ヒット商品を連発!木村石鹸の目指す、新時代を生き抜く「自律型組織」

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「SOMALI」や「12/JU-NI(ジューニ)」といったヒット商品を生み出し、社員の幸せを第一とする経営が話題の木村石鹸工業株式会社。今回は四代目代表の木村さんに社員の幸せを重要視する背景やヒット商品開発の裏側、これからの時代を企業が生き抜くための戦略について伺いました。

キーワードは「自律性」。社員が幸せに働くための木村石鹸での取り組み。

ー木村社長は社員の幸せを第一にされると聞きました。詳しく教えてください。


人って誰しも、幸せな人生を送りたいと思うものですよね。そして、人生の中で働く時間ってとても長い。その時間が苦痛だったら悲しいじゃないですか。私自身、木村石鹸の代表に就任する前は、友人と起業したことがあるんです。その理由は色々ありますが、気の合う仲間と一緒に楽しく働きたい、自分たちの居心地の良い環境を手に入れたい、というのも大きな理由の一つでした。もちろん大変なことも沢山ありましたけど、その時間はやっぱり楽しかったんですよね。自分の会社の社員にも、人生の大半を占める働く時間を楽しんで欲しいんです。そしてこの「楽しさ」を感じる上で重要なのは、自分が選択肢の中から選んでその仕事をしているんだ、という自己決定感だと思っていて、そのために木村石鹸では様々な取り組みを行っています。

ー具体的にはどんな取り組みをされているんでしょうか。

まず意識しているのは、役割を敢えて曖昧にすることです。役割を明確にしてしまうと、どうしても他責の心が生まれてしまうんですよね。自律を促すため、木村石鹸では敢えて組織の箱を与えずに自分でどんどん仕事を作りにいってもらうような体制にしています。
もちろん評価とか、管理する側はものすごい大変なんですけどね…。(笑) でも3000名程の社員がいてもそのような仕組みを実現されている企業もありますので、いけるところまでいってみるつもりでいます。

また、強烈に自律を促すことができたのは、評価制度の変更ですね。評価制度を自己申告制に変更したんです。一般的な企業では、その社員の期間内に残した成果を元に報酬が決定される、査定型の評価制度が適用されていると思うのですが、うちの場合は未来への投資という観点で報酬額が決定されます。期の初めに、その社員が今後会社に対してどんな貢献が出来て、だからいくらの報酬額が欲しいのか、というのをまず自己申告してもらうんです。それに対して会社がいくら投資できるのかを判断し、報酬を決定します。もちろんこれまでの成果も考慮に入れますが、信頼ややる気・情熱といったものも判断材料にしていきます。この制度に変更してから自律性はかなり高まりましたね。

その上で、失敗を許容する雰囲気を醸成することはとても重要だと思っています。やっぱり誰しもチャレンジをして、失敗することって怖いですからね。私の場合、メディア等で公に社員の失敗を笑い話として話してしまうこともありますよ。

社員の自律性が事業に与えるインパクトの大きさ

ー様々な取り組みをされているんですね。自律性をここまで重視する背景は、社員の方の幸せ以外にもあるのでしょうか?

はい。事業の状況的にも、社員の自律的な行動の必要性が高まっていた、という背景もあります。というのも、私の先代までは木村石鹸は売上の大半が家庭向け石鹸のOEMで構成されており、商品は作っても、それを売るところには関わっていなかったんです。それ故に、商品の見せ方や売り方、最終価格を決めることができず、歯がゆい思いをすることが多くて
例えば、2006年以降は、デフレの影響で最終価格を上げにくい状況が続いている一方で、競争に勝つための機能性強化も必要となり、原価率がどんどん上がっていってしまったんですよね。
また、私が木村石鹸に入って最初に携わった台所洗剤なんかは、手荒れしにくいことが売りの本当に良い製品だったのですが、なぜか全然売れないなんてこともあって。社内ではうちの製品はダメだ、みたいな雰囲気が流れることもあったんですが、私は売り方の問題だと思っていたんです。実際に売り方を変えてみて、当初よりも高い値段でも売れるようになったのが「SOMALI」という製品でした。

ー実際にはどのように売り方を変えられたのでしょうか?

変えたのは主に製品の見せ方です。当時の台所洗剤って、安心安全を謳った素朴なデザインのものや、ドラッグストアの棚で目立つために蛍光色を多用した、悪く言えば「ダサい」デザインのものが多かったんです。一方で、インスタグラム等SNSではおしゃれな水回りの写真を投稿する人が増えていて。そのような方々は、おしゃれな雰囲気に合うよう、海外の製品を使っていたり、無印のボトルに詰め変えていたりしたんですよね。市場のニーズに対して業界が追いつけていないと感じ、デザインやブランディングに力を入れて販売した所、「SOMALI」はよく売れるようになったんです。

このような背景があり、「売るところにも覚悟を持って取り組んでいきたい」となった時、激しい市場の変化に対応するためにはとにかく打ち手を増やしていく必要がありました。そのため、社員には自律的にどんどん新しいことに取り組んでいって欲しかったんです。

ー実際に自律を促す中での成功事例などはありましたか?

「12/JU-NI(ジューニ)」のヒットはその一つですね。これはまさに、とある一人の社員の自律性から生まれた商品でした。その社員は、シャンプーの製品開発に長く携わっている人間だったのですが、仕事の合間を縫って、とにかく髪に良いものを詰め込んで開発したのが「12/JU-NI(ジューニ)」でした。

シャンプーは取り入れる成分が多ければ多いほど、沈殿が生じやすくなり、製造の難易度が上がり、職人技が求められます。「スゴイのができました!」と開発者から見せられた当時は、もうとんでもないものができたと驚きましたね…。

ただ難しい点もありました。シャンプーの開発って普通はマーケティング的な観点で、例えば「ノンシリコーン」のようなお客さんに聞こえの良い要素を取り入れていくんです。一方でこの「12/JU-NI(ジューニ)」は、そのような観点は一切無視で、本当に髪に良いことだけを追求したものでした。なので一言で説明できるようなものではなく、直感的にメリットを伝えることが難しかったんです。他の製品と同じような打ち出し方をしていたら消費者の方から選ばれることはできないと思い、採用したのがクラウドファンディングでした。これならじっくりと説明を聞いてもらい、共感いただけた方から支援をいただくことができますから。これが功を奏して、「12/JU-NI(ジューニ)」は晴れて大ヒット商品となったんです。

木村社長が見据える未来とその打ち手

ー変化の激しい時代に経営者として意識していることを教えてください。

自分自身も社員も、変わることを恐れないマインドに切り替えることは非常に重要ですね。繰り返しになりますが、失敗をすることは大前提として、とにかく打ち手を増やしていく必要があります。もちろん私からの発信で物事を進めることもありますが、市場に最も近いのは社員ですから、自律的にチャレンジできる人材を増やしていきたいんです。そのために先にも述べたような、失敗を許容するメッセージングや組織体制の変更、評価制度等をブラッシュアップしてきました。

また、社員にとっても企業のあり方は変わってきているように思います。ひと昔前まではプロジェクトは社内で完結することが多かったのですが、最近では社内外関係なく、様々な人材が入り混じって進んでいます。達成したいプロジェクトのため、どの企業のアセットを活用するのが最適なのか。そんな風に、企業は社員にとって、何か物事を成し遂げるためのプラットフォームに近いものになっていくと思うんです。なので、できるだけ社員が企業のアセットを自由に活用して、プロジェクトを成功に近づけていけるよう、環境を整えていきたいですね。

木村石鹸の皆さん

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