コラボレーション施策を巧みに操る。「ice watch」が認知度を上げた戦略的マーケティングとは

ニアセ寄稿

こんにちは古田島です。
 
ユニクロ、H&M、forever21などファストファッションの流行により手頃な値段でおしゃれな値段でファッションを楽しむことができる時代になりました。ところでファッションの着こなしといえば、どこを意識されるでしょうか。ビシッと決まったジャケットや可愛いTシャツなどに目がいってしまいがちですが、ファッションに凝った人は、帽子や靴、時計など小物アイテムにこだわりを持っています。
 
小物が光るファッションコーデは全体を通し、おしゃれにまとめてくれるファッションアイテムとしてさりげなく取り入れることができるのが便利ですよね。今回はベルギー発のおしゃれ時計のice watchについて色々みていきましょう。
 

ice watchはどんな時計?

ice watchは、一体どのようにして世界中に販路を拡大していったのでしょうか。創業者のジャン=ピエール氏はあるとき、ファッションには季節に合わせたトレンドがあるのになぜ時計にはトレンドというものがないのか疑問に思いました。そこで「リーズナブルな価格で、且つ、おしゃれな」時計を創ることに決めたのです。通常、時計はオールシーズンでも対応可能な黒やグレーなどシンプルカラーが主流でした。季節に合わせて時計を変えたり、また同ブランドで他の色を買うようなこともよほどの時計好きでなければしませんでした。それは価格の問題であったり、似たようなカラーバリエーションしかなかったからです。
 
時計業界の風穴を破るような斬新のブランドが2007年ベルギーで誕生し、ice watchは全世界にファンを作っていったのです。
 

国内外の著名人が多く愛用

ice watchが誕生してから2年後の2009年に日本に上陸しました。大体的に上陸というわけでもなく、最初はセレクトショップに卸したりして他のブランドと同様の草の根活動から始まりました。一体、どのように認知度を上げていったのでしょうか。
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当時の時代背景とともに考えてみると、世界を驚愕させたリーマンショック後から1年が経ち、時代のパラダイムシフトが叫ばれていた頃、今やSNS代表格のTwitterが徐々に市民権を得ていきます。今まで、情報というのは、テレビや新聞といったメディアから得ていましたが、この時期にSNSの概念ができたといっていいでしょう。要するにリアルタイムで誰もが情報を発信できる時代へとシフトする転換期が2009年から始まったともいえます。
 
ice watchは今で言うところのSNS映えするアイテムですが、当時はそんな言葉もなかったので、まずは多くの人の目に留まることを考えました。そこでコラボレーション施策に舵切りをしていったのです。
 

 
2010年にnobodyknows+、FLOWと絶世を極めたアーティスト、福岡ソフトバンクホークス、国民的アイドルのAKBなど多くのコラボレーションを実現し、ice watchの認知度を急激に高めることに成功しました。また、実店舗を持つのではなくまずはPOP UP SHOPで、売れ行きの感触を確かめるべく全国主要都市の百貨店に期間限定のショップを出し、お客様の反応を見ることに徹底しました。
 
翌2011年は、ゲーム業界のバンプレストやファッションブランドのRoen、XLARGEなど、これまでとは違う業界とのコラボをすることにより、異なった層へのアプローチを行ないました。ファッション業界とコラボを果たすことでファッションラバーに向けてice watchを訴求し始めたのでしょう。
また、2010年はプロ野球でしたが、2011年はプロサッカーチームの清水エスパルスとのコラボを果たしています。野球ファンの次はサッカーファンをターゲットにした実にぬかりない戦略ですね。
 
2013年は日本の市場において一つの転換期になった年でした。まず東京ガールコレクションと同じくして日本の有名ファッションショーである関西コレクションのスポンサーになったことです。ターゲットもF1層に受け入れられようとする姿勢が感じられますね。2013年から今年に至るまで毎年、関西コレクションのスポンサーをしているので、F1層の絶大な支持を集めているのでしょう。
 
一方で若者向けかと思うとそうではないのがice watchのすごいところです。なんとBMWとice watchがスポンサーシップを結びました。この振り幅がすごいなと感じますね。BMWとのコラボウォッチは2015年までモデルが生産され、BMWに似合うような時計を車好きにアピールしました。そして極め付けはジョニファーロペスやアヴリル・ラヴィーンがこぞって、PVにice watchを着けていたことです。この頃はちょうどfacebookやTwitterに人々が使いこなしていたので、情報はどんどん拡散されますので、この時期にice watchを初めて知ったという新たな顕在層にまでリーチできたのです。
 
そして、きゃりーぱみゅぱみゅや、福山雅治、嵐など日本の著名人も多く愛用し始めたことでice watchがより浸透したといえるでしょう。2013年を境に主要の雑誌媒体にはほぼ全てに取り上げられ、ネット上でも多くのブロガーがice watchを記事にしています。日本でも成熟した段階でついに2014年に原宿、そして2015年に大阪と旗艦店(フラッグシップ)をオープンするに至ったわけです。かのダニエルウェリントンが、2014年に日本上陸して1年後に路面店を出したのと比べると、満を持してフラッグシップショップをオープンさせたのだと思います。ice watchは、見た目や価格帯ともにギフトとして喜ばれるので、百貨店内のテナントとは非常に相性が良いのですが、フラッグシップショップを構えることで、ice watchのみに集中して商品セレクトしてもらうことやブランドとしての格付け(ファッション業界ではどこにフラッグシップがあるかで、見方が全然変わる)を意識した戦略であったと思います。
 
最近では、2015年のクリスマス商戦に向けて、ブランド発のリミテッドエディションの販売や、雑誌25anの定期購読を申込むことでオリジナルのice watchをプレゼントするなど、新しい戦略も打ってきています。雑誌の定期購読は、過去にメンズクラブの定期購読施策も実施されていましたが、有名雑誌が次々と休刊を発表するなど雑誌業界の衰退が顕著になってきたことで、こういったファッションブランドとのコラボが活況を迎えそうですね。
 

 

徹底したブランディングにもとづいたマーケティング戦略

ice watchは大体的なコラボ戦略で、急成長したように思われがちですが、実は細かいところにも巧みな戦略を打ってきています。まず、ice watchを買った際の開けにくい箱です。これはなかなか開けられなくて、お店にもう一度開けに戻った人がいるほど開けづらいです。逆にこれがSNS受けすることになり、思わずポストしたくなる仕掛けだと思います。またインテリアとしても、貯金箱としても使えるので箱を捨てずに取っておくことができますので、2次購買に繋がりやすいという側面もありますね。
 
「CHANGE.YOU CAN.」をコンセプトに、豊富なカラーバリエーションで、季節やファッションスタイルによって“着替える時計”を提案してきたice watchだからこそ、徹底的にブランディングにこだわり、アイスウォッチをリピートして買ってもらおうとする戦略は見事だと思います。
 

さいごに

こういったあまり目に留まらないような細かい施策も、ブランディングには大切な要素だと感じる良い例だと思います。その他に細かいPRでは、JALの機内カタログに広告を打ったことです。おしゃれでリーズナブルだと、とかくブランド自体が安っぽく思われてしまいがちですが、飛行機のカタログに載せることで、ブランドとしての品質を高めてくれるのです。またあのPOPな箱はお土産としても喜ばれるので、機内カタログとも実に相性の良いものでした。
 
ice watchはこれまでの時計業界の常識を覆し、毎シーズンのトレンドを生かしたラインを生産し続けています。1つ買ってもまた、つい欲しくなってしまうデザインはリピートを考える上で勉強になりますし、徹底されたブランディングは同じような物販をするものにとって大いに参考になる成功例だと思うのです。

 
 

ニアセクリエイターズ所属のライター/エディター
週末に東京タワーで行われる、朝活イベント「モーニング女子会」を主宰(http://www.cinderella-tokyo.com/)
執筆は世の中のトレンドやオモシロいことを、様々なカテゴリーからピックアップして参ります。

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