お風呂のソムリエ!?「バスリエ株式会社・松永武」インタビュー【前編】

ニューアキンド

皆さんは「ワインのソムリエ」って知っていますか?知っていますよね。そうです。ワイングラスに入ったワインをくるくる回すイメージのあれです。
 
では、「お風呂のソムリエ」はどうでしょう?知っていますか?
ワイングラスにお湯を入れて嗜む人を想像したそこのあなた!「そんな職業ないでしょ」と思われるかもしれませんが、実は、あるんです。
 
という訳で今回は「お風呂のソムリエ」ことバスリエ株式会社 松永武社長にお話を聞いてきました。
 

バスリエ株式会社誕生のきっかけ

 
-まず、最初に松永さんのバスリエを立ち上げるまでの歩んできた道というか、きっかけを聞かせていただけないでしょうか。
 

 
松永氏:歩みですね・・・まあ、すごく簡単に端折ると、まず僕は学校の勉強が全然出来なくて(笑)でも仕事が大好きなんです。
もともと実家が町の家電屋と言う事もあり、小学生の頃から父親にくっついてエアコンの取り付けとかの手伝いをしてたんです。そうすると、お客さんから「武君、偉いねー」みたいな感じで褒められ、お菓子をもらったり、500円もらったりしていたのが僕の商売の原点かなぁと思っています。
何かをして喜んでもらって、対価をもらうってことが昔から大好きでしたね。
 
あと、音楽が好きで、そういう仕事がしたいなと思ってたんです。
それって別に音楽業界で働きたいってことではなくて、音楽ってメロディや歌詞や人に共感するからCDを買っていただけるように、共感して選んでいただけるような仕事って事です。さらに言えば、聞くシーンも常に聞き手都合で楽しいときや悲しいときに合わせて寄り添ってくれる・・・そんな仕事をイメージしていました。
東京に出て来た頃は趣味で作詞作曲をやりながら、ライブハウスでバイトしていましたね。
でも時給が凄く安くて(笑)、住んでる所は風呂なしのアパートで明日食べるものにも困るような暮らしを続けていました。
 
しかし、いい加減生活が苦しくて当時時給の高かった家電量販店の派遣社員として働き始めたんですが、その時にバスリエを立ち上げるきっかけになった「まくら株式会社」の河元さんと知り合いになったんです。
 
河元さんは一足先に退職して「まくら株式会社」の前身となるアンニークジャパン(annique japan)を起業し自社開発の枕を販売していました。
扱っていた枕が当時では画期的な低反発枕で、枕が人の頭に合わせて快眠できるという商品でしたね。それが僕の中で「人に合わせる」っていう音楽的な要素を感じたことと、河元さんの枕に対する熱意に感動して「まくら株式会社」に入社させていただきました。
 
-まくら株式会社様の場所は千葉県だったと思うのですが、東京から通っていたという事でしょうか。
 

 

松永氏:そうですね。当時は練馬に住んでいたので会社のある千葉県の我孫子市から帰ったら夜中の1時2時でした。朝は6時に起き・・・でしたので睡眠時間3時間みたいな生活が1年ぐらい続いていました。そんな時に、当時はまだ結婚してなかったんですが、妻が「枕で眠りを売っているのに、自分が睡眠不足でどうするの?」みたいな、ごもっともなことを言ってきて(笑)ある日、妻が入浴剤を買ってきてくれてたんです。
「これにゆっくり入って、これぐらい汗かいて、で、こういう状態になったら上がって、で、また休んで、寝てみなよ」みたいなことを言われたので実際やったら、すごく気持ちよかったんですね。じんわ~り汗をかいてリラックスして。
湯船に浸かっているときはもちろんだし、上がってからも違う!なんか温泉行ったみたいにポカポカするって感じました。
そしてさらに朝起きたらびっくり!完璧に体の疲れが取れてるし、ものすごいすっきりしてるんですよ。
 
その時、睡眠の質を良くするのってお風呂とか睡眠前にどう過ごすかとか、そういったところがすごい重要なんだと気付かされました。
独立は前々から「いつかは」と思ってたこともあって、独立しようと考えた時に、じゃあお風呂グッズの専門店をやろうと思ったのは割と早かったです。ショップ名とか会社名は、「妻がやってくれたのって、なんかお風呂のソムリエみたいだな」っていうところからショップ名が『お風呂のソムリエSHOP!』になって、会社名が『バスのソムリエ』で、『バスリエ(Bathlier)』としました。
これがバスリエを立ち上げるに至った経緯ですね。

 
-奥様がきっかけなんですね。
 
松永氏:そうなんです。他にも睡眠とお風呂の関係性に気付けたこともあるけど、単純に気持ち良かったっていう。それがきっかけですね。
 

そもそも文化がないとモノは売れない

 
-日本は温泉大国というかお風呂文化のイメージがあるのですが、最近はどうでしょうか。
 
松永氏:日本は温泉大国、お風呂好きってイメージがあるかと思いますが、最近の若い人とかに「毎日お風呂に浸かってる?」って聞いたら「ほとんど浸からない」って言う答えが返って来ることが多いです。その度に悔しく思い、何とかお風呂の素晴らしさを知ってもらいたい、日本の風呂文化を変えていきたい、そう考えるようになりました。
ぶっちゃけ言えばもう、ただ儲けようっていうよりは、お風呂に僕は今、食べさせてもらっているので、その恩返しがしたいなと思っている部分もありますね。
 
-確かにお風呂に入る人が減っているというニュースのアンケート結果が出てましたね。
 
松永氏:はい。どんどんお風呂に浸かる方が減っていて、お風呂に入る意義みたいなものがどんどん薄れている感じがします。そんないろいろな思いがある中で、HOT JAPANという一般社団法人を立ち上げました。HOT JAPANでは様々なお風呂に関わる企業や団体と繋がり、日本の風呂文化をユネスコの無形文化遺産に登録しようとか、お風呂に対する意識を変えたり、安全に楽しんでいただけるようなイベントやセミナーを開催したりなど、日本のお風呂の良さを世界に広げる活動を行っています。

HOT JAPAN公式サイト

 
-お風呂文化を広めることが重要なんですね。
 
松永氏:はい。世界から日本を見たり、世界へ発信したいと考えた時に初めて、日本のお風呂の良さが見えて来ると思うし海外販売を考えても、文化がないとモノは売れないと思います。
 
-物が良くてもそれだけでは売れない、と。
 
松永氏:そうです。そう感じたきっかけには2012年に楽天とクールジャパンのコラボ事業でインドネシア(ジャカルタ)に出店したことが言えます。当時、日本の楽天市場出店店舗の中から30社が選出されてインドネシアで浴衣や日本酒、寝具やアパレルなど様々なジャンルの企業が販売を行いました。その一環として、ジャカルタ中心部にある大きなショッピングモールで催事を行い、僕も現地のお客様の声を聴こうと催事場に立ったんです。が、僕だけ全く売れなかったんです(笑)
 
当然、出店を決める前にリサーチしましたが、やはり現地に行ってヒアリングすると全然違いましたね。そもそもお湯に浸かると言った文化はごくごく一部の方とのこと。物が良いとか悪いとかの次元の話ではなかったんです。

 

市場を広げる為に文化を作るby松永武

 
-お風呂市場はニッチという事なのですが、そこを広げるためにはどうしたらよいのでしょうか。
 

松永氏:これからの話ですけど、うちの経営理念が『快適なバスタイムから、豊かな暮らしを実現する』なんですね。その一環でもあるプロジェクトとして、「世界に広げる!お風呂のソムリエプロジェクト」みたいなものがあります。
 
要は今まではお風呂のソムリエショップとして、レストランでいえば、食事に合わせたワインをソムリエが提供するようにお客様に合わせたお風呂をショップとして提供しようっていうスタンスでやってきたんですけど、今はお店じゃなくて、お客さんにお風呂のソムリエになってもらう方がずっと意味があるし面白いと思ってやっています
 
たとえば、ニアセの人達が今日帰って、奥さんに「なんか、松永さんの話聞いて、俺もお風呂のソムリエになろう」って言って、入浴剤を家に持ってってとか。そもそも入浴剤がなくても、ちょっとお風呂掃除してお風呂を準備して、「今日疲れたんだったら、リラックスしたいんだったら温めがいいんだって。今日、聞いてきたから、温めにしたからね」みたいな感じでいいと思うんですよ。別にわざわざ何かを買わなくても。
 


バスリエ株式会社のロゴ「バスリー」

 
松永氏:お風呂市場はニッチな部分もありますし海外ではお風呂が無い国もまだまだあります。そう考えると商品の販売だけを考えるのではなくお風呂に入るための意味であったり文化を広めて、もっと人に寄り添うような活動が出来れば市場ももっと広がると確信しています。
 

編集後記

歴史的にお風呂文化が根付いていると思っていた日本でも、
まずお風呂文化を広めなくてはいけない。
 
「市場を作る≒文化を作る」といった考え方は非常に参考になりました。
次回はどのようにして今のバスリエ株式会社になったか、またこれからのバスリエ株式会社の展望をお聞きします。
 

 
 

商売繁盛を応援するWebメディア・ニューアキンドセンターのセンター長。 もっとエッジを効かせたい、もっとトンガリたい。どうぞよろしくお願いします。

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コメント

  1. […] お風呂に対する情熱が半端じゃないです。ただお風呂グッズを売るのではなく、お風呂文化を広めることに取り組んでいらっしゃいます。物が良くてもそれだけでは売れない、文化がないとモノは売れないのです。   https://new.akind.center/201607/bathlier-1/ […]

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