こんにちは。労働者マンです。
最近ネット上でD2Cという言葉が大量に出回っていますね。Direct to Consumerという英語の略称らしいです。
D2Cとは「商品を直接消費者へ届けるビジネスモデル」ですが、僕自身、本質的な意味を理解していないです。
ただ、D2Cカッコイイので、僕も始めてみたいなと考えています。
そこで、以前ECコミュニティーで出会った『D2C事業の立ち上げ支援』を行っている、株式会社ジェネマーケ代表の久野さんに、D2C事業で成功するためのコツを伺いました。
頭脳明晰で、難しい内容をかみ砕いて伝えてくださる、素晴らしい方でした。
ぜひ最後まで読んでみてください。とりわけ「D2Cとは結局何なのか」の部分は必読です。
<プロフィール>
久野将司さん(twitter)
株式会社ジェネマーケ代表取締役。
愛知で生まれ、新卒で入社した1社目の化粧品D2Cベンチャー(事業会社)を退職するまで愛知で過ごす。新卒で化粧品D2Cベンチャーを選んだ理由は、大学のマーケティング講座の授業で、マーケ職に興味を持ったのがきっかけ。
その後、東京に移住し、SEOコンサルティング会社を経て、D2Cコンサルティング支援を中心とした株式会社ジェネマーケを設立。ジェネマーケでは、D2Cを1から立ち上げたいという企業様・インフルエンサーの方などに商品コンセプト、OEM会社とのやり取り、初期の集客、商品ローンチまでのサポート、及び、D2C事業の年間シミュレーション(LTV , ROIなど)や与件整理などの支援を実施。
▼その他展開されている事業・サービス
https://genemarke.com/service/
▽ご経歴
・2016年4月~2019年10月:株式会社未来(化粧品D2Cベンチャー)
・2019年10月~2021年9月:株式会社PLAN-B(SEOコンサルメインの支援会社)
・2021年9月~現在:株式会社ジェネマーケ(D2C支援会社を立ち上げ)
ジェネマーケ代表 久野はD2Cオタクらしい
ーD2Cコンサル会社の代表取締役の久野さん。本日はよろしくお願いします。まず初めに、自分を一言で表すと、どんな言葉になりますかね??
一言で表すと、D2Cオタクですかね…。
ー突然のカミングアウト…ですね…。D2Cオタクなんですね….ちなみに、D2Cオタクっぽいエピソードとかありますか?
普段から、D2C商品を購入することが多いです。
気になるD2Cブランドを見つけたら、購入してしまいます。
そして、各ブランドごとに、
・どのような売り方をしているのか?
・購買後のコミュニケーション設計は?
・同梱物やメルマガは?
などを調べていますね。
また、EC・D2C界隈の友人と集まると、伸びているD2Cブランドをピックアップして、何時間も話が尽きないです(笑)
ーおぉ…。分析目的でD2Cの商品を買う人って、なかなかいないですよね。その、D2Cオタクの源泉はどこから来ているのですか?
そもそもD2Cというビジネスは、多くの企業が失敗、撤退していく厳しい世界です。
しかし、その分自由度が非常に高く、独自性の高い世界観を展開することができます。
企業と顧客が、近い距離感でコミュニケーションを取ることができる点も魅力的です。
しかし、その半面、ブランドサイトの運営、カートや決済・物流などの手配すべてを、自社で賄わなければならない上に、年々物流コストや1人あたりの顧客獲得にかかるコストの高騰によって、日に日に難易度が上がっています。
そんな中で、売上を伸ばしているD2Cブランドは、見ていて非常にワクワクしますし、自分がD2Cに虜になっている理由だと思います(笑)
D2Cオタク、久野が最近気になっているD2Cブランドとは?
ー話を進めますが、最近オタク心をくすぐられたD2C商品がありましたら教えてください。
2つあります。
ひとつはベースフード株式会社様が展開している『BASE BREAD』ですね。
「手間をかけずに健康なパンを食べたい!
「たんぱく質を主食からも摂取したい!」
という顧客ニーズを捉え、顧客数を伸ばしています。
引用元:BASEFOOD
顧客との関係性を構築するための施策がしっかり設計されていて、ユーザー同士でコミュニケーションが取れる場を用意している点は勉強になります。
ユーザーがアレンジレシピを発信したりと、顧客の口コミ (UGC) を発生させるSNSの使い方が上手だなと感じています。
もうひとつは、Web広告を中心に大幅な顧客獲得をしている事例で、明治薬品株式会社様が展開している『シボラナイトGOLD』です。
引用元:機能性表示食品 シボラナイトGOLD(ゴールド)15日分
この商材は、「正露丸を開発した企業がプロデュースしたやせ薬」という権威性を前面に出したクリエイティブを用いてユーザーに訴求しています。
(※ラッパのマークで有名な、元祖正露丸を製造している会社は『大幸製薬株式会社』様です。ご注意ください)
機能性表示食品として開発されていることで、薬機法に抵触することなく『体重・体脂肪の減少を助ける』と訴求できることも、獲得件数を伸ばしているポイントです。
最近の傾向では、販売元の企業 (どの企業が発売しているか?) が購買に影響するようになってきており、同様の手法を取る企業が増えてきています。
D2Cオタク、久野が見る「やらかし企業」の特徴は?
ー企業によって強みや特長、展開の仕方を工夫されているんですね。一方で、「これはやらかしているな」という企業の特徴は、どんなものが挙げられますか?
そもそも、「やらかしている企業」は、認知・マーケティングが出来ていないことが多いため、表には出てこないものが多いですね。
様々な企業を見てきた経験として、ありがちな3つの失敗事例をご説明いたします。
①勢いで商品開発を行った後に、どのように販売するか考えるケース
②副業として片手間で始めるケース
③成功した企業の表面上を模倣して始めるケース
ーなるほど。それぞれ詳しく教えてください。
①勢いで商品開発を行った後に、どのように販売するか考えるケース
弊社へ寄せられる相談の多くは、「既に商品を開発したが、どのように売ればよいか分からない」というものです。
こうしたケースは、往々にしてその後商品が売れないことが多いです。
なぜなら、消費者のニーズを考えず、作り手が良いと思った商品を開発している場合も多く、マーケティング視点が欠けた状態で商品が出来上がり、D2C事業を開始することになります。
マーケティングの視点が欠けていることが要因で、例えば、
ターゲットが定まらず、商品コンセプトがブレブレになる
プロモーション費用を考えず、原価率の高い商材を開発してしまう
後々になって、訴求したい内容が法律に抵触していることが発覚する
…のような問題が出てきます。
いきなり商品開発から始めるのではなく、マーケティングや販売戦略を視野に入れながら、市場調査やコンセプト・ベネフィット(便益)の設計をしっかりと行った上で、商品開発を行うことが大切です。
②副業として片手間で始めるケース
最近、副業としてD2Cビジネスを始める方が増えています。
しかし、片手間で行ったとしても、成功する可能性はかなり低いです。
もちろん、「成功」の定義にもよりますが、月商5万円も難しいと思います。
前提として、D2Cビジネスは、熱量の高い担当者・会社が、全リソースを投下して、ようやくスタートラインに立てる世界です。
片手間で始めたとしても、失敗する可能性が高いため、おすすめできません。
ー実際、D2C市場で戦っていくには、有料で広告を回したり、寝る間を惜しんでSNSに取り組むことになると思いますが、副業で行う場合の勝ち筋は無いでしょうか?
様々なパターンがありますが、ゴール次第では、誰でも勝ち筋はあります。
例えば、成功という定義を『年商20億のD2Cブランド』という場合、大きな資金力が必要となりますので、成功確率は低くなります。
しかし、月商30万、100万をミニマムのゴールとして設定するのであれば、ニッチなジャンルでも可能性があります。
ただし、D2C事業は「総合格闘技」ですので、あらゆることを自社で行う必要があります。
商品開発しかり、マーケティング施策、顧客対応など、幅広い対応領域が存在します。
ですので、副業でD2Cを選ぶのは、あまり良い選択だとは思いません。
単にお金を稼ぎたい、という動機だけでD2Cを始めるのであれば、絶対にやめておいた方がいいと、声を大にして伝えたいです。
単にお金を稼ぎたいならば、
・動画編集
・せどり
・プログラミング
など、再現性のある仕事の方が良いのでは、と思います。
③成功した企業の表面上を模倣して始めるケース
成功企業の模倣をする場合、同様に競合他社が追随して参入してくるため、結果、多くの企業がパイを食い合って、なかなか売上が上がらないというケースも多いです。
また、成功した理由の本質的な部分を見ず、表面的に模倣する場合も危険ですね。
その結果生まれるのは「何となく似ている、訴求がぶれている商品」となってしまいます。
昔のD2C市場は、参入する企業の数が少なかったため、模倣する手法が通用した時代もありしたが、昨今は、
・競合他社の台頭
・法律面での規制強化
・配送コストの上昇
など、難易度はますます上がっています。
仮に一時的に商品が売れたとしても、1年~1年半経たずに、売上が減少してしまう可能性が高いです。
ですので、模倣して始める際は十分に注意してください。
D2Cビジネスに「販売経路」と「世界観」は必須
ー仮に、自己資金でD2Cビジネスを勝ち抜くためには、どうすれば良いでしょうか?
D2Cで取り扱う商材は、「販売側の強み・特徴」と「文脈 (ストーリー)」が合っていることが重要です。
なぜなら、D2Cはブランドの世界観やストーリーが、購買に大きな影響を与えるからです。
その上で、まずは販売経路を明確にすることから始めていくのがおすすめです。
例えば、コンプレックス商材で戦っていく場合、広告運用を軸として、大幅な予算を投下しなければいけない場合があります。
そういった場合、資金力のある企業に面と向かって勝負して勝つのは難しいでしょう。
広告以外の販売経路 (オウンドメディアやSNSなど) を確保した上で、しっかり市場の分析をした後に商品開発をすると、成功率が高まります。
ーということは、商品企画の前に、まずSNSの発信によってフォロワーを増やしていくことから始めるということですか?
様々な手法がありますので、あくまで1つのやり方としてご紹介します。
初期フェーズのマーケティングとして効果的なのは、創業者のSNSアカウントを育てて、商品開発までの過程や想いを発信していく方法です。
具体的には、Twitter や instagramなどのSNSで、「〇〇の問題を抱えていて、〇〇の商品を作りたい!」ということを発信します。
その後、発信内容と親和性の高いユーザーとしっかり関係性を構築してフォロワーを増やし、そのフォロワーに対して認知を行います。
現時点でインフルエンサーではなくても、その気になれば誰でも実行できる方法です。
創業者のSNSアカウントの力で伸ばした成功事例として、株式会社ashlyn様の『24hブラ』があります。
社長自らTwitterで積極的に発信しており、商品にかける情熱がユーザーの心を掴み、ファンが増え続けています。
一般的な企業が同様の商材を売る場合、相当な広告費が必要ですが、24hブラの場合は、販促費用を1万円しかかけていないそうです。
また、ファンの口コミ (UGC) をうまく活用して、世界観を作りこみ、商材の魅力を代表自らが伝えているため、見習うべき事例ですね。
ーこれまでの話を聞いていると、商品力よりも、売り方を重視したほうがいいですか?
いえ、商品の質が担保されたことを大前提としています。
斬新で革命的な商品であれば、マーケティングに注力しなくても自然に売れるかもしれませんが、質が高い/安い商品は、いくらでも存在します。
ですので、Amazonや楽天などの大手ECモールがある中、わざわざ自社ECショップに来て買ってもらえるのか?
これを徹底的に考え抜いた上で、その商品の世界観や想いを言語化し、商品を開発していく必要があります。
仮にマーケティングが上手くても、商品の質が低かった場合、初動は新規顧客を獲得できるかもしれませんが、その後尻すぼみになってしまう可能性が高いです。
D2Cビジネスを継続させるためには、商品の質が非常に重要になってくるのは間違いありません。
ー最終的にどうなりたいのか?というゴールを明確にした上で、現実と照らし合わせて始めることが重要ですね。
弊社がコンサルを行う際は、クライアントに対して、最初に「どのようなゴールを目指していますか?」という質問をしています。
かなり大きな目標を掲げているクライアントには、目標達成するために必要な費用やロードマップなど、現実的な数値をお伝えしています。
まずはゴールを明確にして、そのゴールを達成するまでの道筋を把握することが、D2Cビジネスの始まりだと思っています。
D2Cビジネスの成功を左右するのは、情熱と熱量
ーちなみに、成功するブランドと失敗するブランドの違いは何ですか?
ご担当者の情熱・熱量が大きいですね。
これはD2Cビジネスに限った話ではありませんが、ビジネスを成功させる大きな要因となるのは、担当者に情熱・熱量があるか否かだと思っています。
ぶっちゃけ、情熱さえあれば成功する、くらいに感じています。
ただ、お問い合わせの段階では、情熱がない状態で始めようとしている方が多いです。
熱量が薄い状態でスタートする場合、やるべき施策をアドバイスしても、実際に行動に移してやり切るケースは稀です。
そうなると、結果的に失敗に終わるでしょう。
ビジネスに対して、行動と熱量が伴っていることが、最も重要だと確信しています。
さいごに:D2Cとは結局何なのか
ーD2Cというと、せどりから世界観をしっかり作りこんだブランド商材まで、様々なケースがありますが、定義が曖昧ですよね。久野さんが考える、D2Cの定義を教えてください。
私は、D2Cビジネスは一時の「フェーズ」であると考えています。
店舗を持たず、消費者を直接自社サイトに集客して、販売していくビジネスモデルで、最近では『D2C=デジタルD2C』とイコールで語られることが多いです。
D2Cブランドの中でも、最初はオンライン販売から始めたけど、現在は平行して様々な実店舗に卸しているという事例もあります。
この場合、D2Cというフェーズを経て、のちに卸販売のフェーズに入っています。
ですので、D2Cは「ビジネスにおける1つのフェーズ」だと思います。
とはいえ、D2C界隈でも見解が分かれていますね。
単品リピート通販や手売りのことだと言われることもあります。
最近は、D2Cというキャッチーな言葉が出てくることで業界が盛り上がっているので、単にD2Cという言葉を使っているだけだと思ってもらっても大丈夫です。
編集後記
久野さんが仰られていた、D2Cとは「ビジネスにおける1つのフェーズ」である、という考えには納得感がありました。
巷では、これからの時代は「ネット社会」だから、D2Cがイケているんだ!のように、0-100でしか考えていない議論が溢れています。
しかし、今回のインタビューを通して、D2Cが1つのフェーズであると認識すると、ビジネスで利益を得るための手段や段階の一つに過ぎないということを、改めて認識することができました。
久野さんのロジカルで丁寧な説明から、非常に多くの学びを得ることができました。
今後、D2Cブランドを立ち上げたい方は、ジェネマーケに相談してみては?
▼株式会社ジェネマーケ公式サイト
https://genemarke.com/
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