D2Cとは?言葉の意味や定義|メリットデメリットと事例を紹介

ECトレンド

多くのEC事業者が注目しているD2Cとは、どのような意味をもつビジネスモデルなのかご存知でしょうか。

市場規模も拡大しており、今後D2Cに取り組む企業もますます増えてくることが予想されます。

本記事ではD2Cの意味や流行の背景、メリットやデメリットについて解説します。

代表的なD2C企業の事例なども合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

D2Cとは?意味や定義

D2Cとは、「Direct to Consumer (消費者直接取引)」の略で、製造者がダイレクトに消費者と取引することを意味します。

同じ意味あいの言葉には、Direct to Consumer(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)を略した「DtoC」や「DTC」などもあります。

企画や製造・仕入れや販売など、さまざまな中間流通業者や小売店を仲介する従来の販売モデルとは異なり、販売までのすべての工程を自社で一貫して行うのが特徴です。

2010年ごろにアメリカで誕生した、「メーカー直販」や「卸直販」のビジネスモデルと根本は同じです。しかし現在はデジタルテクノロジーを生かした形態が主流となっています。

また、以前はECでのオンライン販売のみを行う企業が多かったのですが、現在はブランドの拡大とあわせて、実店舗での販売も行うブランドが増えてきています。

D2Cの市場規模

参考:売れるネット広告社

上記のグラフは、「売れるネット広告社」が2020年に独自に行った「デジタルD2C」の国内市場規模調査です。

この調査によると2020年は市場規模が2兆2,200億円を突破し、2021年には2兆4,100億円にも上るとの結果に。2025年にはさらに拡大し、3兆円に達する見込みです。

デジタルテクノロジーの発展に伴い、今後はさらに市場規模が拡大していくことは間違いないでしょう。

D2CとB2Cの違い

D2Cとよく似た名称のビジネスモデルに、「B2C」があります。

違いがよくわからないという人もいるでしょう。

B2CとはBusiness to Customerの略です。「Business=企業(法人)」から、「Customer=一般消費者」へ販売するビジネスモデルを意味します。

  • D2C:自社が作ったものを一般消費者へ自社で販売
  • B2C:企業(法人)から一般消費者へ販売

どちらも消費者に商品を届ける点は同じですが、生産・製造者が直接一般消費者へ販売するのか、仲介業者が販売するのかが異なります。

野菜販売に例えてわかりやすく解説すると、下記のようなイメージです。

D2C:農家が野菜を収穫して販売

B2C:スーパーが野菜を仕入れて販売

D2Cは生産者が直接消費者へ販売しているモデルです。しかしB2Cではスーパーなどの企業が販売しており、この点に大きな違いがあります。D2Cの場合は、すべての工程を自社で行っているのが特徴です。

いずれも「誰がどのようにして、消費者へ商品を届けるのか」を示す言葉であり、ビジネスから消費者へ届けているという取引形態はD2Cであっても同じなのです。D2CとB2Cはまったく違うものではなく、D2CはB2Cの一形態であると理解するとよいでしょう。

D2Cが流行している背景

2010年ごろに登場したビジネスモデルであるD2Cが、なぜ今になって流行しているのか、その背景について解説します。

SNSの普及

SNSにより広告に限らず商品の口コミや利用者のレビューなど、さまざまなタイミングで顧客が商品に触れる機会が増えてきました。それによりメーカーや企業自身が、さまざまな販促や施策を行いやすくなったのです。

またメーカーはユーザーと、直接コミュニケーションがとりやすくなりました。これはユーザーの意見や要望を、商品やサービスへと反映しやすくなったことを意味しています。またさまざまなデータを自社で管理分析しやすくなったことも、D2C流行の大きな理由となっています。

EC販売が容易にできるようになった

これまでは自社で販売したくてもECサイトの構築など販売システムを確立するハードルが高く、D2Cになかなか取り組めないという生産者も少なくありませんでした。

しかしAmazon、楽天などモール型ECサイトやカートシステムの普及によって、以前と比べて安価に販売システムを構築できるようになりました。これらもD2Cへの参入ハードルが下がった理由のひとつでしょう。

海外で成功する事例が増えている

2010年ごろから海外D2Cのビジネスモデルが普及し、成功事例も増えています。こうした成功事例を参考にし、日本国内でもD2Cに取り組む生産者やブランドが増えはじめました。

Function of beautyはアメリカのパーソナライズシャンプーブランドです。

今までは、製品化された商品をユーザーが選ぶことが常識だったシャンプーを、いくつかの質問に答えることでユーザーの髪の悩みや髪質にあったシャンプーを3億種類のシャンプーから提案できるようになりました。

日本でもこの事例を参考に、さまざまなブランドがパーソナライズシャンプーに参入しています。

さまざまなジャンルのD2C事例が増えることで、これまで仲介業者に頼らざるを得なかった企業や生産者も、自分たちの商品やサービスに照らし合わせやすくなります。これに伴って、D2Cへの参入障壁が低くなりました。

D2Cのメリット

D2Cにはどのようなメリットがあるのでしょうか。いくつかのメリットについて、わかりやすく解説していきます。

コストを最小限に抑えることができる

D2Cは企画から商品開発、製造や流通、EC販売に至るまですべての工程を自社で行うのが特徴です。

商品仕入れが必要ないのはもちろんのこと、仲介業者や物流業者への仲介料などを必要としません。

コストを大幅に削減できるため、その分商品やサービスの質を高めることに注力できます。

ユーザーとの距離が近い

D2Cでは、カスタマーサービスなども自社で行います。ユーザーからの困りごとや悩み、商品やサービスを利用した感想などを直接聞けるため、さまざまな意見を商品に反映しやすい立場にあるのです。

ユーザーとの距離が近づくことで商品に対する思いを伝えやすくなり、商品やブランドのファンも生まれやすくなります。商品やサービスに愛着を持ってもらうことでLTV(顧客生涯価値)も高まり、効率的に収益を拡大できるようになるのです。

自由なマーケティング施策が可能になる

企画やマーケティングなどを外部パートナーに委託する企業は、決して少なくはありません。マーケティング活動を外部パートナーに任せると、プロ目線で的確なマーケティングを行えます。

しかし、成果が優先になる場合が多く過去に事例のない施策や、結果がでにくいと判断された施策には挑戦しづらいです。

一方、D2Cでは社内で企画から販売までを行うので、自由なマーケティング施策を行うことができます。自社の判断だけでさまざまな挑戦ができるので、柔軟な意見や発想も飛び出しやすくなるでしょう。

ユーザーデータを収集、蓄積しやすい

ユーザーが自社から直接購入するD2Cでは、さまざまなユーザーデータを収集、蓄積ができるメリットもあります。すべて自社で担当するということは、購入前から購入後すべてのユーザーの行動やプロセス、利用者の声などデータとして蓄積できるということです。

商品カートへ入れたものの購入に至らなかった割合、ECサイトではどのような導線で商品を購入するのかなど、すべてのデータが資産となります。これらのデータは、そのままマーケティング施策や商品開発へ反映させることが可能です。

D2Cのデメリット

D2Cならではのメリットが、デメリットにもなるケースもあります。

社内の負担が大きくなる

D2Cでは企画から販売まで、すべて自社でできる点が大きなメリットとなります。しかし逆をいえば、すべて自分たちで行わなくてはならず、負担が大きくなるといったデメリットにもなります。

多くの負担がミスにつながることのないよう、さまざまな工程や管理体制のフロー構築や仕組み作りが重要です。

また自分たちでマーケティング戦略をしっかりと練らなくてはならないため、マーケティングに知見のある人材の確保なども必要となるでしょう。

このように、D2Cでは販売に関する工程だけでなく、人員の確保やシステム構築など運用するためのコストが発生します。D2Cをスタートさせる際は、事前にどれくらいのコストや負担がかかるのか、把握してからはじめることが重要です。

ブランディングの難易度が高い

D2Cにおいては、商品の質の良さだけでなくブランドストーリーも非常に重要です。流行を上手にとらえつつ、その世界観をも商品とするアプローチが必要になります。

ものづくりの背景や商品の利用シーンに関するストーリー、作り手の想いなど、ユーザーが商品を買ったり、他社におすすめしたくなる理由を生み出すことが重要です。

集客に手間がかかる

どんなに魅力的な商品やサービスを生み出しても、ユーザーの目に触れなければ手にしてもらう機会につながりません。

D2Cでは集客や販売促進につながる施策なども、すべて自分たちで行わなくてはなりません。

当然集客には手間もお金もかかります。この点も踏まえ、しっかりと事前に集客戦略を練っておくことも非常に重要なポイントとなるでしょう。

代表的なD2Cブランドの事例一覧

国内外の代表的なD2Cブランドの事例を、いくつか紹介します。

アパレル(服)

アパレル関連では、多くのブランドがD2Cのビジネスモデルを取り入れています。

FABRIC TOKYO

公式サイト:https://fabric-tokyo.com/

FABRIC TOKYOは、オーダースーツを扱うアパレルブランドです。従来のオーダースーツはショップでの採寸して仕立てるのが常識でしたがFABRIC TOKYOは自己採寸によるオンラインオーダーが可能。フィッティングや価格帯、仕立て上がりまでにかかる時間などの問題をクリアし、クロスセルなどをすすめつつLTVを高めることに成功した国内D2Cの代表的な事例です。

ALL YOURS

公式サイト:https://allyours.jp/

ALL YOURSは、着る人の心地よさや過ごしやすさを優先させたプロダクトを提案するファッションブランドです。SNSなどでの発信のほか、オンラインでも安心して購入できるよう、「ご自宅お試し制度」などを導入しているのも特徴。顧客満足やニーズにこたえることに特化しているため、ファン層が非常に厚いブランドです。

17kg

公式サイト:https://17kg.shop/

17kgは韓国系プチプラレディースファッションを扱う、D2Cスタートアップのアパレルブランドです。販売を促進させているのは、50万人ものフォロワーを誇る自社ブランドのインスタグラムアカウント。既存のECサイトプラットフォームを活用しているのも、大きな特徴です。

コスメ

コスメジャンルでもD2Cを取り入れているブランドが多数あります。

PHOEBE BEAUTY UP

公式サイト:https://phoebebeautyup.com/

PHOEBE BEAUTY UPは女性向けの基礎化粧品や、メイクアップ用品を取り扱うD2Cコスメブランドです。自社が運営する美容系メディア「DINETTE」に寄せられたさまざまな声を、商品という形で生み出しているのが特徴。ユーザーとのコミュニケーションを重視した、ブランドコンセプトも魅力です。

BOTANIST

公式サイト:https://botanistofficial.com/

BOTANISTは植物由来成分を使用した、シンプルかつミニマルなヘアケア商品を展開しているコスメブランドです。オンラインで販売を伸ばしてきたD2Cブランドとして注目されてきました。人気が拡大した現在はドラッグストアなど、オンラインに限らずさまざまな形態で販売されています。

BULK HOMME

公式サイト:https://buhttps://bulk.co.jp/lk.co.jp/

BULK HOMMEはメンズ向けスキンケア商品を扱うD2Cブランドです。小売店での購入が可能となった現在も、直販による定期購入(サブスクリプション販売)を続けているのが特徴。さまざまなブランドアンバサダーを起用しながら、現在もシェアを拡大し続けています。

食品

食品業界にも、ECでの販売を主体としたD2Cブランドが多数あります。

Oisix

公式サイト:https://www.oisix.com/

食材宅配サービスのOisixを展開する、オイシックス・ラ・大地株式会社。顧客に伝わりやすいブランドコンセプトを掲げ、ニーズにもしっかりとこたえるD2Cブランドです。オンラインでも強固なコミュニティを持ち、顧客の声をしっかりとサービスに反映させているのが強みでしょう。

Mr.CHEESE CAKE

公式サイト:https://mr-cheesecake.com/

Mr.CHEESE CAKEは濃厚な味わいの、人気チーズケーキを販売するD2Cブランドです。ブランド創設者自身が作ったチーズケーキに関する投稿が、Instagramでバズを起こしたのがきっかけで誕生。定番のチーズケーキに加え、期間限定のケーキも販売することでファンを飽きさせることのないブランドです。オンライン以外にもポップアップストアを出店し、認知を拡大し続けています。

PostCoffee

公式サイト:https://postcoffee.co/

PostCoffeeは、コーヒーのサブスクリプション販売を行う、D2Cブランドです。世界各国のさまざまなコーヒーの中から、ユーザーに合わせたコーヒーを選んで届けてくれる、パーソナライズサービスが人気。自分も知らなかったコーヒーの好みや、新たな味わいとの出会いが魅力です。

海外のD2C事例

D2Cの先駆ともいえる、海外のD2C事例も紹介します。

Warby Parker

公式サイト:https://www.warbyparker.com/

Warby Parkerは、海外D2C事例の代表ともいえるアイウェアブランドです。確固たるブランドストーリーを持ち、企画・製造から販売まですべて自社で行っています。高いのが当たり前であったメガネを、仲介業者を省くことでコストをおさえ、手に取りやすい価格で販売しているのも大きな強みとなっています。

Glossier

公式サイト:https://www.glossier.com/

Glossierはユーザーが提案したコスメを商品化し、オンライン販売するD2Cブランドです。Glossierのファンであるユーザーたち自身が、商品開発の発案者でありレビュアーであり、宣伝も行うのが特徴。販売はすべて自社メディアで行われています。商品やブランドを愛するコミュニティメンバーによって支えられ、成長し続けているブランドです。

まとめ

D2Cは生産者と一般消費者を、ダイレクトにつなぐビジネスモデルです。現在ではSNSなどのデジタルテクノロジーを生かした形態が主流となっています。

商品開発や製造のほかにも、ブランドコンセプトやマーケティングなど、取り組む必要のあるポイントや負担はたくさんあります。しかし消費者と直接つながることにより、たくさんのメリットも生まれます。

巣ごもり需要も高まる昨今、D2Cは今後もますます市場規模を拡大していくビジネスモデルです。さまざまな事例を参考にし、今後のビジネスへ活かしてみてはいかがでしょうか。

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