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  労働者は強い。創業期人材のジレンマ。 従業員は会社に利益をもたらしてくれるとても重要な存在です。人間一人にこなせる業務の量が有限である以上、業務を拡大しようと思ったら従業員を雇うというのは有力な選択肢になってきます。会社経営というのは、つまるところ従業員に給料を払って、支払った額以上の利益を出すことですからね。従業員は利益の源泉そのものです。   その一方で、従業員のことを「労働力を販売しに来る取引先」として考えると、あまり良質な取引先とは言えません。極論をすればですが、「その日に欠勤されたら会社に大損害が出る」という日であっても、体調が悪いと従業員が主張すれば出社させることは不可能です。また、一応、法的には一定期間を経た後でないと退職できないというルールは無くもないですが、本人が「就労不可能である」と宣言すれば、会社に引きずり出すなんてことは一切出来ません。そして実体験ベースで言いますが、わりとバックレます。(これに関しては別に訴訟起こしてもいいんですけど、割に合わない)   創業期も半ばに差し掛かり、従業員が増え始めるとこれまで創業メンバーだけで回していた頃とは全く別種のトラブルが頻発するようになると思います。また、「人を使う」ということの難度の高さに直面せざるを得なくなります。実際ここで、「人的規模の拡大は志向しない」という方向に舵を切る経営者も少なくないです。まぁ、僕の事業はどうしても拡大するとなれば従業員を増やすしかない業種でしたので、前回のエントリに引き続いて、こちらも失敗の話になります。   労働者の権利は強いです。そして、恐ろしいことに労働者は支払いを待ってくれません。大抵の取引先は電話して事情を話してお願いすれば支払いを多少待ってくれたり(まぁ、今後は都度、現金払いでお願いしますみたいなことになることもあるけど)するものですが、従業員にはそういうことは一切通じません。遅配なんか出した日には、従業員との信頼関係は完全に終わりだと思っていいでしょう。あの状況まで追い込まれた時の従業員は最悪の債権者です。金融機関の取立てよりずっと恐ろしいですよ。また、給料を止めたまま従業員に仕事をさせるというのはね・・・。本当に何が起きるかわからない世界に突入します。   なにより恐ろしいのは、従業員に対しては「一定期間に一定量の労務を提供する、労務の提供が契約通り成されなければ違約金を支払う」というような、通常の商取引では当たり前の観念が一切通じないことです。労働者は(まぁ厳密に言えば1ヶ月程度のあれはあるけど)いつでも会社を辞められるのです。社員数人規模で事業を回している時にこれがどれほど恐ろしいことかは少し考えてみればわかると思います。   しかし、創業直後の会社に「辞めてもいい人間」なんてものを置いておく余裕があるかといえば、あるわけがありません。経営効率の面だけで言えば、全ての従業員が代わりの利かない存在であることが理想です。しかし、言うまでもなくそれは「どこが崩れても総崩れ」という状態に他なりません。更に、「自分が抜けるとこの会社は大変なことになるだろうな」ということに気づいた従業員は際限のない要求を始めます。   そういうことをしない人間を雇えばいいという話かもしれませんが、これはとても残念なことだと思うんですけど、毎日が乱戦状態で業務マニュアルなど存在すらしない創業初期に、「会社の弱みにつけこんで金を抜こうとする」程度の知恵の働かない人間では、なかなか戦力になりえないのです。状況を読み、雇用主と報酬の交渉をする。これはプレイヤーとしての優秀さの表れそのものですし、労働者としては当たり前の権利です。これが出来ない人間が優秀なわけがない。これが創業期人材のジレンマという概念です。(今考えました) 起業家と労働者の利害は一致しない そもそも、株を持っていない従業員にとって「未来の成功」なんてのは絵に描いたモチでしかないんです。今月払われる給与、それが従業員にとって世界の全てです。特に、創業したばかりの会社に株も貰えない状態で入社するような人間にとっては。創業したての零細企業なんて、3年後には存在してない可能性の方が高いわけですからね。未来の展望なんて、客観的に見たらクソほどの価値もないわけですよ。このクソほどの価値もないものをいかにキラッキラさせるかが経営者の腕とさえ言える。   創業期の会社における経営者と労働者の利害は、根本的に一致しないのです。もちろん、「従業員としての待遇を維持したまま株をよこせ!」と主張する人間も出てくるでしょう。(まぁ、経営者だって「株はやらないけど役員にならない?」って言いますしね、これはお互い様です)   従業員を雇って会社を回すということは、能力の低い使えない従業員と、能力はあるが当然要求も苛烈な従業員との終わりなき戦いです。要求されるがままに金を払っていたら倒産しますし、与えられる株の数は当然有限です。(まぁ総量を増やすことも出来なくないけど、他の株のホルダーがブチギレると思う)   かといって、有能な従業員に逃げられても大変なことになります。そして従業員に重要なポジションを任せられなければ利益はなかなか出ないですし、経営者が全く休めないということになります。その一方で重要なポジションを掌握されたら相手に交渉力が発生してしまう。「従業員が徒党を組んで全く同じ業種の別会社を立ち上げた」みたいな話だってよくあることです。取引先もノウハウも顧客も全部ゴッソリ持って他社に移られた、なんて話は最早聞き飽きたレベルですね。僕もやられました。   これはもう、模範解答の無い終わりなき戦いです。例えば、従業員Aに「辞められたくなければ俺の給与を上げろ」と脅かされたとします。仕方なくあなたは従業員Aの給与を上げました。そりゃもう従業員B、C、Dが出てきますよね。出資者(株主)も怒るかもしれませんね。他の役員たちも口々に不満を言うでしょう。そりゃね。人間、他人の給料には本当に敏感ですからね。まぁ、Aに口止めをするなどの措置はなくもないですけど、小さな規模の会社でバレずにそれをやれるかというとね…。   また、従業員は大抵の場合「自分の業務」を「自分だけがこの業務に精通している」という状態に持って行きたがります。業務ブラックボックス一丁あがりです。(これは労働者の振る舞いとしては大変正しい戦略なので、労働者の皆さんは積極的にやりましょう。僕もそうしています)「あなたの仕事を全部この人に伝授してください」という指示を出して、素直に仕事を教える従業員ですが、体感的には「存在しないんじゃね?」と思うレベルです。このようにして「新人潰し」や「課長も逆らえない現場のババア」などの概念が発生します。まぁ、でも、これもやっぱり労働者の処世術としては正しいというしかないですよね。 従業員が憎い 正直なところ、会社の規模を一定以上に拡大した後、信じられないほど従業員に対して冷酷になる経営者ですが、「気持ちはわかる」としか言いようがありません。僕だって従業員が怖くて出社拒否したい日が何度もありました。従業員を「仲間」とか「味方」とかそういう認識をするのは、余程運と人徳に恵まれた経営者以外は不可能だと思います。「タチの悪い取引先」くらいが穏当な表現で、「敵」と表現する経営者にも会ったことがあります。   彼は「自社の従業員の大半が大嫌いだし、もう少し会社のスケールを上げて収益を仕組み化したら古参の人間は全て排除する」とベロベロに酔っ払って語っていました。彼が転ばずに走りぬけたら、立派なブラック企業経営者になるんだと思います。そんな彼の会社の求人広告には「アットホームな職場」と書かれていました。確かにそういう家庭もありますね…。   何故か、わりと多くの人が「経営者は労働者より強い」と思っています。でも、創業期の会社に関してはこれは完全に嘘です。余裕で労働者の方が強いです。だって、経営者の切れるカードってせいぜい「減給」と「解雇」くらいしかないんですよ。創業したての零細企業をクビになるのが怖い人間なんてそんなにいないですよ。(たまにはいますが、そういう人間が優秀な人材である可能性は低いでしょう)   例えば、従業員10人のそこそこ儲かってる零細企業があるとしますが、ある日突然5人が辞表を出したら大惨事ですよ。普通に倒産まであります。実際、「従業員が全員辞めた」みたいな話は経営者界隈で結構聞きます。「従業員が逃げたけど、仕事止めたら違約金が・・・」って僕に電話かけてきた社長もいました。すいません社長、ちょっとブログとツイッターが忙しくてお力になれませんでした。まぁ、今の僕には動員できる人間もいないし事業もコケて顔も効かなくなったのでどの道お力にはなれなかったと思いますけど。   僕も現在は給料を頂戴する身の上ですが、改めて労働者は最高です。何せ、会社にどれだけ損害与えてもよっぽどコンプラ的なアレでなければ訴えられることもないし、最大のリスクが「クビになる」ですよ。こんなのノープレッシャーもいいところじゃないですか。ここ数年、毎月給料日は本当に憂鬱だったのですが、貰う側になると本当に楽しいものですね。最高です。そりゃ「労働者が憎い、従業員が憎い」って気持ちにもなるよなぁと改めて思いました。   そういうわけで、僕自身も創業期にある企業がどのように人材を確保しマネジメントすればいいのかについてはあまり明確な答えを持っていません。「創業者のカリスマ」とか「マインドコントロール」とか「やりがいを与え、夢を見せる」とか「零細企業でもクビになりたくないレベルの人材でなんとか利益を上げる方法を考える」とかそういう方向性なのかなぁと思います。   よく、自社の未来の展望を熱く語って社員をウォー!させてるイケてる新興企業の社長がいますが、あれ本当にすごい能力で、株も分けてもらってない社員に会社の未来の展望なんてさして関係ないし、そんなんどうでもいいから今月の給料上げろって話じゃないですか。普通に考えて。ハチャメチャに上手くいったところで、どうせ一番先に利益取るのは株主で次は経営者、従業員なんて最後におこぼれを貰う程度でしょう。そりゃ経営に食い込むレベルまで登りつめてた人は美味しいかもしれないけど。   事業拡大が上手くいったところで末端従業員の平均給料なんかそんなに上がらないです。事業拡大とともに利益率がアホほど上昇するならともかく、総売り上げから人件費に配分出来る割合なんて事業規模が拡大してもそんな変化しないんですから。事業規模がデカくなったらその分人件費も増えるわけで。しかも拡大期の採用なんてムチャクチャなんだからロスもでかくなる。まぁ、出世して給料を上げるチャンスは増えるかもしれないけど。   創業期の会社には、人間に夢を見せて非合理的な努力をさせるある種の能力が必要になるということなんですかね…。僕はどうしてもそういうのが得意ではないので、未だによくわかりません。でも、そういうことが出来る社長が勝ってますね、やっぱり。   で、起業を志す皆さんどんな感じでやっていこうと思いますか?従業員を雇って上手いことやるイメージはできましたか?「有能だけど安く働く忠誠心溢れる労働者が欲しい」って思いましたよね。でもね、それを100人単位で調達出来るならあっという間に億万長者なんですよ・・・。僕も次の事業のためにここは非常に考えているところなんですが、あまり倫理的でない手段しか思いつきません。コンプライアンスはとても大事です。社会に怒られます。やっていきましょう。    ...

  僕は起業に失敗しました。   はじめまして。借金玉と申します。   僕は26歳で起業しました。業種は飲食と輸入貿易です。 ざっくりいいますと、「イケてる商品を輸入して、その商品を軸にした飲食店を多店舗展開しながら卸売りもするぜ、原価も下がって儲かるぜ!」みたいな事業でした。集めた出資金は4000万円程度。そこに会社名義での借り入れを2000万ほど行いました。(もちろん会社の連帯保証人は僕です)最初はそこそこ上手くいきましたが、従業員が10人ほどまで膨らんだところで悪い意味でのビッグバンが起こり、結果として現在、僕は31歳の無一文です。辛うじて破産は回避できましたが、何一つ手には残りませんでした。そういうわけで、ニューアキンドセンター様で文章を書かせていただくことになりました。よろしくお願いいたします。   さて、起業の失敗というのはわりと個別性が高く、失敗の原因は会社や経営者、業種あるいは社会情勢などによりけりといえると思いますが、それでも大体「これで失敗する」という典型パターンはあります。典型パターンだけでも無数にあるんですが、これから起業を志す方に最初にお伝えしたいのは「人」の話です。それも、創業初期における人の話です。僕が最も失敗したところと言えると思います。会社の基本はやはり「人」です。人が働いて利益を生み出すという基本構造はどのような会社でもまず変わりません。   これは起業に失敗した人間の書いている文章ですので、「どうやったら起業に成功するか」という需要には応えられません。そんなの知ってたら自分でもう一回起業しています。しかし、どうやったら起業に失敗するかに関しては、あまり詳しくなりたくはなかったのですが詳しくなってしまいました。そんな文章です。起業を志す皆様の何かの役に立てば幸いです。 人間は裏切りますし、裏切りが発生するのは全て代表取締役の責任です これから起業をする皆さんになんとなくでもいいので覚えておいて欲しいなぁと思うことがあります。表題の通りなのですが、人間は必ず裏切るということです。ピンと来ない人もいるとは思いますが、少なくともそう考えておいて損はありません。もし起業をされたら、いずれ嫌というほどわかると思います。   どういう形で起業するかによって状況は多少変化するでしょうが、なんにせよこれから先あなたが起業をするならば、出資者(株主)、役員、従業員といった社内の人間と必ず渡り合っていくことになります。 もしあなたが代表取締役であるなら、これらの登場人物の利害が相反しないように調整することが最大の仕事になるでしょう。構成員全員の見ている物が違う組織が生き残っていくことはほとんど不可能です。それぞれの思惑があることは百も承知の上で、全員が一つの目標に向かって能力をフルに出していける環境を作れなければ、事業の成功などままなりません。   もし、その中で離反者や裏切り者が出たのであれば、それは代表取締役のあなたが悪いのです。裏切った方が得な環境を作ってしまった時点で、あなたにはなんの弁解の余地もありません。それは全てあなたの責任です。その覚悟を決めてください。これを受け入れ、「裏切りようのない」組織を形成する努力をしましょう。   それは、実は創業初期にしか出来ないことなのです。創業初期は大抵の場合、代表取締役も、役員も、出資者も(存在するとすれば)従業員も、熱に浮かされています。将来この中から致命的な裏切り者が出るなんて全く考えることはないでしょう。重要な職責を担う人間が突然離反した時のことなんて想像もしないでしょう。未来には希望しか見えないと思います。僕もそうでした。でも、とても残念なことなのですが、確実といっても過言ではない確率で裏切り者は出ます。自分の会社を見ても、他人の会社を見てもやはりそういうものなのだな、と思います。   創業初期にきちんと人間の利害関係を調整し、一つの目標に向かって進める組織を作ることが何より大切です。裏切られるのは裏切られた方が悪い、騙されるのは騙された方が悪い。そう腹を括って、具体的な対策を講じた上で創業出来るかどうかで、会社の生存率は大きく変化すると思います。       まとめ ・人間は裏切ります。   ・裏切られるのは代表取締役の責任です。   ・裏切られた方が悪いです。騙された方が悪いです。   ・創業初期にしっかりと、全てのプレイヤーが会社を裏切ることの出来ないシステムを作り上げましょう。 創業メンバーの選び方とザイルの結び方 僕は「気の合う仲間と楽しく起業」をどちらかといえば否定する立場です。もちろん、これから長く仕事を一緒にしていく仲間ですから、気があうに越したことはもちろんないんですが。それは気の合う仲間と不倶戴天の敵になるリスクを受け入れた上でのことだと思います。僕が今「必ず報復する」と心に誓っている人間も、かつてはとても気の合う仲間でした。そういうものに耐えられないと思うのであれば、一人で起業されることを薦めます。(まぁ、とはいってもその後、従業員を雇ったら似たような事態は普通に起こるんですけど)   しかし、もちろん複数人で起業をするメリットもあります。それぞれ違う能力を相互に補い合うことが出来るからです。実際、僕は営業や企画が強いですが事務作業がまるでダメですので、役員には事務作業が非常に得意な人間を入れました。   会社経営や事業運営に付随する非常に煩雑な事務作業を、大まかな指示だけで全て自分で調べて実行出来る人間を採用できたのは私にとって、とても幸運なことで、彼がいてくれたおかげで私は自分の得意ジャンルの仕事に専念することが可能でした。いつかまた彼と一緒に仕事をしたいと心から思っています。(彼はもう僕と仕事はしたくないだろうけれど…)これは余談ですが、創業期は「誰もその仕事をやったこともなければやり方も知らない」状態が日常です。自分で調べて実行して成功させる能力の無い人間は創業メンバーには向きません。   また、創業する業種によっては商材の専門知識を持った人間を迎え入れる必要に迫られる場合もあると思います。例えば「プログラムは書けないけどITで起業したい」ということもありえるでしょう。(オススメはしないけどありえないことでもないとは思う)その場合、プログラマーを雇わなければ話にならないですね。   経営の面白いところは、人間を雇えば自分では出来ないことがどんどん出来るようになることです。可能性が自分の限界を超えて大きく広がっていくのはとても楽しいですね。市場にはあらゆる能力や経験を持ったプレイヤーが存在しています。基本的には金さえ払えば大抵の能力や経験を手に入れることが出来るでしょう。もちろんそこに落とし穴があります。自分に出来ないことを他人に業務としてやらせるということは、当該プレイヤーに抜けられたらその仕事が誰にもこなせなくなるということです。このパターンで終わる事業はいっぱいあります。創業初期の業務内容なんて、ほとんど100%が属人的なものですから。   例えば3人で創業する場合ですがその3人は全員が「誰1人抜けても事業が成り立たない強力なスキルを持った3人」だと思います。そうじゃなきゃ、わざわざ組む意味がないですからね。それはつまり、1人抜けたら最悪の場合、会社が潰れるということです。これを防ぐ手立は必ず打っておく必要があります。(逆に、初期メンバーの中に必要不可欠と言える能力のない人間が混ざっていた場合ですが、確実に後から揉め事になります。「あいつはいらない」と誰かが言い出します。避けましょう)   創業メンバーの中で代表取締役1人が自社の株式を保有している場合などはわりと良い手があります。他のメンバーに自分の持っている株式の一部を譲渡する代わりに、特殊な条項のついた借用書を切らせるのです。要するに、n年問題なく働いて結果を出したらこの株式購入のための借金はチャラ、ただし途中で離反したり会社に対して背信行為を働いたりした場合は全額ただちに返済、みたいなやつです。詳しいことは弁護士に相談してください。ちょっとお金はかかりますが、かなり強力です。なるべく理不尽な額をつけておきましょう。(おまえがこの会社を裏切る気はないだろうから金額なんて単なる数字だろ?それくらいの覚悟みせろよ)   この書類にサインをさせておくだけで、少なくとも規定年月の間、裏切りや離反がやりにくくなりますし、背信行為を働いた場合の懲罰も可能になります。また、法的拘束力は微妙ですが、「話し合いの末持ち株を返却した上で退職という形になった場合は、同業他社への転職をn年禁じる」などの条項を入れておいても損はないでしょう。   創業メンバー全員が出資をした場合などについては、なるべくリスクを応分に分散させて逃げられなくする方法もあります。具体的に言えば、銀行融資などを引く際の連帯保証人に全員を連座させれば、そうそう逃げることは出来ません。(ただ、この場合、指揮系統が不明瞭になる欠点がありますが…)他にも様々なやり方が考えられると思います。起業の形態に合わせて頭を絞りましょう。   先ほどの、株式購入のための貸借契約を結ぶということは、とりもなおさず「例え創業メンバーの親が大病を患って介護が必要な状態になっても、創業メンバーには常に会社を優先させる」ということです。「親の介護で戦列を離れる」という人間が出た時は、「では契約通り満額を支払え、支払いがなければ裁判もきっちり起こす」と告げる腹が必要です。どれほど強力な契約も、それを履行する人間の意志なしには成り立たないからですからね。一回それをやったら「あなたとの契約は反故に出来る」と全ての人間が認識します。そうなったらお終いです。   逆に言えば、親や身内が死にかけたくらいで戦列を離れるような代表取締役は話にならないということでもあります。なにせ、登場人物全員の人生がかかっているのが会社ですから。その辺は強く認識しておく必要があります。親の死に目に会いたいならサラリーマンやるのがいいと思います。期待値だってそっちの方がずっと高い。もちろんね、仕事の合間に親御さんの面倒を見る余裕があればそうすればいいんですけど、残念ながら創業初期にその余裕があるかというとね…。   この手の提案をすると「それは嫌だ」と主張する人間ももちろんいると思います。「自分は能力と労働力を提供するのみでリスクはとりたくない」というタイプです。そういう人間は、あくまで「従業員」あるいは持ち株なしの「役員」としての参画に留めるのがベストでしょう。更に言うと、そういう人間を「抜けられたら絶対に困る」というポジションにつけてはいけません。労働法にうるさいことを言われない役員辺りにしとくのがいいと思います。逃げることが可能な人間は、長期的には必ず逃げます。人間同士の無根拠な信頼関係なんて、一切信じるに足りません。   創業初期は、とにかくフリーライドしようとする人間が山ほど寄ってきます。あなたの創業プランが優秀であればあるほど、妙に使えそうな人間がよってきたりもします。しかし、フリーライダーは風向きが良く高い給料が出る内は元気に働きますが、会社が窮地に陥ったときあっという間に逃げ出します。他社からもっと良い条件を出された時もあっさり逃げます、それも持てる物は全部持ってです。信頼できるのは、リスクを背負った人間だけです。僕はこれを「ザイルを結ぶ」と表現しています。誰かが落ちたら皆で引き上げる、どうしてもだめなら皆で落ちて死ぬ。その覚悟が決まっていない人間を経営の中核に入れては、絶対にいけません。   創業を共にするということは、最悪のときは一緒に死ぬ覚悟を持つということです。創業メンバーは、「事業に欠かせない能力を持ち」「リスクを取る覚悟がある」人間を旨に選びましょう。この二つがそろわない限り、「絶対に必要な人間」として仲間に迎えるのは不可能です。そして、それを踏まえた上での創業メンバー選びが「気の合う仲間」であったなら、それは本当に幸福なことだと思います。まぁ、非常に難しいとは思いますが。   人間を「信頼する」というのは、十分に外形的要因を整えた上でのみ成立する概念だと強く認識しましょう。リスクを負わない人間を信頼しては絶対にいけません。というよりは、信頼出来る人間なんてこの世には1人もいません、信頼するに足る状況にある人間が存在するだけです。あと、契約書にサインする意味のわかってないバカというのも稀に存在して、そういう人間は契約とか結んでもあまり意味がないので絶対経営に入れてはダメです。話が通じない上に落としどころなどという概念もないので、一回揉めたら行き着くところまで行くしかなくなります。(そういう人間がわりとある種の仕事が出来たりするのが世界の怖いところです)       まとめ ・複数人で創業するメリットはあるが、デメリットも多い。   ・リスクを差し出せない人間は経営の中核メンバー足り得ない。   ・複数人で起業をする際は、コアメンバー全員がきちんとザイルを結ぶこと。   ・一度結んだ契約は一切の情を排して履行する覚悟を持つこと、またその厳しさを己にも課すこと。   ・バカは不可。 多くの問題は創業初期に起きている 僕は26歳で起業して今年32歳になりますが、改めてこの数年間を振り返ると、多くの問題の根源は創業初期にあったと感じています。もちろん、僕が抱えていた問題はこのエントリに書かれた程度のものではなく、もっと大量の問題があって、それにふさわしい結果に至ったわけですが。   正直なところ、後悔は尽きません。あの時、ああしていればがどこまでも積みあがります。資金は初めての起業としては望外なほどあった、創業期に集まった人間の能力だって決して低くはなかった。むしろ、僕が発起した会社を考えると望外な能力を持ったメンバーが集まったと思います。でも、たくさんの問題があった。しかし、創業初期にその問題に気づくことは出来ませんでした。根底には、やはり人間に対する理解の甘さがあったと思います。   本当のことを言うと、もっと自分の失敗を具体的かつ赤裸々に書いた方が面白いテキストになるんだろうなぁとは思うのですが、まだ傷が癒えきっておらず吐き気、眩暈、動悸、震えなどの症状が発生したため、この程度の画素数で書かせていただきました。まぁ、勘の良い方なら、大体どこで失敗したかわかりますよね…。人間って、3人集まったらもう戦争するんですよ・・・。あれほど熱く未来を語り合って創業した仲間たちでもね…。   初めての起業はとにかく忙しいと思います。雑務だけでも大量に発生しますし、大体のことが初体験でしょうから、精神肉体両面での負荷も非常に高い。その上、一度事業が動き出してしまえば1日だって無駄には出来ません。人件費がかかってますからね。事務所を借りてれば賃料もかかります。一日無駄にすれば、その分だけ命より尊い資本金が目減りしていくわけです。   しかし、その上で焦らないで欲しいと思います。きちんと会社の仕組みを作り、これから発展させていくことを想定した揺るがぬ土台をきちんと組むことの方がずっと大事です。創業初期に発生していた問題は、往々にしてしばらくは表面化しません。それは、会社が成長していく過程の中で徐々に現れて来ます。そして、そうなってしまってからでは、大きなリスクを伴う抜本改革を行うか、対症療法を繰り返して誤魔化していくかの選択しか取れなくなります。本当に、僕みたいなことにはならないで欲しいです。まぁ、とにかくね、創業時は一回、弁護士に相談に行った方がいいですよ。腕が良くてノウハウ豊富で、タチが悪いアイディアがポンポン出てくるタイプの。   会社経営ですが、想像し得る悪いことは大体全部起きますし、想像もしなかった悪いことも大量に起きます。信頼していた役員が金庫と口座の現金を全部持って失踪、なんてこともこの界隈では大変よくある話です。それに近いことは弊社でも普通に起きました。 それでも尚、起業を志す皆さん、頑張ってください。心から応援しています。僕ももうちょっとこっちを頑張ったら、また追いかけるつもりです。やっていきましょう。     ...