
「Amazon」
この言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。
Amazon(アマゾン)によって生活の利便性は格段にアップしました。現在では、競合の追随を許さないレベルで我々の生活に浸透しています。
そこには、Amazonの「お客様」を大切にする姿勢がありました。
この記事では、Amazon(アマゾン)の歴史やビジネスモデルからどのように「お客様」を大切にして来たのかを解説します。
このことは、Amazon(アマゾン)で出店しているEC事業者にとっても無関係ではありません。なぜなら、プラットフォーム上で成功したいのであれば、プラットフォーマーの意向に沿ったビジネスを行う必要があるからです。
- Amazonという企業への理解が深める
- Amazonの歴史を知ることができる
- 顧客を大切にする事の重要性を再確認する
- EC運営で大切にすべき事をAmazonの事例から学ぶ
最後まで読んでいただけると幸いです。
※この記事はEC企業に務めている労働者マンが執筆しています。
Amazon(アマゾン)とはどんな会社?
Amazonとはどんな会社か、おさらいしておきましょう。
Amazonの正式な企業名称はAmazon.com, Inc.です。ワシントン州シアトルに本拠を置くアメリカの多国籍テクノロジー企業です。日本にも法人があります。
創業者はジェフ・べゾスという人物です。

主にEC事業やECプラットフォームを展開している企業です。売上の80%近くはEC事業が占めています。

近年はAmazonPrimeやKindle、Amazon Web ServiceなどEC以外の分野への進出をはじめています。
また、1997年に上場してから快進撃はすさまじく、株価は右肩上がりとなっています。以下のグラフをご覧ください。

創業からたった27年で時価総額200兆円にまで上り詰めた恐ろしい企業です。
なぜここまでの成長をすることができたのか?続いて、Amazonとジェフ・べゾスの軌跡を追ってみましょう。
Amazonとジェフべゾスの軌跡【歴史(年表付)】
Amazonがどのような道のりを辿って現在に至ったのでしょうか?これは創業者のジェフべゾスとAmazonが共にどのように歩んできたかを通して知る事ができます。
また、以下に年表を添付しておきますので、こちらも参考にしながら読み進めてみてください。Amazonへの理解がより深まるでしょう。

ジェフべゾスとは?
まずは創業社長であるジェフ・べゾスについて解説します。ジェフ・ベゾスは1964年にニューメキシコ州で生まれました。

1986年にプリンストン大学を主席で卒業するほどの秀才でした。
卒業後は、金融決済システムのベンチャー企業やニューヨークの大手ヘッジファンドで働いていました。ちなみにヘッジファンド時代は、たったの4年で上級副社長に就任するほど優秀な人物でした。
しかし彼は、1994年7月5日にこの輝かしいキャリアを捨ててAmazon.comのCEOとしての道を歩み始めるのです。
実は、サラリーマンとしても非常に優秀であったことは意外と知られていません。
Amazon(アマゾン)の創業から上場へ:Amazonはガレージから始まった
1994年にべゾスは、仲間とともに自宅のガレージで、Cadabra.com(カタブラドットコム)を開業します。
当初、べゾスは資金を集めるのに相当な苦労をしたそうです。ネット通販が主流でなかった当時、上手く行くと思った人はほとんどいなかったそうです。結局出資をしたのは両親と一部の投資家だけでした。
創業から約4ヶ月後には、世界三大河川のアマゾン川をイメ―ジしたAmazon.comがここに誕生します。

起業からの躍進は目覚ましく、ローンチ後から最初の1ヶ月で、アメリカの全州と45カ国で書籍を販売しています。
ちなみに、書籍を販売した理由として、多くの商品の中で誰がどこで扱っても品質のブレがないという利点があったからです(出典:田口冬樹(2019)「流通イノベーション研究 : Amazonの成長過程と競争優位の源泉」専修大学経営学会)。
- Amazonは、自宅のガレージで、Cadabra.com(カタブラドットコム)を前身として始まった
- 書籍を販売した理由として、多くの商品の中で誰がどこで扱っても品質のブレがないという利点があった
そしてなんと、設立からわずか3年後の97年にナスダック上場を果たしています。上場後の1998年以降、書籍だけでなく時には音楽とDVD、玩具と家電、スポーツやアパレルなど取扱い商品を拡大していきます。
転落の危機からマーケットプレイスによる躍進
当初、Amazonは非常に好調なスタートを切ったといえます。しかし、2001年にITバブルが崩壊します。ITバブル崩壊とは、IT関係の株価が大暴落した出来事です。
Amazonの株価も大幅に下落しました。
この危機を乗り越える契機になったのがマーケットプレイスです。マーケットプレイスとは、Amazonのプラットフォームを他のEC事業者が利用して出品ができる仕組みのことです。
これまで、Amazonは自社で商品を仕入販売する企業でした。マーケットプレイスによって他のEC企業にプラットフォームを提供して手数料を稼ぐようになったのです。

ここからECプラットフォーム企業として再スタートすることになります。
また、マーケットプレイスは、2021年10月5日時点で事業者数は約16万社に達しています。
- 2000年代初頭、AmazonはITバブルの危機をマーケットプレイスで乗り切った
- Amazonのプラットフォームを他のEC事業者が利用して出品ができるサービス
4事業の多角化
Amazonは、2000年代前半以降、EC業界以外にも手を伸ばすようになります。
2005年には、会員向けに無料配送を提供するAmazonPrimeをスタートします。翌年にはサーバーを提供する事業AWSを、2007年には電子書籍サービスのKindleをローンチしています。

さらに実店舗の展開をアメリカですでに試験的に導入しています。もはやAmazonはEC企業にとどまらない存在となっています。
Amazonは「地球上で最もお客様を大事にする企業」【企業理念】
Amazonがなぜそこまで我々の生活に浸透し、時価総額200兆円の企業にまでなる事ができたのでしょうか?結論からいうと
「地球上で最もお客様を大事にする企業であること」
を理念にもった企業だからと言えるでしょう。
Amazonのサイトには「リーダーシッププリンシプル」というページがあります。最初の項目「Customer Obsession」
いかなるときもカスタマーを起点として考え、行動する。それにより、可能な限り簡単な仕組みを作る。カスタマーからの信頼を獲得、維持するために全力を尽くす
と書かれています。この「カスタマーを起点とする」は姿勢は創業以来一貫して変わらない原則なのです。

- Amazonが成功したのは、「地球上で最もお客様を大事にする企業であること」を理念として掲げていたから
Amazonの強み【ビジネスモデル】
では、なぜここまで顧客のニーズを満たすようなサービスを続々と提供することができたのでしょうか?
それは、競合企業にはないAmazonならではの「強み」があったからです。具体的には
- 圧倒的な品揃え
- 利便性の高いアプリ
- 圧倒的な流通網による低価格の実現
- 惜しみない投資
が挙げられます。

これらはすべて徹底的に顧客に向き合う事を目的としたものなのです。
圧倒的な品揃え
顧客にとって、選択肢は多いに越したことはありません。Amazonは圧倒的な品揃えを用意することで、顧客に大量の選択肢を提供しています。
Amazonはなぜここまで圧倒的な品揃えを実現できているのでしょうか?それは、
- Amazon自社仕入商品
- マーケットプレイスに出店している商品
の二つが掛け合わされているからです。

Amazonは当初、書籍のみの販売からスタートした会社です。その後、取り扱い商品を増加させていきました。しかし、自社仕入だけですと商品数にも限界があります。
そこで、2001年から始まったマーケットプレイスが大きな役割を果たしました。他社が、マーケットプレイスで出品してくれるおかげで、商品数が増えていくのです。
Amazonは出店者から手数料を取りながら、商品数を増やすというコストパフォーマンスの高い方法を実現しているのです。
- Amazonは圧倒的な品揃えを用意することで、顧客に大量の選択肢を提供している
- 他社が、マーケットプレイスで出品してくれるおかげで、商品数が増える
アプリ内の商品検索の利便性の実現
続いて、Amazonアプリは検索性の高さで他の競合を圧倒しています。それは、レコメンデーションによって実現されています。

商品のラインナップが豊富である点は先に説明した通りです。しかしたくさんの商品があるから良いわけではありません。
欲しい商品に顧客がたどり着かなければ意味がありません。
顧客にとって欲しい商品が見つからないことは不幸なことです。
そこで通常の検索システムでは限界があるので、Amazonは1995年にレコメンデーションのサービスをアプリに実装しました。
これは、ある顧客が特定の商品を購入した場合、その顧客データに残っている購買履歴からパターンを分析し、その個人に合わせたコンテンツを提案するという仕組みです。

これにより、容易に欲しい商品に顧客がたどり着くことができます。
レコメンデーションシステムは、顧客に対して「欲しいもの」を効率的に提示したのです。
- 商品数が増える中、レコメンデーション機能によって効率的に顧客に欲しい商品を提示するようになった
流通網の支配による低価格の実現
Amazonは流通網の充実にも力を入れてきました。それが2006年に導入したFBAという仕組みです。
FBAの正式名称はフルフィルメント・サービス(FBA:Fulfillment By Amazon)
です。在庫の保管・受注管理・出荷業務・出荷後のカスタマーサービスをAmazonが代行します。
FBAにより、最も時間が取られる受注や出荷、カスタマーサービスに時間を割く必要がなくなりました。また、EC業界への参入も容易になりました。
さらに、FBAのサービスの詳細について説明していきます。
- 倉庫の設置
- 受発注の自動化
- 配送の合理化
まずは、FBA倉庫を設置することにより、出品者の商品を保管することが可能になりました。

FBA倉庫での作業は、受注発注業務もロボット(Amazon Robotics)が代行します。これにより、人件費の削減も実現しています。現時点では、まだ人による作業が必要ですが長期的には完全ロボット化を進める予定だそうです。
また、配送にかかるコストを徹底的に削減しました。FBA倉庫を中心とした物流ネットワークをシステムによって合理化することで実現しました。
顧客の住所とFBA倉庫の位置をソフトウェアから特定し、最も効率的かつ最短の経路で商品を配送をするのです。
3つの施策は、出品者の利便性だけでなく顧客に対して低価格で商品を提供することも可能にしています。
- FBA倉庫を設置することにより、出品者の商品を保管することが可能に
- 配送にかかるコストを徹底的に削減
- 顧客に対して低価格で商品を提供することも可能に
4 惜しみない研究投資:キャッシュフロー経営
Amazonの年次報告書を見ると、Amazonの売上高は3861億ドルに達しています。1998年以降の売上推移を確認しても右肩上がりで推移しています。
しかし、純利益(売上からコストを除いた金額)をみてみると、売上の伸びはそこまでではありません。むしろ赤字を計上している年次もあります。
なぜか?それは、研究開発投資にお金を回しているからです。

Amazonは売上や利益を全く重視しません。それよりもキャッシュフローに対して重点をおいています。キャッシュフローとは手元にあるお金の流れのことです。
Amazonは稼いできたキャッシュのほとんどを投資に回しているのです。
これまで説明してきた、FBAのシステムや、後に説明する実店舗展開、AmazonPrimeなど積極的な投資を続けているのです。
そしてこれからも、「顧客のため」に投資を止めることはないでしょう。
- Amazonは売上よりもキャッシュフローに重点を置いている
- Amazonはキャッシュのほとんどを投資に回している
今後のAmazonの展開
ここでは、今後のAmazonがどのように展開していくのか、最近の動向からお伝えしたいと思います。
1 AmazonPrimeによる顧客の囲い込み
2005年から顧客がAmazonPrimeという会員プログラムを実施しました。会員になることで、
- 配送料無料
- 最短当日配送
といったサービスを受けることができます。
既存のネットショップは、配送料を顧客が負担することが当たり前でした。そして、この配送料が顧客に購買への抵抗感を生み出す原因になっていました。
そこでAmazonは、「AmazonPrime会員は配送料を無料にする」という方針を打ち出し、顧客の大量購入を促進することを可能にしました。みなさんも配送料無料だから大量にポチってしまった事があると思います。

配送料が無料であることにより、購買へのハードルがさりました。実際に非会員とプライム会員でコンバージョン率に5倍もの差があるそうです。
アメリカでは高所得世帯の70%がプライム会員に加入していると言われています。
- AmazonPrime会員に対して配送料無料の方針を打ち出し顧客の大量購入を促進した
2 Amazon WEB Serviceによる新事事業領域の開発
AmazonがEC事業の枠を飛び越えた一つの象徴的なできごとは、AWSというプロバイダー事業に参入した事です。AWSとはクラウドコンピューティングを使用したサービスの事です。
クラウドコンピューティングとは、インターネットを介してサーバーやストレージ・データベースといったコンピューターを使用したサービスの事を指します。

このサービスの利用者はビッグデータの処理からサイト運営まで多様なネットサービスを利用することができます。
AWSはピンタレストやインスタグラムなどの膨大なデータベースを利用するSNS、大容量の映像を取り扱うNetflixなどで利用されています。その他、政府機関の NASA や CIA など国家機密情報を抱えた組織も AWS を利用しています。
このように、EC事業だけでなくプロバイダー事業に進出したAmazonはインターネットのインフラを担う企業としての側面を持つようになったのです。
- AWSというプロバイダー事業に参入しインターネットのインフラを担う企業としての側面を持つようになった
3 AmazonGOによるリアルへの進出
実は、Amazonは実店舗への進出を始めています。そこでキーとなるのが人工知能(AI)です。Amazonは画像認識や言語認識など多様な研究を進めてきました。
これらのAmazonのAI技術をリアル店舗に活用した結果生まれたのがAmazon GOなのです。
スローガンとして、「No Lines. No Checkout. (No, Seriously)」をスローガンに掲げているように、行列なし、レジなしで簡単に利用できるのです。

これまでは、有人レジに並んで支払をして店を出ていました。しかし、Amazon Goは、好きな商品を取って店を出るだけで支払が済むのです。これを可能にしているのがAIの技術です。
これにより顧客は、行列に並ぶ必要がなくなり、Amazon側も人件費の削減をすることができるのです。
現在、アメリカでは既に26店舗が展開されています。
このようにAmazonはEC事業の枠を超えるような投資をし続けています。これも恐らく「顧客」を起点に考えて生み出されたものです。
Amazonの挑戦は終わりません。
- AmazonはAIの技術と所有するビッグデータを活用し実店舗へと進出
- AmazonGOは会計が要らず人件費を削減できる
まとめ
先に述べたようにAmazonの企業理念は
「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」
でした。これこそがAmazonが成功した本質的な理由なのです。このことは、彼らが生み出している売上をみれば明らかです。
そして、そのAmazonが運営するプラットフォームでビジネスを行うEC事業者は、この「顧客重視」という意識を忘れずに事業を行うべきなのです。
これはどんなビジネスでも当てはまる原則であり本質です。お客様がいて初めてビジネスは成り立つものです。つい目先の利益ばかりを気にしてしまうものですが、改めてお客様の存在を意識することで、本当の意味での成功が見えてくるのではないでしょうか?

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