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ホーム > EC  > 「付加価値の時代」から「本質の時代」へ。新しいスタイルのハイブリッド宿泊施設「星のや東京」に見るおもてなしと時代の気分

こんにちわ、ニアセライターズのAya Wadaです。
 
数々の高級リゾート施設として名を馳せている星のやリゾートが都心の大手町に新たに「星のや東京」を2016年の7月にオープンさせました。2020年に東京オリンピックを控えた東京を代表する宿泊施設として、星のや東京の魅力と課題について見ていきたいと思います。

星のや東京は日本旅館なのか?

星のやといえば、日本の良さである“おもてなし”そして“日本旅館”がキーワードになると思います。星のや東京の建物は地下2階、地上18階の塔という表現を使っているビルになります。温泉やスパ施設も完備し、施設内は靴を脱いで畳の上を歩く造りになっているそうです。このような日本のスタイルを持ちながら、大手町からの交通の便を兼ね備えた宿泊施設。まさに外国から来るインバンド需要に目をつけた、新しいスタイルのハイブリッド宿泊施設と言えるでしょう。

日本の雰囲気とホテルの融合

 
星のやの魅力といえば徹底的なおもてなし。痒いところにも手がとどくような、行き渡ったサービスです。一方、日本旅館の良さといえば、まるで親戚や友人の家に遊びに来たような肩肘を張らないくつろぎの時間、程よい距離感を持って、人目を気にせずに過ごせる時間です。時にそれは不便さとつながることもあります。しかし、星のやの目指す宿泊施設とは日本旅館のスタイルを持ちながら、利便性も得られる立地的優位性を融合したハイブリッド宿泊施設です。
 
もちろん、どちらがいいというものではありません。感じ方は求める者によって違います。つまり、ターゲットによるのです。星のやに宿泊する人へのサービスは、「あなただけの」と言った特別感を与え、お客様はただ宿泊するだけではないVIP感を感じることができます。それと同時に、都内の様々な観光スポットや施設への移動もしやすいのです。
 
これは以前お話しした、アナログ脳にもデジタル脳にも響くものです。今の時代、ものを購入する決定権の多くは女性にあると言われています。家族という単位の中で、お母さん、もしくは奥様、彼女が気にいるものが選ばれる傾向にあります。そんな中で、この特別感を得られるサービスという付加価値は間違いなく女性は惹かれるでしょう。さらに、利便性とともに“世界で一番のおもてなし”という評価を得て、自分が支払う対価以上の価値を見出せれば、それはデジタル思考をしがちな男性にも評価を得ることができます。男性は他との競争に勝ち抜くことに価値を見出す生き物です。世界初、世界一、という言葉、そして具体的な利便性にはとても弱い人が多いのです。

新しいハイブリッド型の提案

しかし、これは日本旅館が持つ本来のサービスとは少し方向性が違うと思います。星のやの提供するサービスは日本旅館のスタイルを身にまとった、ホテルを目指しているようです。大手町という土地柄もそうですが、世間の喧騒から離れたゆっくりとした時間を求める人をターゲットにはしていません。星のや東京がターゲットとするお客様は、日本らしさをごく身近に感じながら観光の利便性も求める外国からのお客様でしょう。このインバウンド需要は東京オリンピックも見据えて、おそらく多くの外国人客の憧れの宿泊施設となると思います。
 
どのようなものを求めるか、良いと思うか、その行動は男性的、女性的な違いに加えて、その生まれ育った文化や環境によっても変わってくるものです。異文化への憧れというものは誰もが持っているものです。特に和食や日本の伝統技術が注目されている昨今、そのような外国人の憧れを満たす宿泊施設として、星のや東京は大きな役割を果たすでしょう。

リゾート宿泊施設としてのトップブランドになり得るか

星のや東京は日本旅館とは似ていて全く違うものと言っていいと思います。日本人が思い描く古き良き日本旅館とは一味も二味も違う宿泊施設です。私たちが想像する日本旅館とは、共有スペースで人目に触れることも少なく、どちらかというと別宅で、もてなしを受けるような場所でした。星のや東京でのサービスはそのような古いスタイルの日本旅館ではなく、エンターテイメントの要素もプラスされています。
 
日本伝統の雅楽の演奏や、職人の技を身近で見て体験できるワークショップ的なサービスです。和というキーワードにこだわりながら、サービスの内容は静かな日本旅館ではなく、積極的に参加していくスタイルです。
 
この新しいスタイルがこれからも受け入れられ、トップブランドとして君臨できるかの試金石として星のや東京の成功がかかっていると言ってもいいでしょう。人間の脳にアナログ脳とデジタル脳があるように、時代の気分というものがあり、これもデジタル的な考えが支持される時とアナログ的な考え方に支持されます。これは短期間に一気に変わるのではなく、徐々に移り変わっていきます。

時代の気分は今ちょうど端境期

そして今、ちょうどその端境期にあると言えます。これまでは付加価値の時代でした。お客様が気づいていない潜在的なニーズを掘り起こし、先回りしてサービスを提供することが重要視されてきました。それはこれからもしばらくは変わらないでしょう。しかし時代は付加価値の時代から本質の時代へと移りつつあります。この変化についていけるものだけが生き残ることができるとも言えるのです。
 
これからは徐々にトップブランドや伝統、老舗、と言った本質的価値が問われるようになっていきます。顧客はそのサービスは本当に価値があるものなのかを見極めるようになります。ユーザーニーズ志向はだんだんと息を潜め、星のリゾートのファンを納得させる、プロとしての提言ができる革新性が求められるのです。
 
星のや東京はこの4~5年でトップブランドとして認知されるかどうかが鍵になります。そして様々な付加的サービスではなく、日本旅館本来の安らぎの空間を新しいハイブリッド施設として提供できるかが勝負です。目新しさではなく本質的なおもてなしであるか。その先の5~10年は星のリゾートの真価が問われる時期と言って良いでしょう。そして、それは宿泊業界に限らず、全てにおいて言えることです。

 
 

この記事を書いた人

アパレル企画に20年携わった後、マーケティング、行動心理学等の学びを通して聴くこと、書くこと、伝えることに興味を持ち、2015年よりライターとして活動中。インタビューや取材、プロフィールライティングを主にやらせていただいています。ヨットが趣味です。

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