バッドボーイズ・佐田正樹【やりたいことしかやらない】なるべく遊ぶ生き方

ニューアキンド

元ヤンでツッパリキャラが特徴的なお笑い芸人・バッドボーイズ・佐田正樹さん。趣味のDIYが注目を浴び、DIYチーム「佐田工務店」の棟梁でもある佐田さんは、現在チャンネル登録者数68万人(※)を誇る人気YouTubeチャンネル「SATAbuilder’s」を運営し、活動の幅をさらに広げています。
(※)2021年6月末時点

2021年5月公開の記事で極楽とんぼ・山本圭壱さんに、「ニアセ」を盛り上げるためのヒントを伺ったところ、「やんちゃ坊主のバッドボーイズの佐田くんを紹介しますよ」と推薦していただきました。

数珠つなぎで実現した今回のインタビュー。極楽とんぼ・山本さんが佐田さんを推薦した理由を探るとともに、佐田さんのパーソナルな部分に迫りました。

【ご本人のプロフィール】
名前:佐田正樹(twitter
年齢:42
肩書:お笑い芸人
趣味:ショッピング・観葉植物(ガーデニング)・金魚・キックボクシング・ラジコン・ゴルフ・柔道・ソフビ人形収集・DIY
特技:バイクのコール・車の車庫入れ・DIY

ルールを守りながら、自分の道でツッパリ続ける

— 今回のインタビューは、極楽とんぼ・山本さんからの推薦により実現しました。山本さんのインタビューは読みましたか?

佐田:読みましたよ。バッシングされた際、「2割は自分たちのファン、6割は何とも思っていない人、残りの2割は叩くために身構えているやつらだ」という考えの“2・6・2の法則”は、良いこと言っているなあと感動しました。でもこれ、もとは加藤さんの言葉なんですよね。僕、山本さんより加藤さん派なので、山本さんの言葉だったとしたらそこまで感動しなかったのかもしれません(笑)。

— 今回、なぜ山本さんは「ニアセ」に佐田さんを紹介したと思いますか? とても真剣な表情で佐田さんを紹介してくださいましたが……。

佐田:多分、面倒くさいことを押し付けたかっただけですよ! 山本さんが真剣な顔をしているときはふざけているときですから。それがあの人の本質なので騙されたらダメです(笑)。

— そうなんですね(笑)。今日は佐田さんがどんな人なのか、いろいろと伺っていきます。佐田さんはツッパリキャラで有名ですが、ツッパリ始めたきっかけは何だったのでしょうか?

佐田:時代に流されたんです。仲村トオルさん主演の映画『ビー・バップ・ハイスクール』が流行って、不良という存在自体が格好良かったんです。僕は親や学校に不満があって、グレて不良になったわけではなく、格好良いと思ってツッパっていました。僕、お母さんが作る料理、大好きですからね(笑)。

— 現在のご自身のツッパリ具合は当時と比べてどうでしょうか?

佐田:今は落ち着いています。というか、ルールを守っているつもりです。周りに迷惑をかけないというのが僕のルールです。昔みたいにバイクをブンブン吹かしたり、蛇行運転をして交通を妨げたりするのはルール違反です。ルールを守っていないツッパリとは一緒にされたくないし、関わりたくもないです。

— 佐田さんはお笑いの劇場やYouTube、そしてDIYの仕事と幅広く活動されています。失礼ながら、筆者はテレビで佐田さんを見たことがありません……。

佐田:失礼な、テレビにも出てるわい(笑)! 

— すみません。佐田さんのお仕事における力の配分や両立の仕方が気になります。

佐田:やりたいことをやっているので、全ての仕事に全力で取り組んでいます。力のかけ方を仕事によって変える、というのはないですね。大切にしているのは、なるべく遊べる状態でいること。僕は吉本に入ってからマネージャーに「仕事をもっと入れてほしい」と言ったことがないんです。やりたい仕事は自分で決めています。

— そんな中、「ニアセ」のインタビューを受けてくださりありがとうございます!

佐田:そりゃ山本さんの名前を出されてしまったら受けるしかないじゃないですか! 仕事に対する姿勢でいえば、予定を組むのが嫌いなタイプなんです。特に今は仕事を入れすぎてしまい、仕事メインな生活になっているので、来月はあまり仕事を入れないようにしたいです。

何にも縛られずに過ごすために、その日の気分を重視する

— 日々忙しくされている佐田さんですが、YouTubeやDIYもやりたいことの一環なのでしょうか?

佐田:YouTubeは作家をつけず、全部自分で一から企画してやりたいことだけをやっています。基本的にDIYも、仕事としては受けていません。それと、DIYでは同じものは二度と作らないと決めています。

他にも僕なりのルールがあって、先輩からDIYを頼まれても断りますが、後輩から頼まれたら協力します。僕は先輩の言うことはあまり聞かないんですが、後輩は好きなんですよ。自分で言うのも変ですが、面倒見のいいタイプです。DIYは一応お金をもらいますが、仕事の感覚ではないですね。

— YouTubeは、作家さんと協力して運営する芸能人も多い印象です。佐田さんはご自身で運営していて、企画が思い浮かばず行き詰まることはないですか?

佐田:ないですね。やりたいことが常に思い浮かびます。たまに「YouTubeのチャンネル登録者数を増やすためにどうしたらいいですか?」と質問してくる人がいるんですが、そういう人はYouTubeをやらない方がいいです。向いてないですよ。

僕はYouTubeが自己表現の場だと思って取り組んでいるんですよね。僕のチャンネルには登録者数が68万人もいてすごいと言われますが、登録者数を気にしたことなんて1度もないし、YouTubeでお金を稼ぎたいとも思っていません。登録者数100万人を目指しているわけでもなく、僕が楽しいと思うことをやって、その結果、見てくれる人が面白いと思ってくれたら僕はそれで満足なんです。

— 先ほど、「全ての仕事を全力でやっている」と伺いましたが、芸人とDIY、どちらの仕事の方が多いですか?

佐田:難しい質問ですね。何をもってお笑いとするのか、何をもってDIYとするのか。 たとえばDIYのテレビ番組にお笑い芸人として出ることもあります。そうなるとどっちの仕事? ってなりますよね。

— どちらかが本業で、もう一方が副業ということではないのですね。

佐田:はい。僕は全てに全力で取り組んでいて、片手間ではやっていないので。

— 引き受けた仕事に力を抜くことがない一方で、佐田さんは「なるべく遊びたい」とおっしゃっていました、プライベートな質問になりますが、休日は何をして過ごしていますか?

佐田:最近は風が気持ちよくなってきたのでツーリングですね。ひとりで行くこともあれば、ツーリングのグループLINEに「今日走りにいかない?」と投げかけて、都合が合う人がいれば一緒に行きます。休日も予定をあらかじめ決めたくないので、何をするかはその日の気分で決めています。

少年院の慰問をきっかけに、仕事のやりがいが変わった

— その時々の気持ちに素直に動いているんですね。仕事の話に戻しますが、やりがいを感じる瞬間はどんなときですか?

佐田:劇場で笑いをとるとやりがいを感じますが、それよりも「ありがとうございました」という言葉をもらえるのが1番の達成感です。

そう思うようになったのは4〜5年前からですね。ちょうど少年院の慰問を始めた時期でした。そこで生徒たちから「ありがとうございました」という言葉やお礼の手紙をもらうと、すごく力になれたと感じるようになったんです。

慰問を始めるまでは、お笑い芸人としてお客さんを笑わせることに燃えたんですが、慰問をきっかけに、仕事というのは感謝されるのが達成感なのではないかなと考えるようになりました。

— 少年院の慰問ではどのようなお話をされるのでしょうか?

佐田:少年院の生徒たちの多くは、大人を信用していないように見えます。だから、僕を信用してもらうために「僕は君たちの味方です。僕のことを知らない人もいるでしょうが、僕も過去は君たちと同じように悪いことをしていました」という話をして、講演をしています。

そのうえで、真剣に伝えるんです。自分の過ちは自分で責任を取りなさいと。子どもは親が責任を取ってくれるけれど、「責任を取れる人が大人なんだ」と伝えています。

— 少年院の慰問を始めて佐田さん自身に起こった変化はありますか?

佐田:この活動は今後も続けようと思ったことと、自分の経験を人に還元していこうと考えるようになりました。その理由を自分ではまだ理解できていない部分もありますが、過去ツッパっていた自分への罪滅ぼしかもしれないです。

「あのときこうしていたら良かった」という自分の経験を、生徒たちには早く知ってもらいたい。僕の話をきっかけに、表情が変わっていく生徒たちを見ながら、自分自身を見つめ直しているのかもしれません。講演をしている僕がちゃんとした大人じゃなかったら生徒たちは聞く耳を持たないじゃないですか。かっこ悪い大人を見せちゃいけない、かっこいい大人でいたいと思っています。

先輩の言うことは聞かない。でも華丸さんは別

— 佐田さんの面倒見の良さが、少年院の慰問でも発揮されているんですね! 佐田さんは先輩からDIYを頼まれても断わるとおっしゃりましたが、慕っている先輩はいますか?

佐田:博多華丸・大吉の華丸さんですね。人生のターニングポイントの全てに華丸さんがいたんです。まるで僕の脳にGPSがつけられているかのように、何か相談したいことがあると、華丸さんからちょうど連絡があるんです。

— 華丸さんといえば、佐田さんと同じ福岡県出身で、吉本興業の先輩でもありますね。

佐田: はい、福岡時代からお世話になっている先輩です。少年院の慰問に取り組み始めた当時、「福岡でヤンチャしとったもんが偉いわ、尊敬するわ」と言ってくれたり、「この映画観たや? お前はこの映画を観とった方がいいぞ」と、僕の活動に関連した映画をオススメしてくれたりするんです。

華丸さんといえば、忘れられないエピソードがあって。僕が結婚したときのことです。披露宴の司会を博多華丸・大吉のおふたりにお願いして、快く引き受けてくれました。二次会で華丸さんが海援隊の『母に捧げるバラード』を歌ってくれたんです。この曲はほとんど語りの曲で、お母さんが息子に愛のある説教をするパートがあるのですが、そこを全部替え歌で僕への説教にしてくれたんです。

それを聴いていたら、うれしさや悔しさ、感謝などいろいろな気持ちがこみ上げてきて号泣してしまいました。そのときほど人生で泣いたことはありません。華丸さんは僕のことを誰よりも理解してくれる先輩であり、僕の感情をぐちゃぐちゃにした唯一の人ですね。

— 華丸さんから佐田さんへの愛情をすごく感じるエピソードですね。また話は少し戻るのですが、「なるべく仕事をしたくない」という佐田さんの目標を教えてください。

佐田:早く仕事を辞めたいです。できることなら55歳くらいには早期退職をして、遊んで暮らしたい。楽しく暮らすのはお金がなくてもできると僕は思っています。

偏見ですが、お金持ちで幸せそうな人、僕はあまり見たことがないんですよね。これは言ったらいけないのかもしれませんが、人ってどこか肩書きで相手を判断してしまうところがあると思っていて。肩書きがあるから人が寄ってくるだけで、その人自身に人望があるのかはわからない。そんな「フィルター」のない世界で生きていきたいです。

地位や名声で人付き合いを決めるのではなく、「こいつの知識が面白いからこいつと遊ぶんだ」という感覚で55歳からは暮らしていきたいです。これからも、そのときに楽しいことをやり続けていきたいですね。

— 最後に、「ニアセ」読者を今後もっと増やすためにはどうすればいいか、アドバイスをいただけるとうれしいです。

佐田:極楽とんぼの山本さんから僕の流れは、ストレートを2球続けて投げているようなものなので、次は変化球が必要。僕と真逆の人に話を聞くことですね。相方の清人を紹介します。仕事の面では一緒の考えだと思いますが、人間的な部分では僕とは全然違う考え方をしているので面白いと思いますよ。

【編集後記】

軽快なツッコミと共に、自身のパーソナルな部分をたくさん話してくださった佐田さん。仕事をあまりしたくないという意外な希望に驚かされたものの、先輩 華丸さんとのエピソードから、佐田さんの感情的な一面を見ました。

ツッパリキャラの佐田さんはどんな人なのか。答えは、相撲の突っ張りのように、「物事に全力で立ち向かっていく男」でした。

姫野桂

フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)、『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)、『生きづらさにまみれて』(晶文社)。趣味はサウナと読書、飲酒。

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