包括的にEC事業の支援を行うコマースメディア株式会社を経営し、Shopifyエバンジェリストとしても活躍される井澤孝宏さん。ECの運営体制を整えることが重要だと日々発信される井澤さんに、その主張の背景について詳しく伺いました。
【ご本人プロフィール】
名前:井澤孝宏
職業:コマースメディア株式会社代表 / Shopifyエバンジェリスト
SNS:Twitter
ECコンサルとEC運営、両方を経験したからこそ気付けた「ギャップ」が創業の理由
ー井澤さんは楽天でのECコンサルタント、ベンチャー企業での自社EC立ち上げを経験された後、独立されていますよね。その背景は何だったのでしょうか。
新卒で入社した楽天を経て、ベンチャー企業にて自社ECの立ち上げ・運営を経験したことが大きな転機となりました。楽天ではECコンサルタントとして、「売上アップ」に焦点を当てたアドバイスをしていたのですが、実際に事業者側に自分が回った際に、現場の運営にかかる負荷が想像以上に高くて。売上アップのためにすべきことはわかっているんですが、運営体制が整っておらず、なかなか注力できなかったんです。そんな状態にある企業が他にも多く存在するのではないかと感じ、商売を通じて日本の産業を盛り上げたい気持ちもあったため、コンサルとして独立しました。
そして独立してから色々な企業からお話を聞いていると、やはりどこも似たような課題を抱えていたんですよね。このような課題を解決するためには、口でアドバイスするだけではなく実際にその企業に入り込み、物流やカスタマーサポート等のバックヤードの整備を支援する必要がありました。1人でできる支援には限界があるので、徐々に体制を拡大していき、今のコマースメディアがあるんです。
キーワードは「美しいEC運営」。その必要性と構築のポイントとは。
ー多くのEC事業者が抱えている課題について、具体的に教えてください。
「美しい運営体制」が整っていない企業が非常に多いです。ECってマーケティング・販促等フロントの「攻め」の業務と、受注処理やカスタマーサポート、物流といったバックヤードの「守り」の業務の2つに大別できますよね。この二者間での情報格差が無く、滞りなく運営を回せる状態が「美しい運営体制」だと私は考えているんです。しかし多くの企業で、この「攻め」と「守り」の情報の連携が不十分で、バランスが取れていないんです。例えば、マーケ側が強くてバックヤードが疲弊していたり、バックヤードが強く、マーケ側がやりたいことが抑制されている等です。
ー美しい運営体制が整っていないと、どんなデメリットが生じるのでしょうか。
簡単に言うと、売上にダメージが直撃します。バックヤード側がマーケ側の取り組みに対応できていないと、顧客接点でトラブルが発生し、顧客体験を損ないます。マーケの企画した「〇円以上購入でプレゼント!」キャンペーンにバックヤードが対応できず、プレゼントの配送に不備が生じる、なんてことはその一例です。反対にマーケ側にバックヤード都合の制約を課しすぎると、十分な販促施策を行えない、ということも起こります。
さらに、最悪の場合モールからの退店を余儀なくされる可能性があります。というのも、ユーザー体験が損なわれればエンドユーザーからそのモールは選ばれなくなるため、Amazonや楽天市場をはじめ、モール各社はエンドユーザーの体験を非常に重視しているからです。運営体制が整っていなければ、トラブルが発生しやすく、ペナルティを受ける確率も高まります。モール各社が事業者に求めるレベルは年々高くなっていますから、より一層注意が必要でしょう。
ー「美しい運営体制」を整えるには何をすれば良いのでしょうか。
まず、コミュニケーションを取ることが第一です。トラブルが発生する企業では、「攻め」と「守り」の間でのコミュニケーションが断絶しているケースが往々にしてあります。
その上で、一元管理システムの存在は欠かせません。「攻め」と「守り」両者の繋ぎ目となって受注や商品、顧客に関する全ての情報を集約する役割を持ち、両者の連携の助けとなるからです。私はECにおける施策は、全て一元管理システムから逆算して立てられるべきだと思っているんです。自社の方向性と合致する一元管理システムを導入し、そのシステムでできることと、行いたい施策をすり合わせた上で、実行していく。そうすればマーケ側で立案したキャンペーンに、バックヤードが対応できずに事故が起きる可能性は非常に少なくなります。
ー一元管理システムは、多店舗展開の際に必要なシステムという認識が強いのではないでしょうか。導入のベストなタイミングはいつなんでしょうか。
売上を上げていきたいと考えるなら、運営する店舗が一店舗の段階から導入するのがベストです。弊社が支援に入る場合、一定売上規模以上の企業様が多いので、殆どの企業様が一店舗の段階から一元管理システムへの繋ぎ込みを行います。
その理由は、日本でEC事業を成長させていく上での大前提として、多店舗展開は欠かせないからです。Amazon、楽天市場などの巨大モールにはそれぞれそのモールでしか買わない固定客がいます。日本において売上アップを目指すならば、販売チャネルを広げることはハードルが低い手段と言えます。
販売チャネルを広げる、つまり多店舗展開をする可能性が少しでもあるならば、一店舗の段階から一元管理システム起点で運営体制を構築すべきです。そうしておけば、もしどこかのタイミングで販路拡大をしたくなったら、必要な販売チャネルと繋ぎ込める。その方が圧倒的に楽ですし、結果的にコストもかからないんですよね。
井澤さんの見るEC業界の変化。その中で企業が生き抜くためには。
ー創業から5年経ちましたが、EC市場はどう変化していると感じますか? また、その変化に対してEC事業者は何をすれば良いとお考えですか?
まず、EC事業者の数はコロナ禍も相まって爆発的に増えましたね。購買の総量も増えてはいるのですが、それ以上に競合が増えていて、広告費が高騰するなど、売上は上げにくくなっているのが現状です。そのため、利益を出すためにはコストカットが重要になってくるでしょう。
しかし、何でもかんでも削減すれば良い訳ではありません。適切な投資対象の取捨選択が必要で、特に効率化のためのシステム投資は長期目線ですべきだと私は考えています。というのも、ECの産業ってできてまだ20年足らずなんですよね。なので急激な市場の伸びに対して圧倒的に人材が育ってないんです。効率化・省人化を進めずに人手で補い続けるのは、現実的に難しい局面に来ています。
また、事業者の増加のみならず、ツールや販売チャネルも多様化し、その盛衰も激しいです。WEBの技術はアップデートが非常に早いので、事業者だけで全てをキャッチアップし、対応し続けるのはもはや不可能です。自社に合った相談先を見つけ、適宜アドバイスを受けながら運営をしていくのが得策でしょう。
そして、何よりも重要なのは、常にプラットフォームの変化に対応ができる準備をしておくことです。最近ではShopifyやBASEの伸びが著しく、ここ数年で大きく広まってきました。新しいプラットフォームを自社の運用にのせていくためには開発工数等大きな投資が必要です。こういった際も一元管理システムがいち早く対応してくれますので、一元管理システムを中心に、運営の全体設計がなされていれば、最小工数で新しいプラットフォームの追加をしていくことができます。
ー最後に、ECに携わる皆さまに井澤さんからメッセージをお願いします!
ECは良くも悪くもお客さんの評価が直接業績に結びつくビジネスです。サボっているとすぐに足元をすくわれますし、変化も激しく、生き残るためには努力が必要な業界です。その一方で、やったことがそのまま反映されるため、やりがいは大きいと思います。
国土の小さい日本で、しっかり産業が良くなっていくにはECの力がとても重要だと私は考えています。支援する立場から、一緒に盛り上げていきたいので、運営に誇りを持ってやっていきましょう!!
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