越境ECをしていると、日本の常識が通用せず信じられないトラブルに発展する事があります。PayPal(ペイパル)はそんなリスクを少しでも軽減する事が出来る決済方法として、世界中に普及しています。
今回は少し趣向を変えてPayPal(ペイパル)の中の人に話を聞いてきました。
「PayPal Japan」に聞いてきた-その1:ペイパルとは?
佐賀:今日はどうもありがとうございます。早速なんですが「PayPal(ペイパル)」って簡単に言うと何でしょうか。
野田氏:PayPal(ペイパル)の基本のコンセプト、ベースになっているのはAさんBさんという二つのアカウント間の「送金」です。インターネット上に残高を持つというか、自分の財布を持つみたいな。PayPal(ペイパル)がそもそも創業しているときからのコンセプトとして『デジタルウォレット』というものがあるんです。
日本だと遠くの相手に対してお金を払う時って、銀行振り込みなどですよね。PayPal(ペイパル)は創業約20年のアメリカの企業なんですが、アメリカって昔は小切手文化なので、遠くの相手にお金を払う時は、小切手を郵送するのが一般的だったんですね。
すると当然アメリカは広いので、相手にお金が届くのに一週間とか時間が掛かります。で、実際届いてみたら「自分が思っていたものではなかった」とかクレームが多いと。こういった「送金」のやり取りを瞬時にEメールで行う事ができる送金サービス、というのがPayPal(ペイパル)の原点です。
佐賀:当時のアメリカにとっては、すごい画期的なサービスですね。
野田氏:はい。お金を送金したり請求できたりするので、eBayや個人間のECのやり取りですごい流行ったんです。そうしてアカウントがどんどん増えていったときに、それが個人対個人だけではなくて、個人対店舗、という広がりを見せていって、今の形になっています。現状をお伝えすると支払う側のユーザーが今グローバルで約1.9億人ぐらいいて、売る側が、約1400万ぐらいです。
「PayPal Japan」に聞いてきた-その2:他社とペイパルの違い
佐賀:海外サイトだとかなりPayPal(ペイパル)が普及していますが、他の決済サービス、例えばクレジットカードと比べて、何が違うんでしょうか。
野田氏:大規模から小規模の企業まで、色々な方にPayPal(ペイパル)を使っていただけているのは、大きく分けて三つの理由があるからですね。
まず一つは誰でも始められます。クレジットカード会社だとか、ほかの決済サービスとはちょっと逆のパターンをしていまして、まず最初の審査のハードルがとても低いんです。ペイパルアカウントを作成し、本人確認をすれば、基本誰でも始められます。通常のクレジットカード審査って、最初に厳しく審査をしてOKの判断をしますよね。逆にPayPal(ペイパル)は入口は入り易く、そのあとの途上管理を取引などを見てすごい厳しくやっているというイメージですね。
佐賀:実績のない会社や個人事業主でも、簡単に利用する事が出来ると。
野田氏:はい。二つ目にお金回りの所ですね、アカウント to アカウントの送金なので、基本は瞬時にお金が移動します。ですので、決済代行さんとかほかの決済のように入金サイクルが40日とか60日が一般的だと思うんですけど、我々は大体、3〜5営業日で出金できます。特に物販や中小企業でそこまで運転資金が潤沢にない方々に対してはそれだけで一つのメリットかと思っています。
三つ目にリスク管理です。PayPal(ペイパル)の根幹の部分でもあり、他社と大きく違う部分ですね。リスク管理、セキュリティはやはり一朝一夕にはできないので、いろんなノウハウのかたまりだったり、体制だったりする部分が強みです。
佐賀:リスク管理に付随するサービスとして『売り手保護制度』というのをやってますよね。買い手ではなく売る側の保護制度っていうのは珍しいですね。
野田氏:買い手の保護制度もちゃんとあります。両方あります。買い手保護というのは大体のクレジットカード会社さんもあると思うんですが、売り手さんを保護する仕組みって、あまりないですね。我々は費用を頂かずに、基本条件を満たしていただければ売り手さんを無償でその被害から保護するという制度を設けています。定量的に見えづらいんですが、特に海外越境の物販っていうのはやはり、不正やトラブルが多いのでこういった売り手保護を用意しています。
佐賀:不正やトラブルって、越境ECだとなかなかすごいのがありそうですね。
野田氏:たとえば、越境ECでは何かしらの理由で商品が税関で止まってしまって、買い手に配達されないというケースがあります。商品が買い手に届かず、買い手はしびれを切らせ売り手に返金を要求しました。一方、売り手からすると商品は適切に発送したのに自分が損をしてしまうという状況です。
佐賀:おお・・・(笑)
野田氏:そこでPayPal(ペイパル)は売り手保護制度により、商品が配達されなくても、条件(例:発送証明の提出)を満たせば売り手に代金を入金し、このようなトラブルを回避できるような制度を提供しています。この場合の損失はPayPal(ペイパル)の負担になります。それは本当に一例ですけど、そういう売り手さんを守るという立場も我々は取っています。
佐賀:実際、日本国内でのEC事業者さんの導入件数は伸びていますよね。
野田氏:はい。伸びていますね。売り手側も買い手側も、市場より高い成長率で伸びています。海外サイトでの買い物という目的もあるんですが、国内のやり取りでPayPal(ペイパル)が使われる事も多くなりました。
これは必ずしもECの話ではないんですが、例えばPayPal(ペイパル)にはメールで料金を請求できるサービスとかがあるんです。物販でサイトを持っていない個人事業主の方が、よくこのサービスを使われます。
たとえば僕が、佐賀さんに何かサービスなり、商品を提供したとして、佐賀さんからその料金をもらうとします。その場合、僕はペイパルアカウントを作れば、「ここで2万円払ってください」というPayPal(ペイパル)の支払い画面へ飛ばすことのできるリンクのついた請求Eメールを佐賀さんに送れるんです。で、佐賀さんがクレジットカードなり、ペイパルアカウントで払っていただくと、私のペイパルアカウントに2万円入ると。
佐賀:ECサイトを持たない人でもPayPal(ペイパル)を使って決済が、ネット上で出来るんですね。
野田氏:はい。アカウント to アカウントで送金できます。アカウントは誰でも持つことができるデジタルウォレットがコンセプトです。
「PayPal Japan」に聞いてきた-その3:越境ECのハードルを下げる
佐賀:最後に総括というか、PayPal(ペイパル)としてのこれからの越境ECに対しての意気込みを教えてください。
野田氏:そうですね、僕の意気込みという視点になるかもしれないですけど、越境ECのハードルを下げたいという思いがあるんです。
今、日本からの越境ECで売れているものって、フィギュアだとかブランドバッグだとか、最近はロリータファッションもよく売れているのですが、それってもう明らかになっているニーズなんですね。そういったもの以外にも、海外から見てすごくクールだったり「あっ、これすごいね」って思われるものはたくさんあると思うんです。
それは地方の工芸品だったりするんですが、そう言ったものを作っている人たちに、越境ECのハードルをなるべく下げて、新しい販売先を広げていって、今までアプローチできなかった人に販売することで、その地域が盛り上がってくれればいいなと。今すごい抽象的な話をしてますけど、そういったものは思いとしてあります。なので、どうやって越境ECのハードルを下げるかとか、どうやって売りたいと思っている人たちにリーチするか、郊外の人たちに知ってもらうか、そこが今の我々の課題です。
野田氏:そのさきがけという訳ではないんですが、先日eBayさんと、京都市と一緒にプレス発表やったんです。京都の工芸品は良いものが非常に多いんですが、そういう工芸品の職人さんたちがタクシーの運転手をやっているという現状があって。
工芸品の職人だけだと生計が成り立たないので、やむを得ず、タクシーの運転手で生計を立てていると。そういうのって、マーケティングが上手くいっていない、つまり本当にいいものだと思って、その価値を感じてくれている人たちにリーチできていない。特にそれが海外に向けてだと絶対できない、っていうのがあるので。そういうところにチャンスや機会を提供できたらいいなと思っています。
佐賀後記
買い手に限らず、売り手も含めて安全に、早く決済できる仕組みやその思想を聞く事が出来ました。越境ECだけでなく、あらゆるお金のやり取りで使う事の出来るPayPal(ペイパル)、導入を検討されている方は、購入者として試してみてはいかがでしょうか。
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