛うじて破産は回避できましたが、何一つ手には残りませんでした。そういうわけで、ニューアキンドセンター様で文章を書かせていただくことになりました。よろしくお願いいたします。   さて、起業の失敗というのはわりと個別性が高く、失敗の原因は会社や経営者、業種あるいは社会情勢などによりけりといえると思いますが、それでも大体「これで失敗する」という典型パターンはあります。典型パターンだけでも無数にあるんですが、これから起業を志す方に最初にお伝えしたいのは「人」の話です。それも、創業初期における人の話です。僕が最も失敗したところと言えると思います。会社の基本はやはり「人」です。人が働いて利益を生み出すという基本構造はどのような会社でもまず変わりません。   これは起業に失敗した人間の書いている文章ですので、「どうやったら起業に成功するか」という需要には応えられません。そんなの知ってたら自分でもう一回起業しています。しかし、どうやったら起業に失敗するかに関しては、あまり詳しくなりたくはなかったのですが詳しくなってしまいました。そんな文章です。起業を志す皆様の何かの役に立てば幸いです。 人間は裏切りますし、裏切りが発生するのは全て代表取締役の責任です これから起業をする皆さんになんとなくでもいいので覚えておいて欲しいなぁと思うことがあります。表題の通りなのですが、人間は必ず裏切るということです。ピンと来ない人もいるとは思いますが、少なくともそう考えておいて損はありません。もし起業をされたら、いずれ嫌というほどわかると思います。   どういう形で起業するかによって状況は多少変化するでしょうが、なんにせよこれから先あなたが起業をするならば、出資者(株主)、役員、従業員といった社内の人間と必ず渡り合っていくことになります。 もしあなたが代表取締役であるなら、これらの登場人物の利害が相反しないように調整することが最大の仕事になるでしょう。構成員全員の見ている物が違う組織が生き残っていくことはほとんど不可能です。それぞれの思惑があることは百も承知の上で、全員が一つの目標に向かって能力をフルに出していける環境を作れなければ、事業の成功などままなりません。   もし、その中で離反者や裏切り者が出たのであれば、それは代表取締役のあなたが悪いのです。裏切った方が得な環境を作ってしまった時点で、あなたにはなんの弁解の余地もありません。それは全てあなたの責任です。その覚悟を決めてください。これを受け入れ、「裏切りようのない」組織を形成する努力をしましょう。   それは、実は創業初期にしか出来ないことなのです。創業初期は大抵の場合、代表取締役も、役員も、出資者も(存在するとすれば)従業員も、熱に浮かされています。将来この中から致命的な裏切り者が出るなんて全く考えることはないでしょう。重要な職責を担う人間が突然離反した時のことなんて想像もしないでしょう。未来には希望しか見えないと思います。僕もそうでした。でも、とても残念なことなのですが、確実といっても過言ではない確率で裏切り者は出ます。自分の会社を見ても、他人の会社を見てもやはりそういうものなのだな、と思います。   創業初期にきちんと人間の利害関係を調整し、一つの目標に向かって進める組織を作ることが何より大切です。裏切られるのは裏切られた方が悪い、騙されるのは騙された方が悪い。そう腹を括って、具体的な対策を講じた上で創業出来るかどうかで、会社の生存率は大きく変化すると思います。       まとめ ・人間は裏切ります。   ・裏切られるのは代表取締役の責任です。   ・裏切られた方が悪いです。騙された方が悪いです。   ・創業初期にしっかりと、全てのプレイヤーが会社を裏切ることの出来ないシステムを作り上げましょう。 創業メンバーの選び方とザイルの結び方 僕は「気の合う仲間と楽しく起業」をどちらかといえば否定する立場です。もちろん、これから長く仕事を一緒にしていく仲間ですから、気があうに越したことはもちろんないんですが。それは気の合う仲間と不倶戴天の敵になるリスクを受け入れた上でのことだと思います。僕が今「必ず報復する」と心に誓っている人間も、かつてはとても気の合う仲間でした。そういうものに耐えられないと思うのであれば、一人で起業されることを薦めます。(まぁ、とはいってもその後、従業員を雇ったら似たような事態は普通に起こるんですけど)   しかし、もちろん複数人で起業をするメリットもあります。それぞれ違う能力を相互に補い合うことが出来るからです。実際、僕は営業や企画が強いですが事務作業がまるでダメですので、役員には事務作業が非常に得意な人間を入れました。   会社経営や事業運営に付随する非常に煩雑な事務作業を、大まかな指示だけで全て自分で調べて実行出来る人間を採用できたのは私にとって、とても幸運なことで、彼がいてくれたおかげで私は自分の得意ジャンルの仕事に専念することが可能でした。いつかまた彼と一緒に仕事をしたいと心から思っています。(彼はもう僕と仕事はしたくないだろうけれど…)これは余談ですが、創業期は「誰もその仕事をやったこともなければやり方も知らない」状態が日常です。自分で調べて実行して成功させる能力の無い人間は創業メンバーには向きません。   また、創業する業種によっては商材の専門知識を持った人間を迎え入れる必要に迫られる場合もあると思います。例えば「プログラムは書けないけどITで起業したい」ということもありえるでしょう。(オススメはしないけどありえないことでもないとは思う)その場合、プログラマーを雇わなければ話にならないですね。   経営の面白いところは、人間を雇えば自分では出来ないことがどんどん出来るようになることです。可能性が自分の限界を超えて大きく広がっていくのはとても楽しいですね。市場にはあらゆる能力や経験を持ったプレイヤーが存在しています。基本的には金さえ払えば大抵の能力や経験を手に入れることが出来るでしょう。もちろんそこに落とし穴があります。自分に出来ないことを他人に業務としてやらせるということは、当該プレイヤーに抜けられたらその仕事が誰にもこなせなくなるということです。このパターンで終わる事業はいっぱいあります。創業初期の業務内容なんて、ほとんど100%が属人的なものですから。   例えば3人で創業する場合ですがその3人は全員が「誰1人抜けても事業が成り立たない強力なスキルを持った3人」だと思います。そうじゃなきゃ、わざわざ組む意味がないですからね。それはつまり、1人抜けたら最悪の場合、会社が潰れるということです。これを防ぐ手立は必ず打っておく必要があります。(逆に、初期メンバーの中に必要不可欠と言える能力のない人間が混ざっていた場合ですが、確実に後から揉め事になります。「あいつはいらない」と誰かが言い出します。避けましょう)   創業メンバーの中で代表取締役1人が自社の株式を保有している場合などはわりと良い手があります。他のメンバーに自分の持っている株式の一部を譲渡する代わりに、特殊な条項のついた借用書を切らせるのです。要するに、n年問題なく働いて結果を出したらこの株式購入のための借金はチャラ、ただし途中で離反したり会社に対して背信行為を働いたりした場合は全額ただちに返済、みたいなやつです。詳しいことは弁護士に相談してください。ちょっとお金はかかりますが、かなり強力です。なるべく理不尽な額をつけておきましょう。(おまえがこの会社を裏切る気はないだろうから金額なんて単なる数字だろ?それくらいの覚悟みせろよ)   この書類にサインをさせておくだけで、少なくとも規定年月の間、裏切りや離反がやりにくくなりますし、背信行為を働いた場合の懲罰も可能になります。また、法的拘束力は微妙ですが、「話し合いの末持ち株を返却した上で退職という形になった場合は、同業他社への転職をn年禁じる」などの条項を入れておいても損はないでしょう。   創業メンバー全員が出資をした場合などについては、なるべくリスクを応分に分散させて逃げられなくする方法もあります。具体的に言えば、銀行融資などを引く際の連帯保証人に全員を連座させれば、そうそう逃げることは出来ません。(ただ、この場合、指揮系統が不明瞭になる欠点がありますが…)他にも様々なやり方が考えられると思います。起業の形態に合わせて頭を絞りましょう。   先ほどの、株式購入のための貸借契約を結ぶということは、とりもなおさず「例え創業メンバーの親が大病を患って介護が必要な状態になっても、創業メンバーには常に会社を優先させる」ということです。「親の介護で戦列を離れる」という人間が出た時は、「では契約通り満額を支払え、支払いがなければ裁判もきっちり起こす」と告げる腹が必要です。どれほど強力な契約も、それを履行する人間の意志なしには成り立たないからですからね。一回それをやったら「あなたとの契約は反故に出来る」と全ての人間が認識します。そうなったらお終いです。   逆に言えば、親や身内が死にかけたくらいで戦列を離れるような代表取締役は話にならないということでもあります。なにせ、登場人物全員の人生がかかっているのが会社ですから。その辺は強く認識しておく必要があります。親の死に目に会いたいならサラリーマンやるのがいいと思います。期待値だってそっちの方がずっと高い。もちろんね、仕事の合間に親御さんの面倒を見る余裕があればそうすればいいんですけど、残念ながら創業初期にその余裕があるかというとね…。   この手の提案をすると「それは嫌だ」と主張する人間ももちろんいると思います。「自分は能力と労働力を提供するのみでリスクはとりたくない」というタイプです。そういう人間は、あくまで「従業員」あるいは持ち株なしの「役員」としての参画に留めるのがベストでしょう。更に言うと、そういう人間を「抜けられたら絶対に困る」というポジションにつけてはいけません。労働法にうるさいことを言われない役員辺りにしとくのがいいと思います。逃げることが可能な人間は、長期的には必ず逃げます。人間同士の無根拠な信頼関係なんて、一切信じるに足りません。   創業初期は、とにかくフリーライドしようとする人間が山ほど寄ってきます。あなたの創業プランが優秀であればあるほど、妙に使えそうな人間がよってきたりもします。しかし、フリーライダーは風向きが良く高い給料が出る内は元気に働きますが、会社が窮地に陥ったときあっという間に逃げ出します。他社からもっと良い条件を出された時もあっさり逃げます、それも持てる物は全部持ってです。信頼できるのは、リスクを背負った人間だけです。僕はこれを「ザイルを結ぶ」と表現しています。誰かが落ちたら皆で引き上げる、どうしてもだめなら皆で落ちて死ぬ。その覚悟が決まっていない人間を経営の中核に入れては、絶対にいけません。   創業を共にするということは、最悪のときは一緒に死ぬ覚悟を持つということです。創業メンバーは、「事業に欠かせない能力を持ち」「リスクを取る覚悟がある」人間を旨に選びましょう。この二つがそろわない限り、「絶対に必要な人間」として仲間に迎えるのは不可能です。そして、それを踏まえた上での創業メンバー選びが「気の合う仲間」であったなら、それは本当に幸福なことだと思います。まぁ、非常に難しいとは思いますが。   人間を「信頼する」というのは、十分に外形的要因を整えた上でのみ成立する概念だと強く認識しましょう。リスクを負わない人間を信頼しては絶対にいけません。というよりは、信頼出来る人間なんてこの世には1人もいません、信頼するに足る状況にある人間が存在するだけです。あと、契約書にサインする意味のわかってないバカというのも稀に存在して、そういう人間は契約とか結んでもあまり意味がないので絶対経営に入れてはダメです。話が通じない上に落としどころなどという概念もないので、一回揉めたら行き着くところまで行くしかなくなります。(そういう人間がわりとある種の仕事が出来たりするのが世界の怖いところです)       まとめ ・複数人で創業するメリットはあるが、デメリットも多い。   ・リスクを差し出せない人間は経営の中核メンバー足り得ない。   ・複数人で起業をする際は、コアメンバー全員がきちんとザイルを結ぶこと。   ・一度結んだ契約は一切の情を排して履行する覚悟を持つこと、またその厳しさを己にも課すこと。   ・バカは不可。 多くの問題は創業初期に起きている 僕は26歳で起業して今年32歳になりますが、改めてこの数年間を振り返ると、多くの問題の根源は創業初期にあったと感じています。もちろん、僕が抱えていた問題はこのエントリに書かれた程度のものではなく、もっと大量の問題があって、それにふさわしい結果に至ったわけですが。   正直なところ、後悔は尽きません。あの時、ああしていればがどこまでも積みあがります。資金は初めての起業としては望外なほどあった、創業期に集まった人間の能力だって決して低くはなかった。むしろ、僕が発起した会社を考えると望外な能力を持ったメンバーが集まったと思います。でも、たくさんの問題があった。しかし、創業初期にその問題に気づくことは出来ませんでした。根底には、やはり人間に対する理解の甘さがあったと思います。   本当のことを言うと、もっと自分の失敗を具体的かつ赤裸々に書いた方が面白いテキストになるんだろうなぁとは思うのですが、まだ傷が癒えきっておらず吐き気、眩暈、動悸、震えなどの症状が発生したため、この程度の画素数で書かせていただきました。まぁ、勘の良い方なら、大体どこで失敗したかわかりますよね…。人間って、3人集まったらもう戦争するんですよ・・・。あれほど熱く未来を語り合って創業した仲間たちでもね…。   初めての起業はとにかく忙しいと思います。雑務だけでも大量に発生しますし、大体のことが初体験でしょうから、精神肉体両面での負荷も非常に高い。その上、一度事業が動き出してしまえば1日だって無駄には出来ません。人件費がかかってますからね。事務所を借りてれば賃料もかかります。一日無駄にすれば、その分だけ命より尊い資本金が目減りしていくわけです。   しかし、その上で焦らないで欲しいと思います。きちんと会社の仕組みを作り、これから発展させていくことを想定した揺るがぬ土台をきちんと組むことの方がずっと大事です。創業初期に発生していた問題は、往々にしてしばらくは表面化しません。それは、会社が成長していく過程の中で徐々に現れて来ます。そして、そうなってしまってからでは、大きなリスクを伴う抜本改革を行うか、対症療法を繰り返して誤魔化していくかの選択しか取れなくなります。本当に、僕みたいなことにはならないで欲しいです。まぁ、とにかくね、創業時は一回、弁護士に相談に行った方がいいですよ。腕が良くてノウハウ豊富で、タチが悪いアイディアがポンポン出てくるタイプの。   会社経営ですが、想像し得る悪いことは大体全部起きますし、想像もしなかった悪いことも大量に起きます。信頼していた役員が金庫と口座の現金を全部持って失踪、なんてこともこの界隈では大変よくある話です。それに近いことは弊社でも普通に起きました。 それでも尚、起業を志す皆さん、頑張ってください。心から応援しています。僕ももうちょっとこっちを頑張ったら、また追いかけるつもりです。やっていきましょう。     ...