変化の激しいEC業界とその未来
1997年「楽天市場」、1998年「アマゾンジャパン株式会社」が設立。それらを皮切りに日本におけるEC市場は右肩上がりの拡大を続けてきました。2020年から今もなお続くコロナ禍では消費の向かう先がオフラインからオンラインになったことでEC市場が急伸。飲食やレジャーといったサービス分野は大幅減となったものの、他分野がカバーした結果、全体として前年と同水準を保っています。
・BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)
引き続き楽天、Amazonなど大手モールを介した流通が市場の大部分を占めている状況ではありますが、近年では消費者の嗜好や価値観が高度に分散したことで、従来の選択肢だけでは顧客ニーズを叶えることが難しくなってきています。その結果、ネットショップは顧客へのアプローチを多様化せざるを得なくなっています。
このような状況に加えて通信技術が発達したことにより、OMOやライブコマースなど、新たなオンラインショッピングの形態が続々誕生しています。それらを体験した顧客がオンラインショッピングに求めるレベルは日々高まっており、ネットショップは顧客体験向上のために適切なマーケティング活動を通して自社のビジネスに合った新たな販売手法を見極め、対応し続ける必要があります。
「クッキーレス時代」がもたらすEC業界の変化
また、その「適切なマーケティング活動」についても、世界的な個人情報保護の潮流に乗り、これまでとは違った状況になるでしょう。
サードパーティ Cookieの全面ブロックについてはAppleの「Safari」が2020年に実施、Google Chromeも2023年後半には対応を終える見込みです。「クッキーレス時代」の到来により、多くのEC事業者が少なからず直接的・間接的に第三者に任せているマーケティング活動は、大きく見直す必要に迫られます。ファーストパーティ Cookieを保有するメガプラットフォーマーの立場は一層強化され、彼らにマーケティング施策を依存しているEC事業者は、彼らの意向や方針変更ひとつで自社の戦略の転換を迫られるリスクに晒されることになるでしょう。
そのリスクを見据え、すでに顧客情報の取得・一元管理・活用に関して自社でコントロールできる体制の構築を進めているEC事業者も増えています。2017年に日本に上陸して以来急速に出店数を増やしているShopifyを筆頭に、自社サイトによるD2Cが一大勢力となりつつあることは、前述の背景を踏まえた動きといえます。
今、EC業界は大きな転換期を迎えつつあります。否応なしの環境変化は、現状維持を目指すEC事業者にとって脅威である一方、先回りした準備によって変化に順応できた企業にとっては大きなチャンスとなります。今後の自分達の将来をどう描くのか、EC事業者にとって今まさに選択の時が来ていると言っても過言ではありません。
EC事業者にとっての「DX」とは
変化に順応するための準備とは一体何が必要なのでしょうか。それは、DX(Digital Transformation / デジタルトランスフォーメーション)です。これは単純に今ある業務をデジタル化するという事ではなく、デジタル化を通して「他のプレイヤーに依存せず、変化に強いビジネスを作る」という事を意味します。
では、EC事業者にとって「DX」とは、一体何でしょうか。それは新たなプレイヤーや販売チャネルが台頭してもすぐに連携できる基盤、マーケティングに必要な顧客情報(購買行動、個人情報等)を自社で取得・一元管理・活用ができる仕組みを構築することです。
変化の到来は遠い未来の話ではなく、数年後に大きな環境変化が起きることはほぼ確実視されています。繰り返しになりますが、この変化はEC事業者にとっては大きなチャンスでもあります。来るべき時代を予測し、今から準備していれば必ず乗り越えられます。
この過酷な市場競争の下で日々走り続けているEC事業者の方々。その情熱を力に、この転換期をビジネスチャンスに変えて、持続的な事業成長を実現していきましょう。