【夏休み特別講習】企業の融資講座:間接金融

ニアセ寄稿

登場人物

伴苦博士・・・銀行と証券会社とベンチャーキャピタルを渡り歩き、疲れてへたっているところを拾われた、ニアセの金融相談役
たかし君・・・伴苦博士の近所に住むちょっとませた男の子。借りたお金を踏み倒すのが得意。
 

伴苦博士
どうもごきげんよう。ワシの名は伴苦(ばんく)博士。
今日は近所のたかし君が夏休みの自由研究にしている「企業が銀行からお金を借りるための方法」についてお話をする。
それにしてもたかし君、遅いのう。

たかし君
博士!ぼくはさっきからここにいますよ。
伴苦博士
おぉ、ワシの股下にいたとは。ではたかし君、早速本題に入ろう。
突然だがキミはお金を借りたことがあるかね?
たかし君
借りたことはありますが、返したことはありません。
伴苦博士
いきなり何というカミングアウトをするやつじゃ。
たかし君
か、買い物してたら、レジに1円玉が入ったカゴが置いてあって、
「ご自由にお使いください」って書いてあったんで・・・
伴苦博士
つっこんですまん。それはセーフじゃ。
では別の質問じゃ。企業が銀行からお金を借りるにはどうしたらいいか知っているかな?
たかし君
若い娘を担保にお金を貸してくれるという話は聞いたことありますが、実際借りている企業は見たことありません。
若い娘がいる会社ってなかなかないんですかね?
伴苦博士
たとえ若い娘がいても、そんなものは担保に出来ん!
まだ若い娘の話を広げたそうじゃが、本題に入ろう。
伴苦博士
企業が銀行から借入をする際、お金の使い道によって運転資金設備資金等に借入の種類が分かれるんじゃ。
伴苦博士
運転資金は、企業が日々の運営を行ううえで必要な資金のことで、従業員のお給料や仕入れた商品などの支払い資金がこれにあたる。
伴苦博士
設備資金は、企業が建物を建てたり、営業用の車を買ったりする時に支払う資金のことを指す。

伴苦博士
分かりやすいようにフラットなイラストにしてあげたぞ。分かるね?
たかし君
へぇ~
伴苦博士
何という態度じゃ。
続けよう。銀行が企業などにお金を貸すことを「融資」と言うんだが、銀行は、融資する際、何を根拠にその可否を判断するか分かるかね?
たかし君
その会社に若い娘が何人くらいいるか、ですかね?へヘヘッ・・・
伴苦博士
もちろん違う。返済能力があるかどうか、を見て判断しているのじゃ。
伴苦博士
基本的には売上や利益と言った経営成績から、この額だったらきちんと返済してもらえそうだな、というのを判断する。
伴苦博士
場合によっては、ある商品の販売代金を返済の元手にする「引当融資」という方法をとったりもする。
たかし君
売った矢先からそのお金が銀行に取られちゃうんですか?
伴苦博士
人聞きの悪い言い方をするんじゃない。
ところで、銀行は融資するためのお金をどうやって調達していると思う?
たかし君
わかりません。
伴苦博士
キミだって銀行に口座くらいは持っているじゃろう?
口座を通してお金を預ける、つまり預金もしているじゃろう?
伴苦博士
企業や個人から預かったお金を融資して、預金者に支払う利息と融資先からもらう利息の利ザヤが銀行の利益になるんじゃ。
たかし君
なるほど!
まぁぼくの場合、口座を持っている「だけ」ですがね・・・
伴苦博士
・・・それはともかく、預金者から預かった資金を第三者に融資というかたちで貸し出す、これを「間接金融」と言うんじゃ。
伴苦博士
銀行も営利企業だし、お客さんから預かった大事なお金を、返せる見込みもないところに融資する訳にいかないから、きちんと審査するんだよ。
たかし君
博士、質問!
伴苦博士
なになに?直球?変化球?
たかし君
何年か事業をしていて、経営成績がある企業はいいんですが、これから事業を始めるという成績がない企業は銀行からお金借りれないんですか?
伴苦博士
160キロを超えるストレートだね。とても良い質問だ。
その昔、ワシが銀行にいた頃は、新たに会社を立ち上げようとする事業者への融資はハードルが高かった。それは万が一の際に融資を回収する手段が限られていたからなんだ。
たかし君
それは保全が弱いということですか?
伴苦博士
何で唐突にそんな専門用語をぶっこんで来るんだキミは!
そう、さっき話題にあった担保付融資とか、中小企業の保証人になってくれる「信用保証協会」の保証付融資など、企業の返済が困難になったときに、銀行が回収不能を回避するために講じる手段を総じて「保全」と言う。
伴苦博士
じゃが創業間もない企業は担保に入れる資産がなかったり、保証協会の保証が受けられなかったりすることが多かったんじゃ。
たかし君
今は違うんですか?博士の歳の数だけ保全の手段が増えたんですか?
伴苦博士
国の施策もあって、起業を支援する動きが社会全般に広がってきているんだよ。信用保証協会の「創業支援融資制度」なんかも、そのひとつじゃ。
伴苦博士
要は、どんなビジネスを展開して、どのように利益を上げていくか、という事業計画であったり、起業家の人となりであったり、きちんと将来性を計りましょう、という流れになってきているんじゃ。
たかし君
僕みたいなまともな人間であれば、実績がなくても貸してくれる・・・そういうことですね。
伴苦博士
将来性があったらの話じゃ。
また、ベンチャー企業に対しては、融資ではなくて「出資」という「直接金融」も増えてきている。
たかし君
間接と直接、ですか。
例えるなら今朝ぼくが博士の飲んでいる缶コーヒーを、こっそり内緒で飲んじゃうのが間接で、直接は・・・
伴苦博士
そんなことをしていたのかねキミは!
どうりで変な臭いが・・・ウゥッ、気分が悪くなってきた。それぞれについての詳しいお話は、また今度じゃ!

  

コメント

  1. […] 伴苦博士 たかし君、それでは夏休み自由研究の続き、「直接金融」の話をしようかの。「【夏休み特別講習】企業の融資講座:間接金融」はこちら たかし君 博士、今更何言ってるんですか。夏休みなんてとっくに終わっちゃってますよ。 伴苦博士 え?あれ?いや、そこらへんは大人の事情で調整効くんじゃないの・・・? たかし君 おかげで夏休みの自由研究は別のテーマで提出しちゃいました。はい、これ。 伴苦博士 なになに、「博士の観察日記」?「8月23日 今日も博士は相変わらず花を咲かせることができません。」って、おい、これ大人に言っちゃいかん!   たかし君 で、「直接金融」って何ですか? 伴苦博士 相変わらずマイペースじゃのう。まぁいい、説明を始めよう。銀行の融資は「間接金融」じゃ、という話はしたと思う。これは、お金の出し手(預金者)が直接企業にお金を貸す訳ではなく、間に金融機関が入るから「間接金融」と言うんじゃが、ここまではよいかな? たかし君 しつこいぞじじぃ!と言われない程度に、さりげなく復習ですね。   伴苦博士 これに対し「直接金融」は、資金の出し手から企業に直接お金が渡ることになる。 たかし君 企業がお金を借りるという結果は同じだと思うんですけど、何か違いがあるんですか? 伴苦博士 「直接金融」は、必ずしもお金を「借りる」訳ではないんじゃ。「資本金」を「出資」してもらうことも含まれておる。しかも、企業にとっての資本金は基本的に返済義務がないんじゃ。 たかし君 踏み倒し放題ってことですか!?何てひどいんだ!博士の次くらいにひどい!   伴苦博士 自由研究の件は本当にすまん・・・いや、ひどくないんじゃよ。そもそも株式会社制度というのは、「こういう素晴らしいアイディアがあるので会社を起してビジネスしたいのですが、少し資金が不足しているから、支援(出資)してくださいませんか。ビジネスが成功して利益が出たら、その一部を分配(利益の配当)いたします。」という考え方で成り立っておる。 たかし君 ふ~ん。それが踏み倒す事とどう関係あるんですか?そんな説明じゃ僕の怒りは治まりませんよ。マジで弾ける5秒前ですよ。 伴苦博士 だからごめんて・・・。少し踏み込んだ話をするとじゃな、「間接金融」である「融資」で調達した借入金を「他人資本」と言うのに対し、「直接金融」のうち「出資」で調達した資本金のことを「自己資本」とも言うんじゃ。 たかし君 いつの間にか「自己」とか言って自分のものにしちゃうわけですね。恐るべし大人の世界・・・   伴苦博士 ちょっとこれを見てくれるかな。会社の財産(資産、負債)の状況を表したバランスシート(貸借対照表)と呼ばれるものを図式化したものじゃ。 伴苦博士 ここにある「借入金」が「融資」で、「資本金」が「出資」なんじゃが、記載される「部」が違うじゃろ? たかし君 そんな大人の都合にごまかされる僕じゃないですよ。問題は博士がいつになったら咲くかってことです。 伴苦博士 それもごめん、もう咲き終わっちゃってるから。って言うか、今までで一番キツイ一言じゃぞ、それ。 話を戻そう。「資本金」というのは、会社の利害関係者のうち債権者(図にある負債の支払相手のこと)の保護という役割を担っておる。   たかし君 えっ!再検査って、博士、頭以外にも悪いところがあるんですか? 伴苦博士 債権者ね。分かり易いボケじゃのう。わしは精神以外いたって健康じゃ。 資本金には会社の安定経営のための「元手」という側面があるから、返済義務を課したら、経営者は安心して事業に打ち込めんじゃろう、と言う話じゃな。経営に打ち込めなかったら、利益が上げられず、債権者にお金が払えなくなるかもしれんじゃろう? たかし君 利益がでなければ、出資した人も利益の配分がもらえなくなっちゃうんですよね・・・。 伴苦博士 そう、したがって当然お金の出し手にしてみたら、間接金融に比べて直接金融はリスクが高くなるんじゃ。   たかし君 でもそれじゃ誰も出資なんてしないんじゃないですか? 伴苦博士 安心したまえ。リスクが高い分、リターンも高くなる可能性があるから、経営者以外にも出資の出し手はちゃんといるんじゃ。 たかし君 リターン?スワヒリ語使わないでくださいよ。 伴苦博士 いや英語じゃ。直訳すると「見返り」かのう。リスクが分かってなぜリターンが分からないんじゃ。 出資とは、言い換えると株式を取得して株主になる、と言うことじゃ。株主になると利益の中から配当をもらう権利や、会社の財産を分けてもらう権利(残余財産の分配権)といった経済的な見返りを得ることができるんじゃ。 たかし君 配当ってたくさんもらえるんですか? 伴苦博士 その話をしだすと掲載限度の文字数を軽く超えるのでまた今度にしようか。   たかし君 知りたいなぁ。 伴苦博士 貪欲な子じゃ。しかし実は出資で一番経済的な見返りが大きいのは配当ではなく、「キャピタル・ゲイン」と呼ばれるものなんじゃ。 たかし君 株式の売却益のことですね! 伴苦博士 何故知っている!?いつも肝心なところで年齢に見合わない知識をぶち込んでくるのう。いや、おっしゃるとおりじゃ。 簡単に言うと、株式の価値というのは会社の価値と等しいんじゃ。出資した時よりも会社が成長すれば、株式の価値もそれに比例して高くなる。 たかし君 株式の価値が高くなるとどうなるんですか? 伴苦博士 取得した株式が何倍もの値段で売れるかもしれん、ということじゃ。まぁ、それなりに時間はかかるがのう。 たかし君 え~っ、そんなの、何年かかるか分からないじゃないですか。博士が白骨化しちゃいますよ。 伴苦博士 そんなにかからん。というか、出資する側は、その期間もちゃんと計算したうえで出資の採算性がとれるかどうかを検討するんじゃよ。   たかし君 ふ~ん・・・ところで、出資する側ってどんな人なんですか? 伴苦博士 ベンチャー企業への出資者としては、「ベンチャー・キャピタル」が一般的じゃな。わしも以前かかわったことがあるんじゃが。 たかし君 この前話してくれた銀行とは違うんですか? 伴苦博士 親会社が銀行だったり、一般企業だったり、いろんなバックグラウンドのベンチャー・キャピタルがあるんじゃ。 たかし君 銀行みたいに審査ってあるんですよね? 伴苦博士 当然じゃな。ただし、銀行との最大の違いは「過去の実績」ではなく、「将来性」を計る、という点じゃ。将来性を計ることによってリスクとリターンのバランスを見極めるんじゃ。 たかし君 僕と一緒だ。   伴苦博士 そうじゃ、キミは将来性の塊じゃ。 たかし君 じゃなくて、僕は博士の将来性が楽しみでこうやって遊びに来ているんですよ。早くもうひと花咲かせてください。 伴苦博士 うぅ(涙)。嬉しいこと言ってくれるね。涙で何も見えんから続きは後日じゃ。 たかし君 (チョロいぜ)   次回につづく・・・ […]

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